そびえ立つ神殿ピラミッド、正確な暦、高度に発達した天文学──。
今からおよそ3000年も昔、古代マヤの人たちは偉大な文明を築き上げた。「マヤ文明」は、メキシコやグアテマラ、ベリーズなど、ユカタン半島を中心とするメソアメリカ地域で栄えていた。
いまなおジャングルの樹冠からのぞく巨大な建造物は、はるか昔、たしかにこの場所に人々の営みがあったこと、そして彼らが驚くほど高度な技術を持っていたことを、はっきりと物語っている。
古代マヤの人々は、ほかの古代文明の担い手たちとは違って、さまざまな環境に適応することができた。彼らは、うっそうと生い茂るジャングルや乾燥したサバンナ、海辺の断崖の上にまで都市を築いた。
これほどまでに多様な環境に適応し、卓越した技術や知識を持っていた文明は、そう簡単には衰退しないように思える。にもかかわらず、マヤ文明は深刻な衰退を幾度となく経験してきた。
文明衰退の原因として、人口過剰、環境破壊、王朝間・王朝内の戦争など、いろいろな可能性が挙げられている。気候変動もその有力候補だ。
たしかにそうだ。当時よりもはるかに文明が発達した現代の私たちでさえ、極端気象による豪雨や水不足を防ぐ術は持っていない。ひとたび牙をむいた自然は、私たちの文明社会にいとも簡単に傷跡を残していく。
実際のところ、気候変動は古代のマヤ文明にどれほどのダメージを与えたのだろう──。
その謎を解くカギは、深い湖の底に眠っている。年縞(ねんこう)と呼ばれる奇跡の地層だ。