加工装置、容器への蓋の固定方法、金属製密閉容器および密閉型蓄電装置
【課題】金属容器開口部に蓋を密閉状態で固定するために、容器の開口側端部をカール状にプレスで曲げ加工する際に容器に不必要な変形等が生じるのを防止する。
【解決手段】金属製の容器2内に蓋4を挿入し、第1の押し型30により、容器2の開口側端部の先端が容器の内側を向くように変形させる。次いで、第2の押し型により容器2の開口側端部の内側を向いた先端を蓋4の外周縁部4aに食い込むように下向きに変形させる。第1の押し型30には、容器2の開口側端部を曲げる際に、曲げられる部分の直ぐ下側を内側から押さえる裏当て部材35が備えられる。裏当て部材35は、拡径および縮径が可能で、容器2の開口側端部を変形する際は、拡径して容器2の開口側端部の内側に接触する。容器2の開口側端部が縮径された状態に変形された際に、裏当て部材35も縮径し、狭められた開口から裏当て部材35を取り出し可能とされる。
【解決手段】金属製の容器2内に蓋4を挿入し、第1の押し型30により、容器2の開口側端部の先端が容器の内側を向くように変形させる。次いで、第2の押し型により容器2の開口側端部の内側を向いた先端を蓋4の外周縁部4aに食い込むように下向きに変形させる。第1の押し型30には、容器2の開口側端部を曲げる際に、曲げられる部分の直ぐ下側を内側から押さえる裏当て部材35が備えられる。裏当て部材35は、拡径および縮径が可能で、容器2の開口側端部を変形する際は、拡径して容器2の開口側端部の内側に接触する。容器2の開口側端部が縮径された状態に変形された際に、裏当て部材35も縮径し、狭められた開口から裏当て部材35を取り出し可能とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の容器の開口部に蓋を固定するための加工装置、当該加工装置を用いた容器への蓋の固定方法、当該固定方法を用いて製造された金属製密閉容器および密閉型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池など密閉型電池は、有底筒状の金属製外装缶(たとえば、アルミ外装缶)に、電極、セパレータ、電解液などからなる電極体を収納し、外装缶の開口部を電極端子等の組み込まれた蓋(アルミもしくは樹脂の成形品)で封口して製造される。蓋の外周部と外装缶の開口側端部との接合には、レーザー溶接などの方法が用いられることもあるが、製造が容易であるという面から外装缶の開口側端部をかしめて蓋を固定する方法が多く用いられている。
たとえば、アルミ外装缶と電極端子等の組み込まれた蓋部品の密閉は、一般的には、ロール加工での曲げか、ロールでの巻き込みによるかしめで行われる場合が多い
この場合には、ロールで僅かずつ形状を変えるため作業時間が長く、かつ、加工バリの発生するなどの弊害がある。
【0003】
また、外装缶とその内部に挿入された状態の内管とを備え、内缶の上端の開口側端部が内側に曲げられて水平とされた上辺部が形成され、蓋をこの内缶の上辺部と外装缶の開口側端部のかしめられて内側に水平に曲げられたかしめ部との間で挟み込んだ状態で密閉性を確保しているものある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、電池のような蓄電装置としては、化学反応により電力を生じる電池以外に例えば、一般のアルミ電解などのコンデンサを用いたものが知られているが、近年、電解液と電極との界面に極めて短い距離を隔てて電荷が配向する現象である電気二重層を利用し、物理的に電荷を蓄える電気二重層キャパシタ(EDLC)の利用も行われている。
【0005】
このEDLCは、一般的な二次電池と比較して大電流の充放電が可能で、充放電サイクル寿命に優れており、エンジンとモータとを備えたハイブリット車や、燃料電池を搭載した電気自動車等でのエネルギーの有効利用を目的として、自動車への搭載が検討されている。すなわち、減速時においてブレーキパッドの摩擦熱等として捨てられるはずのエネルギーでモータによる発電を行い蓄電装置を充電し、発車時や加速時のように大きなエネルギーが必要なときに放電してモータのエネルギーとすることで、エネルギーの有効利用を図る際に、EDLCは、大電流での充放電が可能で、充放電サイクル寿命が長いことが二次電池よりも有利となる。
【0006】
このようなEDLCでも、電極の接続端子を外部に露出した状態で電解液が漏れないように密閉する必要があることから電池と同様の密閉構造となり、このようなEDLCにおいても、上述のような容器と蓋とからなるハウジングを用いることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−257382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に示される方法も含めて従来缶が円や楕円状の場合には比較的容易に加工が可能だが、缶が角型、例えば、直方体のような場合に加工装置の機械的構造から制約され加工が困難である。
また、外装缶の厚みが厚く、かつ、この厚みに対して曲げ代が短いとより加工が困難となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、容器の開口部に蓋を固定するために容器の開口側端部を完全に曲げる前に、当該容器の開口側端部を開口部の内側に向けて曲げる際に、容器が円や楕円だけでなく、角型でも対応でき、かつ、容器の厚みが曲げ代に対して比較的厚くとも対応できる加工装置、当該加工装置を用いた容器への蓋の固定方法、当該容器への蓋の固定方法を用いた金属製密閉容器および密閉型蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の加工装置は、金属製の容器の開口部に、蓋を配置した状態で、少なくとも前記容器の開口側端部をプレス加工で曲げることにより前記蓋を前記容器に固定する際に、前記容器の開口側端部を完全に曲げる前の行程として前記容器の開口側端部の先端を前記開口部の内側に向けて曲げるための加工装置であって、
前記容器を固定する固定手段と、当該固定手段に固定された前記容器の開口側端部に押し付けられて前記開口側端部を前記開口部の内側に向けて曲げる押し型とを備え、
前記押し型は、
前記容器の開口側端部の外周面に当接する内周面を有する雌型部を有し、前記雌型部の内周面が奥側に向かうにつれて径が湾曲した状態で細くなる形状とされ、前記雌型部の内周面を前記容器の開口側端部の外周面に押し付けることで、当該開口側端部を内側に湾曲した状態に折り曲げる押し型本体と、
当該押し型本体の前記雌型部の内周面の内側で、かつ、前記容器の開口側端部の内側に配置され、前記容器の前記押し型本体により内側に向けて曲げられる部分より押圧方向の先側となる当該容器の開口側端部の内周面に当接して、前記第1の押し型により曲げられる前記容器の開口側端部の内周面側を支持する拡径状態と、前記容器の内側に曲げられた開口側端部の内径より径が小さくなる縮径状態との間で拡縮自在な裏当て部材と、
前記裏当て部材を前記第1の押し型の押圧方向への移動に伴って拡径させ、当該第1の押し型の押圧方向と逆の戻り方向の移動に伴なって縮径させる拡縮手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明においては、例えば、外装缶となる有底筒状の金属製容器の開口部に蓋を挿入した状態に配置する。なお、この際に、蓋は、容器の開口側端部の上端より下側に配置されるとともに、位置が動かないように支持されている必要があり、例えば、容器の内周面に突出部を備え、当該突出部上に蓋の周縁部が載った状態に配置されていてもよいし、容器の内周面に蓋の周縁部が嵌合する構造があってもよい。
【0012】
そして、容器の開口側端部を曲げることで、蓋を固定するとともに、容器内を密閉した状態とする。なお、本発明では、開口側端部を例えば蓋の外周縁部とともに外側に広がるようにロール状に曲げるものは含まず、容器の開口側端部を内側に曲げることにより蓋を固定するものである。
例えば、本願発明は、容器の開口側端部を内側に逆U字状に折り返したり(折り返された部分と、それより下側の部分との間に間隔がある状態)、内側に折り返した部分をそれより下側の部分にほぼ接触するように折り返したり、これらのように折り返された部分をさらに折り返すことによりロール状(渦巻き状)に巻いたりすることで、容器の開口側端部で蓋を固定する場合に適用することができる。また、容器の開口側端部だけではなく、蓋の外周縁部を一体に折り返したり、巻いたりする場合も適用可能である。
【0013】
そして、上述のように容器の開口側端部を折り返した状態に曲げるような場合に、一回のプレス加工で行うことが困難であり、特に、曲げる部分の長さに対して容器を構成する部材の厚みがかなり厚い場合や容器が角型の場合に、曲げ加工が困難となる。
そこで、容器の開口側端部を折り返す前に、容器の開口側端部の先端が内側に向くように曲げ、その後に容器の開口側端部を折り返すように曲げることで、容器の開口側端部を折り返すように曲げることが容易となる。なお、さらに、容器の開口側端部を折り返したり、折り返し部分をその下側に密着させたりする加工を行う場合もある。
【0014】
また、上述のように、まず、容器の開口側端部の先端を開口部の内側に向けて曲げる際も、単純にプレス加工で行うと、きれいに開口側端部の先端が内側を向くように曲げることができない。
【0015】
そこで、本発明では、容器の開口側端部の曲げる部分の押圧方向の先側に裏当て部材を当てることで、きれに開口側端部の先端が内側を向いた状態に曲げられ、それ以後の曲げ加工が容易となる。
これにより、例えば、容器の肉厚が厚い場合にも加工が可能となり、かつ、たとえば、丸や楕円でない角型の容器でも、容器の開口側端部の曲げ加工で容器への蓋の固定が可能となる。なお、角型の容器の場合に、少なくとも容器の開口の周囲の4つの角部が全て所定以上の曲率半径で概略円弧状にRが付けられた状態となっていることが好ましい。
【0016】
そして、容器の開口側端部を内側に曲げると、容器の開口が縮径した状態となり、例えば、裏当て部材の容器の内周面に当接している部分の外径より容器の開口の内径が小さくなってしまい、裏当て部材の容器からの取外しが困難になってしまう。
それに対して、本発明では、裏当て部材を拡縮自在とし、第1の押し型を押圧方向に移動して容器を変形させる際には、裏当て部材を拡径して容器の開口側端部の内周面に当接するようにし、加工が終了した後に第1の押し型を戻す際には裏当て部材を縮径して容器の開口部から取り出せるようにしている。
【0017】
このような構造とすることで、比較的簡単なプレス加工により、蓋を容器に密閉状態に取り付けることが可能となり、例えば、蓄電装置としての電池や、キャパシタ(コンデンサ)の密閉容器の蓋の固定のための加工装置として、本発明を有効に用いることができる。
【0018】
請求項2に記載の加工装置は、請求項1に記載の発明において、
前記裏当て部材は、互いの間隔を大きくすることで拡径され、互いの間隔を狭くすることで縮径されるとともに、拡径された状態で前記容器の開口側端部の内周面に当接するように複数に放射状に分割された分割駒を備え、
前記拡縮手段は、
当該分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、
前記分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明においては、裏当て部材を複数の放射状に分割された分割駒からなるものとすることで、分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段とを用いて容易に裏当て部材を拡縮可能な構成とすることができる。
【0020】
請求項3に記載の加工装置は、請求項2に記載の加工装置において、 前記押し型本体および裏当て部材を一体に上下動させるとともに、前記押し型本体を前記固定手段に固定された前記容器の開口側端部に向かって下方に押圧する上下動手段を備え、
前記拡径手段は、前記裏当て部材の複数の前記分割駒の内側に配置される拡径部材と、前記上下動手段に係合する係合部材と、所定の高さ位置で前記固定手段に当接可能な位置決め手段とを一体に移動可能に備え、
前記上下動手段は、前記押し型本体および裏当て部材を上下動自在に支持する支持部材を備え、
前記係合部材は、前記上下動手段の支持部材に離間可能に載った状態に係合し、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置が固定され、
前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径することを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明においては、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記拡径手段が、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置を固定された状態となる。また、前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径する。
【0022】
したがって、第1の押し型を下降させて容器を変形する際には、裏当て部材が拡径して容器の裏側を押さえ、第1の押し型を上昇させて容器から取り外す際には、裏当て部材が縮径して開口が狭まるように変形した容器から取り出し可能となる。すなわち、機械的な構成で、必要に応じて裏当て部材を拡径もしくは縮径できるので、裏当て部材の拡径および縮径のために、制御を行なう必要がなく、設備コストの低減、作業の簡略化を図ることができる。
【0023】
請求項4に記載の容器への蓋の固定方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工装置を用いた容器への蓋の固定方法であって、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる先端曲げ工程と、先端曲げ工程で曲げられた前記開口側端部をさらに曲げることにより容器に蓋を固定する固定工程とを備え、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる際に、当該容器の開口側端部の内周面の曲げられる部分の直ぐ下側に拡径した前記裏当て部材を当接させ、
前記容器の開口側端部を内側に折り曲げた後に縮径する裏当て部材とともに押し型本体を容器から取り外すことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。なお、固定工程も基本的にはプレスによる加工となるが、固定工程が一回のプレス加工であってもよいし、複数回のプレス加工からなっていてもよい。
【0025】
請求項5に記載の容器への蓋の固定方法は、請求項4に記載の発明において、前記先曲げ工程の前に容器状に加工された前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の発明においては、先曲げ固定の前に曲げるべき前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことにより、容器の開口側端部が他の部分より焼鈍しにより曲げやすい状態となり、先曲げ工程および固定固定において、前記容器の他の部分、すなわち、容器の曲げるべき開口側端部より下側の部分の変形を防止しつつ、容器の開口側端部を円滑に曲げることができる。
【0027】
請求項5に記載の金属製密閉容器は、請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明においては、請求項4または請求項5に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
請求項6に記載の金属製蓄電装置は、請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0030】
請求項6に記載の発明においては、請求項4または請求項5に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、金属製容器の開口側端部をプレスにより曲げ加工して、当該容器の開口部に蓋を固定する際の前工程として、容器の開口側端部の先端が開口部を内側を向くように曲げ加工する際に、裏当て部材を用いて不必要な変形が生じるの防止できるとともに、曲げ加工により狭くなった開口部から裏当て部材を容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6は本発明の実施の形態における蓄電装置としてのEDLCの有底筒状の容器の開口部に蓋を密閉状態に固定する際に用いられる加工装置および蓋の固定方法を示す図であって、図1は蓄電装置と当該蓄電装置の外装缶となる容器に蓋を固定する際の工程の概略を示す斜視図である。図2は第1の押し型(先端折り曲げ型)により容器の開口側端部を内側に向けて曲げる際に用いられる第1の押し型(上型)と容器を固定する下型とを備えた加工装置の概略を示す斜視図である。図3、図4、図5は第1の押し型を用いた容器の開口側端部の折り曲げを説明するための断面図である。図6は第1の押し型の要部分解斜視図である。
【0033】
図1に示すように、この例のEDLC等のキャパシタもしくは電池としての金属製蓄電装置1は、角型の金属製密閉容器を備えるもので、例えば、直方体状をしており、断面概略正方形(長方形でもよい)となっている。その直方体状の角型の蓄電装置1の外装を構成する金属製の容器2は、概略直方体状で、その上端に概略正方形状の開口部3を有し、この開口部3に蓋4が固定されて容器2内が密閉された状態となる。
【0034】
そして、蓄電装置1の製造においては、まず、容器2が例えばアルミニウム合金等から成形される。この際に容器2は、上述のように概略直方体状で、一方の端部が開放された状態、すなわち有底筒状に形成される。また、容器2の四隅(蓋および底の四隅に対応する四隅)、すなわち、角部2aが設定された曲率半径で湾曲した状態に形成されている。すなわち、角部2aにR(丸み)が付けられた状態となっている。
【0035】
また、図1(a)に示すように、容器2の開口側端部5(上辺)においては、上記角部2aの高さが、当該角部2aどうしの間の平面部より低くなっている、すなわち、容器2の開口部3側の上辺が、角部2aで弧状に下側に凹んだ状態となっている。容器2の角部2aにおいて上辺を凹んだ状態に低くしたのは、容器2の開口側端部5を絞り込むように内側に曲げた際に角部2aの左右から角部2aに向かって開口側端部5が集まるように曲げられることで、曲げるのが困難になるのを防止するために、この部分を予め短くしたものである。
【0036】
また、容器2の上部には、内部に挿入された状態に配置される蓋4の周縁部の下側を支持して蓋4を支えるように、外面側が凹で、内面側が凸とされた線状変形部6がそれぞれ形成されている。線状変形部6は、容器2の4つの角部の間の4つの辺となる各平面部に、容器2を底部を下にして立てた状態で水平となるように形成されている。また、線状変形部6は、上述のように外面側が凹んだ状態で、内面側に突出した状態となっている。これにより、線状変形部6の部分では、容器2の内径が狭くなった状態となる。
【0037】
そして、対向する各平面部間の距離(内径)は、蓋4の各辺の幅(外径)より僅かに広くなっている。そして、上述の線状変形部6の各平面部間の間隔は、蓋4の幅より短くなっており、蓋4を容器2の上端開口から挿入して、当該の蓋4の周縁部を線状変形部6に載せた状態とすることが可能となっている。
すなわち、蓋4の周縁部の各辺となる部分が線状変形部6上に載った状態で、蓋4は容器2内に落下しない状態となる。
【0038】
蓋4は、例えばモールド成型された合成樹脂製で、その上面側において、外周縁部4aとその内側との間に段差があり、外周縁部4aに対してその内側が上方に突出した突出領域4bとされ、この突出領域4bと外周縁部4aとの境が段差となっている。また、突出領域4bは、その上面が概略四角状の平面とされ、当該上面に一つの対角線上で左右に並んだ状態に円柱状の電極端子7、7が設けられている。
また、図3に示すように、蓋4の外周縁部4aには、蓋4の外周に沿って環状に溝4cが形成され、当該溝4cに環状(四角枠状)のシール材4dが挿入され、溝4cがシール材4dにより埋められた状態となっている。
【0039】
そして、この例の蓋4の固定方法においては、上述のように容器2に線状変形部6を形成した後に、容器2内に蓄電装置1を構成する部材を収納する。ここでは、容器2内にEDLCを構成するためのものとして、アルミ箔上に活性炭電極を貼り付けたシート状電極を間にセパレータを挟んで積層したものを収納するとともに電解液を充填する。なお、円形や楕円形では、例えば、上述のシート状電極を複数積層するのではなく、例えば、一枚もしくは複数枚のシート状電極を巻き込むことで重ねており、構造が異なることから特性が異なるものとなっており、角型EDLCを円型EDLCでのそのまま代用することができるとは限らない。
【0040】
そして、次に、蓋4を容器2内に挿入して、上述のように線状変形部6上に載せることで、容器2内の上端部に保持させるようにする。
そして、この状態で、加工装置(プレス加工装置)のベッド上の下型(固定手段)11に容器2を固定する。そして、第1の押し型30で容器2の開口側端部5を内側に向けて絞り込むように曲げる先端折り曲げ加工を行なう(先端曲げ加工工程)。この状態では、容器2の開口側端部5が垂直に上方を向いた状態から内側に向けて所定の曲率半径で横を向いた状態に湾曲した状態となる。この状態では、曲げられた容器2の開口側端部5の先端と、蓋4とは離間した状態で、また、蓋4を固定した状態とはなっていない。
【0041】
次いで、第2の押し型(図示略)で、容器2の開口側端部5をさらに半円状にカールした状態に曲げるカール曲げ加工を行なう(固定工程)。このカール曲げ加工により、容器2の開口側端部5は、半円状に折り返した状態に湾曲し、先端が蓋4の外周縁部4aのシール材4dに押し付けられた状態となる。
【0042】
そして、弾性材であるシール材4dに、上述のように折り返した状態にカール加工された容器2の開口側端部5の先端が食い込み、シール材4dが弾性変形した状態となるこで、蓋4と容器2の開口側端部5との間の密閉性が確保される。
【0043】
これにより、容器2を蓋4により密閉された状態とすることができる。
なお、一つの押し型で半円状にカールさせる加工を行なうことは困難であり、上述のように、容器2の開口側端部5を湾曲した状態で内側に曲げる先端折り曲げ加工と、内側に湾曲した状態の容器2の開口側端部5をさらに曲げて半円状(逆U字状)で折り返した状態とさせるカール曲げ加工との2段階で行なわれる。
【0044】
そして、本発明は、先端折り曲げ加工における第1の押し型30の構造と、第1の押し型30を用いた容器2への蓋4の固定方法における容器2の開口側端部5の曲げ方に特徴を有する。
まず、加工装置(プレス加工装置)は、周知のベッド(図示略)とベッドに取り付けられる固定手段としての下型11と、ベッド上で上下動するスライド(図示略:上下動手段)と、スライドに取り付けられる上型としての第1の押し型(押し型)30とを備える。
【0045】
下型11は、互いに対向するとともに当接した状態に配置可能な固定部12と可動部13と後述のダイホルダ14とを備え、可動部13は、当該固定部12に開閉自在に取り付けられている。また、固定部12はダイホルダ14を介してプレス加工装置のベッドに固定される。固定部12の可動部13と当接する面には、容器2を対角線上で縦に切断した形状に対応する凹部12aが設けられている。この凹部12aは、断面が概略三角形状で、上述の可動部13と当接する側面側が開放されているとともに、上面側が開放されている。
また、固定部12はダイホルダ14を介してベッドに位置決め固定された状態となっている。
【0046】
可動部13は、固定部12に対向する側面を固定部12の前記凹部12aが形成された側面に当接した状態と離間した状態とに回転移動可能となっている。すなわち、可動部13は、固定部12の下部に対してその左右端部のうちの一方の端部が鉛直方向に沿ったピンにより回転自在にピン接合されている。
【0047】
また、可動部13の固定部12に当接する側面には、容器2を対角線上で縦に切断した形状に対応する凹部13aが設けられている。この凹部13aは、上述の凹部12aと同様に断面が概略三角形状で、固定部12と当接する側面側が開放されているとともに、上面側およぼ下面側が開放されている。
そして、固定部12に可動部13を当接させた状態で、それぞれの凹部12a,13aが合わさるようになっており、これら凹部12a,13aが合わされて容器2の上端部より下側が挿入される保持穴部15が形成されるようになっている。この保持穴部15は、基本的に容器2の上端部より下側とほぼ同様の形状となっている。なお、固定部12の上下長さに対して可動部13の上下長さがおよそ半分程度とされ、固定部12の凹部12aの上部は、可動部13の凹部13aと重なるが、固定部12の凹部12aの下部は、可動部13を閉めた状態としても開放された状態となっている。
【0048】
また、固定部12の凹部12aの内側面は、一つの入隅の角部の左右に平面部を有する構造となっており、角部に容器2の角部2aが当接され、平面部に容器2の平面部が当接するようになっている。
また、この凹部12a内の平面部となる内面には、図3に示すように、容器2の溝状に凹んだ状態の線状変形部6に挿入される突条16が形成されている。
また、可動部13の凹部13aの内側面も一つの入隅の角部の左右に平面部を有する構造となっており、凹部13aの角部に容器2の角部2aが当接され、平面部に容器2の平面部が当接するようになっている。また、可動部13の凹部13aの内側面にも、容器2の線状変形部6に挿入される突条16が形成されている。
【0049】
この線状変形部6に挿入される突条16によって、容器2の線状変形部6より上の開口側端部5(上端部)にかかる下方向の力を受けるようになっており、プレス(押し型による下方への押圧)により開放側端部5を変形する際に、線状変形部6より下側が変形してしまうのを防止している。
また、上述のように容器2の線状変形部6に挿入される突条16により、プレスに際して容器2の突条16より上の部分から容器2の突条16より下の部分に力が伝達されるのを阻止しているので、固定部12の凹部12aの内側面および可動部13の凹部13aの内側面において、突条16より下の部分では、容器2の形状を維持するために、これら内側面と容器2の外周面とが接している必要がなく、この例では、凹部12a、13aの内側面と、容器2の外周面との間に間隔(クリアランス)があいている。すなわち、凹部12a、13aからなる保持穴部15においては、前記突条16の上より下の方が内径が大きくなった状態となっており、保持穴部15に容器2をセットした際に、容器2の線状変形部6より上では、保持穴部15の内周面と容器2の外周面が当接した状態で、容器2の線状変形部6より下では、保持穴部15の内周面と容器2の外周面が離間した状態となっている。
なお、図3,4,5においては、僅かなクリアランスを無視して図示している。
【0050】
可動部13は、固定部12の側面に当該可動部13の側面を突き合わせた状態では、上述のように凹部12a,13aどうしが合わさって外装缶としての容器2を保持する保持穴部15が形成され、可動部13を固定部12から離すように開放すると、固定部12および可動部13の凹部12a,13aがそれぞれ固定部12の側面および可動部13の側面において開放され、固定部12の側面の凹部12aに横方向から容器2をセット可能となる。この状態で可動部13を閉めることで、容器2が保持穴部15に保持された状態となる。
【0051】
また、固定部12には、左右合わせて2本のガイド孔17,17が設けられている。ガイド孔17,17は、鉛直方向に長い円柱状の孔で固定部12の上面に開口しており、後述の第1の押し型30のガイドピン31,31が挿入され、第1の押し型30が位置ずれするのを防止するようになっている。
また、可動部13には、可動部13を固定部12に閉めた状態にロックするためのロックレバー18が設けられており、このロックレバー18により、可動部13が開かないようにロックしている。
【0052】
第1の押し型30は、スライダに取り付けられるパンチホルダ32と、前記ガイド孔17,17に挿入されるガイドピン31,31と当該パンチホルダ32の下面に固定的に取り付けられる支持板(支持部材)33と、当該支持板33に固定される概略四角筒状の押し型本体34と、押し型本体34に支持されるとともに拡縮自在な裏当て部材35と、当該裏当て部材35を拡径させる拡径手段36と、前記押し型本体34に設けられ、前記裏当て部材35を縮径させる縮径付勢手段37とを備える。なお、拡径手段36と、縮径付勢手段37とにより拡縮手段が構成される。
【0053】
前記パンチホルダ32は、矩形の板体で、その上面側にスライドに固定される固定ピン32aを備え、スライドに位置決め固定されるようになっている。
前記ガイドピン31は、パンチホルダ32の下面の左右端部から鉛直方向に延出した状態となっており、パンチホルダ32に一体に接合された状態となっている。
【0054】
また、支持板33は、矩形板状の板体で、パンチホルダ32より面積が小さく、パンチホルダ32の左右のガイドピン31,31の内側に配置されている。そして、支持板33には、その左右の側面部から上に向けて立設された接続板部33aが設けられ、パンチホルダ32の下面との間に左右接続板部33aを介して支持板33が固定されている。すなわち、接続板部33aは、支持板33の左右側縁部において、上端がパンチホルダ32に接続され、下端が支持板33に接続され、パンチホルダ32下面と支持板33上面との間に間隔をあけている。
【0055】
そして、支持板33には、前記拡径手段36が取り付けられるようになっており、拡径手段36の後述の左右の位置決めピン(位置決め部材)36a、36aと、左右の位置決めピン36a、36aの間に配置される拡径部材36bとを挿通させる三つの挿通孔が左右に並んで形成されている。
【0056】
押し型本体34は、概略四角筒状で中央が四角状の型穴となっており、型穴の内周面の下端部である雌型部34aとなる部分は、上述の容器2の外周面に対応したものとなっている。但し、雌型部34aを有する型穴の四つの角部は、容器2の角部2aに対応して、所定の曲率半径で円弧状に湾曲した曲面とされている。すなわち、押し型本体34の雌型部34aは、容器2の角部2aと同様にRが付けられており、容器2の上端部を型穴の雌型部34aに挿入可能となっている。しかし、押し型本体34内部の容器2の開口側端部5を塑性変形させて所定形状とさせる雌型部34aとなる内周面の下部は、上に行くほど縮径された状態となっており、容器2の断面積より所定の曲率半径に沿って窄まるように絞り込まれた形状となっている。
【0057】
これにより、下型11に保持されて固定された状態の容器2の開口側端部(上端部)5を押し型本体34の雌型部34a内に挿入することで、押し型本体34の雌型部34aの内周面に沿って所定の曲率半径で曲げた状態とすることができる。
しかし、容器2の曲げられる板状部分の厚みに対して曲げ代が十分でないと、すなわち、厚みに対して曲率半径が余り長くないような場合に、必ずしも綺麗に円弧状に曲げることが困難であり、この例では、後述のように裏当て部材35で裏当てをして、曲げられる部分の基端側が内側に入り込んだ状態に歪んでしまうのを防止するようになっている。また、加工される側が四角形状の場合に、角部2aが比較的大きな曲率半径の円弧状に形成されていても、綺麗に曲げられないという問題があり、特に角部2aにおいて、角部2aの円弧状の曲面に対応した曲面を有する裏当て部材35を当てることで、角部2aも押し型本体34の雌型部34aの内周面に沿ってきれいに湾曲するようにしている。
【0058】
また、加工される部分が枠状で、内側に絞り込むように変形させることから、枠状の裏当て部材35で裏当てを行なった場合に、容器2の開口側端部5は、加工前は裏当て部材35の外径とぼぼ同等の内径だったものが、加工後は裏当て部材35の外径より狭い内径となってしまい、裏当て部材35を取外せない状態となる。そこで、この例では、裏当て部材35を拡径および縮径が可能な拡縮自在な構成とすることで、加工後に容易に容器2の開口部3内から取り外せるとともに、加工時に確実に容器の開口側端部5の加工される部分の直ぐ下側を裏から強固に支持できるようにしている。
【0059】
そして、押し型本体34における容器2の開口側端部5を変形させる雌型部34aとして機能する部分より上側も連続する型穴となっている。
また、押し型本体34の雌型部34aは、上述のように上に行くほど所定の曲率で絞り込まれた形状、すなわち、雌型部34aとなる部分の下端より上端の方が径が小さくなっている。なお、押し型本体34の雌型部34aの下端部は、内周面が垂直なっており、この垂直な内周面の上側が上述のように上下方向に所定の曲率半径で絞り込まれる湾曲面となっている。そして、押し型本体34の内周面の最下端部となる鉛直となった面の高さ位置で、裏当て部材35が容器2の開口側端部5の内周面に当接するようになっている。したがって、容器2の型穴の内周面に裏当て部材35が当接した場合に、容器2の裏当て部材35が当接された部分は、押し型本体34と裏当て部材35とにより表裏(内外)から挟まれた状態となる。
【0060】
そして、押し型本体34の型穴の雌型部34aより上は、上述の裏当て部材35が収納される空間となる。
また、押し型本体34には、後述のように裏当て部材35を縮径するための縮径付勢手段37としての構造が設けられている。すなわち、四角筒状の押し型本体34の各角部は、それぞれ面取りされた形状となっており、当該各角部の面取り部分のそれぞれの上部に内側の型穴の角部と連通するように貫通孔37aが形成されている。なお、貫通孔37aの押し型本体34の型穴側に開口する部分を内側端部とし、貫通孔37aの押し型本体34の外周面側に開口する端部を外側端部とし、四角筒状の押し型本体34の対角線に沿って形成されている。
【0061】
そして、貫通孔37aは、基本的に円柱状で、全体的に同じ内径となっているが、内側端部の開口部分だけ、そのほかの部分に対して僅かに内径が小さくなっている。また、貫通孔37aの外側端部は、雌ねじとなっている。そして、貫通孔37a内には、内側から球37bと付勢手段としての圧縮コイルバネ37cとが挿入された状態で、外側端部の開口部にイモねじからなる栓37dが挿入されて雌ねじに螺合し、貫通孔37aの外側端部が閉じられた状態となっている。
球37bは、その径が、貫通孔37aの内側端部の開口部の小さくされた内径より大きく、内側の開口部を除く貫通孔37aの内径より小さくされている。
【0062】
また、圧縮コイルバネ37cは、球37bより外側に配置され、球37bを貫通孔37aの内側端部の開口に向けて付勢するが、前記開口の内径は、球37bの外径より小さいので、球37bは貫通孔の内側端部の開口から落下することなく、その半分より僅かに小さい部分が貫通孔の内側端部の開口から突出した状態で掛止された状態となる。
【0063】
また、上記栓37dは、圧縮コイルバネ37cの外側端部に接触し、圧縮コイルバネ37cの外側端部側の位置を固定している。また、球37bが貫通孔37aの内側端部にある状態で、球37bと栓37dとの間の間隔は、無圧縮状態の圧縮コイルバネ37cの長さよりも短いものとなっている。これにより、圧縮コイルバネ37cは、基本的に常時球37bを内側に付勢した状態となっている。そして、この球37bと栓37dと圧縮コイルバネ37cとが、裏当て部材35を縮径方向に付勢する縮径付勢手段37を構成している。
【0064】
そして、上述の構成により、圧縮コイルバネ37cに付勢された球37bは、押し型本体34の内側に向かって突出した状態となっている。この状態で、押し型本体34の裏当て部材35の後述の各分割駒40を縮径側に押し型本体34の対角線に沿って付勢するようになっている。
なお、裏当て部材35は、上述の雌型部34aとなる押し型本体34の内周面の下部まで配置されるので、基本的に押し型本体34の型穴の中に当該押し型本体34の上端から下端まで配置される。また、裏当て部材35は、拡縮自在であるが、最も縮径した状態で、押し型本体34の型穴の雌型部34aの上端より上の空間の内に収まる断面積となっていれば、上述のように加工される容器2の開口側端部5を挿通可能な状態となる。
【0065】
また、押し型本体34の型穴の雌型部34aより上側の裏当て部材35を収納する部分においては、上側と下側とで内径が異なるものとなっており、上側の方が下側より内径が大きくなっている。そして、この内径の異なる上側と下側との間に上側を向く段差面39が形成されている。
この段差面39は、裏当て部材35の後述の各分割駒40を支持するもので、各分割駒40は、押し型本体34の型穴の内周面に形成された上を向く段差面39に載った状態で移動可能に支持されている。
【0066】
このような裏当て部材35は、拡縮自在となるように前記支持板33の下面に取り付けられた4つの分割駒40からなっている。
各分割駒40は、その表側がそれぞれ容器2に四つある角部2aと該角部2aを挟む2つの平面部に対応した形状となっている。すなわち、裏当て部材35は、各分割駒40を合わせた状態で、外周側が四角柱状となっており、この四角柱状の裏当て部材35の各分割駒40は、上述の概略四角柱の各平面部をその左右の中央で垂直に切り離した状態、すなわち、四角柱を各角部毎に十字に切り離した状態の形状(すなわち、放射状に切り離した形状)となっている。但し、各分割駒40同士が対向した状態となる各分割駒40の裏側には、各分割駒40を一体に合わせた状態で、下部が円錐台状で上部が円柱状の空間があくようになっている。
【0067】
そして、各分割駒40は、他の分割駒40と対向しない外側を向いた角部と、その角部を挟む2つの平面部の下端部が外方に突出した状態となっている。したがって、複数の分割駒を組み合わせて概略柱状とした場合に、下端部が拡径された状態となっている。そして、この各分割駒40の外側に突出した下端部の外周面が、容器2の開口側端部5を変形させる際に、容器2の開口部3の内周側、すなわち、裏側に当接する部分である。
【0068】
また、各分割駒40は、それぞれ、離間可能な状態となっており、各分割駒40を上述の概略四角柱状から互いに離間した状態となるように配置した場合に、平面視して十字状の隙間が形成された状態となり、十字の隙間の交差の中心部分に上述の下部が円錐台状で上部が円筒状の空間が形成される。
【0069】
また、各分割駒40毎に見ると表側(裏当て部材35の外側となる)に角部と、当該角部を挟む平面部とを有する形状となっており、裏側(他の分割駒と対向する裏当て部材の内側となる)も基本的には角部と当該角部を挟む平面部とを有する形状で概略四角柱状となるが、裏側は、その角部が円弧状に凹むように削られた形状となっている。なお、円弧状の凹みの曲率半径は、下部を除く部分で同じとなっているが、下部においては、下に向かうにつれて、円弧状の凹み部分の曲率半径が大きくなる形状とされている。したがって、この分割駒40の裏側の角部の下端部側の凹みは、下に向かうにつれて外側に向かう湾曲した斜面となっている。
【0070】
また、各分割駒40は、上述の概略四角柱状となった状態で、分割駒40に含まれる角部を通る四角柱の対角線に沿って移動可能に押し型本体34に支持されている。
押し型本体34の内周面の上述の下端部より上の部分においては、上述のように段差面39が形成されている。
それに対して、各分割駒40の表の上部には、下を向く段差面41が形成され、押し型本体34の内周面の上を向く段差面39上に、各分割駒40の段差面41が載った状態となる。なお、各分割駒40においては、段差面41の上側の側面が、下側の側面より外側に突出した状態となっている。
また、各分割駒40を互いに接触した状態とすることにより、裏当て部材35を縮径状態とした場合に、押し型本体34の型穴の段差面39より下側の内径(段差面39の上側の内径より小さい)は、縮径状態の裏当て部材35の外径より小さくなっており、裏当て部材35の各分割駒40が押し型本体34の型穴から脱落しないようになっている。
また、各分割駒40の上面は、水平な平面となっており、支持板33の下面にほぼ当接した状態となっており、各分割駒40が傾くの防止している。言い換えると、分割駒40の段差面41より上の側部が、押し型本体34の型穴の段差面39と支持板33の下面との間の挟まれた状態で保持されることで、分割駒40が水平方向に移動可能に押し型本体34と支持板33とに支持されている。
【0071】
この状態で、各分割駒40が互いに間隔を拡げて離れることで裏当て部材35が拡径し、各分割駒40の間隔を狭めることで裏当て部材35が縮径することになる。
そして、各分割駒40の上部は、その表側角部が、上述の縮径付勢手段37の球37bに常時接触した状態となっており、前記球37bにより縮径側に付勢され、後述のように、拡径手段36により拡径方向に動かされない限り、裏当て部材35は、縮径状態となっている。これにより、裏当て部材35の下端部においても、その径が、容器2の変形された開口側端部5の内径より小さくされ、裏当て部材35の下端部が容器2の変形された開口側端部5の当該開口を挿通可能な状態となる。
また、各分割駒40の下面には、蓋4の外周縁部4aと突出領域4bとの段差に対応して、段差が形成されており、分割駒40の表側の外周部が、突出領域4bより低い外周縁部4aまで下降可能となっている。
【0072】
そして、このような裏当て部材35の各分割駒40の中央には、円柱状の拡径手段36の拡径部材36bが配置されている。拡径部材36bは、上述の各分割駒40を組み合わせた状態の裏当て部材35の中央部に形成される円錐台と円柱とを組み合わせた形状の空間に対応する形状となっており、下端部に円錐台部36dを有し、円錐台部36dより上が円柱状の支持棒36eとなっている。そして、拡径部材36bは、後述のように裏当て部材35に対して上下動するようになっているが、裏当て部材35に対して拡径部材36bが最も下に配置された状態で、拡径部材36bの円錐台部36dは、その外側に配置される裏当て部材35の上述の円錐台状の空間内に収容された状態となっている。この状態では、裏当て部材35の各分割駒40の裏面と、拡径部材36bの外周面が接触していてもよいし、僅かに離間していてもよい。また、この状態では、裏当て部材35は、上述の縮径付勢手段37により、容器2の変形した際の開口側端部5の内径より小さく縮径した状態が維持される。
【0073】
また、前記拡径部材36bを裏当て部材35に対して、相対的に上昇させると、裏当て部材35の中央部の下側の上述の円錐台状の空間を構成する内周面(湾曲する斜面)、すなわち、各分割駒40の円弧状に凹む裏面の下部と、拡径部材36bの円錐台部36dの外周面(湾曲する斜面)とが接触した状態で、分割駒40の裏面の内周面に対して円錐台部36dの外周面が上昇する。この際に、裏当て部材35(各分割駒40)の内周面と拡径部材36b(円錐台部36d)の外周面との接触部位における裏当て部材35の内周面の内径に対して、拡径部材36bの外周面の外径が徐々に大きくなる状態となり、拡径部材36bが周囲の四つの分割駒40を外に押し出すことになる。
【0074】
そして、そのまま、拡径部材36bを上昇させ続けると、裏当て部材35が拡径した状態となり、容器2をセットしていない状態では、押し型本体34の内周面の下端部に裏当て部材35の下端部の外周面が接触もしくは近接する状態となる。容器2をセットした状態では、容器2の開口側端部5の曲げ加工される部分の下側の内周面に裏当て部材35の下端部の外周面が接触し、押し型本体34の下端部と、裏当て部材35の下端部との間に、容器2の開口側端部5の曲げ加工される部分の直下をほぼ挟んだ状態に保持することになる。
【0075】
そして、このような拡径部材36bを有する拡径手段36は、上記拡径部材36bと、上記拡径部材36bを前記パンチホルダ32および支持板33に連動して上下動させる拡径支持部材(係合部材)36cと、拡径支持部材36cに接続され、拡径支持部材36cがパンチホルダ32および支持板33に連動して下方に移動した場合に、下型11上面に当接して、拡径支持部材36cおよび拡径部材36bの上記パンチホルダ32および支持板33に連動した移動を阻止し、前記拡径部材36bおよび拡径支持部材36cを下型に保持された容器2に対して所定高さ位置(所定距離)に保持する位置決めピン(位置決め手段)36a,36aとを備える。
【0076】
上記拡径部材36bは、上述の支持棒36eの上端部が、支持板33に形成された挿通孔を貫通して、拡径支持部材36cに固定されている。
拡径支持部材36cは、矩形板状で、前記支持板33とパンチホルダ32との間に配置されており、パンチホルダ32が前記スライダの上下動の範囲に対応する移動範囲の上側に位置する際に、支持板33上に載置された状態となっている。この状態では、拡径支持部材36cに連結された拡径部材36bの円錐台部36dは、上述の押し型本体34内に配置された裏当て部材35の下部の円錐状の空間内に収納された状態で、裏当て部材35を拡径していない状態となっている。
【0077】
さらに、拡径支持部材36cは、その上面にゴム、ゴム状の樹脂、バネ等からなる弾性部材36fが接合され、当該弾性部材36fの上端は、パンチホルダ32の下面に連結されている。この弾性部材36fは、後述のように支持板33に対して拡径支持部材36cが上昇し、それに伴って拡径部材36bが各分割駒40を最大限に拡径した状態に押した際に、押し型本体34と拡径部材36bとの間に各分割駒40が挟み込まれた状態となり、これらが互いに噛み合って嵌合した状態となり、後述のようにスライダを上昇させることにより、拡径部材36bが支持板33に対して下降させる必要がある場合に、下降できない状態となることがないように、パンチホルダ32および支持板33に対して拡径支持部材36cが上昇した場合に、前記弾性部材36fが拡径支持部材36cを下に付勢することにより、上述の嵌合を解除し、拡径部材36bが支持板33に対してスムーズに上下動するようにするものである。
【0078】
また、スライドの下降に対応してパンチホルダ32および支持板33が下降した際に、拡径支持部材36cは、最初、支持板33に連動して下降するが、上述の位置決めピン36a,36aにより、下型11からの高さが決められたところ(位置決めピン3の下端が下型11の上面に当接した際)で、下降を停止する。そして、パンチホルダ32および支持板33がさらに下降するのに対して、拡径支持部材36cは、下降を停止した状態となり、支持板33に載置された状態から、支持板33に対して相対的に上方に移動して、支持板33から離れる状態となる。
【0079】
この際に、拡径部材36bも拡径支持部材36cとともに、相対的に支持板33に対して上方に移動した状態になるのに対して、押し型本体34および裏当て部材35は、支持板33と一体に下降する。これにより、裏当て部材35に対して、拡径部材36bが相対的に上方に移動した状態となり、上述のように上昇する拡径部材36bによって、裏当て部材35が拡径することになる。
【0080】
そして、裏当て部材35および押し型本体34の下端の高さ位置が、下型11に保持された容器2の開口側端部5の位置に達すると、裏当て部材35が拡径することにより、裏当て部材35の外周の下端部の突出部が容器2の開口側端部5の内周面側に極めて近接した状態となる。
同時に押し型本体34の内周面の下端が容器2の開口側端部5の外周面の高さ位置に達し、押し型本体34の内周面の最下端部と、容器2の開口側端部5の外周面の最上端部とが当接もしくは近接した状態となる。さらに、パンチホルダ32および支持板33が下降すると、裏当て部材35の最下端部が容器2の開口側端部5の内周面にほぼ当接した状態となり、押し型本体34の雌型部34aの内周面の上下に湾曲した部分に容器2の開口側端部5が達し、容器2の開口側端部5が内側に湾曲するように変形し始める。
【0081】
この際に、開口側端部5の内周面における裏当て部材35の当接位置は、押し型本体34による容器2の開口側端部5の曲げ変形が行われている位置より僅かに下となる(押圧方向の先側の近傍となる)。
そして、この状態で、容器2の開口側端部5が完全に変形させられるまで、押し型本体34の下端部の内周面が、容器2の開口側端部5に対して上から下に向かって移動するとともに、移動に伴なって開口側端部5が湾曲した状態に変形していき、裏当て部材35の下端部の外周面は、押し型本体34による容器2の開口側端部5の変形位置より僅かに下側の内周面に当接して、容器2の変形位置以外での変形を防止する。また、裏当て部材35は、下降するほど拡径するので、下降するほど、容器2の開口側端部5の内周面を強く押した状態となる。
【0082】
このように押し型本体34の下降に合わせて、裏当て部材35が被加工部材である容器2の開口側端部5の曲げられる部分より僅かに下側に当接した状態を維持するとともに、容器2の裏当て部材35が当接している部分は、裏当て部材35と押し型本体34との下降に対応して、下降していく。
また、加工後にスライダを上昇させると、支持板33の位置が拡径支持部材36cの位置まで上昇し、支持板33に拡径支持部材36cが載った状態となる。この状態でさらにスライダが上昇すると、支持板33が拡径支持部材36cを載せた状態で上昇し、拡径支持部材36cとそれに一体に接合された位置決めピン36aおよび拡径部材36bが上昇することになる。
【0083】
ここで、その前の段階では、拡径支持部材36cは、位置決めピン36a,36aが下型11の上面に載った状態で、スライダが上昇しても上昇することなく、拡径部材36bも拡径支持部材36cと同様に止まった状態となっている。それに対して、押し型本体34および裏当て部材35が上昇する。この際に、上述のように裏当て部材35の中央の空間の斜面となった内周面と、拡径部材36bの円錐台部36dの斜面となった外周面が当接しており、裏当て部材35の内周面が拡径部材36bの外周面に対して上昇する。この際に拡径部材36bの外周面の裏当て部材35の内周面が接触する部分の径が小さくなっていく。
【0084】
そして、裏当て部材35の各分割駒40は、縮径付勢手段37により常時縮径方向に押圧されているので、拡径部材36bの外周面の裏当て部材35の内周面に接触する部分の径が小さくなることで、裏当て部材35を内側から押える力がなくなり、裏当て部材35の各分割部材40は、縮径方向に移動する。これにより、裏当て部材35が縮径し、上述のように内側に向けて曲げられることにより内径が狭くなった容器2の開口側端部5を抜けられる状態となる。そして、スライダが最も上に移動した際に、第1の押し型30は、容器2から上方に離れた状態となる。
【0085】
上述の裏当て部材35の拡径するタイミングは、位置決めピン36aの長さで決めるようになっている。すなわち、位置決めピン36aの長さを短くすると、第1の押し型30の下降開始から位置決めピン36aの下端が下型11に上面に当接するまでの時間が長くなり、裏当て部材35が拡径するタイミングが遅くなる。
また、位置決めピン36aを長くすると、裏当て第1の押し型30の下降開始から位置決めピン36aの下端が下型11に上面に当接するまでの時間が短くなり、裏当て部材35が拡径するタイミングが早くなる。したがって、位置決めピン36の長さを調整することで、裏当て部材35の拡径のタイミングを変更することが可能であり、例えば、容器2の加工に際し、裏当て部材35が拡径する最良のタイミングを実験的に求めることにより、位置決めピン36aの長さを決めることができる。
【0086】
以上のような、構造の加工装置による上述のEDLCの外装缶としての容器2の加工は、外装缶となる容器2の開口部3から蓋4を開口内に挿入し、上部の線状変形部6上に蓋4を載せた状態とする。次いで、容器2を下型11にセットする。この際には、下型11の可動部13をロックレバー18を操作して開放した状態とし、固定部12の開口された凹部13aに容器2を挿入する。次いで、開放した状態の可動部を閉じた状態としてロックする。これにより、容器2がその開口側端部5を露出された状態で下型11に保持された状態となる。この際に容器2の下型11より上に出た上端部を除く部分の外周面が、固定部12の凹部12aと可動部の凹部13aとを合わせてできた保持穴部15の内周面に当接し、容器2が保持された状態となるとともに、容器2の露出部分より下側において、容器2の外方向への変形を防止するようになっている。
【0087】
また、容器2の線状変形部6部分に、下型11の保持穴部15の内周面の突条16が入り込んだ状態となっており、これによっても容器2の変形を防止している。また、第2の押し型30を使用して、容器2の開口側端部の先端を蓋の外周縁部のシール材に押し付ける際に、線状変形部6の変形を抑止するとともに、蓋4の下方への移動を防止する。
【0088】
次に、加工装置のスライダを下降させることにより、上述の第1の押し型30を下降させ、容器2の開口側端部5を上述のように、上端が開口部の内側に向かうように加工する。この際には、上述のように、裏当て部材35が拡径して、容器2の開口側端部5の内側に曲げられる部分の直ぐ下側を裏から押えるとともに、押し型本体34の湾曲した部分の直ぐ下の鉛直面となった部分のとの間に容器2の曲げられる部分の直ぐ下側を挟み込んで、曲げられる部分の下側の変形を防止しながら、容器2の開口側端部5を曲げることにより、綺麗に押し型本体34の雌型部34aとほぼ同様の形状に湾曲した状態に容器2の開口側端部5を曲げることができる。
【0089】
そして、次に、スライダの第1の押し型30を第2の押し型に変更するか、別の加工装置に移す。なお、別の加工装置に移す場合には、別の加工装置にも上述の下型と同様の下型をベッドにセットし、上述の第1の押し型と異なる第2の押し型をスライドにセットする。
【0090】
第2の押し型は、その下面の外周部に環状に溝が形成された状態で、かつ、溝の断面が逆U字状に形成されている。この溝は、曲げられた容器の開口側端部の形状、すなわち、概略四角枠状で、かつ、角部が所定の曲率半径の円弧とされた形状と同様の形状とされている。そして、スライダを下降させると、上記溝内に上述のように変形させられた容器2の開口側端部5が挿入され、開口側端部5は、その先端(上端)が概略水平な状態から下側に曲げられ、第2の押し型の溝の断面形状に沿って逆U字状に折り返されてカールした状態に変形させられる。この際に、容器2の開口側端部5の先端は、上述の蓋4の外周縁部4aの環状の溝4cに挿入された状態のシール材4dの上面に当接するとともに、さらにシール材4dを弾性変形させて、シール材4dの上面にくい込んだ状態となる。
これにより、容器2に蓋4が固定された状態となるとともに、容器2が密閉された状態となる。
【0091】
以上のような、加工装置および容器への蓋の取り付け方法によれば、プレス加工により、容器2を変形させて蓋4を容器2に密閉状態で固定することができる。
そして、容器2の開口側端部をプレス加工により、例えば逆U字状に折り返した状態にカールさせて曲げる際に、一度、容器2の開口側端部を先端が内側に向いた状態に加工し、次いで、先端が下を向くように加工する。
【0092】
そして、最初に容器2の開口側端部5を開口部3の内側を向くように加工する際に、容器2の開口側端部5の押し型本体34の内周面に接触した部分より下側の部分で変形が発生するのを確実に防止し、かつ、容器2の開口側端部5が変形により内径が縮径しても、単にスライダを上昇させるだけで、容器2の開口部3から裏当て部材35を取り出すことができる。
【0093】
なお、最終的に蓋を固定する際には、上述のように容器2の開口側端部5を内側に逆U字状に折り返し、その先端を蓋の周縁部に押しつけるものだけではなく、例えば、蓋の周縁部とともに容器の開口側端部を一重巻きや二重巻きで巻き締めする場合にも、容器の開口側端部を巻いた状態に変形させる前に、最初に容器の開口側端部の先端を内側に向けて曲げるのに本発明を適用してもよい。なお、容器の開口側端部と蓋の外周縁部を巻き締めする場合には、必ずしもシール材を用いる必要がない。
【0094】
また、上述のように容器の開口側端部を逆U字状に曲げた際や、巻き締めした後に、容器の開口側端部の厚み方向に内外から押しつけた状態となるようにプレス加工して、折り返して曲げた状態の部分を扁平化してもよい。すなわち、容器の開口側端部とその下側の部分との間が逆U字状に曲げた場合のように間隔をあけた状態ではなく、間隔がほぼ無くなった状態に扁平化してもよい。
【0095】
また、前述の実施の形態では、本発明の加工装置および容器への蓋部材の固定方法をELDCである蓄電装置の製造方法における外装缶の封止(封口)方法に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、金属製密封容器の製造方法における容器の封止(封口)方法に適用することができ、さらには密閉性を要求されない容器への蓋部材の固定方法にも適用することができる。
【0096】
ここで、第1の押し型により、拡縮する裏当て部材35を備える第1の押し型30を用いて容器2の開口側端部5を当該容器2の内側に曲げる先端曲げ(加工)工程の前に、前処理として行う工程を説明する。
この例では、アルミニウム(アルミニウム合金)製の前記容器2がインパクトプレスにより成形される。
そして、成形された容器2に対して、上述の先端曲げ工程の前に焼鈍しを施す。この際に、焼鈍しを部分的に施すものとする。すなわち、上述のように曲げ加工される容器2の開口側端部5にだけ焼鈍しを施し、容器2の開口側端部5を除く部分には焼鈍しを施さないものとする。
【0097】
焼鈍しとは、熱処理であり、例えば、上述のように成形された容器2のひずみとりや軟化のために容器2の開口側端部5を加熱する処理である。この例では、上述のように蓋4を容器2に固定するために容器2の開口側端部5を曲げ加工する際の加工を容易とし、かつ、確実かつ精度の高い曲げ加工を可能とするための処理である。
【0098】
そのため、この例では、高周波誘導加熱による焼鈍しを行う。すなわち、高周波誘導加熱用の加熱コイル51を、容器2の開口側端部5の外周の近傍にだけ配置した状態で、当該加熱コイル51に高周波電源からの高周波の交流電流を流すことで、容器1の開口側端部5だけを急激に高温となるように加熱することができる。
【0099】
図7は、先端曲げ加工前の容器2の開口側端部5の高周波誘導加熱による焼鈍しを行うための高周波加熱装置における加熱コイル51部分の容器2をセットするための高周波加熱装置の容器加熱装置を示すものである。
なお、高周波加熱装置は、一般的に、例えば、高周波の交流電流を出力する高周波電源(高周波発振器)と、被加熱物の周囲(近傍)で交流電流に基づく磁界を発生させて被加熱物に渦電流を発生させて誘導加熱する加熱コイルと、当該加熱コイルと高周波加熱装置との間に配置されて、高周波電源から加熱コイルへ最適な電圧と電流を伝える整合盤と、高周波加熱装置の各部位を冷却するための冷却水を供給する冷却水ユニットと、高周波加熱の操作を行うための操作盤とを備える。
【0100】
そして、この例で用いられる高周波加熱装置には、上述の容器2の開口側端部5を高周波誘導加熱するための加熱コイル51を備え、当該加熱コイル51により容器2を加熱するに際して容器2を固定して開口側端部5を主に加熱する前記容器加熱装置が設けられている。
【0101】
容器加熱装置は、上述のように高周波電源から整合盤を介して交流電流が入力される加熱コイル51と、加熱コイル51の近傍に配置(もしくは接した状態に配置)される支持プレート52と、当該支持プレート52の加熱コイル51の反対側となる面上に形成され、容器加熱装置にセットされる容器2の開口部内に挿入されることで、支持プレート52上の容器2の位置を決める位置決めガイド53と、断面が略四角形となる角型の容器2の一つの側面に平行に配置される支持板54と、当該支持板54の左右にそれぞれ設けられ容器2の前記支持板45と平行な側面を挟む位置に対向して配置される左右の側面に当接して位置決めする側面位置決め部材55と、支持板54の上端部に配置され、開口部に位置決めガイド53を挿入された状態の容器2の底部を押圧して容器2を固定する押え付け部材56とを有する。
【0102】
この例において、加熱コイル51は、支持プレート52で開口側端部5の先端面を位置決めされた容器2の開口側端部5を加熱するようになっている。
支持プレート52は、例えば、絶縁性で、かつ、加熱コイル51で発生する磁力を遮らない部材で、さらに、容器2の開口側端部5との接触が繰り返されても磨耗しずらい部材(例えば、フェノール樹脂等の合成樹脂板)で構成されている。
【0103】
ここで、容器2は、その開口側端部5の先端から2mm程度の部分だけを焼鈍することが好ましく、それより後側が軟化しないことが好ましい。そこで、上述のように容器2の焼鈍される開口側の先端面を位置決めする支持プレート52の容器の反対側に加熱コイルを配置している。なお、加熱コイルも支持プレート52の容器の反対側に当接して支持プレート52で位置決めされていることが好ましい。また、加熱コイルは四角枠状のケース内に配置されており、ケース内には、上述の冷却ユニットから供給される冷却水を通すことが可能となっている。
【0104】
以上のように、この例にいては、容器2の開口側端部だけを加熱したいので、加熱コイル51は、容器2に対して支持プレート52の反対側に配置され、加熱コイル51の内側に容器2が挿入された状態とはならないようになっている。
前記位置決めガイド53は、当該位置決めガイド53に容器2の開口側を向けて当該位置決めガイド53に容器2を被せることで、加熱コイル51に対する容器2の開口側端部5の左右前後の位置を決めるものである。
【0105】
位置決めガイド53は、角型の容器2の開口に対応した四角形上を有し、容器2の開口より僅かに小さな形状とされ、かつ、支持プレートから離れるほど径(四辺)がそれぞれ狭くなるように、前後左右の面が台形状に形成されている。
したがって、位置決めガイド53に対して容器2を容易に被せて当該容器2の開口内に位置決めガイド53を挿入した状態とすることができるとともに、熱処理が終了した後に容器に位置決めガイド53から容器2を外すことができる。
【0106】
そして、位置決めガイド53の支持プレート52に接合される底部の周囲の四つの辺から加熱コイルまでの距離は、それぞれ等しくなっている。
なお、加熱コイル51は、角型の容器2に対応する四角枠状に形成されており、四角枠状の加熱コイル51の各辺が、四角錐台状の位置決めガイド53の底部の各辺とそれぞれ平行となるように配置されている。
【0107】
支持板54は、前記支持プレート52の一側縁に、当該支持プレート52に対して直角となるように固定された板状の部材である。そして、支持板54は、位置決めガイド53に位置決めされた状態の容器2の一側面と平行となる位置に配置されている。また、支持プレート52は、前記加熱コイル51の外周より広い範囲に延在するように形成されており、支持板54は、加熱コイル51の外側となる位置に配置されている。
【0108】
そして、支持板54の左右側部からはそれぞれ側面位置決め部材55が当該支持板54から直角に延出した状態となっている。これら側面位置決め部材55は、位置決めガイド53に位置決めされた容器2の前記支持板54に対向する側面を挟む位置に配置されて、互いに対向する側面のそれぞれに当接するようになっている。
そして、側面位置決め部材55は、容器2の左右の側面の位置を決めるようになっている。これにより、位置決めガイド53に容器2をセットした際に、容器2が斜めになるのを防止することができる。
【0109】
押え付け部材56は、板状の部材で支持板54の上端部で支持板54と平行となるように支持板54の上端部から立ち上がった位置と、当該位置から基端部を中心として倒れるように回転移動して支持板54に対して直角となる位置を越えて回転移動可能とされるとともに、トグルバネ等の付勢手段により、立ち上がった位置から直角となる位置側に付勢されている。
そして、押え付け部材56の位置決めガイド53に位置決めされた容器2側の面に押え付け駒57が取り付けられている。押え付け駒57は例えば弾性を有するゴム状の部材から構成されている。
【0110】
また、押え付け部材56の回転中心となる基端部側に対して先端部側となる側縁部には、コ字状の取っ手部58が設けられている。
押え付け部材56は、容器2を位置決めガイド53にセットする際に、取っ手部58を持って支持板54と略平行となるように立ち上げた状態として、当該押え付け部材56が容器2のセットの邪魔にならないようにし、容器2を位置決めガイド53にセットした後に、取っ手部58を支持板54に対してほぼ直角とした状態で取っ手部58から手を離した状態する。
【0111】
この際に、上述の付勢手段により、押え付け部材56が位置決めガイド53にセットされた容器2の底部に押え付け駒57を介して接触するとともに、容器2を支持プレート52側に押圧する。
これにより、容器2が支持プレート52と押え付け部材56とに挟まれた状態に固定される。また、押え付け部材56により容器2が支持プレート52側に押圧されることで、容器2の開口側端部5が確実に支持プレート52に当接した状態に保持される。
したがって、磁界と電流とにより、容器2に力が作用した際に容器2が移動してしまうのを阻止することができる。
【0112】
また、位置決めガイド52には、誘導電流に対応するセンサ、例えば、温度センサ、磁気センサ等のセンサ59が設けられており、誘導加熱時の容器2の開口側端部5の温度の表示や、稼動時の稼動ランプの点灯や、稼動回数のカウント表示等に用いられる。
以上のような容器加熱装置を備える高周波加熱装置を用いて、容器2の開口側端部5を焼鈍しすることになる。
上述のように押え付け部材56を操作して、位置決めガイド52に容器2を嵌めて、押え付け部材56と支持プレート52とに挟まれた状態に容器2を容器加熱装置にセットする。
【0113】
そして、高周波加熱装置の操作盤を操作して容器2の開口側端部を加熱する。この際に開口側端部5の加熱温度を400から500度(℃)に設定しておく。なお、400℃から500℃の間で、例えば、容器2の肉厚やアルミニウム合金の種類等に基づき、実験の結果等を考慮して設定温度を決定する。そして、室温から設定温度までの昇温時間を4秒程度とする。
すなわち、容器2の開口側端部5は、約4秒で室温から400〜500℃程度の範囲内の設定温度まで昇温させられる。そして、設定温度に達した段階で加熱コイル51への交流電流の出力を停止し、自然冷却する。
【0114】
これにより、インパクトプレスで成形された容器2の開口側端部5が熱処理されて焼鈍しされた状態となる。
次に、上述の先曲げ工程を行う前に、図8に示すように、型81,82を用いてプレス加工により、容器2の開口側端部5において、内径を僅かに広げるように成形するとともに、容器2の開口側端部5の外周側角部を面取りした形状に圧縮して、当該角部を斜めの面状に潰した状態とする。
【0115】
すなわち、容器32の開口側端部5の先端の外周側角部にプレス加工により斜めの面60を形成する。
なお、型81,82により、斜めの面60の形成と、容器2の開口の拡径が行われるが、型81,82は、容器2の外周側と内周側とに分割可能となっており、外周側の型81により面60が形成され、内周側の型82により開口の拡径が行われる。なお、型はプレス時に一体の状態で使用され、プレス終了後に分割して内周側の型82を上昇させて容器2から外した後に外周側の型81が上昇して容器2から外すようになっている。
焼鈍し工程と先曲げ工程との間に上述のように容器2の開口側端部5の内径の拡径と面潰しとからなる拡径面潰し工程を行う。
【0116】
上述の工程により、容器32の開口側端部5における開口の内径の容器32毎のばらつきが解消され、容器2の開口を第1の押し型30に対応する規定サイズの許容値の範囲内とすることができる。
なお、インパクトプレスで成形された容器2は、容器2の底部から開口端までの距離(高さ)や開口の内径や、開口側の側縁の形状などの開口側の形状にばらつきが生じる。そこで、インパクトプレス後にチリキリとして、容器2の開口側の先端部を切断して、容器2の高さを設定された規格高さに合わせるとともに開口側の側縁を直線状に修正している。
このチリキリにおいては、角型の容器2の四角の開口側先端の各辺に当たる部分をそれぞれ外周側から内周側に向かって切断するが、この際に容器2の開口側端部5の先端の内周側角部にバリが生じる。このバリも上述の拡径の際に除去される。
【0117】
また、前記容器2の開口側端部5の先端の外周側に形成された斜めの面60は、第1の押し型30の押し型本体34に形成された雌型部34aの湾曲面に、開口側端部5の先端が当接した場合に、図9(a)に示すように容器2の開口側端部5の先端の外周の斜めの面60とされた部分が接触し、容器2の開口側端部5を内側に曲げるように案内した状態となる。
【0118】
これにより、先曲げ工程において、より確実に開口側端部5を内側に曲げることができる。
そして、図9(a)に示す先曲げ工程で開口側端部5を内側に曲げた後に、図9(b)〜図9(d)に示すように、第2の押し型70により、容器2の開口側端部5が逆U字状にカール曲げ加工(固定工程)されることで、図10に示すように、蓋4が容器2の開口部に固定されるとともに容器2が蓋4により密閉した状態となる。
【0119】
すなわち、蓋4は、その外周の下部に形成されるとともに上部より径が狭くされた小径部4fとその上部との段差部分が線状変形部6の突出部分に支持された状態で、容器2の上部(開口側部分)に挿入された状態となっている。
そして、蓋4の外周縁部4aに設けられた環状のシール材4dに上述のようにU字状に曲げられた容器2の開口側端部5の先端が食い込んだ状態となっている。
【0120】
以上のように、先端曲げ加工の前に、焼鈍しを行うことで、先端曲げ工程において容器2の開口側端部3の先端だけを確実に曲げることができ、その下側が変形するのを防止できるので歩留まりの向上を図ることができる。
さらに、焼鈍しの後に、前記拡径面潰し工程で、容器2の開口側端部5の内径を広げて設定した形状とするとともに開口側端部5の先端の外周側角部を面取りした形状とすることにより、第1の押し型30により開口側端部5を内側に曲げる際(先端曲げ加工の際)に、より円滑に曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態に係る容器への蓋の固定方法を示す図であって、加工される容器および蓋を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加工装置の上型となる第1の押し型と、下型とを示す斜視図である。
【図3】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図4】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図5】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図6】前記加工装置の第1の押し型の分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の容器への蓋の固定方法において、容器の開口側端部に焼鈍しを施す際に用いられる容器加熱装置を示す斜視図である。
【図8】前記容器への蓋の固定方法において、容器の開口部端部の角部を斜めの面とする方法を説明するための図である。
【図9】前記容器への蓋の固定方法で、先端曲げ工程と固定工程を説明するための図である。
【図10】前記容器への蓋の固定方法で、容器に固定された蓋を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0122】
2 容器
4 蓋
4a 外周縁部(蓋周縁部)
5 開口側端部
11 下型(固定手段)
30 第1の押し型
33 支持部材
34 押し型本体
34a 雌型部
35 裏当て部材
36 拡径手段(拡縮手段)
36a 位置決めピン(位置決め手段)
36b 拡径部材
36c 拡径支持部材(係合部材)
37 縮径付勢手段(拡縮手段)
40 分割駒
70 第2の押し型
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の容器の開口部に蓋を固定するための加工装置、当該加工装置を用いた容器への蓋の固定方法、当該固定方法を用いて製造された金属製密閉容器および密閉型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池など密閉型電池は、有底筒状の金属製外装缶(たとえば、アルミ外装缶)に、電極、セパレータ、電解液などからなる電極体を収納し、外装缶の開口部を電極端子等の組み込まれた蓋(アルミもしくは樹脂の成形品)で封口して製造される。蓋の外周部と外装缶の開口側端部との接合には、レーザー溶接などの方法が用いられることもあるが、製造が容易であるという面から外装缶の開口側端部をかしめて蓋を固定する方法が多く用いられている。
たとえば、アルミ外装缶と電極端子等の組み込まれた蓋部品の密閉は、一般的には、ロール加工での曲げか、ロールでの巻き込みによるかしめで行われる場合が多い
この場合には、ロールで僅かずつ形状を変えるため作業時間が長く、かつ、加工バリの発生するなどの弊害がある。
【0003】
また、外装缶とその内部に挿入された状態の内管とを備え、内缶の上端の開口側端部が内側に曲げられて水平とされた上辺部が形成され、蓋をこの内缶の上辺部と外装缶の開口側端部のかしめられて内側に水平に曲げられたかしめ部との間で挟み込んだ状態で密閉性を確保しているものある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、電池のような蓄電装置としては、化学反応により電力を生じる電池以外に例えば、一般のアルミ電解などのコンデンサを用いたものが知られているが、近年、電解液と電極との界面に極めて短い距離を隔てて電荷が配向する現象である電気二重層を利用し、物理的に電荷を蓄える電気二重層キャパシタ(EDLC)の利用も行われている。
【0005】
このEDLCは、一般的な二次電池と比較して大電流の充放電が可能で、充放電サイクル寿命に優れており、エンジンとモータとを備えたハイブリット車や、燃料電池を搭載した電気自動車等でのエネルギーの有効利用を目的として、自動車への搭載が検討されている。すなわち、減速時においてブレーキパッドの摩擦熱等として捨てられるはずのエネルギーでモータによる発電を行い蓄電装置を充電し、発車時や加速時のように大きなエネルギーが必要なときに放電してモータのエネルギーとすることで、エネルギーの有効利用を図る際に、EDLCは、大電流での充放電が可能で、充放電サイクル寿命が長いことが二次電池よりも有利となる。
【0006】
このようなEDLCでも、電極の接続端子を外部に露出した状態で電解液が漏れないように密閉する必要があることから電池と同様の密閉構造となり、このようなEDLCにおいても、上述のような容器と蓋とからなるハウジングを用いることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−257382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に示される方法も含めて従来缶が円や楕円状の場合には比較的容易に加工が可能だが、缶が角型、例えば、直方体のような場合に加工装置の機械的構造から制約され加工が困難である。
また、外装缶の厚みが厚く、かつ、この厚みに対して曲げ代が短いとより加工が困難となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、容器の開口部に蓋を固定するために容器の開口側端部を完全に曲げる前に、当該容器の開口側端部を開口部の内側に向けて曲げる際に、容器が円や楕円だけでなく、角型でも対応でき、かつ、容器の厚みが曲げ代に対して比較的厚くとも対応できる加工装置、当該加工装置を用いた容器への蓋の固定方法、当該容器への蓋の固定方法を用いた金属製密閉容器および密閉型蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の加工装置は、金属製の容器の開口部に、蓋を配置した状態で、少なくとも前記容器の開口側端部をプレス加工で曲げることにより前記蓋を前記容器に固定する際に、前記容器の開口側端部を完全に曲げる前の行程として前記容器の開口側端部の先端を前記開口部の内側に向けて曲げるための加工装置であって、
前記容器を固定する固定手段と、当該固定手段に固定された前記容器の開口側端部に押し付けられて前記開口側端部を前記開口部の内側に向けて曲げる押し型とを備え、
前記押し型は、
前記容器の開口側端部の外周面に当接する内周面を有する雌型部を有し、前記雌型部の内周面が奥側に向かうにつれて径が湾曲した状態で細くなる形状とされ、前記雌型部の内周面を前記容器の開口側端部の外周面に押し付けることで、当該開口側端部を内側に湾曲した状態に折り曲げる押し型本体と、
当該押し型本体の前記雌型部の内周面の内側で、かつ、前記容器の開口側端部の内側に配置され、前記容器の前記押し型本体により内側に向けて曲げられる部分より押圧方向の先側となる当該容器の開口側端部の内周面に当接して、前記第1の押し型により曲げられる前記容器の開口側端部の内周面側を支持する拡径状態と、前記容器の内側に曲げられた開口側端部の内径より径が小さくなる縮径状態との間で拡縮自在な裏当て部材と、
前記裏当て部材を前記第1の押し型の押圧方向への移動に伴って拡径させ、当該第1の押し型の押圧方向と逆の戻り方向の移動に伴なって縮径させる拡縮手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明においては、例えば、外装缶となる有底筒状の金属製容器の開口部に蓋を挿入した状態に配置する。なお、この際に、蓋は、容器の開口側端部の上端より下側に配置されるとともに、位置が動かないように支持されている必要があり、例えば、容器の内周面に突出部を備え、当該突出部上に蓋の周縁部が載った状態に配置されていてもよいし、容器の内周面に蓋の周縁部が嵌合する構造があってもよい。
【0012】
そして、容器の開口側端部を曲げることで、蓋を固定するとともに、容器内を密閉した状態とする。なお、本発明では、開口側端部を例えば蓋の外周縁部とともに外側に広がるようにロール状に曲げるものは含まず、容器の開口側端部を内側に曲げることにより蓋を固定するものである。
例えば、本願発明は、容器の開口側端部を内側に逆U字状に折り返したり(折り返された部分と、それより下側の部分との間に間隔がある状態)、内側に折り返した部分をそれより下側の部分にほぼ接触するように折り返したり、これらのように折り返された部分をさらに折り返すことによりロール状(渦巻き状)に巻いたりすることで、容器の開口側端部で蓋を固定する場合に適用することができる。また、容器の開口側端部だけではなく、蓋の外周縁部を一体に折り返したり、巻いたりする場合も適用可能である。
【0013】
そして、上述のように容器の開口側端部を折り返した状態に曲げるような場合に、一回のプレス加工で行うことが困難であり、特に、曲げる部分の長さに対して容器を構成する部材の厚みがかなり厚い場合や容器が角型の場合に、曲げ加工が困難となる。
そこで、容器の開口側端部を折り返す前に、容器の開口側端部の先端が内側に向くように曲げ、その後に容器の開口側端部を折り返すように曲げることで、容器の開口側端部を折り返すように曲げることが容易となる。なお、さらに、容器の開口側端部を折り返したり、折り返し部分をその下側に密着させたりする加工を行う場合もある。
【0014】
また、上述のように、まず、容器の開口側端部の先端を開口部の内側に向けて曲げる際も、単純にプレス加工で行うと、きれいに開口側端部の先端が内側を向くように曲げることができない。
【0015】
そこで、本発明では、容器の開口側端部の曲げる部分の押圧方向の先側に裏当て部材を当てることで、きれに開口側端部の先端が内側を向いた状態に曲げられ、それ以後の曲げ加工が容易となる。
これにより、例えば、容器の肉厚が厚い場合にも加工が可能となり、かつ、たとえば、丸や楕円でない角型の容器でも、容器の開口側端部の曲げ加工で容器への蓋の固定が可能となる。なお、角型の容器の場合に、少なくとも容器の開口の周囲の4つの角部が全て所定以上の曲率半径で概略円弧状にRが付けられた状態となっていることが好ましい。
【0016】
そして、容器の開口側端部を内側に曲げると、容器の開口が縮径した状態となり、例えば、裏当て部材の容器の内周面に当接している部分の外径より容器の開口の内径が小さくなってしまい、裏当て部材の容器からの取外しが困難になってしまう。
それに対して、本発明では、裏当て部材を拡縮自在とし、第1の押し型を押圧方向に移動して容器を変形させる際には、裏当て部材を拡径して容器の開口側端部の内周面に当接するようにし、加工が終了した後に第1の押し型を戻す際には裏当て部材を縮径して容器の開口部から取り出せるようにしている。
【0017】
このような構造とすることで、比較的簡単なプレス加工により、蓋を容器に密閉状態に取り付けることが可能となり、例えば、蓄電装置としての電池や、キャパシタ(コンデンサ)の密閉容器の蓋の固定のための加工装置として、本発明を有効に用いることができる。
【0018】
請求項2に記載の加工装置は、請求項1に記載の発明において、
前記裏当て部材は、互いの間隔を大きくすることで拡径され、互いの間隔を狭くすることで縮径されるとともに、拡径された状態で前記容器の開口側端部の内周面に当接するように複数に放射状に分割された分割駒を備え、
前記拡縮手段は、
当該分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、
前記分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明においては、裏当て部材を複数の放射状に分割された分割駒からなるものとすることで、分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段とを用いて容易に裏当て部材を拡縮可能な構成とすることができる。
【0020】
請求項3に記載の加工装置は、請求項2に記載の加工装置において、 前記押し型本体および裏当て部材を一体に上下動させるとともに、前記押し型本体を前記固定手段に固定された前記容器の開口側端部に向かって下方に押圧する上下動手段を備え、
前記拡径手段は、前記裏当て部材の複数の前記分割駒の内側に配置される拡径部材と、前記上下動手段に係合する係合部材と、所定の高さ位置で前記固定手段に当接可能な位置決め手段とを一体に移動可能に備え、
前記上下動手段は、前記押し型本体および裏当て部材を上下動自在に支持する支持部材を備え、
前記係合部材は、前記上下動手段の支持部材に離間可能に載った状態に係合し、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置が固定され、
前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径することを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明においては、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記拡径手段が、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置を固定された状態となる。また、前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径する。
【0022】
したがって、第1の押し型を下降させて容器を変形する際には、裏当て部材が拡径して容器の裏側を押さえ、第1の押し型を上昇させて容器から取り外す際には、裏当て部材が縮径して開口が狭まるように変形した容器から取り出し可能となる。すなわち、機械的な構成で、必要に応じて裏当て部材を拡径もしくは縮径できるので、裏当て部材の拡径および縮径のために、制御を行なう必要がなく、設備コストの低減、作業の簡略化を図ることができる。
【0023】
請求項4に記載の容器への蓋の固定方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工装置を用いた容器への蓋の固定方法であって、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる先端曲げ工程と、先端曲げ工程で曲げられた前記開口側端部をさらに曲げることにより容器に蓋を固定する固定工程とを備え、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる際に、当該容器の開口側端部の内周面の曲げられる部分の直ぐ下側に拡径した前記裏当て部材を当接させ、
前記容器の開口側端部を内側に折り曲げた後に縮径する裏当て部材とともに押し型本体を容器から取り外すことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。なお、固定工程も基本的にはプレスによる加工となるが、固定工程が一回のプレス加工であってもよいし、複数回のプレス加工からなっていてもよい。
【0025】
請求項5に記載の容器への蓋の固定方法は、請求項4に記載の発明において、前記先曲げ工程の前に容器状に加工された前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の発明においては、先曲げ固定の前に曲げるべき前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことにより、容器の開口側端部が他の部分より焼鈍しにより曲げやすい状態となり、先曲げ工程および固定固定において、前記容器の他の部分、すなわち、容器の曲げるべき開口側端部より下側の部分の変形を防止しつつ、容器の開口側端部を円滑に曲げることができる。
【0027】
請求項5に記載の金属製密閉容器は、請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明においては、請求項4または請求項5に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
請求項6に記載の金属製蓄電装置は、請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0030】
請求項6に記載の発明においては、請求項4または請求項5に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、金属製容器の開口側端部をプレスにより曲げ加工して、当該容器の開口部に蓋を固定する際の前工程として、容器の開口側端部の先端が開口部を内側を向くように曲げ加工する際に、裏当て部材を用いて不必要な変形が生じるの防止できるとともに、曲げ加工により狭くなった開口部から裏当て部材を容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6は本発明の実施の形態における蓄電装置としてのEDLCの有底筒状の容器の開口部に蓋を密閉状態に固定する際に用いられる加工装置および蓋の固定方法を示す図であって、図1は蓄電装置と当該蓄電装置の外装缶となる容器に蓋を固定する際の工程の概略を示す斜視図である。図2は第1の押し型(先端折り曲げ型)により容器の開口側端部を内側に向けて曲げる際に用いられる第1の押し型(上型)と容器を固定する下型とを備えた加工装置の概略を示す斜視図である。図3、図4、図5は第1の押し型を用いた容器の開口側端部の折り曲げを説明するための断面図である。図6は第1の押し型の要部分解斜視図である。
【0033】
図1に示すように、この例のEDLC等のキャパシタもしくは電池としての金属製蓄電装置1は、角型の金属製密閉容器を備えるもので、例えば、直方体状をしており、断面概略正方形(長方形でもよい)となっている。その直方体状の角型の蓄電装置1の外装を構成する金属製の容器2は、概略直方体状で、その上端に概略正方形状の開口部3を有し、この開口部3に蓋4が固定されて容器2内が密閉された状態となる。
【0034】
そして、蓄電装置1の製造においては、まず、容器2が例えばアルミニウム合金等から成形される。この際に容器2は、上述のように概略直方体状で、一方の端部が開放された状態、すなわち有底筒状に形成される。また、容器2の四隅(蓋および底の四隅に対応する四隅)、すなわち、角部2aが設定された曲率半径で湾曲した状態に形成されている。すなわち、角部2aにR(丸み)が付けられた状態となっている。
【0035】
また、図1(a)に示すように、容器2の開口側端部5(上辺)においては、上記角部2aの高さが、当該角部2aどうしの間の平面部より低くなっている、すなわち、容器2の開口部3側の上辺が、角部2aで弧状に下側に凹んだ状態となっている。容器2の角部2aにおいて上辺を凹んだ状態に低くしたのは、容器2の開口側端部5を絞り込むように内側に曲げた際に角部2aの左右から角部2aに向かって開口側端部5が集まるように曲げられることで、曲げるのが困難になるのを防止するために、この部分を予め短くしたものである。
【0036】
また、容器2の上部には、内部に挿入された状態に配置される蓋4の周縁部の下側を支持して蓋4を支えるように、外面側が凹で、内面側が凸とされた線状変形部6がそれぞれ形成されている。線状変形部6は、容器2の4つの角部の間の4つの辺となる各平面部に、容器2を底部を下にして立てた状態で水平となるように形成されている。また、線状変形部6は、上述のように外面側が凹んだ状態で、内面側に突出した状態となっている。これにより、線状変形部6の部分では、容器2の内径が狭くなった状態となる。
【0037】
そして、対向する各平面部間の距離(内径)は、蓋4の各辺の幅(外径)より僅かに広くなっている。そして、上述の線状変形部6の各平面部間の間隔は、蓋4の幅より短くなっており、蓋4を容器2の上端開口から挿入して、当該の蓋4の周縁部を線状変形部6に載せた状態とすることが可能となっている。
すなわち、蓋4の周縁部の各辺となる部分が線状変形部6上に載った状態で、蓋4は容器2内に落下しない状態となる。
【0038】
蓋4は、例えばモールド成型された合成樹脂製で、その上面側において、外周縁部4aとその内側との間に段差があり、外周縁部4aに対してその内側が上方に突出した突出領域4bとされ、この突出領域4bと外周縁部4aとの境が段差となっている。また、突出領域4bは、その上面が概略四角状の平面とされ、当該上面に一つの対角線上で左右に並んだ状態に円柱状の電極端子7、7が設けられている。
また、図3に示すように、蓋4の外周縁部4aには、蓋4の外周に沿って環状に溝4cが形成され、当該溝4cに環状(四角枠状)のシール材4dが挿入され、溝4cがシール材4dにより埋められた状態となっている。
【0039】
そして、この例の蓋4の固定方法においては、上述のように容器2に線状変形部6を形成した後に、容器2内に蓄電装置1を構成する部材を収納する。ここでは、容器2内にEDLCを構成するためのものとして、アルミ箔上に活性炭電極を貼り付けたシート状電極を間にセパレータを挟んで積層したものを収納するとともに電解液を充填する。なお、円形や楕円形では、例えば、上述のシート状電極を複数積層するのではなく、例えば、一枚もしくは複数枚のシート状電極を巻き込むことで重ねており、構造が異なることから特性が異なるものとなっており、角型EDLCを円型EDLCでのそのまま代用することができるとは限らない。
【0040】
そして、次に、蓋4を容器2内に挿入して、上述のように線状変形部6上に載せることで、容器2内の上端部に保持させるようにする。
そして、この状態で、加工装置(プレス加工装置)のベッド上の下型(固定手段)11に容器2を固定する。そして、第1の押し型30で容器2の開口側端部5を内側に向けて絞り込むように曲げる先端折り曲げ加工を行なう(先端曲げ加工工程)。この状態では、容器2の開口側端部5が垂直に上方を向いた状態から内側に向けて所定の曲率半径で横を向いた状態に湾曲した状態となる。この状態では、曲げられた容器2の開口側端部5の先端と、蓋4とは離間した状態で、また、蓋4を固定した状態とはなっていない。
【0041】
次いで、第2の押し型(図示略)で、容器2の開口側端部5をさらに半円状にカールした状態に曲げるカール曲げ加工を行なう(固定工程)。このカール曲げ加工により、容器2の開口側端部5は、半円状に折り返した状態に湾曲し、先端が蓋4の外周縁部4aのシール材4dに押し付けられた状態となる。
【0042】
そして、弾性材であるシール材4dに、上述のように折り返した状態にカール加工された容器2の開口側端部5の先端が食い込み、シール材4dが弾性変形した状態となるこで、蓋4と容器2の開口側端部5との間の密閉性が確保される。
【0043】
これにより、容器2を蓋4により密閉された状態とすることができる。
なお、一つの押し型で半円状にカールさせる加工を行なうことは困難であり、上述のように、容器2の開口側端部5を湾曲した状態で内側に曲げる先端折り曲げ加工と、内側に湾曲した状態の容器2の開口側端部5をさらに曲げて半円状(逆U字状)で折り返した状態とさせるカール曲げ加工との2段階で行なわれる。
【0044】
そして、本発明は、先端折り曲げ加工における第1の押し型30の構造と、第1の押し型30を用いた容器2への蓋4の固定方法における容器2の開口側端部5の曲げ方に特徴を有する。
まず、加工装置(プレス加工装置)は、周知のベッド(図示略)とベッドに取り付けられる固定手段としての下型11と、ベッド上で上下動するスライド(図示略:上下動手段)と、スライドに取り付けられる上型としての第1の押し型(押し型)30とを備える。
【0045】
下型11は、互いに対向するとともに当接した状態に配置可能な固定部12と可動部13と後述のダイホルダ14とを備え、可動部13は、当該固定部12に開閉自在に取り付けられている。また、固定部12はダイホルダ14を介してプレス加工装置のベッドに固定される。固定部12の可動部13と当接する面には、容器2を対角線上で縦に切断した形状に対応する凹部12aが設けられている。この凹部12aは、断面が概略三角形状で、上述の可動部13と当接する側面側が開放されているとともに、上面側が開放されている。
また、固定部12はダイホルダ14を介してベッドに位置決め固定された状態となっている。
【0046】
可動部13は、固定部12に対向する側面を固定部12の前記凹部12aが形成された側面に当接した状態と離間した状態とに回転移動可能となっている。すなわち、可動部13は、固定部12の下部に対してその左右端部のうちの一方の端部が鉛直方向に沿ったピンにより回転自在にピン接合されている。
【0047】
また、可動部13の固定部12に当接する側面には、容器2を対角線上で縦に切断した形状に対応する凹部13aが設けられている。この凹部13aは、上述の凹部12aと同様に断面が概略三角形状で、固定部12と当接する側面側が開放されているとともに、上面側およぼ下面側が開放されている。
そして、固定部12に可動部13を当接させた状態で、それぞれの凹部12a,13aが合わさるようになっており、これら凹部12a,13aが合わされて容器2の上端部より下側が挿入される保持穴部15が形成されるようになっている。この保持穴部15は、基本的に容器2の上端部より下側とほぼ同様の形状となっている。なお、固定部12の上下長さに対して可動部13の上下長さがおよそ半分程度とされ、固定部12の凹部12aの上部は、可動部13の凹部13aと重なるが、固定部12の凹部12aの下部は、可動部13を閉めた状態としても開放された状態となっている。
【0048】
また、固定部12の凹部12aの内側面は、一つの入隅の角部の左右に平面部を有する構造となっており、角部に容器2の角部2aが当接され、平面部に容器2の平面部が当接するようになっている。
また、この凹部12a内の平面部となる内面には、図3に示すように、容器2の溝状に凹んだ状態の線状変形部6に挿入される突条16が形成されている。
また、可動部13の凹部13aの内側面も一つの入隅の角部の左右に平面部を有する構造となっており、凹部13aの角部に容器2の角部2aが当接され、平面部に容器2の平面部が当接するようになっている。また、可動部13の凹部13aの内側面にも、容器2の線状変形部6に挿入される突条16が形成されている。
【0049】
この線状変形部6に挿入される突条16によって、容器2の線状変形部6より上の開口側端部5(上端部)にかかる下方向の力を受けるようになっており、プレス(押し型による下方への押圧)により開放側端部5を変形する際に、線状変形部6より下側が変形してしまうのを防止している。
また、上述のように容器2の線状変形部6に挿入される突条16により、プレスに際して容器2の突条16より上の部分から容器2の突条16より下の部分に力が伝達されるのを阻止しているので、固定部12の凹部12aの内側面および可動部13の凹部13aの内側面において、突条16より下の部分では、容器2の形状を維持するために、これら内側面と容器2の外周面とが接している必要がなく、この例では、凹部12a、13aの内側面と、容器2の外周面との間に間隔(クリアランス)があいている。すなわち、凹部12a、13aからなる保持穴部15においては、前記突条16の上より下の方が内径が大きくなった状態となっており、保持穴部15に容器2をセットした際に、容器2の線状変形部6より上では、保持穴部15の内周面と容器2の外周面が当接した状態で、容器2の線状変形部6より下では、保持穴部15の内周面と容器2の外周面が離間した状態となっている。
なお、図3,4,5においては、僅かなクリアランスを無視して図示している。
【0050】
可動部13は、固定部12の側面に当該可動部13の側面を突き合わせた状態では、上述のように凹部12a,13aどうしが合わさって外装缶としての容器2を保持する保持穴部15が形成され、可動部13を固定部12から離すように開放すると、固定部12および可動部13の凹部12a,13aがそれぞれ固定部12の側面および可動部13の側面において開放され、固定部12の側面の凹部12aに横方向から容器2をセット可能となる。この状態で可動部13を閉めることで、容器2が保持穴部15に保持された状態となる。
【0051】
また、固定部12には、左右合わせて2本のガイド孔17,17が設けられている。ガイド孔17,17は、鉛直方向に長い円柱状の孔で固定部12の上面に開口しており、後述の第1の押し型30のガイドピン31,31が挿入され、第1の押し型30が位置ずれするのを防止するようになっている。
また、可動部13には、可動部13を固定部12に閉めた状態にロックするためのロックレバー18が設けられており、このロックレバー18により、可動部13が開かないようにロックしている。
【0052】
第1の押し型30は、スライダに取り付けられるパンチホルダ32と、前記ガイド孔17,17に挿入されるガイドピン31,31と当該パンチホルダ32の下面に固定的に取り付けられる支持板(支持部材)33と、当該支持板33に固定される概略四角筒状の押し型本体34と、押し型本体34に支持されるとともに拡縮自在な裏当て部材35と、当該裏当て部材35を拡径させる拡径手段36と、前記押し型本体34に設けられ、前記裏当て部材35を縮径させる縮径付勢手段37とを備える。なお、拡径手段36と、縮径付勢手段37とにより拡縮手段が構成される。
【0053】
前記パンチホルダ32は、矩形の板体で、その上面側にスライドに固定される固定ピン32aを備え、スライドに位置決め固定されるようになっている。
前記ガイドピン31は、パンチホルダ32の下面の左右端部から鉛直方向に延出した状態となっており、パンチホルダ32に一体に接合された状態となっている。
【0054】
また、支持板33は、矩形板状の板体で、パンチホルダ32より面積が小さく、パンチホルダ32の左右のガイドピン31,31の内側に配置されている。そして、支持板33には、その左右の側面部から上に向けて立設された接続板部33aが設けられ、パンチホルダ32の下面との間に左右接続板部33aを介して支持板33が固定されている。すなわち、接続板部33aは、支持板33の左右側縁部において、上端がパンチホルダ32に接続され、下端が支持板33に接続され、パンチホルダ32下面と支持板33上面との間に間隔をあけている。
【0055】
そして、支持板33には、前記拡径手段36が取り付けられるようになっており、拡径手段36の後述の左右の位置決めピン(位置決め部材)36a、36aと、左右の位置決めピン36a、36aの間に配置される拡径部材36bとを挿通させる三つの挿通孔が左右に並んで形成されている。
【0056】
押し型本体34は、概略四角筒状で中央が四角状の型穴となっており、型穴の内周面の下端部である雌型部34aとなる部分は、上述の容器2の外周面に対応したものとなっている。但し、雌型部34aを有する型穴の四つの角部は、容器2の角部2aに対応して、所定の曲率半径で円弧状に湾曲した曲面とされている。すなわち、押し型本体34の雌型部34aは、容器2の角部2aと同様にRが付けられており、容器2の上端部を型穴の雌型部34aに挿入可能となっている。しかし、押し型本体34内部の容器2の開口側端部5を塑性変形させて所定形状とさせる雌型部34aとなる内周面の下部は、上に行くほど縮径された状態となっており、容器2の断面積より所定の曲率半径に沿って窄まるように絞り込まれた形状となっている。
【0057】
これにより、下型11に保持されて固定された状態の容器2の開口側端部(上端部)5を押し型本体34の雌型部34a内に挿入することで、押し型本体34の雌型部34aの内周面に沿って所定の曲率半径で曲げた状態とすることができる。
しかし、容器2の曲げられる板状部分の厚みに対して曲げ代が十分でないと、すなわち、厚みに対して曲率半径が余り長くないような場合に、必ずしも綺麗に円弧状に曲げることが困難であり、この例では、後述のように裏当て部材35で裏当てをして、曲げられる部分の基端側が内側に入り込んだ状態に歪んでしまうのを防止するようになっている。また、加工される側が四角形状の場合に、角部2aが比較的大きな曲率半径の円弧状に形成されていても、綺麗に曲げられないという問題があり、特に角部2aにおいて、角部2aの円弧状の曲面に対応した曲面を有する裏当て部材35を当てることで、角部2aも押し型本体34の雌型部34aの内周面に沿ってきれいに湾曲するようにしている。
【0058】
また、加工される部分が枠状で、内側に絞り込むように変形させることから、枠状の裏当て部材35で裏当てを行なった場合に、容器2の開口側端部5は、加工前は裏当て部材35の外径とぼぼ同等の内径だったものが、加工後は裏当て部材35の外径より狭い内径となってしまい、裏当て部材35を取外せない状態となる。そこで、この例では、裏当て部材35を拡径および縮径が可能な拡縮自在な構成とすることで、加工後に容易に容器2の開口部3内から取り外せるとともに、加工時に確実に容器の開口側端部5の加工される部分の直ぐ下側を裏から強固に支持できるようにしている。
【0059】
そして、押し型本体34における容器2の開口側端部5を変形させる雌型部34aとして機能する部分より上側も連続する型穴となっている。
また、押し型本体34の雌型部34aは、上述のように上に行くほど所定の曲率で絞り込まれた形状、すなわち、雌型部34aとなる部分の下端より上端の方が径が小さくなっている。なお、押し型本体34の雌型部34aの下端部は、内周面が垂直なっており、この垂直な内周面の上側が上述のように上下方向に所定の曲率半径で絞り込まれる湾曲面となっている。そして、押し型本体34の内周面の最下端部となる鉛直となった面の高さ位置で、裏当て部材35が容器2の開口側端部5の内周面に当接するようになっている。したがって、容器2の型穴の内周面に裏当て部材35が当接した場合に、容器2の裏当て部材35が当接された部分は、押し型本体34と裏当て部材35とにより表裏(内外)から挟まれた状態となる。
【0060】
そして、押し型本体34の型穴の雌型部34aより上は、上述の裏当て部材35が収納される空間となる。
また、押し型本体34には、後述のように裏当て部材35を縮径するための縮径付勢手段37としての構造が設けられている。すなわち、四角筒状の押し型本体34の各角部は、それぞれ面取りされた形状となっており、当該各角部の面取り部分のそれぞれの上部に内側の型穴の角部と連通するように貫通孔37aが形成されている。なお、貫通孔37aの押し型本体34の型穴側に開口する部分を内側端部とし、貫通孔37aの押し型本体34の外周面側に開口する端部を外側端部とし、四角筒状の押し型本体34の対角線に沿って形成されている。
【0061】
そして、貫通孔37aは、基本的に円柱状で、全体的に同じ内径となっているが、内側端部の開口部分だけ、そのほかの部分に対して僅かに内径が小さくなっている。また、貫通孔37aの外側端部は、雌ねじとなっている。そして、貫通孔37a内には、内側から球37bと付勢手段としての圧縮コイルバネ37cとが挿入された状態で、外側端部の開口部にイモねじからなる栓37dが挿入されて雌ねじに螺合し、貫通孔37aの外側端部が閉じられた状態となっている。
球37bは、その径が、貫通孔37aの内側端部の開口部の小さくされた内径より大きく、内側の開口部を除く貫通孔37aの内径より小さくされている。
【0062】
また、圧縮コイルバネ37cは、球37bより外側に配置され、球37bを貫通孔37aの内側端部の開口に向けて付勢するが、前記開口の内径は、球37bの外径より小さいので、球37bは貫通孔の内側端部の開口から落下することなく、その半分より僅かに小さい部分が貫通孔の内側端部の開口から突出した状態で掛止された状態となる。
【0063】
また、上記栓37dは、圧縮コイルバネ37cの外側端部に接触し、圧縮コイルバネ37cの外側端部側の位置を固定している。また、球37bが貫通孔37aの内側端部にある状態で、球37bと栓37dとの間の間隔は、無圧縮状態の圧縮コイルバネ37cの長さよりも短いものとなっている。これにより、圧縮コイルバネ37cは、基本的に常時球37bを内側に付勢した状態となっている。そして、この球37bと栓37dと圧縮コイルバネ37cとが、裏当て部材35を縮径方向に付勢する縮径付勢手段37を構成している。
【0064】
そして、上述の構成により、圧縮コイルバネ37cに付勢された球37bは、押し型本体34の内側に向かって突出した状態となっている。この状態で、押し型本体34の裏当て部材35の後述の各分割駒40を縮径側に押し型本体34の対角線に沿って付勢するようになっている。
なお、裏当て部材35は、上述の雌型部34aとなる押し型本体34の内周面の下部まで配置されるので、基本的に押し型本体34の型穴の中に当該押し型本体34の上端から下端まで配置される。また、裏当て部材35は、拡縮自在であるが、最も縮径した状態で、押し型本体34の型穴の雌型部34aの上端より上の空間の内に収まる断面積となっていれば、上述のように加工される容器2の開口側端部5を挿通可能な状態となる。
【0065】
また、押し型本体34の型穴の雌型部34aより上側の裏当て部材35を収納する部分においては、上側と下側とで内径が異なるものとなっており、上側の方が下側より内径が大きくなっている。そして、この内径の異なる上側と下側との間に上側を向く段差面39が形成されている。
この段差面39は、裏当て部材35の後述の各分割駒40を支持するもので、各分割駒40は、押し型本体34の型穴の内周面に形成された上を向く段差面39に載った状態で移動可能に支持されている。
【0066】
このような裏当て部材35は、拡縮自在となるように前記支持板33の下面に取り付けられた4つの分割駒40からなっている。
各分割駒40は、その表側がそれぞれ容器2に四つある角部2aと該角部2aを挟む2つの平面部に対応した形状となっている。すなわち、裏当て部材35は、各分割駒40を合わせた状態で、外周側が四角柱状となっており、この四角柱状の裏当て部材35の各分割駒40は、上述の概略四角柱の各平面部をその左右の中央で垂直に切り離した状態、すなわち、四角柱を各角部毎に十字に切り離した状態の形状(すなわち、放射状に切り離した形状)となっている。但し、各分割駒40同士が対向した状態となる各分割駒40の裏側には、各分割駒40を一体に合わせた状態で、下部が円錐台状で上部が円柱状の空間があくようになっている。
【0067】
そして、各分割駒40は、他の分割駒40と対向しない外側を向いた角部と、その角部を挟む2つの平面部の下端部が外方に突出した状態となっている。したがって、複数の分割駒を組み合わせて概略柱状とした場合に、下端部が拡径された状態となっている。そして、この各分割駒40の外側に突出した下端部の外周面が、容器2の開口側端部5を変形させる際に、容器2の開口部3の内周側、すなわち、裏側に当接する部分である。
【0068】
また、各分割駒40は、それぞれ、離間可能な状態となっており、各分割駒40を上述の概略四角柱状から互いに離間した状態となるように配置した場合に、平面視して十字状の隙間が形成された状態となり、十字の隙間の交差の中心部分に上述の下部が円錐台状で上部が円筒状の空間が形成される。
【0069】
また、各分割駒40毎に見ると表側(裏当て部材35の外側となる)に角部と、当該角部を挟む平面部とを有する形状となっており、裏側(他の分割駒と対向する裏当て部材の内側となる)も基本的には角部と当該角部を挟む平面部とを有する形状で概略四角柱状となるが、裏側は、その角部が円弧状に凹むように削られた形状となっている。なお、円弧状の凹みの曲率半径は、下部を除く部分で同じとなっているが、下部においては、下に向かうにつれて、円弧状の凹み部分の曲率半径が大きくなる形状とされている。したがって、この分割駒40の裏側の角部の下端部側の凹みは、下に向かうにつれて外側に向かう湾曲した斜面となっている。
【0070】
また、各分割駒40は、上述の概略四角柱状となった状態で、分割駒40に含まれる角部を通る四角柱の対角線に沿って移動可能に押し型本体34に支持されている。
押し型本体34の内周面の上述の下端部より上の部分においては、上述のように段差面39が形成されている。
それに対して、各分割駒40の表の上部には、下を向く段差面41が形成され、押し型本体34の内周面の上を向く段差面39上に、各分割駒40の段差面41が載った状態となる。なお、各分割駒40においては、段差面41の上側の側面が、下側の側面より外側に突出した状態となっている。
また、各分割駒40を互いに接触した状態とすることにより、裏当て部材35を縮径状態とした場合に、押し型本体34の型穴の段差面39より下側の内径(段差面39の上側の内径より小さい)は、縮径状態の裏当て部材35の外径より小さくなっており、裏当て部材35の各分割駒40が押し型本体34の型穴から脱落しないようになっている。
また、各分割駒40の上面は、水平な平面となっており、支持板33の下面にほぼ当接した状態となっており、各分割駒40が傾くの防止している。言い換えると、分割駒40の段差面41より上の側部が、押し型本体34の型穴の段差面39と支持板33の下面との間の挟まれた状態で保持されることで、分割駒40が水平方向に移動可能に押し型本体34と支持板33とに支持されている。
【0071】
この状態で、各分割駒40が互いに間隔を拡げて離れることで裏当て部材35が拡径し、各分割駒40の間隔を狭めることで裏当て部材35が縮径することになる。
そして、各分割駒40の上部は、その表側角部が、上述の縮径付勢手段37の球37bに常時接触した状態となっており、前記球37bにより縮径側に付勢され、後述のように、拡径手段36により拡径方向に動かされない限り、裏当て部材35は、縮径状態となっている。これにより、裏当て部材35の下端部においても、その径が、容器2の変形された開口側端部5の内径より小さくされ、裏当て部材35の下端部が容器2の変形された開口側端部5の当該開口を挿通可能な状態となる。
また、各分割駒40の下面には、蓋4の外周縁部4aと突出領域4bとの段差に対応して、段差が形成されており、分割駒40の表側の外周部が、突出領域4bより低い外周縁部4aまで下降可能となっている。
【0072】
そして、このような裏当て部材35の各分割駒40の中央には、円柱状の拡径手段36の拡径部材36bが配置されている。拡径部材36bは、上述の各分割駒40を組み合わせた状態の裏当て部材35の中央部に形成される円錐台と円柱とを組み合わせた形状の空間に対応する形状となっており、下端部に円錐台部36dを有し、円錐台部36dより上が円柱状の支持棒36eとなっている。そして、拡径部材36bは、後述のように裏当て部材35に対して上下動するようになっているが、裏当て部材35に対して拡径部材36bが最も下に配置された状態で、拡径部材36bの円錐台部36dは、その外側に配置される裏当て部材35の上述の円錐台状の空間内に収容された状態となっている。この状態では、裏当て部材35の各分割駒40の裏面と、拡径部材36bの外周面が接触していてもよいし、僅かに離間していてもよい。また、この状態では、裏当て部材35は、上述の縮径付勢手段37により、容器2の変形した際の開口側端部5の内径より小さく縮径した状態が維持される。
【0073】
また、前記拡径部材36bを裏当て部材35に対して、相対的に上昇させると、裏当て部材35の中央部の下側の上述の円錐台状の空間を構成する内周面(湾曲する斜面)、すなわち、各分割駒40の円弧状に凹む裏面の下部と、拡径部材36bの円錐台部36dの外周面(湾曲する斜面)とが接触した状態で、分割駒40の裏面の内周面に対して円錐台部36dの外周面が上昇する。この際に、裏当て部材35(各分割駒40)の内周面と拡径部材36b(円錐台部36d)の外周面との接触部位における裏当て部材35の内周面の内径に対して、拡径部材36bの外周面の外径が徐々に大きくなる状態となり、拡径部材36bが周囲の四つの分割駒40を外に押し出すことになる。
【0074】
そして、そのまま、拡径部材36bを上昇させ続けると、裏当て部材35が拡径した状態となり、容器2をセットしていない状態では、押し型本体34の内周面の下端部に裏当て部材35の下端部の外周面が接触もしくは近接する状態となる。容器2をセットした状態では、容器2の開口側端部5の曲げ加工される部分の下側の内周面に裏当て部材35の下端部の外周面が接触し、押し型本体34の下端部と、裏当て部材35の下端部との間に、容器2の開口側端部5の曲げ加工される部分の直下をほぼ挟んだ状態に保持することになる。
【0075】
そして、このような拡径部材36bを有する拡径手段36は、上記拡径部材36bと、上記拡径部材36bを前記パンチホルダ32および支持板33に連動して上下動させる拡径支持部材(係合部材)36cと、拡径支持部材36cに接続され、拡径支持部材36cがパンチホルダ32および支持板33に連動して下方に移動した場合に、下型11上面に当接して、拡径支持部材36cおよび拡径部材36bの上記パンチホルダ32および支持板33に連動した移動を阻止し、前記拡径部材36bおよび拡径支持部材36cを下型に保持された容器2に対して所定高さ位置(所定距離)に保持する位置決めピン(位置決め手段)36a,36aとを備える。
【0076】
上記拡径部材36bは、上述の支持棒36eの上端部が、支持板33に形成された挿通孔を貫通して、拡径支持部材36cに固定されている。
拡径支持部材36cは、矩形板状で、前記支持板33とパンチホルダ32との間に配置されており、パンチホルダ32が前記スライダの上下動の範囲に対応する移動範囲の上側に位置する際に、支持板33上に載置された状態となっている。この状態では、拡径支持部材36cに連結された拡径部材36bの円錐台部36dは、上述の押し型本体34内に配置された裏当て部材35の下部の円錐状の空間内に収納された状態で、裏当て部材35を拡径していない状態となっている。
【0077】
さらに、拡径支持部材36cは、その上面にゴム、ゴム状の樹脂、バネ等からなる弾性部材36fが接合され、当該弾性部材36fの上端は、パンチホルダ32の下面に連結されている。この弾性部材36fは、後述のように支持板33に対して拡径支持部材36cが上昇し、それに伴って拡径部材36bが各分割駒40を最大限に拡径した状態に押した際に、押し型本体34と拡径部材36bとの間に各分割駒40が挟み込まれた状態となり、これらが互いに噛み合って嵌合した状態となり、後述のようにスライダを上昇させることにより、拡径部材36bが支持板33に対して下降させる必要がある場合に、下降できない状態となることがないように、パンチホルダ32および支持板33に対して拡径支持部材36cが上昇した場合に、前記弾性部材36fが拡径支持部材36cを下に付勢することにより、上述の嵌合を解除し、拡径部材36bが支持板33に対してスムーズに上下動するようにするものである。
【0078】
また、スライドの下降に対応してパンチホルダ32および支持板33が下降した際に、拡径支持部材36cは、最初、支持板33に連動して下降するが、上述の位置決めピン36a,36aにより、下型11からの高さが決められたところ(位置決めピン3の下端が下型11の上面に当接した際)で、下降を停止する。そして、パンチホルダ32および支持板33がさらに下降するのに対して、拡径支持部材36cは、下降を停止した状態となり、支持板33に載置された状態から、支持板33に対して相対的に上方に移動して、支持板33から離れる状態となる。
【0079】
この際に、拡径部材36bも拡径支持部材36cとともに、相対的に支持板33に対して上方に移動した状態になるのに対して、押し型本体34および裏当て部材35は、支持板33と一体に下降する。これにより、裏当て部材35に対して、拡径部材36bが相対的に上方に移動した状態となり、上述のように上昇する拡径部材36bによって、裏当て部材35が拡径することになる。
【0080】
そして、裏当て部材35および押し型本体34の下端の高さ位置が、下型11に保持された容器2の開口側端部5の位置に達すると、裏当て部材35が拡径することにより、裏当て部材35の外周の下端部の突出部が容器2の開口側端部5の内周面側に極めて近接した状態となる。
同時に押し型本体34の内周面の下端が容器2の開口側端部5の外周面の高さ位置に達し、押し型本体34の内周面の最下端部と、容器2の開口側端部5の外周面の最上端部とが当接もしくは近接した状態となる。さらに、パンチホルダ32および支持板33が下降すると、裏当て部材35の最下端部が容器2の開口側端部5の内周面にほぼ当接した状態となり、押し型本体34の雌型部34aの内周面の上下に湾曲した部分に容器2の開口側端部5が達し、容器2の開口側端部5が内側に湾曲するように変形し始める。
【0081】
この際に、開口側端部5の内周面における裏当て部材35の当接位置は、押し型本体34による容器2の開口側端部5の曲げ変形が行われている位置より僅かに下となる(押圧方向の先側の近傍となる)。
そして、この状態で、容器2の開口側端部5が完全に変形させられるまで、押し型本体34の下端部の内周面が、容器2の開口側端部5に対して上から下に向かって移動するとともに、移動に伴なって開口側端部5が湾曲した状態に変形していき、裏当て部材35の下端部の外周面は、押し型本体34による容器2の開口側端部5の変形位置より僅かに下側の内周面に当接して、容器2の変形位置以外での変形を防止する。また、裏当て部材35は、下降するほど拡径するので、下降するほど、容器2の開口側端部5の内周面を強く押した状態となる。
【0082】
このように押し型本体34の下降に合わせて、裏当て部材35が被加工部材である容器2の開口側端部5の曲げられる部分より僅かに下側に当接した状態を維持するとともに、容器2の裏当て部材35が当接している部分は、裏当て部材35と押し型本体34との下降に対応して、下降していく。
また、加工後にスライダを上昇させると、支持板33の位置が拡径支持部材36cの位置まで上昇し、支持板33に拡径支持部材36cが載った状態となる。この状態でさらにスライダが上昇すると、支持板33が拡径支持部材36cを載せた状態で上昇し、拡径支持部材36cとそれに一体に接合された位置決めピン36aおよび拡径部材36bが上昇することになる。
【0083】
ここで、その前の段階では、拡径支持部材36cは、位置決めピン36a,36aが下型11の上面に載った状態で、スライダが上昇しても上昇することなく、拡径部材36bも拡径支持部材36cと同様に止まった状態となっている。それに対して、押し型本体34および裏当て部材35が上昇する。この際に、上述のように裏当て部材35の中央の空間の斜面となった内周面と、拡径部材36bの円錐台部36dの斜面となった外周面が当接しており、裏当て部材35の内周面が拡径部材36bの外周面に対して上昇する。この際に拡径部材36bの外周面の裏当て部材35の内周面が接触する部分の径が小さくなっていく。
【0084】
そして、裏当て部材35の各分割駒40は、縮径付勢手段37により常時縮径方向に押圧されているので、拡径部材36bの外周面の裏当て部材35の内周面に接触する部分の径が小さくなることで、裏当て部材35を内側から押える力がなくなり、裏当て部材35の各分割部材40は、縮径方向に移動する。これにより、裏当て部材35が縮径し、上述のように内側に向けて曲げられることにより内径が狭くなった容器2の開口側端部5を抜けられる状態となる。そして、スライダが最も上に移動した際に、第1の押し型30は、容器2から上方に離れた状態となる。
【0085】
上述の裏当て部材35の拡径するタイミングは、位置決めピン36aの長さで決めるようになっている。すなわち、位置決めピン36aの長さを短くすると、第1の押し型30の下降開始から位置決めピン36aの下端が下型11に上面に当接するまでの時間が長くなり、裏当て部材35が拡径するタイミングが遅くなる。
また、位置決めピン36aを長くすると、裏当て第1の押し型30の下降開始から位置決めピン36aの下端が下型11に上面に当接するまでの時間が短くなり、裏当て部材35が拡径するタイミングが早くなる。したがって、位置決めピン36の長さを調整することで、裏当て部材35の拡径のタイミングを変更することが可能であり、例えば、容器2の加工に際し、裏当て部材35が拡径する最良のタイミングを実験的に求めることにより、位置決めピン36aの長さを決めることができる。
【0086】
以上のような、構造の加工装置による上述のEDLCの外装缶としての容器2の加工は、外装缶となる容器2の開口部3から蓋4を開口内に挿入し、上部の線状変形部6上に蓋4を載せた状態とする。次いで、容器2を下型11にセットする。この際には、下型11の可動部13をロックレバー18を操作して開放した状態とし、固定部12の開口された凹部13aに容器2を挿入する。次いで、開放した状態の可動部を閉じた状態としてロックする。これにより、容器2がその開口側端部5を露出された状態で下型11に保持された状態となる。この際に容器2の下型11より上に出た上端部を除く部分の外周面が、固定部12の凹部12aと可動部の凹部13aとを合わせてできた保持穴部15の内周面に当接し、容器2が保持された状態となるとともに、容器2の露出部分より下側において、容器2の外方向への変形を防止するようになっている。
【0087】
また、容器2の線状変形部6部分に、下型11の保持穴部15の内周面の突条16が入り込んだ状態となっており、これによっても容器2の変形を防止している。また、第2の押し型30を使用して、容器2の開口側端部の先端を蓋の外周縁部のシール材に押し付ける際に、線状変形部6の変形を抑止するとともに、蓋4の下方への移動を防止する。
【0088】
次に、加工装置のスライダを下降させることにより、上述の第1の押し型30を下降させ、容器2の開口側端部5を上述のように、上端が開口部の内側に向かうように加工する。この際には、上述のように、裏当て部材35が拡径して、容器2の開口側端部5の内側に曲げられる部分の直ぐ下側を裏から押えるとともに、押し型本体34の湾曲した部分の直ぐ下の鉛直面となった部分のとの間に容器2の曲げられる部分の直ぐ下側を挟み込んで、曲げられる部分の下側の変形を防止しながら、容器2の開口側端部5を曲げることにより、綺麗に押し型本体34の雌型部34aとほぼ同様の形状に湾曲した状態に容器2の開口側端部5を曲げることができる。
【0089】
そして、次に、スライダの第1の押し型30を第2の押し型に変更するか、別の加工装置に移す。なお、別の加工装置に移す場合には、別の加工装置にも上述の下型と同様の下型をベッドにセットし、上述の第1の押し型と異なる第2の押し型をスライドにセットする。
【0090】
第2の押し型は、その下面の外周部に環状に溝が形成された状態で、かつ、溝の断面が逆U字状に形成されている。この溝は、曲げられた容器の開口側端部の形状、すなわち、概略四角枠状で、かつ、角部が所定の曲率半径の円弧とされた形状と同様の形状とされている。そして、スライダを下降させると、上記溝内に上述のように変形させられた容器2の開口側端部5が挿入され、開口側端部5は、その先端(上端)が概略水平な状態から下側に曲げられ、第2の押し型の溝の断面形状に沿って逆U字状に折り返されてカールした状態に変形させられる。この際に、容器2の開口側端部5の先端は、上述の蓋4の外周縁部4aの環状の溝4cに挿入された状態のシール材4dの上面に当接するとともに、さらにシール材4dを弾性変形させて、シール材4dの上面にくい込んだ状態となる。
これにより、容器2に蓋4が固定された状態となるとともに、容器2が密閉された状態となる。
【0091】
以上のような、加工装置および容器への蓋の取り付け方法によれば、プレス加工により、容器2を変形させて蓋4を容器2に密閉状態で固定することができる。
そして、容器2の開口側端部をプレス加工により、例えば逆U字状に折り返した状態にカールさせて曲げる際に、一度、容器2の開口側端部を先端が内側に向いた状態に加工し、次いで、先端が下を向くように加工する。
【0092】
そして、最初に容器2の開口側端部5を開口部3の内側を向くように加工する際に、容器2の開口側端部5の押し型本体34の内周面に接触した部分より下側の部分で変形が発生するのを確実に防止し、かつ、容器2の開口側端部5が変形により内径が縮径しても、単にスライダを上昇させるだけで、容器2の開口部3から裏当て部材35を取り出すことができる。
【0093】
なお、最終的に蓋を固定する際には、上述のように容器2の開口側端部5を内側に逆U字状に折り返し、その先端を蓋の周縁部に押しつけるものだけではなく、例えば、蓋の周縁部とともに容器の開口側端部を一重巻きや二重巻きで巻き締めする場合にも、容器の開口側端部を巻いた状態に変形させる前に、最初に容器の開口側端部の先端を内側に向けて曲げるのに本発明を適用してもよい。なお、容器の開口側端部と蓋の外周縁部を巻き締めする場合には、必ずしもシール材を用いる必要がない。
【0094】
また、上述のように容器の開口側端部を逆U字状に曲げた際や、巻き締めした後に、容器の開口側端部の厚み方向に内外から押しつけた状態となるようにプレス加工して、折り返して曲げた状態の部分を扁平化してもよい。すなわち、容器の開口側端部とその下側の部分との間が逆U字状に曲げた場合のように間隔をあけた状態ではなく、間隔がほぼ無くなった状態に扁平化してもよい。
【0095】
また、前述の実施の形態では、本発明の加工装置および容器への蓋部材の固定方法をELDCである蓄電装置の製造方法における外装缶の封止(封口)方法に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、金属製密封容器の製造方法における容器の封止(封口)方法に適用することができ、さらには密閉性を要求されない容器への蓋部材の固定方法にも適用することができる。
【0096】
ここで、第1の押し型により、拡縮する裏当て部材35を備える第1の押し型30を用いて容器2の開口側端部5を当該容器2の内側に曲げる先端曲げ(加工)工程の前に、前処理として行う工程を説明する。
この例では、アルミニウム(アルミニウム合金)製の前記容器2がインパクトプレスにより成形される。
そして、成形された容器2に対して、上述の先端曲げ工程の前に焼鈍しを施す。この際に、焼鈍しを部分的に施すものとする。すなわち、上述のように曲げ加工される容器2の開口側端部5にだけ焼鈍しを施し、容器2の開口側端部5を除く部分には焼鈍しを施さないものとする。
【0097】
焼鈍しとは、熱処理であり、例えば、上述のように成形された容器2のひずみとりや軟化のために容器2の開口側端部5を加熱する処理である。この例では、上述のように蓋4を容器2に固定するために容器2の開口側端部5を曲げ加工する際の加工を容易とし、かつ、確実かつ精度の高い曲げ加工を可能とするための処理である。
【0098】
そのため、この例では、高周波誘導加熱による焼鈍しを行う。すなわち、高周波誘導加熱用の加熱コイル51を、容器2の開口側端部5の外周の近傍にだけ配置した状態で、当該加熱コイル51に高周波電源からの高周波の交流電流を流すことで、容器1の開口側端部5だけを急激に高温となるように加熱することができる。
【0099】
図7は、先端曲げ加工前の容器2の開口側端部5の高周波誘導加熱による焼鈍しを行うための高周波加熱装置における加熱コイル51部分の容器2をセットするための高周波加熱装置の容器加熱装置を示すものである。
なお、高周波加熱装置は、一般的に、例えば、高周波の交流電流を出力する高周波電源(高周波発振器)と、被加熱物の周囲(近傍)で交流電流に基づく磁界を発生させて被加熱物に渦電流を発生させて誘導加熱する加熱コイルと、当該加熱コイルと高周波加熱装置との間に配置されて、高周波電源から加熱コイルへ最適な電圧と電流を伝える整合盤と、高周波加熱装置の各部位を冷却するための冷却水を供給する冷却水ユニットと、高周波加熱の操作を行うための操作盤とを備える。
【0100】
そして、この例で用いられる高周波加熱装置には、上述の容器2の開口側端部5を高周波誘導加熱するための加熱コイル51を備え、当該加熱コイル51により容器2を加熱するに際して容器2を固定して開口側端部5を主に加熱する前記容器加熱装置が設けられている。
【0101】
容器加熱装置は、上述のように高周波電源から整合盤を介して交流電流が入力される加熱コイル51と、加熱コイル51の近傍に配置(もしくは接した状態に配置)される支持プレート52と、当該支持プレート52の加熱コイル51の反対側となる面上に形成され、容器加熱装置にセットされる容器2の開口部内に挿入されることで、支持プレート52上の容器2の位置を決める位置決めガイド53と、断面が略四角形となる角型の容器2の一つの側面に平行に配置される支持板54と、当該支持板54の左右にそれぞれ設けられ容器2の前記支持板45と平行な側面を挟む位置に対向して配置される左右の側面に当接して位置決めする側面位置決め部材55と、支持板54の上端部に配置され、開口部に位置決めガイド53を挿入された状態の容器2の底部を押圧して容器2を固定する押え付け部材56とを有する。
【0102】
この例において、加熱コイル51は、支持プレート52で開口側端部5の先端面を位置決めされた容器2の開口側端部5を加熱するようになっている。
支持プレート52は、例えば、絶縁性で、かつ、加熱コイル51で発生する磁力を遮らない部材で、さらに、容器2の開口側端部5との接触が繰り返されても磨耗しずらい部材(例えば、フェノール樹脂等の合成樹脂板)で構成されている。
【0103】
ここで、容器2は、その開口側端部5の先端から2mm程度の部分だけを焼鈍することが好ましく、それより後側が軟化しないことが好ましい。そこで、上述のように容器2の焼鈍される開口側の先端面を位置決めする支持プレート52の容器の反対側に加熱コイルを配置している。なお、加熱コイルも支持プレート52の容器の反対側に当接して支持プレート52で位置決めされていることが好ましい。また、加熱コイルは四角枠状のケース内に配置されており、ケース内には、上述の冷却ユニットから供給される冷却水を通すことが可能となっている。
【0104】
以上のように、この例にいては、容器2の開口側端部だけを加熱したいので、加熱コイル51は、容器2に対して支持プレート52の反対側に配置され、加熱コイル51の内側に容器2が挿入された状態とはならないようになっている。
前記位置決めガイド53は、当該位置決めガイド53に容器2の開口側を向けて当該位置決めガイド53に容器2を被せることで、加熱コイル51に対する容器2の開口側端部5の左右前後の位置を決めるものである。
【0105】
位置決めガイド53は、角型の容器2の開口に対応した四角形上を有し、容器2の開口より僅かに小さな形状とされ、かつ、支持プレートから離れるほど径(四辺)がそれぞれ狭くなるように、前後左右の面が台形状に形成されている。
したがって、位置決めガイド53に対して容器2を容易に被せて当該容器2の開口内に位置決めガイド53を挿入した状態とすることができるとともに、熱処理が終了した後に容器に位置決めガイド53から容器2を外すことができる。
【0106】
そして、位置決めガイド53の支持プレート52に接合される底部の周囲の四つの辺から加熱コイルまでの距離は、それぞれ等しくなっている。
なお、加熱コイル51は、角型の容器2に対応する四角枠状に形成されており、四角枠状の加熱コイル51の各辺が、四角錐台状の位置決めガイド53の底部の各辺とそれぞれ平行となるように配置されている。
【0107】
支持板54は、前記支持プレート52の一側縁に、当該支持プレート52に対して直角となるように固定された板状の部材である。そして、支持板54は、位置決めガイド53に位置決めされた状態の容器2の一側面と平行となる位置に配置されている。また、支持プレート52は、前記加熱コイル51の外周より広い範囲に延在するように形成されており、支持板54は、加熱コイル51の外側となる位置に配置されている。
【0108】
そして、支持板54の左右側部からはそれぞれ側面位置決め部材55が当該支持板54から直角に延出した状態となっている。これら側面位置決め部材55は、位置決めガイド53に位置決めされた容器2の前記支持板54に対向する側面を挟む位置に配置されて、互いに対向する側面のそれぞれに当接するようになっている。
そして、側面位置決め部材55は、容器2の左右の側面の位置を決めるようになっている。これにより、位置決めガイド53に容器2をセットした際に、容器2が斜めになるのを防止することができる。
【0109】
押え付け部材56は、板状の部材で支持板54の上端部で支持板54と平行となるように支持板54の上端部から立ち上がった位置と、当該位置から基端部を中心として倒れるように回転移動して支持板54に対して直角となる位置を越えて回転移動可能とされるとともに、トグルバネ等の付勢手段により、立ち上がった位置から直角となる位置側に付勢されている。
そして、押え付け部材56の位置決めガイド53に位置決めされた容器2側の面に押え付け駒57が取り付けられている。押え付け駒57は例えば弾性を有するゴム状の部材から構成されている。
【0110】
また、押え付け部材56の回転中心となる基端部側に対して先端部側となる側縁部には、コ字状の取っ手部58が設けられている。
押え付け部材56は、容器2を位置決めガイド53にセットする際に、取っ手部58を持って支持板54と略平行となるように立ち上げた状態として、当該押え付け部材56が容器2のセットの邪魔にならないようにし、容器2を位置決めガイド53にセットした後に、取っ手部58を支持板54に対してほぼ直角とした状態で取っ手部58から手を離した状態する。
【0111】
この際に、上述の付勢手段により、押え付け部材56が位置決めガイド53にセットされた容器2の底部に押え付け駒57を介して接触するとともに、容器2を支持プレート52側に押圧する。
これにより、容器2が支持プレート52と押え付け部材56とに挟まれた状態に固定される。また、押え付け部材56により容器2が支持プレート52側に押圧されることで、容器2の開口側端部5が確実に支持プレート52に当接した状態に保持される。
したがって、磁界と電流とにより、容器2に力が作用した際に容器2が移動してしまうのを阻止することができる。
【0112】
また、位置決めガイド52には、誘導電流に対応するセンサ、例えば、温度センサ、磁気センサ等のセンサ59が設けられており、誘導加熱時の容器2の開口側端部5の温度の表示や、稼動時の稼動ランプの点灯や、稼動回数のカウント表示等に用いられる。
以上のような容器加熱装置を備える高周波加熱装置を用いて、容器2の開口側端部5を焼鈍しすることになる。
上述のように押え付け部材56を操作して、位置決めガイド52に容器2を嵌めて、押え付け部材56と支持プレート52とに挟まれた状態に容器2を容器加熱装置にセットする。
【0113】
そして、高周波加熱装置の操作盤を操作して容器2の開口側端部を加熱する。この際に開口側端部5の加熱温度を400から500度(℃)に設定しておく。なお、400℃から500℃の間で、例えば、容器2の肉厚やアルミニウム合金の種類等に基づき、実験の結果等を考慮して設定温度を決定する。そして、室温から設定温度までの昇温時間を4秒程度とする。
すなわち、容器2の開口側端部5は、約4秒で室温から400〜500℃程度の範囲内の設定温度まで昇温させられる。そして、設定温度に達した段階で加熱コイル51への交流電流の出力を停止し、自然冷却する。
【0114】
これにより、インパクトプレスで成形された容器2の開口側端部5が熱処理されて焼鈍しされた状態となる。
次に、上述の先曲げ工程を行う前に、図8に示すように、型81,82を用いてプレス加工により、容器2の開口側端部5において、内径を僅かに広げるように成形するとともに、容器2の開口側端部5の外周側角部を面取りした形状に圧縮して、当該角部を斜めの面状に潰した状態とする。
【0115】
すなわち、容器32の開口側端部5の先端の外周側角部にプレス加工により斜めの面60を形成する。
なお、型81,82により、斜めの面60の形成と、容器2の開口の拡径が行われるが、型81,82は、容器2の外周側と内周側とに分割可能となっており、外周側の型81により面60が形成され、内周側の型82により開口の拡径が行われる。なお、型はプレス時に一体の状態で使用され、プレス終了後に分割して内周側の型82を上昇させて容器2から外した後に外周側の型81が上昇して容器2から外すようになっている。
焼鈍し工程と先曲げ工程との間に上述のように容器2の開口側端部5の内径の拡径と面潰しとからなる拡径面潰し工程を行う。
【0116】
上述の工程により、容器32の開口側端部5における開口の内径の容器32毎のばらつきが解消され、容器2の開口を第1の押し型30に対応する規定サイズの許容値の範囲内とすることができる。
なお、インパクトプレスで成形された容器2は、容器2の底部から開口端までの距離(高さ)や開口の内径や、開口側の側縁の形状などの開口側の形状にばらつきが生じる。そこで、インパクトプレス後にチリキリとして、容器2の開口側の先端部を切断して、容器2の高さを設定された規格高さに合わせるとともに開口側の側縁を直線状に修正している。
このチリキリにおいては、角型の容器2の四角の開口側先端の各辺に当たる部分をそれぞれ外周側から内周側に向かって切断するが、この際に容器2の開口側端部5の先端の内周側角部にバリが生じる。このバリも上述の拡径の際に除去される。
【0117】
また、前記容器2の開口側端部5の先端の外周側に形成された斜めの面60は、第1の押し型30の押し型本体34に形成された雌型部34aの湾曲面に、開口側端部5の先端が当接した場合に、図9(a)に示すように容器2の開口側端部5の先端の外周の斜めの面60とされた部分が接触し、容器2の開口側端部5を内側に曲げるように案内した状態となる。
【0118】
これにより、先曲げ工程において、より確実に開口側端部5を内側に曲げることができる。
そして、図9(a)に示す先曲げ工程で開口側端部5を内側に曲げた後に、図9(b)〜図9(d)に示すように、第2の押し型70により、容器2の開口側端部5が逆U字状にカール曲げ加工(固定工程)されることで、図10に示すように、蓋4が容器2の開口部に固定されるとともに容器2が蓋4により密閉した状態となる。
【0119】
すなわち、蓋4は、その外周の下部に形成されるとともに上部より径が狭くされた小径部4fとその上部との段差部分が線状変形部6の突出部分に支持された状態で、容器2の上部(開口側部分)に挿入された状態となっている。
そして、蓋4の外周縁部4aに設けられた環状のシール材4dに上述のようにU字状に曲げられた容器2の開口側端部5の先端が食い込んだ状態となっている。
【0120】
以上のように、先端曲げ加工の前に、焼鈍しを行うことで、先端曲げ工程において容器2の開口側端部3の先端だけを確実に曲げることができ、その下側が変形するのを防止できるので歩留まりの向上を図ることができる。
さらに、焼鈍しの後に、前記拡径面潰し工程で、容器2の開口側端部5の内径を広げて設定した形状とするとともに開口側端部5の先端の外周側角部を面取りした形状とすることにより、第1の押し型30により開口側端部5を内側に曲げる際(先端曲げ加工の際)に、より円滑に曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態に係る容器への蓋の固定方法を示す図であって、加工される容器および蓋を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加工装置の上型となる第1の押し型と、下型とを示す斜視図である。
【図3】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図4】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図5】前記加工装置を示す要部断面図である。
【図6】前記加工装置の第1の押し型の分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の容器への蓋の固定方法において、容器の開口側端部に焼鈍しを施す際に用いられる容器加熱装置を示す斜視図である。
【図8】前記容器への蓋の固定方法において、容器の開口部端部の角部を斜めの面とする方法を説明するための図である。
【図9】前記容器への蓋の固定方法で、先端曲げ工程と固定工程を説明するための図である。
【図10】前記容器への蓋の固定方法で、容器に固定された蓋を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0122】
2 容器
4 蓋
4a 外周縁部(蓋周縁部)
5 開口側端部
11 下型(固定手段)
30 第1の押し型
33 支持部材
34 押し型本体
34a 雌型部
35 裏当て部材
36 拡径手段(拡縮手段)
36a 位置決めピン(位置決め手段)
36b 拡径部材
36c 拡径支持部材(係合部材)
37 縮径付勢手段(拡縮手段)
40 分割駒
70 第2の押し型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の容器の開口部に、蓋を配置した状態で、少なくとも前記容器の開口側端部をプレス加工で曲げることにより前記蓋を前記容器に固定する際に、前記容器の開口側端部を完全に曲げる前の行程として前記容器の開口側端部の先端を前記開口部の内側に向けて曲げるための加工装置であって、
前記容器を固定する固定手段と、当該固定手段に固定された前記容器の開口側端部に押し付けられて前記開口側端部を前記開口部の内側に向けて曲げる押し型とを備え、
前記押し型は、
前記容器の開口側端部の外周面に当接する内周面を有する雌型部を有し、前記雌型部の内周面が奥側に向かうにつれて径が湾曲した状態で細くなる形状とされ、前記雌型部の内周面を前記容器の開口側端部の外周面に押し付けることで、当該開口側端部を内側に湾曲した状態に折り曲げる押し型本体と、
当該押し型本体の前記雌型部の内周面の内側で、かつ、前記容器の開口側端部の内側に配置され、前記容器の前記押し型本体により内側に向けて曲げられる部分より押圧方向の先側となる当該容器の開口側端部の内周面に当接して、前記第1の押し型により曲げられる前記容器の開口側端部の内周面側を支持する拡径状態と、前記容器の内側に曲げられた開口側端部の内径より径が小さくなる縮径状態との間で拡縮自在な裏当て部材と、
前記裏当て部材を前記第1の押し型の押圧方向への移動に伴って拡径させ、当該第1の押し型の押圧方向と逆の戻り方向の移動に伴なって縮径させる拡縮手段と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記裏当て部材は、互いの間隔を大きくすることで拡径され、互いの間隔を狭くすることで縮径されるとともに、拡径された状態で前記容器の開口側端部の内周面に当接するように複数に放射状に分割された分割駒を備え、
前記拡縮手段は、
当該分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、
前記分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記押し型本体および裏当て部材を一体に上下動させるとともに、前記押し型本体を前記固定手段に固定された前記容器の開口側端部に向かって下方に押圧する上下動手段を備え、
前記拡径手段は、前記裏当て部材の複数の前記分割駒の内側に配置される拡径部材と、前記上下動手段に係合する係合部材と、所定の高さ位置で前記固定手段に当接可能な位置決め手段とを一体に移動可能に備え、
前記上下動手段は、前記押し型本体および裏当て部材を上下動自在に支持する支持部材を備え、
前記係合部材は、前記上下動手段の支持部材に離間可能に載った状態に係合し、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置が固定され、
前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径することを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工装置を用いた容器への蓋の固定方法であって、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる先端曲げ工程と、先端曲げ工程で曲げられた前記開口側端部をさらに曲げることにより容器に蓋を固定する固定工程とを備え、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる際に、当該容器の開口側端部の内周面の曲げられる部分の直ぐ下側に拡径した前記裏当て部材を当接させ、
前記容器の開口側端部を内側に折り曲げた後に縮径する裏当て部材とともに押し型本体を容器から取り外すことを特徴とする容器への蓋の固定方法。
【請求項5】
前記先曲げ工程の前に容器状に加工された前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことを特徴とする請求項4に記載の容器への蓋の固定方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする金属製密閉容器。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする密閉型蓄電装置。
【請求項1】
金属製の容器の開口部に、蓋を配置した状態で、少なくとも前記容器の開口側端部をプレス加工で曲げることにより前記蓋を前記容器に固定する際に、前記容器の開口側端部を完全に曲げる前の行程として前記容器の開口側端部の先端を前記開口部の内側に向けて曲げるための加工装置であって、
前記容器を固定する固定手段と、当該固定手段に固定された前記容器の開口側端部に押し付けられて前記開口側端部を前記開口部の内側に向けて曲げる押し型とを備え、
前記押し型は、
前記容器の開口側端部の外周面に当接する内周面を有する雌型部を有し、前記雌型部の内周面が奥側に向かうにつれて径が湾曲した状態で細くなる形状とされ、前記雌型部の内周面を前記容器の開口側端部の外周面に押し付けることで、当該開口側端部を内側に湾曲した状態に折り曲げる押し型本体と、
当該押し型本体の前記雌型部の内周面の内側で、かつ、前記容器の開口側端部の内側に配置され、前記容器の前記押し型本体により内側に向けて曲げられる部分より押圧方向の先側となる当該容器の開口側端部の内周面に当接して、前記第1の押し型により曲げられる前記容器の開口側端部の内周面側を支持する拡径状態と、前記容器の内側に曲げられた開口側端部の内径より径が小さくなる縮径状態との間で拡縮自在な裏当て部材と、
前記裏当て部材を前記第1の押し型の押圧方向への移動に伴って拡径させ、当該第1の押し型の押圧方向と逆の戻り方向の移動に伴なって縮径させる拡縮手段と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記裏当て部材は、互いの間隔を大きくすることで拡径され、互いの間隔を狭くすることで縮径されるとともに、拡径された状態で前記容器の開口側端部の内周面に当接するように複数に放射状に分割された分割駒を備え、
前記拡縮手段は、
当該分割駒を縮径方向に付勢する縮径付勢手段と、
前記分割駒を前記縮径付勢手段の付勢力に抗して拡径方向に移動させる拡径手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記押し型本体および裏当て部材を一体に上下動させるとともに、前記押し型本体を前記固定手段に固定された前記容器の開口側端部に向かって下方に押圧する上下動手段を備え、
前記拡径手段は、前記裏当て部材の複数の前記分割駒の内側に配置される拡径部材と、前記上下動手段に係合する係合部材と、所定の高さ位置で前記固定手段に当接可能な位置決め手段とを一体に移動可能に備え、
前記上下動手段は、前記押し型本体および裏当て部材を上下動自在に支持する支持部材を備え、
前記係合部材は、前記上下動手段の支持部材に離間可能に載った状態に係合し、前記位置決め手段が前記固定手段に当接した際に、前記支持部材とともに下方に移動する前記押し型本体および前記裏当て部材に対して前記固定手段側に位置が固定され、
前記拡径部材および前記分割駒の互いに対向して接触する二つの面のうちの少なくとも一方の面が斜面を含み、下側に向かって移動する前記分割駒に対して、相対的に拡径部材が上昇した際に、前記斜面によって前記分割駒が外側に押し出されることで、前記分割駒を備える前記裏当て部材が拡径することを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工装置を用いた容器への蓋の固定方法であって、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる先端曲げ工程と、先端曲げ工程で曲げられた前記開口側端部をさらに曲げることにより容器に蓋を固定する固定工程とを備え、
前記押し型により前記容器の開口側端部を当該容器の内側に向けて曲げる際に、当該容器の開口側端部の内周面の曲げられる部分の直ぐ下側に拡径した前記裏当て部材を当接させ、
前記容器の開口側端部を内側に折り曲げた後に縮径する裏当て部材とともに押し型本体を容器から取り外すことを特徴とする容器への蓋の固定方法。
【請求項5】
前記先曲げ工程の前に容器状に加工された前記容器の開口側端部を加熱して焼鈍しを施すことを特徴とする請求項4に記載の容器への蓋の固定方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする金属製密閉容器。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の容器への蓋の固定方法を用いて製造されることを特徴とする密閉型蓄電装置。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−166120(P2009−166120A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252468(P2008−252468)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(394008949)株式会社田中産業 (4)
【出願人】(593055306)岡野工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(394008949)株式会社田中産業 (4)
【出願人】(593055306)岡野工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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