6話 超余裕でダンジョン突破
1時間後。
ぼくは地上へ帰還するために、出発した。
『さぁゆくぞ、エレンよ♡』
ぼくの右肩から、カレンの声がする。
そこには、可愛らしい【ひよこ】が乗っていた。
「えっと……カレン?」
『そうじゃよ♡ あの体は魔力を消費するからな。これが本来の姿じゃ』
ちょっと大きめの赤いヒヨコって感じだ。
可愛い。
「じゃあ、ラン。帰り道もよろしくね」
「わんっ!」
ぼくはランを連れて、ダンジョンの道を歩く。
彼女の背中には、アスナさんが眠ったまま乗せられている。
ケガは不死鳥の力で治したので、もうすぐ目を覚ますと思う。
「わんわんっ!」
「敵かい?」
視線の先に、
人間サイズの、二足歩行する犬のモンスター。
『ちょうどよい。スキルの実験もしてみるのじゃ』
「そうだね。えっと……【風神の剣】」
発動した途端、ぼくの手に、翡翠の剣が握られる。
『超高密度の嵐を凝縮して作られたものじゃ。ほれ、斬ってみよ』
「でも……ぼく戦ったことなくって、自信ないな」
『案ずるな。突っ込んで斬る。それで仕舞いじゃ』
ぼくはうなずいて、犬人めがけて走る。
びゅんっ……!
「わっ! すごっ! 速い! 何これ!?」
『神狼のスキル【高速移動】じゃ。脚力を強化する』
ぼくは疾風のように、犬人に接近。
そのまま風神の剣を、振るった。
ザシュッ……!
「アオォオオオ…………」
どさっ……!
「え、うそ……一撃……? Dランクのモンスターが?」
胴を真っ二つにされた犬人は、完全に死んでいた。
========
【
スキル【腕力向上(B)】を入手しました。
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「なんか、また新しいスキルゲットしたんだけど?」
『倒したモンスターの霊魂を、精霊としてその身に取り込んだのじゃろう』
つまり、モンスターを倒せば、相手の力を吸収できるってことだよね。
『まことにエレンはすごいのぅ♡ すごいすごい♡』
カレンが褒めてくれるのが、うれしかった。
そのときである。
「う……うう……」
「アスナさん! 良かった、目が覚めたんですね!」
ランの上で、アスナさんがむくり、と起き上がる。
ぼくは、その場でへたり込んでしまった。
「よかったぁ……」
「エレン! 大丈夫!?」
彼女は飛び起きると、ぼくに近づく。
その大きな胸で、ぎゅーっと抱きしめて、ぺたぺたと体を触る。
「ケガは!?
「あ、アスナさん……落ち着いて。もう大丈夫ですよ。全部終わりました」
「終わったって……?」
「ぼくが敵を倒したんです」
アスナさんが困惑顔で、首をかしげる。
そのときだ。
「アオォオオオオオン!」
ランが敵の接近を教えてくれる。
「モンスター! さがって、エレン!」
アスナさんが、ぼくをかばうようにして立つ。
「しまった! 武器がない!」
さっき単眼巨人に殴られたときに、壊れてしまったようである。
「安心して。わたしが、あなたを守るから」
ダンジョンの奥から、緑色の巨人がのそのそと歩いてくる。
「トロールね。Bランク……武器無しじゃきついか」
汗を垂らすアスナさん。
ぼくは、彼女の前に立つ。
「え、エレン?」
「見ててください、アスナさん。ぼくの……力を!」
高速移動スキルで、トロールに接近する。
「なっ!? なんて速さなの!」
トロールが、手に持っていた棍棒で、ぼくを殴りつける。
「危ない! エレン!」
だがぼくは、棍棒の一撃を、片手で受け止めていた。
「そんな! トロールの強打を、軽々受け止めるなんて!」
さっきゲットした腕力向上スキルのおかげだ。
巨体から繰り出す一撃が、まるで鳥の羽のように……軽い!
「ぼくはもう……お荷物なんじゃないぞ! 【風神の剣】!」
風の剣を呼び出し、ぼくはトロールを斬りつける。
縦一閃。
それだけで、トロールは消滅した。
「うそ……トロールを一撃で……?」
ぺたん、とへたり込むアスナさん。
「いろいろあったんです。歩きながら説明します」
ぼくはアスナさんの手を取って、立ち上がらせる。
「ラン、アスナさんを乗せて。走ろう、すぐに脱出だ!」
「わんっ!」
困惑するアスナさんを、ランがぐいっ、と背中に乗っける。
ぼくらは高速移動スキルで駆け出す。
「す、すごいわ! まるで飛んでるみたいよエレン!」
ランの案内で、ぼくはダンジョンを迷うことなく走り抜ける。
途中、敵と遭遇するけど、風刃剣の一撃で倒す。
「ということがあって、ぼくは力を手にしたんです」
「なるほど……そうだったのね。一人で怖い目に遭わせて、ごめんね」
「いえ! だいじょうぶ! ランとカレン……かけがえのない相棒がいたので!」
道中、会話する余裕があった。
ややあって。
「すごい、もう出口付近よ!」
そのとき、ランが立ち止まる。
「どうやら敵みたいです」
激しい音とともに、ダンジョンの壁が壊れた。
のそり、と出てきたのは……牛の頭をした巨人だった。
「み、
『おそらくエレンの魔力に惹かれてきたのじゃろう。精霊使いの魔力は魔物にとっても大好物じゃからな』
あれ、ぼくがモンスターに狙われやすい理由って、ぼくの魔力のせい?
「ふ、ふたりじゃ無理よ。逃げましょう」
「大丈夫! アスナさんは何も心配しないで」
ぼくはアスナさんの前に立つ。
「今度は……ぼくが守る! いくよ、カレン!」
右手を前に出して、叫ぶ。
「【
不死鳥のスキルの一つだ。
ぼくの体から紅蓮の炎が湧き出る。
それは巨大な矢となって、高速で射出。
牛頭人の胴体をぶち抜く。
「ブボォオオオオオオオ…………」
胴に風穴をあけられた牛頭人は、そのまま倒れ伏す。
「すごい……すごいわ! エレン!」
アスナさんは飛び上がって、ぼくに抱きつく。
「Sランクを一撃で倒すなんて! 本当に……強くなったのね」
ぼくは彼女に、よしよしと頭をなでられる。
『……くぅ。若様っ。わたしというものがありながらっ』
『……おい犬っころ。協力せよ。でないと取られるぞあの女に』
カレンが、誰かと会話していた。
「さぁ、外に出ましょう!」
ぼくはアスナさんの手を引き、ダンジョンを出たのだった。
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