5話 輝かしい人生の始まり
不死鳥の力のおかげで、ぼくは窮地を脱した。
「ありがとう、助かったよ」
自称不死鳥の赤髪お姉さんが、うんうん、と満足げにうなずく。
「どういたしまして。さて、エレンよ。さっそくして欲しいのことがあるのじゃ」
「してほしいこと? ぼくにできることならなんでもするよ!」
不死鳥お姉さんがいなかったら、アスナさんも、相棒のランも助けられなかったからね。
「わらわに名前をつけて欲しいのじゃ」
「名前? あなたの?」
「そう、わらわは生まれたばかりの雛鳥だ。名が必要じゃ」
ニコッと笑う赤髪お姉さん。
「名前か……ううん、パッと出てこないな」
でも命の恩人の頼みだし、ちゃんと考えてあげないと。
「じゃあ紅色の髪の毛をしているから、グレンとか?」
「とってもかっこよいな! しかしもう少し女子らしい名が良いのぅ」
「なら……カレン。カレンはどう?」
「カレンか……うむ! 気に入った!」
不死鳥のお姉さん……カレンは、ぼくをむぎゅーっと抱きしめる。
「エレン! これから末永くよろしくたのむぞ♡」
「う、うん……こちらこそ」
ぼくから生まれた彼女は、ぼくの子どもようなもの。
大事にしないとね。
「さてこんなかび臭いところから脱出しようではないか。……ああ、そうだ。そこの犬。目を覚ますが良い」
横たわっていたランが、むくりと起き上がる。
「ラン! 良かったぁ……無事だったんだね!」
もふもふの毛皮に、ぼくは抱きつく。
ランはほっぺたを舐めてきた。
いっぽうでカレンは、深々とため息をつく。
「まったく、そなたがいながら、エレンを危ない目に遭わせるとは何事じゃ! この駄犬!」
「くぅーん……」
しょんぼり、とランが頭を垂れる。
「ランを叱らないであげて。彼女はよくやってくれたよ」
「いいえ、愛しのマイマスターよ。こればかりは許せぬ。なぜならそこの駄犬もまた、精霊なのだからな」
ビシッ! とカレンがランを指さす。
「な、何言ってるんだよ。ランは普通の狼だよ」
「その割には気配に敏感だったり、異常に聡かったりしなかった?」
「それは……たしかに」
カレンは大きくため息をつく。
「この犬は【
「ふぇ、フェンリルだって!?」
おとぎ話で見たことがある。
「たしか、神に仕え、嵐を自在に操ったっていう……オオカミの精霊だよね?」
「そう! まったく、神狼ともあろうものが、主人を危ない目に遭わせるとは! しかも自分が真っ先にやられるなんて! この軟弱ものっ!」
「きゅ、きゅーん……」
ランは体を縮める。
「カレン、ランをいじめないで。ラン、そんなしょんぼりしないで」
「きゅ~ん……♡」
========
【
契約者が【カルラ・バーンズ】から【エレン・バーンズ】に変更となります。
【
条件を達成しました。
【神狼のスキル(SS)】を獲得しました。
【不死鳥のスキル(SSS)】を獲得しました。
========
ぼくの脳内に、またいつもの、謎の声が響いた。
「どうした、エレン?」
「なんか……また変な声が」
「それは精霊王の声であろうな」
「精霊王……?」
カレンがこくり、とうなずく。
「精霊は人間に加護を、スキルとしてもたらす。それを管理統括しているのが精霊王。あやつがおぬしの獲得した精霊をアナウンスしているのじゃな」
「じゃあ……ぼくはカレンとランの、ふたりの精霊からスキルをもらったってこと? で、でもそれはおかしいよ……?」
「おかしい? なにがじゃ」
「精霊の加護って、生まれてすぐに決まるもので、一生変わらないって聞いたよ?」
「普通の人間ならな。しかしエレン、そなたは特別じゃ」
「ぼくが……特別?」
カレン、そしてランが、ぼくに近づいてくる。
そして、ちゅっとキスをした。
「なっ!? ななっ、なにするのさっ!?」
「そなたは
「精霊使いの、魔力?」
「端的に言えば、そなたは精霊に愛され、引き寄せる体質なのじゃ。だから今後も後天的にスキルをもらえる。それこそ、無限にな」
「そ、それって……すごいことだよね? スキルって、普通は生まれたときに全部決まるんでしょう?」
「そう! そなたは特別なのじゃ! だから誇りを持て」
自分が選ばれた人間だったなんて……未だに信じられない。
けれどぼくの体から不死鳥が出た。
瀕死の重傷を一瞬で治した。
全部、事実だ。
「さて、帰るとしようかの。もう二度と苦労することのない、輝かしい人生が待っておるぞ♡」
「わんっ!」
ぼくは、気を失っているアスナさんを持ち上げ、ランの背中に乗せる。
「……うん。いこう!」
出口に向かって、歩き出す。
ぼくの、精霊使いとしての、第二の人生がスタートするのだった。
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