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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので 作者:茨木野
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4話 ザックの失敗、地獄の始まり



 エレンが精霊使いとして覚醒した、一方その頃。


 彼を追放したパーティのリーダー、ザックは、苦戦を強いられていた。


「くそっ! 犬人コボルトがこんなに!」


 ザック達は、Dランクのモンスターの大群に囲まれていた。


「Dランクなんて、おれたちSランクから見ればザコなのに……どうして勝てねええんだよぉおお!」


 ザックは焦りながら、剣で犬人に斬りかかる。


 普段ならバターのように敵を切り裂ける。

 しかし、犬人の皮膚は、まるで鋼鉄のように硬かった。


「おいディーナ! なにやってるディーナ! 魔法でこいつら蹴散らしやがれ!」


 パーティの魔法使い、賢者のエルフ・ディーナ。


 強力な魔法の使い手として、エルフの里からも、周囲からも将来を嘱望されていた。


「そんな……嘘よ……魔法が、まったく使えなくなってるなんて……」


 ディーナは真っ青な顔をして、ぶるぶると震えている。


 先ほどから何度魔法を放とうとしても、ぜんぜん発動しないのだ。


「精霊から……拒まれてる? いったいなぜ……? 嘘、嘘よ……わたしは、エリートなのよ……?」


 ぶつぶつ、とディーナは早口で何事かをつぶやく。


「ちっ! おいみんな撤退だ! 逃げるぞ!」


 ザックの指示で、パーティメンバーたちは一時離脱する。


 全力で逃げるが、通路を曲がった先には、また別の犬人がいた。


「くっそ! 来るときこんなに敵がいなかっただろ? なんで帰りに限ってこんな敵に会うんだよ!」


 しかもなぜか【敵が強くなっている】。

 ディーナもなぜか魔法を【使おうとしない】。


「なんでだ!? いったい、なにがいけないんだ!?」


「り、リーダー……やっぱ、エレンがいないと駄目だったんじゃ……?」


 弱気な発言をした仲間に、ザックが殴りかかる。


 バキッ!


「おれたちはSランク冒険者だぞ! あんな屑一人いないだけで揺らぐほど、おれたちは弱くねえよ!」


 ……ザックの言っていることは、完全な間違いであり、思い違いだった。


 彼らはもともと、平均程度の強さしか持っていなかった。


 エレンという、精霊に愛される存在がパーティに加入した。


精霊使いエレンの仲間だから】という理由で、多くの精霊達がザック達に力を貸した。


 結果、身の丈に合わない強さを手にしていた。


 いわば、仮初めのSランクだったのだ。


「駄目だ! 道がわからねえよ! リーダー! なんとかしてくれ!」


「うっるせぇぇぇ! 自分でなんとかしろ! ああくそ! また犬人が来やがる!」


 大量のザコに苦戦しながら、ザックは焦りを覚える。


 このまま、こんな犬人にかまれて死んだとなれば、ギルドから一生笑いものにされてしまう。


 どうして、ダンジョンからの帰り道、こんな苦労するのか?


 行きと帰りの違い。

 それは、メンバーの違いだ。


 攻防に優れた魔法騎士のアスナ。

 そして……。


「認めねえ! おれは、あんなテイマーのくずがいないから、苦戦を強いられてるなんて、死んでも認めねえ!」


 エレン。

 テイマーの少年。


 数年前。

 アスナがどこからか、街で迷子になっているエレンを、保護してきた。


 そんなヤツ放っておけと冷たく言い放った。

 しかしアスナは可愛そうだからといって、パーティに入れることを半ば強引に決めた。


 リーダーはザックである。

 なぜ、アスナの意見が通ったのか。


 理由は簡単だ。


 ザックは、アスナのことが好きだからだ。

 アスナはザックの幼馴染みだ。

 同じ村で育った。


 小さい頃からアスナは美人で有名だった。


 彼女の気を引こうと、必死に頑張った。

 けれどアスナが自分を振り向いてくれることは、なかった。


 時が流れ、なんとか同じ冒険者パーティとしてやっていけることになった。


 冒険を通じて、親密になれれば良いなと思っていた矢先。


 アスナはエレンを連れてきた。

 惚れた女の頼みを断れず、テイマーとしてパーティに入れることにした。


 最初のうちは、アスナはエレンを弟のように可愛がっていた。


 だが次第に、彼女がエレンを、異性として意識するようになっていた。


 それが許せなかった。


 ……一度だけ、ザックはエレンに、決闘を挑んだことがある。


 負けた方がアスナから身を引け! というルールだった。


 もちろんザックに圧倒的に有利な条件だ。

 ザックの職業は【勇者】。

 剣も魔法も使える、最強の職業。


 一方でエレンはテイマー。

 どうみてもザックの勝利だと思われた。


 しかし、結果、エレンが勝った。


 なぜか知らないが、エレンとの決闘の時【力が半減した】のだ。


 ……ザックは知らない。

 精霊使いエレンは、相手に加護を与えている精霊に呼びかけ、弱体化させることができることに。


 エレンもまたそのことを知らなかった。

 自分の身を守るために、無意識に力を使ったのである。


 ザックは見下していた相手に負けた。


 決闘は深夜、人目のつかない場所で行った。

 負けたことが恥ずかしかったので、パーティの誰にも言っていない。


 エレンもまた、決闘のことはまぐれ勝ちだと思っているらしく、特に他言していなかった。


 だから、今までパーティ内での序列は保たれていた。


 けれど、ザックは知っている。

 本当はエレンが、秘めたる力を持っているということを。


 だからこそ、その力をエレンが戦いの中で自覚し、自分のものにしないよう、雑用を押しつけた。


 絶対にモンスターと戦わせなかった。

 下手に経験を重ねて、自分の持つ力の大きさに気づかれても困るからだ。


「クソが! 認めないぞ! エレンは格下なんだ! 女も別にアスナ以外にもいるし! だからもうあんなやつらどうでもいいんだ!」


 ……その後、ザック達は命からがら、地獄ダンジョンから脱出した。


 だが本当の地獄は、これからであることを、ザック達は知るよしもない。

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