2015年8月12~13日

待ちに待ったお盆休み!今年の夏こそは、自分の憧れの沢へ・・・数年前から成瀬さんと毎年計画し天候不順の為、なかなか実現出来ませんでしたが、今年こそは!と意気込んでいましたが、やっぱり天気が。。。どうして毎年毎年この時期って天気が悪くなるんでしょうね~と言っても仕方が無し。自分が天気が良い時に休みが取れれば、行けるんでしょうけどね。
今年こそは行けると思っていた憧れの沢に行くことが出来ないショックで、お盆休みに何処に行こうかと代案を成瀬さんと相談するもイマイチモチベーションが上がらず。。。
12日は仕事なので、わざわざ有休を使って休まなくても良いかなぁ~と思っていたら、前日に成瀬さんからカラス谷のお誘いが。
何と成瀬さんは数日前にルーくんとカラス谷に出かけてきたばかり。何で!?と思ったら、カラス谷核心のゴルジュの出口の滝が登れそうとのこと。しかもそこは未登!?
一度行った沢には行かない成瀬さんが、もう一度行くとのことなら自分も是非行かなくては!カラス谷にはいつか行ってみたかったので、このタイミングを逃すべきでは無いと思い、無理矢理会社を休んで行ってきました。

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行くことを決めたのが何と出発当日のお昼!ホント計画性がない私?
仕事を休む段取りをしたり、帰宅後は急いで身支度、夕飯を食べて出発~!と、新東名を快適に走るも三ヶ日付近から渋滞25km・・・お盆休みや連休の時ってどうして皆さん民族大移動するの~?と思うも自分もその中の1人なんだから仕方が無し。
それでも30分遅れ程度で赤塚PAに無事到着。成瀬さんと合流して、一路荘川へ!
24時過ぎに荘川インターを下りて、近くの駐車場に泊まるも、街道沿いで車が通る度に目を覚ましてしまい、あまり眠ることが出来ず朝4時起床・・・
寝不足のまま、林道アプローチを経て尾上郷川カラス谷出合へ。
出発してすぐに2人ともザックが軽く感じて、何か忘れ物をしているんじゃないか?と思ってしまうほど。急いでパッキングしたので、何か忘れちゃったかな~?と思うも、いつもと装備は同じですし・・・
あれ!?いつもよりも少ないと言えば、今宵のお酒!いつもは2リットル程担ぎ上げますけど、今回はスピード重視と言うことで1リットルに抑えたんでしたっけ!ザックが軽く感じるのはそのせいか・・・

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カラス谷に入渓してから巨岩帯の高巻き、最初の滝は12mの迫力のある滝!
出合からこんな渓相なんてこの先どうなる事やら!?とドキドキしてしまいますが、成瀬さんが数日前に遡行されているのでちょっと安心。

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12m滝の右岸は出だしが少しイヤらしいので、ザイルを出しました。荷物を背負っての登りはしんどい!

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美しい釜を持つ8mの斜瀑に見とれながら、左岸の枝沢を詰めて適当な所からトラバース。釣り師か沢屋か分かりませんが、踏み跡は明瞭でした。

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トラバースを経て沢に戻れば、ソバナがあちらこちらに。いつも見るソバナよりも濃い紫色の花を付けたものもあり珍しかったです。

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入渓直後は巨岩帯の渓相にドキドキさせられましたが、8m滝を越えてから暫くは穏やかな河原に。
カラス谷ってもっと険渓だと思っていただけにちょっと拍子抜け。でも沢幅が狭まり、ちょっとしたゴルジュ地形に。いよいよ泳ぎか!?とビクビクしましたが、左の岩棚を使えば問題なく越えることが出来ました。

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再び沢は河原状になりひたすら歩き。
と、倒木の内部が空洞になって水路のようになっていました。こんな風になったりするんですね~でも内部が朽ちてパイプ状になるまで何年かかるのかしら?

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腰くらいまでの深さの釜を持つ3m滝は左壁を直登。
沢足袋の成瀬さんは苔苔の所でもフリクションが効くようですが、ラバーソールの私は滑ってしまってなかなか登れない!それでもガバやカチを繋いで、何とか滝上へ。

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成瀬さんは数日前に来ているので勝手知ったる?ようにスタスタ足早に歩いて行ってしまう!いつもよりハイペースなので着いてく私も一苦労。倒木が自然の堰堤を作っている所の写真を1枚。

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そして下部の核心の洞窟状滝8m。成瀬さんとルー君が数日前に来た時は手前のルンゼを詰めて高巻いたとか。
今回はもっと滝寄りの壁を登るとのこと。

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一見階段状に見える壁も、苔があったり岩も脆くて嫌らしそう。
中段のテラスまで成瀬さんが空荷で登って、そこで荷揚げ。テラスからトラバースして、落ち口に。

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フォローの私は荷物を背負ってのクライミング。いや~いつもより荷物が軽いからと言ってもやっぱり重荷を背負ってのクライミングはしんどい。テラスを乗り越す所がイヤらしく、足が滑って落ちてしまいました。。。

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洞窟状滝を越えて、再び河原に。少し歩いて二俣に到着。
ここで小休止をしてこれからの行動の相談。ここから先のゴルジュを抜けて、海上谷から下山するか?もしくはカラス谷をそのまま下降するか?
翌日の天気がお昼頃から雨予報&核心のゴルジュ帯と最後の滝の登攀にどれくらい時間が掛かるか分からないので、カラス谷をそのまま下降することにしました。なので泊まりの荷物はここにデポしていざゴルジュへ!

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遂にゴルジュに突入~!でも今日は生憎の曇り空で、暑くなく寒いほど。
寒いのにこのゴルジュに入らなければならないのぉ~!?数日前に来た時は寒くはなく暑いぐらいだったと言って、「ウェットはなくても良いんじゃない?」と言う成瀬さんのお言葉を信じたばかりに寒い思いをしなければならないことに。
こんなにも寒いのなら、ウェットを持ってくるべきだったと思うも後悔先に立たず!
最初の淵は私が先頭で行かせてもらいました。胸まで水に浸かるとやっぱり寒~い!

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続く淵は成瀬さん。左壁を這い上がりますが、手が届くホールドは細かくてパーミング系?もちろん足は届かず、這い上がろうとするも、冷え切ってしまった足は思うように動いてくれず、難儀しました。

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私がなかなか這い上がれずに苦しんでいる所を成瀬さんが、写真を撮っていました。
この写真を撮っている時の成瀬さんの顔が思い浮かぶよ。。。

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そして8mの美しい滝に。この滝は自分が登らせて貰うことに。前回来た時は成瀬さんはフリーソロで登られたとか?それを聞いたらね~でも、落ちても釜の中に落ちるだけですし、ライフジャケットを付けているので、精神的には多少楽?かな。
釜を少し泳いで壁に取り付きました。

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ラバーソールだとちょっと滑ってイヤらしい所もありましたけど、ホールドはほとんどガバで、概ね快適。なので、私もプロテクションを取らずフリーソロ。でも本当に二進も三進も行かなくなる時は、プロテクションを取らなければです。

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徐々に近づく核心部。大滝登攀の場合は下から登るラインを探ることが出来ますけど、ゴルジュの場合は屈曲した先は見えませんからね~この先はどうなっているのか?ホント、ゴルジュって先が見えないだけに怖さ倍増。

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左折し、正面に脆そうなルンゼが現れ、ルンゼに近づくと水流は右へ・・・右に目を移せば何と薄暗いゴルジュが目の前に!
成瀬さん曰く「ここが誰も越すことが出来なかった最後のゴルジュだよ。」とのこと。
成瀬さんのパートナーであり、ゴルジュ突破の第一人者?チーム野良犬のA島さんでさえも、水流に押し戻されてしまい近づけなかったとというゴルジュ。
今年は流木がそのゴルジュの小滝に引っ掛かり、それを使えば突破出来、最後の滝も登れそうと言うことから、成瀬さんは数日前に遡行したばかりのカラス谷に行きたいと言うことで、私も同行させて貰いました。

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水流は強いですが、右壁のホールド&スタンスは流木を上手く捕らえて、成瀬さんは無事クリア!

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そして泳ぎが下手くそな私も続いて登ります。ホールドは分かりましたが、水圧が強くて足を流木に乗せられず1回流されてしまいました。2回目で何とかクリア。

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そして最後の滝へ!これは凄い!薄暗い暗峡の中に轟音を響きかせながら落ちる様は何と恐ろしげな事か!
滝の裏側を潜って右壁の中段テラスまではフリーソロで行けるとのことから、まずは成瀬さんがそのテラスまで。

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続いて私もシャワーを浴びながら滝裏を登りますが、まさしく嵐!こないだの七段沢のシャワーよりも格段と水流が強い!

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何とか潜って、成瀬さんが待つテラスに到着。ここまで泳いできたのと、この薄暗く陽が差さない暗峡の中で、体は冷え切ってしまい、指先の感覚が無くなって痺れてしまうほど。
何とか指の感覚を取り戻すために、首裏に手を当てたり、擦ったりしながら何とか感覚が戻ってきてくれました。一息してからいよいよ最後の核心部の登攀へ!
出だしではカムをセットできましたが、その後はリスしか無さそう。垂直の壁でハーケンを打つなんてかなりの至難の業。でもそれをやってのける成瀬さんはやっぱり凄い!
でも最後のハーケンは「これは効いてない!」と言って、カンテを回り込むのはビレイをしているこちらも恐ろしい。
そのカンテを回り込んだ先はどうなっているのか?弱点がない垂壁だったら?もしかしたらハングしていて先に進めないかも?最後のハーケンは効いていないと言う精神的不安。
カンテを回り込んで成瀬さんの姿が見えなくなり、暫くしてからヒョッコリ成瀬さんの顔が見えた時は本当に安心しました。

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フォローする私。グレード的にはそれ程難しくはありませんが、いつ剥がれるのか?この先はどうなっているのか?プロテクションをセットしながら登るのは本当に難しいでしょう!でもそれを突き詰めるパイオニアワークこそ沢登りの原点でしょう!

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カム、ハーケンを回収してカンテを回り込めば何と小テラスが。落ち口はこうなっていたのね~
登れた喜びをあらわにポーズを決める成瀬さんの写真を1枚。

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私もこの瞬間に立ち会えて一緒に登る事が出来嬉しい!

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落ち口から見下ろすゴルジュ内部。下から見上げていた時は薄暗くて、居心地が悪い空間に感じましたけど、上から見下ろすとさっきよりも明るく感じる?狭いゴルジュなので陽が差す時間が限られていると思いますが、ちょうど太陽が真上に来る辺りが一番明るくなるのかもしれません。

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最後の二条CS7m滝は私が登らせて貰いました。
ホールドはガバで問題ないですが、落ちたら滝の中へ真っ逆さまなので、カム&ハーケンでプロテクションを取りました。

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最後のピッチを登る成瀬さん。これを登り切れば暗黒のゴルジュからの脱出成功~!
滝の落ち口に到着して、成瀬さんとガッチリ握手。

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ゴルジュを抜けた河原で小休止してランチタイム。二俣からゴルジュを抜けるまで約2時間半でした。
自分だけ奥ノ二俣まで歩いて行き、そこからカラス谷を下降することに。
まずは懸垂でさっきまで居たゴルジュ内部へ。

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苦労した倒木ゴルジュはその倒木からジャ~ンプ!ッてこの寒いのにまた水の中に入らなければならないのぉ~!?
躊躇してしまいなかなか入らない私を見かねてか成瀬さんからは野次を飛ばされ・・・私も仕方が無く小ジャンプ。。。ホント、水が冷たいんだってば!

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ゴルジュ帯は泳ぎで下降。成瀬流背面ラッコ泳ぎ?で泳ぐ成瀬さん。
2人でキャーキャー騒ぎながら、どんどん下降して荷物をデポした二俣に到着。ホント痺れてしまうほど寒かった・・・

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途中、成瀬さんは釣りへ、私はテン場を探しながら別行動することに。
標高を下げてきたら少し気温が上がった?と思ったら私の周りにブンブンと近づく虫が多数。何とメジロアブ!服の上からは刺されないので良いですが、肌が露出している部分は刺されてしまいます。
良いテン場を探しながらもこのメジロアブの大群を追い払いながらの下降は疲れる!
途中砂地の良いテン場がありましたが、メジロアブを追い払うために下ってしまいました。。。
薪も豊富でこの辺で良いか!?と思って荷物を下ろすとまたまたメジロアブの大群が。
ホントこれには参りました。
火を付ければ逃げるんじゃないかと思い急いで薪を集めて火を付けるも、煙にも火にも動じないメジロアブ達。こりゃどうすれば良いの!?と思っていた所に成瀬さんも到着。
成瀬さんのメジロアブ撃退方法は、網を振り回してメジロアブを捕獲し潰すこと。これが一番効果的だそうです。
日が暮れてメジロアブも居なくなり、マッタリと良い時間・・・
軽量化のため、いつもより少ないお酒を2人でユックリと呑み交わし、成瀬さんが釣り上げてくれたアマゴをじっくりと燻しながら、焚き火の炎を見ているこの時間は何と素晴らしいことか!
マッタリしていたらポツポツと冷たいものが・・・って雨!?天気予報じゃあ今晩は降らない予報だったのにぃ~と思っても仕方が無し。急いでタープを張って、タープの下で暫く宴会するも、お酒もなくなって就寝。でもここからが長かった!
寝る時は小雨状態で直に止むかな~と思いきや、本降り!?タープから滴る水滴が顔に落ちてくるので、シュラフカバーで顔を覆うも、冷たい雫が内部に入り込んで顔を滴る始末。。。昨日の寝不足のせいでうつらうつらと眠っては、冷たい水滴で起きての繰り返し。しまいにはヤブ蚊?が耳元で羽音を立てて気になってしょうがない!

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寝たのか寝てないのか分からないですけど、辺りが薄明るくなってきたので起床。と、シュラフカバーから顔を出せばヤブ蚊の大群が!写真だと小さくて分かりにくいかもしれませんけど、私の靴下に群がるヤブ蚊ども・・・
おでこを出していた成瀬さんは、おでこを刺されまくったそうです。

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朝になっても雨が降っているので、朝飯を食べたら下山開始。昨日夜から雨が降ったためか、沢も増水気味。こう言う時は早く帰るに限るでしょう~

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足早に下って、テン場から1時間ほどで尾上郷川本流に無事到着。

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本流の水位は?昨日よりも5cmほど高くなっていました。本流で5cmッてことは支流の沢ではもっと増水していること間違いなし!増水してたらあのゴルジュを越えるのも難しかったと思うと、ホントタイミングが良かったと思います。
早朝下山したので、駐車場には7時頃には到着。いつもの如く助手席で爆睡する成瀬さんを横目に東海北陸道経由で帰途に着きました。
今年のお盆も憧れの沢へ行くことは叶いませんでしたけど、カラス谷に行くことが出来て本当に良かったと思います。
去年までは無かったあの倒木のお陰でカラス谷ゴルジュを完全遡行することが出来ましたし、あの倒木がいつまであの場所にあるか?それは神のみぞ知る?台風が直撃したら2週間後には無くなっているのかも?でもそれが自然の摂理でしょう。
いつも思うことですが、山に、沢に行く時は本当にタイミング、チャンスが大事だと思います。天気、体調、パートナー・・・すべてが揃って、ようやく行くことが出来ると思います。また山の中で怪我もなく無事帰ってくることが最も大切。
そして成瀬さんのパイオニアワークに掛ける意気込み。私なんかは恐怖心が先立ち、どうしても億劫になってしまいがちですが、成瀬さんの執念とまで受け取れるモチベーションの高さには、本当に頭が下がります。沢屋はかくあるべきなのでしょう。

成瀬さん著書「俺は沢ヤだ!」の一文にこう書かれています。

「沢ヤの本懐は未知の谷の解明にあり!立ちはだかる未踏の大滝の向こう側にあり!」


自分には大それた事は出来るとは思いませんが、この言葉を忘れずに沢へ向かいたいと思います。