酒米だけで100種類超!食べるお米との違いを徹底解説
酒米だけで100種類超!食べるお米との違いを徹底解説

2020.01.19

酒米だけで100種類超!食べるお米との違いを徹底解説

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まいど!ゆーきです。

お酒造り用に特化したお米があることをご存知でしょうか。

酒造好適米といって、お酒造りに適した性質を持つお米の品種たちの事です。有名どころで言えば「山田錦(やまだにしき)」「五百万石(ごひゃくまんごく)」「美山錦(みやまにしき)」「雄町(おまち)」などが挙げられ、そういえば、お酒のラベルに書いてあるのを見たことある、って人も多いと思います。酒米(さかまい)と呼ばれたりもしますよね。

日本で栽培されているお米は農産物規格規程(農林水産省)でしっかりと定められており、「醸造用玄米」に分類されている品種がいわゆる酒米と呼ばれるものです。現在、120を超える品種が登録されています。

食用のお米も合わせると900種類以上のお米が全国各地で栽培されているのですが、そのうちのおよそ13%がお酒用の品種って、多くないですか。

今回は酒米の特徴についてまとめてみました。

酒米は食べるお米と何が違うの?

酒米に求められるのは心白(しんぱく)の大きさ、精米時の砕けにくさ、「捌け」の良さ、破精込み(はぜこみ)のしやすさ、吸水のしやすさ、タンパク質含有率の低さなどの性質です。これらを醸造適性といって、つまり、酒米というのはこれらの性質が高水準でお酒が造りやすいように品種改良されたものなのです。

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まずは酒米の成分をみてみると、飯米に比べてタンパク質や脂質が非常に少ない特徴があります。

タンパク質や脂質は、お米のうまみやツヤを出すために飯米には多く含まれています。しかしお酒造り、特に大吟醸造りには邪魔な成分なんです。

タンパク質は分解されてアミノ酸になります。それは旨味のもとであるのと同時に、多すぎると雑味の原因になってしまうのです。日本酒の場合、お米由来のアミノ酸は全体の6%ほどと言われていますが、繊細な味わいを求められる大吟醸酒の造りでは、1%でも少ない方が有利です。

脂質は香りの成分が立ち上る際の妨げになります。フルーティな吟醸香をはじめとする香りの正体は揮発成分なのですが、脂質はそれらの成分が揮発するのを邪魔してしまうのです。

必然的にデンプン質の割合が純粋になります。大量の糖分を消費するアルコール発酵に都合がよい、というわけですね。

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そして、お米の外観を見てみると、一般のお米に比べて粒が大きいことが特徴です。

日本酒はほとんどの場合、お米を精米してから使用します。要は、お米の外回りを磨き落としてから使うのですが、その割合が食べるお米とは段違いなのです。

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なぜ精米するのかというと、お米の外側には糊紛層という組織があって、粒の外側ほどタンパク質や脂質が多く含まれているためです。これらを精米によって磨き落とし、精米歩合の低いお米を使うほど、雑味の少ないキレイな酒質になります。

どのくらい精米するのかというと、食用米の精米歩合がおおよそ93~92%くらいなのに対して、お酒造りに使う白米はほとんどが70%以下です。吟醸酒になると60%以下、大吟醸なら50%以下でないと法律上認められません。お米の半分以上を磨き落としてしまうということです。

そこで、お米そのものが精米に耐えられるかということが重要になってくるわけです。

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酒米に求められるのは、特に精米歩合50%以下の高精白に耐えられる粒の大きさと適度な粘り気。精米は高速で回転する超硬度のロールにお米をあてて削ぎ落していくものです。当然ながら、一度あてただけでつるんと白米が完成するわけがなく、何回も何回もお米を循環させて少しずつお米の表面を磨いていくのです。

量や米質、環境条件にもよりますが、精米歩合60%まで磨くのに24時間、50%までで48時間、40%なら72時間というように、ものすごい時間をかけて精米し続けなければなりません。精米が進むほど、白米は摩擦による熱をもち割れやすくなります。そのため酒米には高精白に耐えられる砕けにくさが必要なのです。

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それから、酒米の中心には「心白(しんぱく)」と呼ばれる白い芯がみられます。

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これは、分子の結合が外側と違っているために発現するもので、表面は細かくひび割れています。このひびに麹が深く根差し、よい麹ができあがるのです。

他にも、蒸米の捌けが良い、つまり表面がさらっとしているとか、もろみの溶けがいいとか、いろいろありますが、とにかく酒米というのはお酒造りのためにあれこれ研究されて生まれた品種です。何十回も何百回も異種交配を繰り返して酒米として世に出されるんです。人間の探究心はすばらしいですね。

山田錦ってそんなに良いお米なの??

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酒米の話をする上で欠かせないのが「山田錦(やまだにしき)」でしょう。酒米の王様なんて呼ばれたりもしますが、ぼくもそう思います。

山田錦は、1923年に兵庫県立農事試験場で「山田穂(やまだほ)」と「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」を交配させて誕生し、1928年に兵庫県加東郡社町で産地適応性の試験が行われました。1936年に「山田錦」と名付けられ全国でも栽培されるようになりましたが、生産量のおよそ8割を兵庫県産が占めています。特に、地層にマグネシウムとリンの成分が豊富に含まれ、土壌は粘土質で水はけが良好な三木市や加東市の一部は特A地区に指定されていて有名ですね。

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特長といえばやはり精米の適性でしょう。米粒が大きくて高精米時に砕けにくく、タンパク質が少なく心白が大きいのも魅力的です。ただし、穂がが長いので倒れやすく病気や害虫や風に弱いという性質を持ち、農家さんの高い技術が要求される品種でもあります。

その昔は「YK35」という言葉が流行ったほど、山田錦は業界内で確固たる地位を築くことになります。ちなみにYK35とは「(Y)山田錦を(35)%まで精米して(K)きょうかい酵母で造ったお酒」のことで、これを鑑評会に出品すれば金賞が取れる、むしろそれ以外は賞を取れない、という意味らしいです。様々な優れた米や酵母が手に入る、今となっては信じられませんよね。

菊の司でも山田錦は使っています。それこそ、鑑評会出品用の精米歩合40%の大吟醸なのですが、やっぱり他のお米とはちょっと違います。造り中の操作性が圧倒的に良いし、できあがったお酒も透明感があって品格を漂わせています。

ちょっと高そうな、立派な箱入りの大吟醸は今でも山田錦が多いですよね。YK40とかYM(明利酵母)35なんてのもザラですし、案外進歩ないかも。でも、それほど山田錦というのは良いお米ということです。

オリジナル品種や復刻米でさらにバリエーション豊かに

「山田錦」や「五百万石」「美山錦」などの全国区の酒米の他に、今の日本酒業界はさまざまなお米が活躍しています。

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まずは都道府県などがオリジナルで開発した品種。

お酒造りは、気候や水、習慣などに強く影響されます。その土地で育まれたお米を使う、さらには特化した米をつくり上げよう。ということで、実に多様な切り口で品種開発が行われています。

岩手県では、「吟ぎんが」「ぎんおとめ」「結の香(ゆいのか)」の3つが栽培されています。それぞれが、それぞれの特徴を持ち、お酒によって使い分けられています。

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また、復刻米もよく話題にあがってきますよね。

「亀の尾(かめのお)」、「穀良都(こくりょうみやこ)」、「強力(ごうりき)」、「渡船(わたりぶね)」、「祝(いわい)」などが有名でしょう。あの「雄町(おまち)」も復刻品種だってご存知でしたか??

亀の尾は菊の司でも使っていますが、実はこれ、もともと酒米ではないのです。

山形県で誕生したお米なのですが、当初は食味に優れたお米で名が通っていました。しかし、後継品種の登場にしたがって次第に市場から姿を消していくことになります。「ササニシキ」や「コシヒカリ」などの飯米のほか、「五百万石」も亀の尾の子孫にあたります。

その後、1983年に新潟の久須美酒造さん、山形の鯉川酒造さんの手で復活を果たしました。酒質にも現れる亀の尾の風味、そして精米に耐えうる大きな粒が注目を浴び、徐々にほかの蔵でも使われるようになったのですが、栽培が非常に難しく、現在でも幻の酒米と呼ばれ重宝されています。

これらのオリジナル品種や復刻品種をあわせると、日本酒と米の世界は本当に広い。当然、飯米も使いますからね。まさに無限大です。

各都道府県ごとの酒米登録品種

各都道府県ごとに登録されている酒米の品種をまとめてみました。引用は農産物規格規程(農林水産省)です。

地域     品種
北海道吟風、彗星
青森県古城錦、華想い、華吹雪、豊盃
岩手県ぎんおとめ、吟ぎんが、結の香
宮城県蔵の華、ひより、美山錦、山田錦
秋田県秋田酒こまち、秋の精、吟の精、美山錦、改良信交錦
山形県羽州誉、改良信交、亀粋、京の華、五百万石
福島県五百万石、華吹雪、美山錦、夢の香
茨城県五百万石、華吹雪、美山錦、夢の香
栃木県五百万石、とちぎ酒14、ひとごこち、玉栄、美山錦、山田錦、若水
群馬県五百万石、舞風、若水、改良信交
埼玉県さけ武蔵
千葉県五百万石、総の舞
神奈川県若水、山田錦
新潟県五百万石、一本〆、雄町、菊水、越神楽、越淡麗
富山県雄山錦、五百万石、富の香、美山錦、山田錦
石川県五百万石、石川門、北陸12号、山田錦
福井県五百万石、おくほまれ、越の雫、神力、山田錦
山梨県吟のさと、玉栄、ひとごこち、山田錦、夢山水
長野県ひとごこち、美山錦、金紋錦、しらかば錦、たかね錦
岐阜県五百万石、ひだほまれ
静岡県五百万石、誉富士、山田錦、若水
愛知県夢山水、若水、夢吟香
三重県伊勢錦、神の穂、五百万石、山田錦、弓形穂
滋賀県吟吹雪、玉栄、山田錦、滋賀渡船6号
京都府祝、五百万石、山田錦
大阪府雄町、五百万石、山田錦
兵庫県愛山、いにしえの舞、五百万石、白菊、新山田穂1号
奈良県露葉風、山田錦
和歌山県山田錦、五百万石、玉栄
鳥取県強力、五百万石、玉栄、山田錦
島根県改良雄町、改良八反流、神の舞、五百万石、佐香錦
岡山県雄町、山田錦
広島県雄町、こいおまち、千本錦、八反、八反錦1号
山口県五百万石、西都の雫、白鶴錦、山田錦
徳島県山田錦
香川県雄町、山田錦
愛媛県しずく媛、山田錦
高知県風鳴子、吟の夢、山田錦
福岡県山田錦、雄町、吟のさと、五百万石、壽限無
佐賀県西海134号、さがの華、山田錦
長崎県山田錦
熊本県山田錦、吟のさと、神力
大分県雄町、五百万石、山田錦、若水、雄町
宮崎県はなかぐら、山田錦

 

いかがでしたか??

お米に注目して楽しむのも、日本酒の醍醐味です。

ぜひ、いろんなお米で造られたいろんなお酒を飲んでみてくださいね。

では。

  

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平井佑樹 HIRAI YUKI

岩手県最古の酒蔵、菊の司酒造16代目蔵元(予定)。
地元盛岡で生まれ育ち、明治大学を卒業後ブーメランで蔵入り。
日本酒「菊の司」「七福神」「平井六右衛門」を醸してます。
1991年10月12日生まれ。たまの休日はデジイチさんぽ。
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