ベラルーシ混乱 正統な新政権の樹立を
2020年8月19日 07時18分
「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領に対し、市民の抗議デモが燃え盛っている。事態収拾には出直しの大統領選を行い、正統性を持つ新政権を発足させる必要がある。
発端は九日の大統領選。ルカシェンコ氏が約八割の得票で六選を果たしたという中央選管の発表に、市民が「不正選挙だ」と怒りの声を上げた。
実際、ある地区の選管では幹部が選管委員に圧力をかけて、最多得票したのは野党候補のチハノフスカヤ氏なのに、これをルカシェンコ氏に改ざんさせた。圧力をかける様子を録音した音声データがネット上で拡散し、当局側も改ざんの事実を認めた。
一九九四年の大統領選で当選したルカシェンコ氏は、瞬く間に強権支配を確立した。野党勢力を弾圧し、メディアの口を封じた。
今回の大統領選でも、手ごわい対抗馬になりそうな人気ブロガーの身柄を拘束した。立候補を阻まれたこのブロガーの代わりに出馬したのが、妻であるチハノフスカヤ氏だ。
抗議デモは首都ミンスクばかりでなく地方都市にも波及。暴動に走ったりせず平和的な意思表示だ。ところが警察は暴力で弾圧し約六千七百人を拘束した。これへの反発も重なり、大手国営企業ではストの動きが広がっている。
ベラルーシ人は温和で勤勉な民族性である。抗議デモに訴えるのはよほどのことだ。
四半世紀余も続く独裁体制がもたらした閉塞(へいそく)感に加え、「新型コロナウイルスにはウオッカが効く」と奇矯な発言を繰り返すばかりで無策のルカシェンコ氏には、国民も愛想を尽かしたのだろう。
国民はルカシェンコ氏の退陣と公正な大統領選のやり直しを求めている。ルカシェンコ氏は民意を受け入れるべきだ。
「私は声を盗まれた」と記したプラカードを掲げて、ベラルーシ国立交響楽団の団員らは合唱して抗議の意思を表した。人々は声を取り戻そうとしている。
ロシアと中国の両首脳が早々とルカシェンコ氏に祝意を伝えたのに対し、欧米は選挙結果を認めていない。
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、ベラルーシのコロナ感染者は約七万人。人口は日本の一割にも満たないのに、感染者は日本よりも多い。ところが、多くの人々がマスクも着用せずにデモに参加している。事態収拾が急がれる。
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