おたくだらけのプレゼン祭り最終編です。
開催概要はこちら。
⑥「pixiv小説ランキングから見る腐女子トレンド動向調査」
★発表者紹介★
二次元出身アイドルおたく。ジョジョとか遊戯王とかアンジュルム。それはそれとしてpixiv小説ランキングをウォッチする謎の趣味を続けているので、旬ジャンルの動向にやたら詳しい。(Twitter:@ponpokotnktnk)
これまでのプレゼン内容からも分かるとおり、今回の発表者達は二次元畑のオタクが多いものの、みんなあんまり旬ジャンルに詳しくないのです。四季折々のお祭り騒ぎを視界の端に捉えつつ、それぞれの専門分野にこもりがち。
そんな我々が女オタク・覇権ジャンル史概論を基礎教養として学べる機会が欲しい!!
ということでpixiv小説ランキングウォッチャーに一肌脱いでもらって、女オタク二次創作の遙かな歴史を振り返りましょう。
「では、pixiv小説ランキングから見る腐女子トレンド動向調査の結果について発表させてもらいます。」
「わたしはずっと前から言ってるんですけど!!!」
(一同爆笑)
「pixiv小説ランキングは腐女子の流行を最も反映するものだって!」
「わたしは多分高校生ぐらいの頃から主張してると思う!」
「仮説ですらなく持論…?」
「pixivとは、ユーザーがイラストや小説を無料で投稿・公開できるSNSのことです。オタクの大部分が利用していると思う。毎日その日の人気作品がランキングで公開されます*1。」
「今回はこの持論がホンマなのか?っていうのを本気でみんなに証明しようと思って!!!!」
(一同笑)
「pixivの小説ランキングをかなり遡りました!!」
「集計してる…!!アホやん」「すげ~~」
「2011年から2019年まで各年1月、4月、7月、10月の1日時点の小説デイリーランキングの1~10位を集計してみました。」
「アニメのクールが変わるタイミングのランキングを調べることで、先クールのアニメがすべて終了した時点でどの作品のどんな二次創作が盛り上がっていたのか?を明らかにしようと考えました。」
いまだかつてこんな集計を実践した人間がいたか?アホなんか賢いんかわからん
「集計対象は、”ジャンル”つまり二次創作における原作作品名と、小説の内容です。BL、いわゆる男女カプ=NL*2、夢小説、その他に分類しました。」
「腐女子トレンドってタイトルにしましたけど、正確に言うと女オタク二次創作トレンドかな。」
「これらの結果を踏まえて、各年の”覇権”がどの作品だったか?という結論を導きます。皆さんの記憶と照らし合わせてみて下さい。」
「ほんとはサービスを開始した2010年まで遡りたかったんですけど、どう頑張っても2011年6月21日以前には遡れなかったので、2011年度だけは7月と10月の2回集計になっています。」
「なので、2011年から順に振り返って、昔の流行を懐かしんでもらおうと思います!」
「懐かしみた~い」
「それに加えて、ちょっと特殊な設定の流行をピックアップして私が解説します!!!」
「すげえ」「何も知らない」
「みんな知らないと思うけど私は読んでたので。そして最後は2019年のトレンドの実態に迫ろうかと思います。」
力強すぎる……
「問題です。」
(一同爆笑)
「問題???!!!!!」「ヤバい」
「2011年、(女オタクの中で)何のアニメが流行っていたでしょう?」
「タイバニ??????」
「正解!!!!!」
(拍手)
この後もクイズ形式で進んでいくから、身に覚えのある人は記憶を辿って考えてみてね!
「ヤバ~~~イ」
「せやった、タイバニとアザゼルさんやった」
「見ての通り2011年、同年4月から放送された『TIGER&BUNNY』のBLが圧倒的覇権。」
「あの頃BLばっかりやったよね」「確かに~~!!!」
「色んなカップリングのBLが軒を連ねてたのはなんとなく覚えてるんじゃないかと思います。」
「まぁタイバニに関しては特定のカップリング勢力が圧倒的でしたが…」
「ランクインした特殊設定として、女体化は説明なくても分かると思う。この時期といえば○○ちゃんねる風小説。」
「あれ、知らないですか?めちゃくちゃ流行ってたんですよ。」
「知らんくてめっちゃバカにされた……」
「みんな一回ぐらい2chまとめサイトとか見たことあるでしょ?それのパロディ小説です。」
「これはタイバニとめっちゃ相性が良くてえっっっっらい流行った。モブがいないとヒーローは成り立たないじゃないですか。だからモブがキャッキャしてヒーローの目撃情報とかを語る形式がウケました。」
「2012年には○○ちゃんねる風小説を簡単に投稿できる○○ちゃんねるジェネレーターなども登場しました。」
「しらん~~~」「そうなんだ……」
「○○ちゃんねる風はタイバニで完全に定着して、今でも毎年たくさんの作品が出てる。もう定番化しちゃってますね。」
「ファッションアイテムみたいに言うなよ」
「ネットのある現代設定の作品ならどこのジャンルにもわりと合うので、皆さんよく使われています。」
「じゃあ2012年と言えば?」
「ガールズ&パンツァーちゃうんか」
「絶対違う」
「アベンジャーズ?」
「それはお前だけや」
「アニメ?」
「アニメです。ヒントはジャンプ。」
「黒子のバスケ!!」
「はいはい大正解!!!!おめでとうございます!」
「黒バスか~~~~」
「2012年は、『黒子のバスケ』のアニメが4月から9月まで放送されてました。」
「花吐き病!!!!」
「2011年12月までアニメが放送されてた『Fate/Zero』なんかも1月には流行ってて、でもタイバニがちょっと盛り返したかと思ったら、黒バスが始まった途端にもう黒バスBL一色。」
「一瞬なんや……」
「旬ジャンルが始まる時は一瞬。」
(一同爆笑)
「名言出た」
「旬ジャンルはすべてを塗り替えていくんです。」
「放送が4月からだから4月1日時点の集計にはないんやね」
「そうそう、1クール終わったくらいで爆流行りしてるっていうパターンが多いね」
「黒バスで特に多かった特殊設定は“総受け”。」
「あるキャラクターが他のキャラ全員に対して受けになるやつです。主人公の黒子がキセキの世代っていうカラフルな髪の人たちにモテるっていう作品が多かった。」
「リボーンとかでもよくあったやつね」
「常に一定の需要があるけど最近はあんまり見ないかな?でも主人公総受けは特に人気ありますよね。黒バスは条件が整ってた。」
「じゃあ2013年。これは今完結間際で話題ってのが大きなヒントです。」
「進撃?」
「正解!!」
「あっ、その時期なの?!」
「そうなんです!!ただ……」
「「エエ―――――ッ?!」」
「あらまあ……」
「『進撃の巨人』は2013年4月から9月までアニメが放送されて、pixiv小説でも7月頃には流行ってたんですが、これがちょうど『黒子のバスケ』の原作が盛り上がってた時期だったんです。進撃の勢いに負けず10月には盛り返してきました。」
「Free!!は思ってたよりも弱いな」
「言わんとってくれ」
「特殊設定としてはホラー、”嫌われ”とか。○○ちゃんねる風はほんとに安定で常にランクインしてるし、進撃の設定が辛すぎるあまりほのぼの現パロもよく見られた。」
「”逆行”って何?」
「え、知らないですか??」
「えっ全然知らん!!」
「”逆行”とは、キャラクターが過去の時間軸に精神のみトリップして過去の自分に乗り移ったり、成り代わったりして、人生をやり直すという設定です。”逆行”するのは主に過去に対して後悔を抱えているキャラクターですね。」
「私も二次創作しか読んだことないので詳しくないんですけど、黒バスにはかつてキセキの世代と確執があって決別した灰崎君ってキャラクターがいるんです。」
「灰崎逆行ってこれか~~!!!!」
「そんな灰崎君がひょんなことから過去に逆行してしまって、キセキの世代と楽しく過ごすか、逆に最初から全く関わらずに過ごすか……みたいな、灰崎君を幸せにしたい人によるif設定。やたら流行っててめっちゃ読みました。」
「2014年はある特殊設定が大流行しましたね。」
「え~わからん……もう怖い怖い」
「特殊設定が流行る??」
「あ~あれか?あれや!オメガバース??」
「すげえ!一発!ようわかったな!!」
「おおお~~~~~」
「黒子すげ~な」
「『黒子のバスケ』、驚異の三年連続覇権です。」
「なぜこんなに黒バスがpixiv小説で強かったのかを個人的に考察すると、一人のオタクが作った二次創作の特殊設定が広く浸透して、三次創作っぽい営みを繰り返すのがかなり盛んだったと思う。」
「灰崎逆行もそうだし、”黄瀬君が地味だったら”というif設定もありました。みんなで色んな設定を順々に楽しんだから、長く天下が続いた。」
「いけるとこまで腐女子が食い荒らしたんやな」
「逆に言うと、黒バス界隈で今のpixiv二次創作小説のフォーマットの素地が生まれたんだと思う。」
「なるほどね」「何をこんなに感動してるんや私は」
「ハイキュー!!は巻き返してエラい」
「2014年は4月から9月まで『ハイキュー!!』のアニメが放送されていたので、後半からは巻き返しました。13年の10月から14年6月までは『弱虫ペダル』もやってて、目立つほどではないけどちらほらと。」
「そこで特殊設定としては、LINEのやりとり風の会話文形式で話が進んでいくLINE風小説なんかがあらわれました。黒バス、ハイキュー!!、弱ペダが全部高校の部活モノだからこの時期に流行りだしたんだと思う。」
「黒バス・プリキュアって何?めっちゃ気になる」
「この時期に混合・クロスオーバーも流行りはじめてるんやね。黒バスプリキュア混合がどういう内容かはわからんな。」
「外せないのはやっぱり”オメガバース”。こんなに浸透した特殊設定ある??」
「男と女以外にα・β・Ωの三種類の性がある世界で、それぞれの性の葛藤なんかが描かれることが多いです。」
「調べたところ、pixiv小説での初出は一応2013年かな?多分海外の二次創作を読んでた人たちを中心に。2014年初旬くらいに火が付いて、じわじわと市民権を得るようになりました。」
「Twitterでオメガバース設定の説明が結構バズったのがきっかけやんね」
「ケーキバースは流行らんかったな」
万一オメガバースを知らない人がいればピクシブ百科事典の該当記事を読んで下さい。
「2015年が大人気ゲームがサービス開始、これめっちゃわかりやすい。」
「刀剣乱舞?」
「正解!」
「あ~~~やりはじめたのそのくらいや…」
「「「うおおおおおおおおお」」」
(一同爆笑)
「めっちゃ感動しちゃった」
「すごい、すごい画像だ、これ写真撮っとこう」
「2015年は、1月に『刀剣乱舞』がサービス開始したことにより、統計史上はじめて夢小説のTOP10入り数がBLを上回りました。」
(拍手喝采)
「刀剣乱舞はご存じの通り、自分が審神者として刀たちを所持して戦わせるゲームなので、夢小説との親和性が超高い。流行るのは自明。」
「逆にとうらぶのBLってこの時期全然ないんやね?」
「あるんやけど、おそらくキャラクターが多くてカップリングが散逸してるせいでランキングには入ってない。後でも触れるけど、とうらぶは夢小説よりBL小説の方が総投稿数は多いんよね。」
「関係ないけどNARUTOが完結したので10月には結婚関連の小説も上がってました。」
「刀剣乱舞のおかげで流行した特殊設定もたくさんあります。」
「わからんのばっかり……」
「”男主夢”ってどういうこと?」
「男の人が審神者となって刀剣男子と恋愛する夢小説ですね。」
「夢BL?!!」
「てか”ブラック本丸”って?」
「これ絶対Check!やろ」
「分かるやろ?!!”ブラック本丸”やで!」
「わかんねえよ~~」
「刀剣乱舞の夢小説でよく使われる設定です。ある本丸の審神者として着任した主人公だが、そこでは前任者が傍若無人にふるまい、刀剣たちはひどい扱いを受けていたため人間不信に陥っていた。主人公はどうやって本丸を立て直すのか?!的なやつ。」
「刀剣男子にひどく嫌われるパターンもあれば、交流の中でだんだん心を開いてくれる展開もあり。嫌われ夢小説の一種ですね。これはかなり流行ってるよ!」
「読んでて何が楽しいんや?!!」
「ずっと昔にテニプリ夢小説でもあったじゃない。ヤバい同級生のせいで自分が嫌われちゃう展開。」
「本丸で嫌われ設定作るにはこれしかないんやな」
「あっじゃあ自分が悪いわけじゃないんか」
「話聞けよ」
「加州清光とか長谷部辺りに手酷く嫌われそう」
「わりと長谷部は主のすることですから……って受け入れるタイプかな、DV被害者やから…。」
「2016年もすごくわかりやすいですね!まずは昭和漫画の名作がリメイク。」
「昭和漫画の名作?キン肉マンかな」
「ちげえよ」
「リメイク?はいからさんが通る?」
「ちがう、絶対絶対分かるから!」
「ガラスの仮面はずっと続いてるやろ?」
「おそ松さん!!!!」
「あーーーーー」「めっちゃ流行ってた」
「もう一つ話題になった、ある人気作品の映画といえば?」
「全然ちがう。」
「遊戯王?」
「それは私の中でしか話題になってない。」
「何系の漫画?」
「老若男女みんな知ってます。」
「BLEACHの実写化?」
「ちがうわ!!」
「実写じゃない!!!毎年やってます。」
「ポケモン?」
「コナン!!!!!!!!!!!!」
「正解!!!!!」
「あ~~~~わかった」
大喜利大会
「先ほどまでランキングを埋め尽くしていた刀剣乱舞・夢小説を引きちぎる、『おそ松さん』のBL小説たち。アニメの放送は2015年10月から16年3月まででした。」
「引きちぎられてる……」
「全員死ぬんやろ」
「4月に劇場公開されたのが『名探偵コナン 純黒の悪夢』。安室さんと赤井さんが観覧車の上で殴り合うやつですね。」
「あ~観覧車デート」
「これが話題になり、名探偵コナンのBL作品、特に赤安が16年の後半にランク入りしてきます。」
「ここからか~」「もうそんなに経った?」
「コナンって先にBLが流行ったのか」
「そうですね。昔同人サークルが公式と法律トラブルになったので、わりと繊細なジャンルだとされてて、この時期くらいは学級会も多発してたみたいだから爆発的とまではいかないかな。おそるおそるやってたんだと思う。」
「一方おそ松さんには何のストッパーもない。」
「これもわかりやすいですね、2017年はオリジナルスポーツアニメが強かった。」
「オリジナルスポーツアニメ?Free!!ですら覇権じゃなかったのに?」
「ツルネ?絶対違うな」
「はい!ユーリ!」
「正解!!」
「あーーーーー全然履修してなさすぎてわからん」
「1月ヤバ!!!」
「『ユーリ!!! on Ice』は2016年10月から12月の放送で、2017年前半は完全に埋め尽くされてますねえ。」
「でもわりと一瞬で終わってるなあ」
「そもそも1クールしかなかったしね。でも瞬間最大風速がヤバかった。」
「後半は”覇権”と言えるほどのジャンルがない時期ですね。ちょいちょい復活してくる刀剣乱舞の夢が強い。あと、FGOが入ってる理由は分からなかった。サービス開始とは時期ずれてるし、有名キャラの実装とかイベントとかかな?」
「ちなみにユーリは作品との相性が良かったのか、オメガバースものが多かったです。」
「ああ~~~」「ぽい……」
「運命の番……わかりやすいですね人間は」
「2018年は大人気作品の映画がふたたび話題になりました。」
「またコナンちゃうん?」
「そうなんですよ!」
「「「うおおおおおおおおお」」」
本日二度目の絶叫。
「ゼロシコね!」
「夢小説、安室の影響でBLに勝利?!」
(一同爆笑)
「2018年は4月に公開の『名探偵コナン ゼロの執行人』で安室さん人気がドエラいことになりました。」
「『純黒』の頃はおそるおそるだったのに……」
「オタクがいけるんちゃうか?と気づいたタイミングでゼロシコが来た。」
「公式も安室の女を許してしまった。」
「名探偵コナンの夢小説が歴史に残る圧倒的大勝利を収める年となりました。」
「おっさんずラブ、がんばってる」
「特殊設定の”なりかわり”は、転生ものの一種。現世で死んじゃって気づけばアニメや漫画の登場人物に生まれ変わってました!ってやつ。容姿はキャラクター、意識だけが夢主人公になります。」
「アイデンティティ混乱せーへん?」
「強いキャラの特性や能力を使えるうえに、前世である現代の記憶や知識も残ってるので超絶無双できる。俺TUEEE系として割と流行ってて、最近だと鬼滅の刃でよく見ます。」
「具体例は?」
「生まれ変わったら胡蝶しのぶになってたとか」
「う~~ん、お手軽にしのぶさんポジを味わいたいオタクのエゴだ……」
二次創作は全部オタクのエゴだよ
「今年の覇権、これは皆さん分かりますね?」
「はい、鬼滅♡」
「今年は4月から9月まで『鬼滅の刃』が放送されて、後半は一気に大人気でしたね。鬼滅ジャンルでは、なぜか最初からBLではなく夢小説が流行っています。」
「え~~~すごい?」「なんで?」
「誰との夢?」
「色んな柱とか?」
「命の危険があるやん」
「ていうかそもそもBL、もう下火やな」
「腐女子死んじゃったんかな」
「5年前にアニメ化してたらBLだらけだった?」
「これはわたし的にもすごく不思議で…」
「ド直球」
「ちょっと調べてみました。」
「なにをやねん」
「同じく夢小説人気の高い刀剣乱舞と鬼滅の刃、二つの作品のBL小説タグと夢小説タグで作品数を検索してみました。」
「すげえ」
「実は、刀剣乱舞に関してはなんだかんだでBL作品の方が多いんです。」
「あんなに夢小説との相性が良い作品なのに!」
「ところがどっこい鬼滅の刃は、夢小説がBLを完全に引き離してますね。」
「あんなに殺伐とした展開なのに……?」
「なぜ鬼滅の夢小説が人気なのか?自分なりに考察してみたのがこちらです。」
「まずは週刊少年ジャンプで連載中であり、オタク初心者も含めてだれでもアクセスしやすいコンテンツだと言えます。しかも、生きるか死ぬかのバトル漫画。」
「そして大事なのが”柱”という特別な集団が存在すること。これは血筋に関わらず、才能・努力によって加わることができる最強集団です。」
「これらの要素を見て、なんか見覚えありませんか??」
「血筋問わず強い人の集団、ジャンプで連載してるバトル漫画」
「ええっ」「怖い」「ジャンプ?!」
「生きるか死ぬか?テニプリ??????」
「柱なんておらんやん」
「おるやろ」
「越前、お前は青学の柱になれ?」
「違うよ!」
「血筋関係ないならジョジョじゃない」
「わかった、リボーンや!!!」
「そう、10年ちょい前に夢女界で覇権を握った『家庭教師ヒットマンREBORN』と『BLEACH』です!」
「いえ~~~い」
「確かに構造はちょっと近い」
10年ちょい…前……??????
「まず前提としてジャンプ作品は中学生でも手軽にアクセスできるし、物語もわかりやすくて男キャラが多い。」
「あとは強くてカッコイイカリスマ集団に自分でも才能があれば入れることがポイント。しかも”水柱”、”十番隊”、”雲の守護者”とめっちゃわかりやすい二つ名・役職名が付いてるのもGOOD」
「リボーンでは”雪の守護者”、BLEACHでは”零番隊”、鬼滅では”○柱”が大量発生してるわけですね。」
「あ~~色々思い出してゲロ吐きそう」
「バトル漫画の世界では強くなければ生き残れません。裏を返せば、自分に最強設定さえ付けてしまえば生き残れるし憧れの部隊にも入れて、憧れのキャラクターともカップリング組める。さすがだねとか言われたらめっちゃ気分いいし一石百鳥ぐらいある。」
「このように、鬼滅の刃は夢小説向きの要素がめっちゃ揃ってるんだなってことが過去の傾向からもわかるのです。しかし、BLEACHやリボーンが流行ってた時期とは一つだけ違うことがあります。」
「それは”転生”の流行です。思い返せば10年前の当時も”異世界トリップ”が若干流行ってましたね。」
「風呂入ってたら飛ばされるやつな」
「犬夜叉の見過ぎやったな」
「”異世界転生”がトレンドランキングに初めて登場したのは、2016年。異世界転生ものの代表格である『Re:ゼロから始める異世界生活』のアニメ放送も2016年。なので、この年から大きなブームが始まったのだろうと言えます。」
「じゃあ”異世界転生”と”トリップ”の違いは何か?」
「トリップはさっきも言った通り、日常生活を送ってたらいきなり異世界に飛ばされてどうしよ~ってやつ。今流行ってる”転生”は、まず現世でとりあえず死にます。そして生まれ変わる。」
「二次創作小説を書くにあたって、トリップと転生の共通のメリットは、原作(異世界)の世界観を描写して説明する必要がないこと。例えば鬼滅の世界では”鬼”の存在は一般人に隠されているじゃないですか。」
「夢主人公が鬼滅世界の一般人として生まれていると、”鬼”の存在を初めて知ったりするくだりがどうしても必要。BLEACHでも死神の概念を理解しないといけない。ひょんなことから鬼滅の世界に転生しちゃった!の一文で、そういった面倒な描写を一切省ける。」
「逆に転生もの特有の設定が、”転生チート”。トラックに轢かれたりして死んだあと、転生するまでの間に神様に会って。」
「神様に会うの??!!!」
「これは結構ベタな展開やで!!」
「死んじゃったのはウチらの手違いなんだけど、もう生き返らせることはできないからなんか能力を授けましょう、的なね。」
「あと、これはトリップでもありうるけど、現世での知識や能力を異世界でフル活用して無双するってのもあります。鬼滅は大正時代モチーフだからこちらのパターンも多い。」
「そして異世界転生ものとトリップとの一番の違い、それは現世に帰る必要がないことです!」
「異世界トリップものの長編連載作品では、やっぱり現世に帰りたいという思いが恋愛にせよ戦いにせよすべての邪魔をしてしまって、帰る方法を探すことになる。その点、現世で死んでたら不可逆だから異世界を全力で楽しむしかないですよね。」
「現世への未練を消すことは、すべてにおいて都合がいい。結局転生ものは面倒がなくて都合がいいから流行ってるんです。今や2019年のトレンドランキングは転生がほぼ1/4を占めてます。」
「pixiv小説ランキングは確かに腐女子トレンドを反映していました!!おめでとうございます!!!」
(拍手)
「時代や作品に合わせて、より都合のいいアイテムを生み出しながら、おなじような流れをオタクは繰り返しているのだと分かりました。」
「愚か~!楽しい~!!!」
「多分またそのうちBLの波も来ると思うよ。2017年のランキングを見て2019年がこんな状態とは誰も思わんかったし、正直予想は難しい。」
「でもその時々の旬を知るためにpixiv小説ランキングを眺めるのはとっても楽しいので、皆さんもぜひこの虚無の趣味をお暇な時にどうぞ!ちなみに最近は剣盾のキバナさん夢がめっちゃ流行っています。」
「それな~」
後日譚
このブログをアップするにあたって発表者に確認を取ったところ、以下のメッセージが送られてきました。
pixiv二次小説を巡る状況は刻一刻と変化しているようです。
「昨年末のプレゼンで鬼滅が夢人気高い理由!などとドヤ顔で語ったのにも関わらず、3月初めに観測を行ったところ、夢とBLの作品数が逆転していることに気づきました……不甲斐ない。」
「考察したのだけど、明確な理由はわかっていません。
アニメの放送が終わったためブームが一段落ついた、pkmn夢に作者が移動した、原作で熱い鬱展開が繰り広げられているため関係性萌えのほうが盛り上がっている、etc...」
「真相はわかりませんし、複合的に要素が絡み合っていると思うので、ひとまず今回はBLの健闘を称えて皆さんそれぞれお好きな二次創作を楽しみましょう。
ありがとうございました。」
☆勝手に講評☆
オタクはすぐに過去の思い出を語りはじめるけど、こういうデータって意外と見たことなかった。
おそらくすでに削除された作品等もあり、当時のランキングとは誤差があるものの、女オタク史を語る際の面白史料になるのではと思います。
ていうか、二次創作小説がpixiv小説に一元化されてからもう9年も経つんですね……。
個人サイト時代の思い出を口伝するのも楽しいですが、pixivのおかげで私たちはこうしてアーカイブを辿ることができるようになりました。
(連載終了作品とかにハマった時、過去の遺産が残ってるのマジありがたいよね…)
こうして振り返れば、かつての旬ジャンルの時代に咲き誇った二次創作作品達が次の季節のジャンルの土壌を作り、また新たな二次創作を育んでいるんだな。オタク・サークル・オブ・ライフじゃん。
――――――
さてさて、今回のプレゼン大会はこれでおしまいです。
6つのプレゼンはどれも愛に溢れてて、それだけで面白かったですね。好きなものについて好きなだけ話すことはきっと健康にもいいですね。みんな徹夜作業してたけどね。
これからも楽しいオタク・ライフ、そして楽しいプレゼン大会を通じて日々不断に学びを深めてゆきましょう。