[PR]

 政府は今年度からの3年間を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」と位置づけ、省庁ごとの課題を達成する時期の目標を今月初めに公表した。

 取り組むべきテーマは多岐にわたる。なかでも子どもたちの性被害の根絶は、社会に課せられた大きな責務だ。

 警察庁によると18年に認知された強制性交事件1307件、強制わいせつ事件5340件のうち、被害者が中学生以下のものがいずれも2割を占めた。各都道府県にあるワンストップ支援センターの活動状況に関する内閣府の調査でも、電話相談の約1割、面談の2割弱が中学生以下からの相談だった。

 子どもの場合、加害者が家族など身近な人で、他人に打ち明けられないまま被害が継続することも多いといわれる。

 性犯罪被害の深刻さに対する認識は深まり、17年に刑法が改正されて刑罰も厳しくなった。それでも不十分との指摘は強いが、子の被害を防ぐ視点から見ると、手当てを急ぐ必要がある事項が山積している。

 そのひとつが、教員や部活動などの指導者による加害への対応だ。先の改正で、18歳未満を監護する立場にある親などが、その影響力に乗じてわいせつな行為や性交をすれば、暴行や脅迫などがなくても処罰する条文が設けられた。

 だがコーチらはここで定める「監護者」に当たらない。強い立場の者にあらがうのは、とりわけ若年者には難しいことをふまえた検討が必要だろう。

 性行為をするだけで犯罪とされるのは、相手が13歳未満のときだ。外国に比べてこの年齢が低すぎるとして引き上げを求めている人権NGOもある。

 刑事法の問題だけではない。

 学習指導要領は中学の段階でも性交や避妊を扱わないことにしている。これでは被害に遭っても、自分の身に起きたことを十分理解できない恐れがある。人間にとって性とは何か、互いに尊重し合うことがいかに大切かを義務教育の段階から伝え、その一環として被害を受けた場合の対処も教える。そんなふうに見直すべきではないか。

 18年度にわいせつ行為などで処分された教員は282人で、被害者の約半数は自校の児童生徒か卒業生だ。免職後も3年経てば教員免許を再取得でき、他県に移って同様の非違行為をする者もいる。政府は取得条件を厳しくする考えだ。

 職業選択の自由は保障され、罪を犯した者の社会復帰を阻むことはあってはならない。だが被害の重さを考えると、現行制度はいかにも緩い。学校を安全な場所にするため、相応の制約を課すのは当然だろう。

連載社説

この連載の一覧を見る
こんなニュースも