コロナ禍が日本経済に刻んだ巨大な爪痕が、数字の上でも確認された。この事態を繰り返さないためにも、感染が大きく広がる状況を防ぐ必要がある。
内閣府が昨日発表した速報によると、4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、1~3月に比べ7・8%も減った。四半期のマイナス幅としては、リーマン・ショックや石油危機の時を大きく上回り、戦後復興以降では最悪の落ち込みになったとみられる。
緊急事態宣言に前後した外出・営業の大幅な自粛の影響で、家計消費が8・6%も急減した。輸出も2割近いマイナス。雇用者報酬も落ち込んだ。この四半期だけで約10兆円のGDPが失われた計算になる。
一方、4月をピークにした感染拡大がいったん収まり、緊急事態が解除された後は、経済活動は徐々に回復した。業種や部門による明暗を伴いつつも、6月には小売りが復調し、鉱工業生産も上昇に転じた。デジタル化が進展する動きもある。順調にいけば、年単位でみたときの落ち込み度合いは、ある程度緩和できそうだ。
問題は、復調が保てるかどうかだ。懸念はすでにある。7月に入ると回復の勢いが鈍り始め、感染が再び拡大傾向を見せるなか、速報性のある景気ウォッチャー調査では、先行きの見通しが再び悪化に転じた。
インフルエンザも流行する秋冬に向けての警戒も怠れない。医療と防疫の強化は引き続き経済活動の前提条件になる。4月のように全国で幅広く人々の行動が制約される状況が再来すれば、経済もよくて底ばいが続き、場合によっては事業継続の断念や雇用喪失などによる一段の悪化の恐れもある。
そうしたリスクに備え、政府・日本銀行は金融システム危機や失業の急拡大などの経済底割れを防ぐことに万全を期すべきなのは言うまでもない。
さらに、そのような事態に至らせないためにも、感染拡大抑止と中長期的な経済回復を両立する手法の精度を上げる必要がある。感染の広がりが見られた場合は、できるだけ先手を打ち、地域や業種など対象を限定した休業促進策を工夫するといった手法を洗練させるべきだ。
マクロ経済の復調が維持できた場合にも、留意すべき問題がある。ショックの負担が観光や外食といった業種に集中し、しかもその分野自体の完全な回復は当面見通しにくいことだ。雇用面では、非正規労働者や女性にしわ寄せが来ている。
格差拡大は放置できない。所得や雇用の安全網を十全に準備することに加え、転業や転職の支援策の充実も検討すべきだ。
トップニュース
速報・新着ニュース
あわせて読みたい
PR注目情報