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最強賢者の異世界無双 〜不遇とされた転生賢者はチートと現代知識で世界最強〜 作者:蒼月浩二

第1章:魔法学院入学編

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第2話:最強賢者は圧勝する

 俺はクソガキ(少年A)からの決闘を受けた。


「ユーヤ、こんなの受けちゃってどうするの!?」


 珍しくセリカ姉さんが動揺していた。


「まだ俺は弱いけどさ、それでも弱いなりの戦い方ってものがある。経験では誰にも負けないよ」


「何言ってるのよ! ユーヤはまだ3歳だし……戦闘経験ゼロでしょう?」


 あ、そうだった。LLOではもう何年もプレイしていて戦い方くらいは初めて使う職業でもわかっているつもりだったが、転生してからは一度も戦ったことがない。

 だが、一人での魔法の練習は毎日している。LLOと同じことができるのも実証済みだ。問題ない。


「とにかく、セリカ姉さんはそこで見といてよ」


「そんなのできるわけないよ!」


「男の戦いに口出すなって父さんいつも言ってるでしょ?」


「それは……そうだけど」


「あいつらだって俺を殺しはしないって。もし負けたら家までおぶってくれると助かるけど」


 セリカは諦めたように溜息をつく。


「決闘は認める。……でも、危なくなったらすぐに投了(リザイン)すること。わかった?」


「わかったよ。約束する」


 渋々認めてくれたが、心配なようでそわそわしている。

 前世では俺を心配してくれた人なんていたっけな……。

 母さんくらいだったかな。


「準備はできたか?」


「ああ。いつでも大丈夫だ」


「初めに言っておくが、俺は三歳児相手でも容赦しない。本気で殴りかかるからな!」


 うわぁ。こいつ本物のクズだな。こいつの年齢はおそらく七歳か八歳くらい。三歳児相手に本気で殴りかかるなんて正気の沙汰じゃないぞ?

 まあいい、こんな雑魚に俺は負けない。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!」


 少年が勢いをつけて駆けてくる。

 手をグーの形にしてぶつける気だろう。

 ……さすがに三歳児の俺と少年Aがまともにやりあえば俺はタダでは済まない。

 『賢者』はまだパワーで劣る。


 だが、三年間、俺は何もしていなかったわけじゃない。剣を触れなくても、歩けなくても、立ち上がることすらできなくても、魔法の練習を繰り返した。


 身に着けた中で魔法を使うために便利なのが【トグル】スキルだ。魔法は長期間その性質を維持することができないと思われがちだが、それは違う。

 【トグル】スキルを使うことで魔法のオンオフを自由に切り替えることができる。ゲームでは自己強化魔法でよく使われた。


 LLOでは一部の魔法にしかトグルスキルは適用されなかったが、この世界では違う。LLOと似ていて、異なる世界。それがここだ。

 俺は魔法の創作に成功した。魔力操作に関する魔法教本を熟読し、基本を身に着ければこの程度の魔法は作ることができる。


 その魔法こそが【最短経路(ショートカット)】だ。

 魔法の発動は、あらかじめ条件さえ決めておけば、他の魔法から連鎖的に発動することが可能である。

 LLOではマウス操作以外にも、F1からF12までに任意のスキルやアイテムを登録しておき、押すだけで使えるように工夫していた。それと同じことをこの世界でもすればいいだけのこと。

 それを可能にするのが【トグル】スキルなのである。



 敵が襲ってくる。

 【最短経路(ショートカット)】はオンにしてある。

 俺の目の前には1~9までの数字が書かれたテンキーのAR画像が表示されている。テンキーに設定した数字の順番で打ち込み、まずは跳躍だ。


 右手の操作でAR画像に触ると、俺の身体は勢いよく右に跳躍する。

 少年Aの攻撃を軽くかわすことに成功する。


「なっ……どんな身体能力してやがんだ!」


 どう考えても魔法だろ。そのくらい気づけ。

 レベル差がある相手には同じ条件では絶対に勝てない。そこで大事なのがプレイヤースキルだ。弱い攻撃でも当たれば少しずつ敵を消耗させることができるし、逆にどんなに強い攻撃でも当たらなければどうということはない。


「今度はこちらから反撃させてもらう」


 再度魔法による跳躍で、今度は前方に飛び、少年Aと肉薄する。

 チャンスと思ったのか、拳を突き出してくる。

 やはり、こいつは馬鹿だ。……というより戦闘慣れしていない。甘い。


 右手の操作で【火球(ファイヤーボール)】を使用。

 少年Aの足元から【火球】が噴射する。


「うああああああああああ!!」


 そのまま俺は少年Aの隣を通り抜け、着地する。


「この勝負。俺の勝ちのようだな」


「まだだ……まだ負けてな……」


 少年Aの服に火が燃え移り、火傷を負っている。このままだと危ない。

 手遅れになれば命だって失う可能性がある。俺もそこまでは望まない。所詮は子供の過ちだからだ。


投了(リザイン)しろ。俺は魔法で水を出せる」


「ふざけるな……たかが三歳児相手に……」


 愚かな。この世界の決闘では生死を問われない。殺しても罪にはならないのだ。これは父さんから教えてもらったことなので確証がある。だから、このまま焼死してしまうのだとしても、俺は本当に助けないつもりだ。


 喧嘩は売ってきた方が悪い。この世界の常識だ。


「ボス、もうやめてくれ! 俺たち、ボスがいなかったら……」


「うひっうひっ!」


 少年Bと少年Cが駆け寄ってくる。

 本来は決闘中に他人の干渉は許されないのだが、このような状態なので大目に見てやろう。


「お前ら……」


「命あればまた挑戦できる! ボスなら絶対今度は勝てる! だから、頼む! 投了(リザイン)してくれ!」

「うひっうひっ!」


 少年BCが土下座までしてしまう。


「わかった。……俺の負けだ。投了(リザイン)する」


 勝敗が決したところで、俺は少年Aに【水創造(クリエイトウォーター)】で冷たい水をかけてやる。治癒魔法もかけてやったので後遺症が残ることはないだろう。奴らが蒔いた種とはいえ、俺も少し大人気なかったかもしれない。


 少年たちがいなくなったところで、俺は脱力する。

 魔力を使いすぎてしまったようだ。【最短経路(ショートカット)】は魔法の発動スピードを速くすることはできるが、消費する魔力は変わらない。使いすぎれば当然こうなる。


「よく頑張ったね。ユーヤ。私が家までおぶってあげるよ」


「ありがとう……セリカ姉さ……ん」


 この後は寝落ちしてしまったのでよく覚えていない。気づいたらベッドで寝かされていた。もっとセリカ姉さんの肩を楽しんでおけばよかったとちょっと後悔している。

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