8. 廃忘のドラッグ Zaleplon ザレプロン
※警告※
レクリエーション用途を目的とした医薬品等の適応外使用および過剰摂取は本質的にリスクの高い行為であり、使用者に対し死をも含む不可逆的かつ重篤な障害をもたらす可能性があります。医薬品に関しては極力医師および専門家の指導・監督のもと用法用量を守った適切な使用に努めてください。自己判断による摂取は使用者自らの完全な責任の下、十分な情報収集を行い危険な状況を回避するあらゆる予防措置を講じたうえで行ってください。馴染みのない物質の使用は必ず低用量以下から始め、trip sitterを用意する等の対策が推奨されています。また、許可を経ない処方医薬品の譲渡および売買は法律で禁じられています。責任ある薬物使用を十分に心がけてください。
名 :Zaleplon
別称 :N-[3-(3-cyanopyrazolo[1,5-a]pyrimidin-7-yl)phenyl]-N-ethylacetamide
作用分類 :睡眠剤、鎮静、幻覚剤
化合物分類:Z-drug
危険度 :Monitum
●概要
ZaleplonはPyrazolopyrimidine骨格を有するZ-drugであり、非Benzodiazepine(以下BZ)系睡眠薬として主に不眠症治療のために処方されてます。他のZ-drugであるZopicloneやZolpidemと同様、寝つきの悪さを改善しかつ翌日に残りにくい特徴を有する睡眠薬ですが、反面中途覚醒や早朝覚醒等の改善効果は薄いとされています。ただし、他のZ-drugと比較しZaleplonは薬剤中止後の反跳性不眠の出現とその程度が少ないことを示唆する報告があります。2020年現在日本においてZopicloneとZolpidemは向精神薬に指定されていますが、Zaleplonは医薬品としての承認はされておらず個人輸入による入手が可能です。Zaleplonは他のZ-drug同様、その向精神作用からレクリエーション使用が一部のドラッグユーザーによって行われています。レクリエーション用量でのZaleplonは鎮静、身体的ハイ、混乱、健忘、そして解離・デリリアント・サイケデリクスの各要素が複合した特徴的かつ短命な幻覚が生じることが知られています。また、本ドラッグのヘビーユーザーはスニッフでの摂取を好みますが、この方法では経口よりも効果発現が早くまた強力になります。しかしながら本ドラッグは他のZ-drug同様、中程度以上の依存性を有し耐性もつきやすく時に苛烈な離脱症状も生じます。よってZaleplonの高用量での連用や長期間の慢性的な摂取は避けるべきです。
●薬理
Zaleplonは経口バイオアベイラビリティが約30%、空腹時の場合経口摂取後急速に吸収され30分以内に効果が出現し1.0時間以内に血中最高濃度を示します。消失半減期は用量に関係なく約1.0~1.5時間であり、優れた超短時間作用型睡眠薬として作用します。吸収されたZaleplonはAldehyde oxidase等により99%以上が代謝を受け、1%未満がそのままの形で排泄されると報告されています。理論的にはAldehyde oxidaseを阻害する物質の存在はZaleplonの効果と作用時間を増強すると考えられます。中枢神経系においてZaleplonは他のZ-drugと同様の作用を示します。Zaleplonは脳内のGABA[A]-BZ-Clイオンチャンネル複合体におけるBZ結合部位ω1サブタイプの選択的完全アゴニストとして振る舞い、BZ系薬剤と比較してω2サブタイプに対する親和性が低いことが分かっています。中枢型BZ結合部位には、小脳に多く分布し鎮静・催眠作用に寄与するω1サブタイプと脊髄に多く分布し筋弛緩・抗不安作用に寄与するω2の二つのサブタイプが知られており、ω1選択的なZaleplonは使用後のふらつきや退薬症状が比較的軽度になるとされています(この傾向は他のZ-drugと同様です)。ZopicloneやZolpidemと同様に、Zaleplonは規定用量以上摂取すると特徴的かつ短命な幻覚が誘発されることが報告されています。これらZ-drugの高用量使用が幻覚を発現させる機構は完全には判明していませんが、同じGABA[A]受容体に強く作用するMuscimol(とその前駆体であるIbotenic acid)を含有するAmanita muscaria (ベニテングタケ)が強いデリリアント的幻覚特性を有することから、ある程度共通するメカニズムを有することが示唆されています。
●投与量
・閾値線量 5mg~
・軽度 10mg~
・中度 40mg~
・重度 80mg~
・深度 120mg~
●摂取方法
オーラル、スニッフ
●効果時間
[オーラル]
・知覚 10min~30min
・発症 10min~30min
・ピーク 1.0h~1.5h
・残効果 1.0h~2.0h
・作用時間合計 2.0h~4.0h
●正の知覚的効果
・鎮静
-Zaleplonの鎮静効果は多くのBZ系薬剤と比較しても強いとされています。
・睡眠導入
-Zaleplonはピーク時間が短いため睡眠導入効果を最大限享受できるタイミングは限られます。
・身体的ハイ(中度~)
-中程度以上のZaleplonでアッパー的作用を感じる使用者が多く報告されています。Zaleplonによる身体的ハイは温かく心の奥から込みあがるような幸福感を伴うとされています。
・筋弛緩(高度~)
-BZ系薬剤と比較し軽度です。
・抗不安(高度~)
-BZ系薬剤と比較し軽度です。
・解離効果(中度~)
-他のZ-drugと同様、特に高用量以上の摂取によってDXM等の解離剤に匹敵する意識的・視覚的解離状態が作り出されることが報告されています。しかしながら解離作用よりも鎮静作用が圧倒的であるため、高用量の解離剤でもたらされるような高度解離状態に至ることはないとされています。
●負の知覚的効果
・健忘
-Zaleplonの健忘をもたらす作用は比較的強いと考えられており、使用したユーザーの多くはたとえ低用量であっても効果発動中(特にピーク以降)の記憶欠損を報告しています。
・食欲増進(中度~)
-BZ系薬剤およびZ-drugsに共通する作用です。これらの薬剤は「おいしい」という感情を特異的に増幅させるためと考えられています。特にZaleplonは健忘と脱抑制を発症しやすいため、効果発動中の飲食物摂取を効果終了後に気づくこともあります。
・混乱
・幻聴(中度~)
・反復的摂取の強制
-短期記憶力の低下により意図しない追加摂取、過剰摂取をきたす場合があります。
●幻覚作用
Zaleplonは幅広い用量で閉眼幻覚、高用量以上で開眼幻覚を生じさせることが知られています。生じる幻覚はデリリアント的であり、特に開眼幻覚を伴う視覚異常はDiphenhydramineやDaturaなどの強力なデリリアントに匹敵するとされています。この幻覚作用に加え認識異常、記憶障害も生じやすく使用者に大きな混乱をもたらすことがあります。
●毒性
Zaleplonは単体で使用する限り比較的毒性は軽度であるとされています。しかし、中用量以上のZaleplonがもたらす健忘や幻覚、混乱による怪我や人間関係の悪化などの二次的な被害が生じる危険性があるため、本薬剤をレクリエーション使用する際は被害軽減策を講じることが推奨されます。
●依存性
Zaleplonは連用により中程度以上の身体的・精神的依存形成が報告されています。が、BZ系薬剤や他のZ-drugと比較するとやや軽度であるとされています。
●耐性
Zaleplonの耐性は連日の使用により数週間以内に形成されるとされています。耐性の構築は鎮静・睡眠導入作用から始まり、耐性がついてしまうとこれまでのようなポジティブ体験をするために必要な摂取量が増加していきます。さらなる摂取を行わない場合約2週間で耐性はベースラインに戻るとされていますが、慢性的な摂取後の突然の中断は時に致命的となる激しい離脱症状を伴う可能性があるため徐々に使用量を減少させる必要があります。また、Zaleplonは他のZ-drugやBZ系薬剤と交差耐性を構築します。そのためZaleplon使用中は他のZ-drugやBZ系薬剤の効果は下がりますし逆もしかりです。
●効果終了後、離脱症状
BZ系薬剤程苛烈ではないものの、数週間~数ヶ月程度の慢性的なZaleplonの使用後に突然摂取を中断すると、精神錯乱、不快感、不安、不眠、痙攣、振戦等の離脱症状が高確率で出現します。そのため慢性的かつ高用量の摂取後には数か月かけて徐々に使用量を減少させる必要があります。しかしZaleplonの離脱症状は他のZ-drugよりも軽度であることが多いようです。
●禁忌
・Alcohol、Benzodiazepine等GABA受容体作動物質
-これらの物質との組み合わせは呼吸抑制、鎮静、健忘、筋弛緩、幻覚の作用を相乗・増強するため、予期しない意識消失や深刻な呼吸抑制、混乱をもたらす危険性があります。また、意識消失中に吐瀉物が気管につまり死亡するリスクを増大させます。
・Opioid
-呼吸抑制の増強、過鎮静、意識消失などの可能性があります。
・解離性物質
-嘔吐や意識消失の危険性を高めます。
・覚醒剤
-覚せい剤の刺激作用はZaleplonの鎮静効果を覆うため、脱抑制効果とも相まって両者の過剰摂取をもたらす危険性があります。
●その他特筆事項
・グレープフルーツジュースとの薬物相互作用
Zaleplonは他のZ-drugと同様に一部がCytochrome P450 3A4 (CYP3A4)により代謝されると考えられています。そのため、理論的にはCYP3A4を強力に阻害するグレープフルーツジュースを摂取することでZaleplonの作用が増強されると考えられますが確実な証拠はありません。
[効果レビュー]
報告日時 :20〇〇年λ月η日
報告者 :■ ■博士
被験者 :■■ ■■■ [Cクラス被験者] 管理No.C-00088
※被験者に不安障害や睡眠障害といった持病は特にありません。
※実験段階で被験者は特定の薬物依存経験はありません。
①実験記録
『データ抹消』
注記
実験記録は記録途中に被験者の手により削除され、意味不明な文章に置換されていました。なお、被験者はデータ削除の事実とその理由について「途中まで記録をつけていたことは覚えているが削除については全く記憶になくわからない」と証言しています。
②効果発現中の被験者と実験責任者■ ■博士とのメッセージチャットの抜粋
>「何か変化は感じますか?」22:09
< 22:10「今のところ特に変化がなく怖いくらいですね」
>「10mg増やして40mgにしてください」22:12
< 22:13「わかりました」
< 22:25「眠気どころかむしろそわそわ落ち着かないくらいです」
>「しばらく様子を見てください」22:28
< 22:34「メガネがあったから物が二重にみえてた」
>「どうしました?」22:36
< 22:41「カーテンに煽られた」
>「C-88 大丈夫ですか?」22:44
< 22:54 「部屋の小物達が遊び初めて笑」
「演劇を見させさせてる」
「キーボードの文字が一部ポーンと起き上がって押せないシンふぁに」
>「C-88 現在の投与量と状況を報告してください」23:06
< 23:10 「周りのこたちがアニメを見たことがないんだって」
「だからもうちょっちょで画面が深い」
「になりゅはずだったmですのにそのきまってんあーの通知のせいですわ」
「ちょっとまってこれなんこいれたの?」
>「C-88 繰り返しますが現在の投与量と状況を報告してください」23:18
所感
被験者は最終的に計60mgの摂取を行った後気絶するように眠りにつきました。しかし被験者は40mg摂取以降の記憶がなく、支離滅裂なチャットメッセージを送信したことも覚えていないようです。
■ ■博士
●入手方法
・Zaleplon含有の医薬品は個人使用に限り海外からの個人輸入による入手が可能です。
-個人輸入した医薬品は完全な自己責任であることを認識したうえで使用してください。
●法規制
〇日本
・2020年現在、Zaleplonは医薬品の成分として日本では承認されていません。
〇日本以外
・アメリカなどの一部の国では乱用性のある薬物として規制されており、処方箋のない本医薬品の所持は犯罪に問われる可能性があります。
害虫駆除をしていた男が異世界でも害虫駆除をする話。 前世の知識を活かし魔物駆除を生業とするナオキ・コムロだが、弱い魔物だけ駆除するといっても数が普通ではない。//