8.12連絡会アピール
8月12日の日航機事故から4ヶ月がすぎた今、私達遺族は手を取合って立ち上がることを決意いたしました。私達が手を取り合うことができるのは、私達の最愛の人達が、あの死の前の無念と苦痛の時間をーつの空間で共有したという事実と、残された者同士が、その悲しみ、怒り、悔しさを共感できるという認識があるからです。その強い絆で支え合いながら、私達は、この事故の示唆するところを世に広く問いかけていきたいと考えています。
この連絡会の目的は、遺族相互で励まし合い、助け合い、一緒に霊を慰めていくことです。また、事故原因の究明を促進させ、今後の公共輸送機関の安全性を厳しく追究していくことです。私達は、あの忌まわしい出来事が繰返されないために、世界の空が安全になることを心より願って行動を起こしました。
私達は、独自の主体性を守り、他のいかなる政治、宗教、組合等の団体に属することはしません。また、利益を追求することや、会として補償交渉の窓ロとなることはしません。
一家の大黒柱を失い暮らしがなりたたない人、乳呑み児を抱えて日々の生活に追われている人、家族全員を失い一人ぼっちになってしまったお年寄りなど、様々な状況の中で、不安な日々を送っている人達がいます。私達は、この事故でそういう社会的に弱い立場におかれてしまった人達とこそ、心を結び、助け合っていきたいと願っています。
また、事故調査委員会の原因究明を厳しく監視し、事故原因が曖昧にされてしまうことがないよう見守りながら、日航とボーイング社の責任を問うていきます。さらに、運輸省、関係当局ならびに日航、ボーイング社を含む公共輸送事業者に対しても、事故再発の防止のため、抜本的な安全対策を要求していきます。そのことによって、あの事故でこの世を去った人達の霊を、本当に慰めることができると信じます。
私達は、「遺族」と呼ばれ、悲しみに打ちひしがれた姿を期待され、下を向きながら生きていくことに終止符を打つために、あえて会の名から「遺族」の文字を削りました。今は「遺族」を憐れんでいる誰もが、第二、第三の「遺族」となる可能性をもっているのです。私達は、“とうろうの斧”と言われようとも、多くの方々と、共に考え、行動することを宣言し、広く皆さんに呼びかけます。
1985年12月20日 群馬教育会館
8.12連絡会