大韓民国の空にファシズムの幽霊が漂っている。反独裁民主化運動の経歴を誇った文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓国の民主主義に背いた。ファシズムは大衆の支持を背に民主的な手続きで権力を掌握する。政権発足後には民衆と民族を前面に掲げ、宣伝と扇動で仮想敵をつくりだし、自由民主主義を破壊する。ファシストにとって政治は敵と同志による闘争なので、欺瞞とでっち上げを含め、手段や方法を選ばずに敵を攻撃する。ドイツのワイマール共和国でヒトラーが台頭した方法だ。
文在寅政権のファシズムは軟性だ。韓国社会に民主制度と公論の場が残っているからだ。選挙を通じた政権交代の機会も残っている。文大統領を批判しても連行されて拷問を受けたり、職場を追われたりはしない。だから「柔らかいファシズム」なのだ。しかし、物理的テロや警察の脅迫を通じずとも、司法システムのかく乱、情報の隠ぺいやでっち上げを通じてもファシズムを成し遂げることができる。政権寄りのメディア、市民団体、御用知識人はメディア操作と人身攻撃を担っている。公論の場をねじ曲げる御用メディアと知識人は文在寅ファシズムの協力者だ。
大衆政治はファシズムを古典的暴圧統治や軍事独裁とは差別化する。過去の独裁が大衆を抑圧していたのに対し、ファシズムは大衆の自発的支持を得て成長する。大衆が政治主体になる前の段階でファシズムが出現しない理由だ。結局ファシズムは現代の大衆社会の産物だ。ヒトラーの例のように、民主主義が失敗して出現する堕落現象でもある。文在寅政権の軟性ファシズムが大衆の同意に基づく大衆独裁として表れた背景はそこにある。