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ダークサイドFILE No.13

Divine Beasts

作者 DarkStar

「君、・・・・もっと早く走りたいと思わない?」

夕暮れ時、
自主トレのランニングをしていた少女が
突然、後ろから呼び止められる。

存在感のある声に思わず振り向くとそこには、

彼女の背の半分しかないような影。

それは、黒い野球帽に、青色のシャツ、
裾の短いデニムのズボンを履いた男の子だった。


「ど、どうしたの?~。僕?、迷子かな~。」

親切心から彼女は少年に近づく。

「いくら練習しても、無駄だよ。人間なんかの足じゃ・・・・・」

「は、なにいって・・・・・・」

ざわざわ、不気味な風が巻き起こり、
生暖かい風が少女に吹き付ける。

鉄砲のように突き出した少年の手
その人差し指から赤い光が、少女に向かって放たれる。

「さあ、感じて・・・・そう思い出すんだ・・・・かつての姿を・・・・・
 そして捨て去れ、その汚らわしい姿を・・・・・。」

芝居がかった言い回しの少年の声。

そして、指向性の光りが少女の胸元に吸い込まれていくと

「あ、あああ・・・・あああああああ!!!」

と目を見開きながら少女が、がっくりと膝をつき、
両手をわなわなとさせながら、顔の前に持ってくる。

すると細い指の一つが黒ずみながら、太くなっていく。
太くなる中指と退化していく他の指達。

「いや、て、手が手が・・・・・・」

自分の体の変化に少女は、恐怖の声を上げても
その変化は止まらない。

黒光りする中指がUの字に変形していきながら、
手のひらを飲み込んでいく。

「いや、いやああ・・・・」

目に涙を浮かべた少女の体の変化は
それだけではなかった。

靴を引きぢぎり、現れた足も、手と同様の変化し、
腕や足を黒い色の毛が覆う。

少女の首の後ろ当たりからも髪が生えくる。

頭の左右に会った耳は、黒い色を纏いながら上の方へ。

「いや、ひん、やああ、ひあん、あひん、ひん、ひん」

顔から顎が突き出し、歯が一様に平らな物に変わっていく。
大きなつぶらな瞳がさらに大きく、顔に端の方へ移動していくと、
顔全体が縦長になり・・・やがて・・・・。

「ひん、ヒヒン、ヒン、ひん。」

人間の声に混じって、空気が掠れるような声。

完全に変形した両手足を地面につけると、
少女のお腹が大きく膨らみ、体全体を分厚い筋肉が覆っていく。

「ブルルルルル・・・・・ヒヒーーーン!!!!」

数分前まで、手だった前脚を振り上げて、叫ぶ彼女の
声と姿は、一頭の黒い馬になっていた。

「ふふ、さあ、いい仔だ。僕と一緒に行こうね。」

少年が近づくと、彼がまるで主人であるかのように
うやうやしく、頭を下げる馬。
その頭を愛しそうに撫でながら、少年は、馬の背に飛び乗る。

少年の体重を背中に感じた馬は、首を持ち上げ前を向き、肢を前に出す。
それを確認したかのように少年は、馬の首元を優しく叩く。

その意味を解した馬が、すばらしい速さでアスファルトの道路を掛けていく。

夕日が落ち、辺りが暗闇に包まれる。

闇の中に動く影、

家畜小屋に現れたそれに

月明かりに照らされその姿が露わになる・・・。

血のように赤く、胸元の大きく開いた服。
フリルのついたピンク色の短いスカートをゆらし。
頭には、フチのある白い帽子を被った妙齢な女性。

「さあ、あなた達、人間どもにこのまま食われるままでいいの。
 あたしがあなた達を夢のステップへ踏ませてあげるわ・・・・」

そういうと女は両手を掲げ、まるでバレリーナのように
両手を伸ばしたまま頭の手のを合わせるようにしてクルクルと
体を回転させると、辺りが青白い光で満たされる。

その光を浴びた動物たちが体を振るわせる。

背の低い檻に入れられた豚が後ろ足で立ち上がると
肌色の毛が薄くなっていく。

脂肪に覆われたるんだ体・・・・・
雄豚のそれは、がっちりとした筋肉へ。
そして雌豚は、適度に残しながら、しなやかな姿に変わっていく。
渦巻状の短い尻尾が吸い込まれていくように消え、
垂れた耳をピンと立たせながら顔の横へ、
正面を向いた大きな鼻が、下を向けると、そこには・・・・

鼻輪を付けられ、耳には、大きなタグのついた乳牛達。
立派な角が頭の中にめり込みながら、
顔の形を変えていく。
大きなお腹の乳房に切れ目が入り、2つの膨らみなると、
胸の方に移動していく。
鋭い2本の爪の横から、新たな、爪が生え、
それらは、5本の指に姿を変った後
白と黒の斑もようが、白い一色になり、体が小さくなっていく・・・。

バタバタと暴れる雌鶏たちを見かねた女が、網に手を引っ掛けると
それは、刃物で切られたように、裂けていく。
できた隙間から、ニワトリ達は飛び羽地面に着地すると、

体を大きくしながら、白い羽が抜け、翼の先が5つに分かれた。
空を飛んでいた時の名残である胸の筋肉を脂肪が覆うと、
ピンク色の乳首と乳房が現れる。
鍵爪の肢は、爪の鋭さを失いつつ、
平らになり、増えた指がさらに2本足で立ちやすい形に変化していき

顔の中央にある嘴が引っ込んで鼻と、口とに分かれていく・・・。

光が収まった後、

柵の中から立ち上がった。見目麗しい全裸の男女。
耳タブに大きなタグを付け、鼻輪に繋がれた裸の娘。
一糸纏わぬ姿で跳ね回る女・・・・・。

それらを見ながら、赤い服の女は・・・・。

「さあ、私と共に行きましょう。・・・・」

そういう女に従うように、家畜と呼ばれていた人々は、
小屋の外へ歩を進めていく。

・・・・・・・そして同じ頃。

「先輩達、飲みすぎッスよ。」

「うっせーな、俺は飲んでねーよ。」

と今度は別の先輩が食って掛かって来た。
「っていうか、テメー飲みがたんねーんだよぉ」

「そんなぁ、俺酒弱いんすから・・・・。」

酔っ払いの相手に疲れた後輩の会社員。

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

フラフラの先輩二人の体を両肩で支えた彼に
伸びる細長い影・・・・・。

前を向いた先には、小さな2つの影。

(なんでこんな時間に子供が?)

不思議にこそ思ったが、人の事どころではないと
歩を進める

クンクン、クンクン。
近づくにつれ、2つの影から、鼻をすするように鳴らされる音。

そして、

「・・・・・あの2匹いらないね・・・・・」

「・・・・・そうだね。・・・・じゃあ、やっちゃおうか・・・・」
という小さな声。

顔を上げた先には、

子供の姿。
頭から大きな布ですっかり覆り、
先ほどまで逆行で見えなかった顔は、
かわいらしい顔つき。

そんな2人が羽織った布を取ると。
中からは、白い肌が・・・・・。

1人は、胸元がこころなしか膨らんでいるように見え、
もう一人は、股間にちいさなシンボルが見える。

あらわになった姿で初めて、
彼等が男の子と女の子の二人組みとわかった。

しかし、目の前で子供がいきなり裸になれば、
指し物彼も、冷静ではいられなくなった。

「き、君達な、なにを!!!!」

後輩が驚き声に反応した先輩が顔を上げ
彼等の存在を確認すると。
といやらしい顔を全開にして・・・・。

「おーーい。お嬢ちゃんたちそんなかっこじゃあ。
 あぶらい(危ない)おいちゃんたちにやられっちまうよぉ」
と一人が、

「なんなら、お兄さんが、あいてしたるよん。」
 とこちらも、かなり危ない発言だ。

「けがらわしい・・・・・・・人間・・・・・・・」

「うん。早く、消しちゃおう。」

そういった彼等が、両手にをついて
4つんばいになると、

両手足に力を籠め、力いっぱい唸る。

「「ううううううううう・・・・・・・・・」」

その様子は、まるでネコが敵意を剥き出しに威嚇して
いるように見えた

「なんだ、かわいこちゃんが子猫ちゅあんになったかぁ」

「「がるるるるるるっるる・・・・・・・」」

少年の小さな体を覆い尽くすように黄金色の毛が生えてくる。
少女の腕や足が倍に膨れ上がると、その肌には、白い毛が・・・・。

小さな手は残忍なる爪に・・・・
小さな口は、冷酷なる牙に・・・・・

そして、二人の後ろから、鞭のようにしなる太い物が飛び出してくると、
それは、黒い縞の入った尻尾であった。

そこには、巨大な虎が二頭。男達の前に立っていた。

「あああああ・・・・・」

一人しらふの若者は、腰を抜かして驚く。

「おい、俺等相当よっちまったなぁ。」

「そうだな・・・・こんな街中で・・・・」
と言いかけた。一人の首に当てられる白い虎の爪。

次の瞬間には、その顔はぐちゃぐちゃに潰れながら、壁の方へ飛んでいく。

「へ?」
とあっけに取られたもう一人の首筋を今度は、金色の虎が喰らいつく。

奇妙に歪んだまま倒れこむ男・・・・・もうすでに息はない。

そして、倒れこみ肉の塊と化したそれらに、
虎たちは群がり、そしてそれをむさぼっている。


「・・・・・・・・・・・・・うわわわああああああ」

先輩達が虎に食われた!!!。

大きくそして激しく波打つ心臓。
余りの恐怖と驚きとまった呼吸がその反動でやっと動き出す。
なんとか歩けるようになった足で懸命に逃げようとする若者。

しかし、野生のソレは獲物を簡単に逃がすほど、
間抜けではなかった。

助走をつけ、一飛びジャンプすると男の頭の上を軽々と飛び越え
あっというまに男の前に立った白い虎。

若者は、何が起こったのか理解するまもなく、
そのまま押し倒された。

白い虎の顔が近づけられ。
鋭い牙が、若者の目の前に突きつけられる。
血生臭い虎の息が顔に吹き付けられるが。

しかし、虎は一向に若者を食おうとはしない。

そればかりか、その体から、感じるプレッシャーが小さくなると共に、
その体も小さくなっていく。

縦じまの入った毛皮が細くなり、
素肌が見える。

鋭い目と牙はなりを潜め、
幼い女の子の顔に変わった。

「大丈夫、・・・・・・あなたは殺さないわ・・・・・。」

腰を打ち付けられて今度こそ起てない若者の上に乗っかった少女は
小さくそういうと

「・・・・・・近いうちに、
 ・・・・様が目覚めさせてくれる・・・・・
 それまで待ってなさい・・・・。」
途切れ途切れに聴こえる単語。

それだけ言うと、
少女の前には、黒い布を咥えた金色の虎が。

「・・・・・・じゃあ、帰ろう・・・・・・」

若者の耳がその音を捉えた次の瞬間には、
虎も、少女も、若者の前には、いなかった。

自分から、遠ざかっていく黄色い陰に安堵し、若者の意識はそのまま失われていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
深い森を抜けた中・・・・・・高い塀に囲まれた屋敷に止まる
幾台もの車。

その一台から降り立つ赤い服の女。

「・・・・・・・あいかわらず、やることが派手だね。アップデータ。」
とは、野球帽を被った少年。

「あら、効率的・・・といってほしいわねえ。
 ソレより何、アルターあんた。また一人なの・・・。」

と少年の隣にいる馬に目線を送りながら女は応える。

「しょ、しょうがないだろ。人間を動物に変えるといろいろ面倒なんだ。」

そうこいっている二人の前に金の虎を従えた少女が現れる。

「あら、帰ったのね。玲奈ちゃん。祐くん。」
それに向かってアップデータと呼ばれた女は、声を掛ける。

「いらない奴ら、5、6匹殺して来ました。」

「あら、えらいわねえ。もう立派に『デリータ』のお仕事できたわね。」

そういいながら、虎の顎をさする。
さすられた虎は、気持ちよさそうに目を細めると、

「アップデータ様、祐だけじゃなくて・・・・・あたしも、・・・・・」
アップデータの空いている腕の袖を持って
上目遣いにねだる少女。

「ふふ、もう玲奈ちゃんたら、順番でちゃんとしてあげるから・・・・」

と今度は、少女の顎をさする。

虎と同じように笑顔の少女が、突然はっと気が付き、

少年の方へ顔を向ける。

「あ。・・・・・・アルター様、
 消してる最中に、何匹かビーストを見つけました。」

「ふーん。玲奈。もちろんそいつらの匂い、ちゃんと覚えてるよね。」

「・・・・・・・・・・はい。」
少しうつむいて、恥ずかしそうにうなずく。

「じゃあ、明日は僕と行こうか。・・・・・」

「はい!」
にっこりと微笑みながら元気に返事をする。
少女のほほが少し赤くなっている。

「うん。・・・・・・いいこ・・・・いいこ・・・・・」
そういってアルターは少女の髪を優しく撫でる。

女に顎をさすられ、少年からは頭を撫でられた少女は。
心のそこから、幸せそうな顔をし、
うっとりと目を細める。

そんな少女の姿に嫉妬したのは虎。

そんな彼の頭に触れる影。

「大丈夫だ。お前もよく頑張った事は、ワシもわかっておる。」

そういって虎の頭をなで始めたのは、
白衣の下に、白いワイシャツとこげ茶色のチョッキ。
そして赤いネクタイをして、
顎には、白い髭を生やした老人だった。

「「クリエイタ様!!」」
アップデータとアルターの声がハモる。

「二人とも戻ったな・・・・・
  お前達に見せたいものがある・・・ついてこい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

屋敷の中の一室。

巨大な部屋の梁には、ドラゴンをあしらったエンブレムに、
『Divine Beasts』の文字。

緑の液体が入った円柱形の水槽。

そして、水槽の中央にいる黒い物体。

蝙蝠のような翼と、蛇のような鱗。
ワニのように突き出た口には、牙が並び、

頭には、1対の角を生やしている。

「へえ、これが・・・・・・・」

「すばらしいですわ・・・。」
感嘆の声を上げるアルターとアップデータ。

「これこそ、我等の悲願。」
とクリエイタ
「失われし・・・・・『竜』の復活。」
とアップデータが続ける。
「そのために必要なCODE・・・・・・全て集めなくちゃね・・・・」

それこそが、彼等が人を獣を新人類と呼ばれる
獣人に変化させている理由だ。

「「「全ては、偉大なる神獣のために・・・・・」」」

三人の声が重なり、暗い部屋に響いていく。

	
おわり
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