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5万HIT 記念作品

特務 犬隊 前編

作者 DarkStar

今よりも、未来。

人間の発達した文明によって、
犯罪は多様化を極めていく。
技術は、犯罪を隠蔽し、
捜査を困難になるばかりだった。

そこで、たどり着いたのは、

人がかつて失った感覚を有する動物達の
力を借りる事だった。

悲しいかな、文明の進歩と引き換えに
失った野生の勘に頼らなくては為らなくなるほど、

人間という生き物自体の
能力は低下してしまったのだ。

だが、動物を使う上での絶対的な壁といえば、意思疎通が上げられる。
単純な調査や、追跡ができたとしても、
それだけで多様化する犯罪に対応できるかと言えばそれはNOだろう。

たとえ、人間同士であっても
会話がないとなかなかコミュニケートする事ができないが
仮に通じたとしても、個人の認識、考え方によって
受け取り方は様々であり伝わらない事もある。

ならば、言葉も通じず表情も
感情もわからない動物とどうやって
意思疎通をするのか。

そのしかし、答えは
進んだ科学技術が持っていた。

生き物の脳の構造がほぼ解明され、
情報の受け取り方、記憶の方法
そして、その伝達方法。
それらを研究していく上で、

脳という情報回路を流れる電気信号を
一つのデータに見たて、
体外に送信し、それを受信する事で、

会話を使わず、
意志疎通を図れる仕組みが考えだされた。

『テレパシー』
かつて超能力といわれ、非科学的と言われたものが
逆に科学の力で現実のものとなったのだった。
しかし、どうしても人同士の会話までこぎつける事が
できず、その研究はそのまま闇に葬られる事となったのだが・・・・。

人同士ではうまくいかない・・・・。

そう、なぜか人と動物との間でのそれは成功し、

動物の考える事が人に伝わる事が実験によって証明されていた。

そして、テレパシーを使うように訓練を受けた
警察官と、そのパートナーとなる遺伝子特殊改造犬。

ただ、意思疎通が可能になっても
犬の知能が人間並みになるわけではないので、

犬の知性の範疇を超える指示を与えることはできないし、
必ずしも、人の用件を十分に満足する応答常に帰ってくるわけではない。

こうした研究の試行錯誤。
また、警察犬と、パートナーたる人間との訓練によって、
それらの溝はしだいに埋まっていった。

こうした動物の強制改造や、厳しい訓練に
世間の抵抗もあったが、彼らが実績を積んでいくたびに
そういった声も小さくなっていった・・・・。


暗闇を駆け抜ける、二組の影。

一組目、小さい方は、
改造犬の中でもエースと呼ばれる
ジャーマンドックシェパードの牡犬

吉原幸子、まだまだ数少ない特殊捜査官
長身と鍛え上げられた体は、まるで競技に出場するアスリートのようだ。
そして、短く切られた髪や、通った鼻筋まるで狩猟犬を思わせる。


もう一組は、ドーベルマンの
シローと幸子と同期の木下美月。
幸子とは対照的にかわいらしい彼女。
低身長に、女性らしい体系。

デコボココンビな彼女たちだったが、
なぜか気が合っている。
それは二人とも犬好きと言う事も理由の一つで在るだろう。

「さっちゃん・・・・どうする」
小柄な美月が見上げるように
幸子の方に顔を向ける。

「あたしは、左から・・・・、美月は左からお願い・・。」

ここはちょうど倉庫の裏手、
荷物の搬入に使われる左右の大きな扉から、
二人は潜入しようとの事だ。

「りょーかい。」

そういって、二組の捜査官は二手に分かれた。

本日の捜査は、とある筋より手に入れた。
シンジケートの取引に関するものだった。

彼らは、動物の違法改造によって
罪もない動物達を犯罪の道具に仕立て上げて、
それを闇のバイヤーに売りつけようとしている。

犬をパートナーとする幸子と美月にとって許せない相手。

二人ともいつも以上に気合を入れて捜査に入る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人が別れ幸子が倉庫内に侵入して、もう1時間ほど経過しただろうか。
しかし、暗闇の倉庫に明かりがともる事は、なく
静かに静まり返ったままだ。

「・・・・・・おかしい。なにも動きがないなんて・・・・。」

ガゼネタだったのだろうか、それとも・・・捜査情報が漏れ
事前に場所を変更されたのだろうか・・・・。

そんな考えが幸子の頭をよぎる。

緊張した糸が緩み、楽観的な思考が頭にめぐる中、

彼女の胸元に入っていた通信機が、わずかに振動する。

相手は、同僚の美月、二人が決めた定時連絡よりも時間が早い。

何か状況に変化があったのかと、気を引き締め、
幸子は、インカムについた通話ボタンを押す。

すると・・・・・。

『ごうくろうなこったな、特務 犬隊さんよぉ・・・・。』

聞き覚えのない、男の声。

その声に、幸子の背中が凍りつく。

そう今、彼女の置かれている状況は、想像しうる中でも最悪のパターン。

「美月をどうしたの・・・・。」

声が震えないように、冷静に言葉を発する幸子。
そんな主人の様子の変化を敏感に感じ取った犬は、
との瞳を鋭させながら、主人からの次の指示を待っている。

『さあな、そんな事よりも自分の心配をした方がいいんじゃねーの?』

「どういうこと・・・・・。」

そういって周りを見渡す彼女・・・しかし、
この暗闇の状況ではなにもわからない。

「ウゥウウウウウウウウ!!!」

低い唸り声を上げるパートナーのラッシュ。
その声は、建物内に音もなく進入してくる気配に対して威嚇するかのように

そして、主人には自分達の危険を知らせるように

警戒のテレパシーを送ってきた。


「ラッシュ!!」

「ウォンウォン!!!」


その声と共に、ラッシュが駆け出し、その後を幸子が追う。

真っ暗な建物の中をラッシュが道しるべとなって走る。

『前方に2人』

頭に響く情報・・・・。
しかし、そう伝えても犬は方向を変えず、
そのまま前に進んでいく。

どうやら、ここは一番手薄な場所であり、
同時に強行突撃に意味していた。


「いたぞ!!、あそこだ!!」

その声に仲間の男も振り向く。

ラッシュのテレパシーが伝えたとおりの人数。

そして、この男達を振り切れば逃げ切れる。

「くッ!!!!」

向けられた拳銃に向かって飛ぶラッシュ。
そして、そのまま銃を構えた男の手首に暗い着く。

「ぎゃあ!!!」

その悲鳴に顔を向けた男の
後頭部に、幸子の手刀が入り、

男はそのまま気絶する。

腕を噛み付かれ悶絶する男から、拳銃を奪い取ったラッシュは、
それを起用に投げて、主人に渡す。


見事なコンビネーション。

当然のことながら、この間二人は一言も発することなく、

流れるような動きのまま、倉庫の外へ出て行く。


美月が捕まった以上、一刻も早くこの場を離れなくては・・・。
彼女を助けるにせよ。なんにせよ。

まずは、自分の身に迫った危険を回避せねばならない。

自分まで捕まってしまっては、それこそ終わりだ。

鍛えられた犬と、そして彼女が闇夜を駆ける。

そして、現場からある程度距離をとったあたりで周りに気を配りながら・・・・

歩く、ラッシュと幸子。

一縷の望みを胸にいだいた彼女がたどり着いた場所。

夜も更け肉眼では、よく見えないが、そこにはうっすらと人影が見える。

警戒する主人に、ラッシュが告げたテレパシーは、幸子にとって朗報だった。

「美月!!!」

「さ・・・・さっちゃん。」

幸子の声に反応し、人影が力なく応える。

「よかった・・・無事・・・・・!!!」

そういいかけて、幸子は言葉をつむぐ。
それは、美月の隣に当然いるべき、相棒シローの姿がないことだ。

「しろーが、シローが・・・・。」

幸子の袖を掴み、なんとか声を絞り出す美月。

彼女のパートナーは、彼女逃がすために、
その身を張って相手と戦ったのだろう。

実際、特務改造犬の訓練項目にもあるように

「彼」にとっては、ごくごく当たり前の行動。

しかし、残された主人からしてみれば、
それは、余りに・・・・・。

「おちついて、美月。
 美月がそんなんだったら、なんのためにシローは・・・。」

「わかってる。シローも別れ際に、そう言ってた。
 私に『生きて犯人を捕まえてほしい』って。でも・・・・」

頭で理解できても、納得できるかといえば
それは必ずしもそうではない。

幸子も、自分の事の置き換えて考えれば、
身を引き裂かれるような思いだろう。

ただ、ただ、仲間を慰めるため、
幸子は、美月の肩を抱く。

小柄な美月の体は、長身の幸子の体の中にすっぽりと納まり

この中で声を殺して泣いている。

犯罪組織に怒りを燃やしながらも、
今の幸子は、自分の胸の中で泣き崩れる親友をただただ慰めることしかできない。

「さっちゃん。」

顔をうずめていた美月が、
不意に顔をあげ、幸子の事を呼ぶ。

「なに・・・・!?」

そういおうとした彼女を唇を、美月がふさぐとそのまま、
口の中に舌を潜り込まされる。

「ん・・・」

突然の行動に戸惑う幸子。

美月の舌から、零れ落ちる何かの小さなもの・・・・
薬のカプセルだろうか・・・・

それが、幸子の口の中で溶け、
中の液体が幸子の口の中に広がっていく。

思考能力が完全に麻痺した彼女の口腔は、美月の舌に蹂躙され・・・。

こくん。

という小さな音とも、液体が胃の方へ流し込まれていく・・・・。

それと共に全身が、しびれるように
力が入らなくなり、その場所に崩れ落ちてしまう幸子

そして、徐々に薄れ行く意識の中で、美月の不敵な笑みが、
幸子の視界に入ったかと思うとその場に崩れ落ちてしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ん、ここは・・・・・・。」


見覚えのない部屋。

気を失っている間に運ばれたのだろうか。

なかなか意識がはっきりせず、ボーっと頭の覚醒を促すように
頭を左右に揺る幸子。

そんな、彼女の様子を見ていたのであろう女が声を掛ける。

「おはよう・・・・さっちゃん。」

聞きなれた声。

意識がはっきりしてくるのと今度は逆にずきずきとした頭痛に頭を抑えながら、

「み・・・・、美月・・・・。」

顔をゆがめ、うめくように目の前の女の名前を呼んだ。

「はは、正解!!!、さっちゃん。」

まるで、クイズに正解した回答者を称える司会者のように
はしゃぐ美月に

ただただ、疑問符がならぶ頭を整理しようと幸子は声を発する。

「どうして・・・・。」

そう言われた女は、顔に笑みを浮かべたまま、

「どうしてぇ・・・?、優等生のさっちゃんなら、そんな事聞かなくても、
 もう、わかってんじゃないの?」

もうそのように言われれば、彼女が眠らされた理由はただ一つ。
だが、しかし・・・・。

「まさか・・・・あんたが、あたし達を裏切ったなんて・・・・。」

目を細め頭痛に耐えながら、声を絞り出す。幸子。
一緒に苦労を共にした親友の裏切りがまだ半ば信じられない様子。

「ちょっとぉ。人聞きの悪い事いわないでよ。
 ちょぉーーーっち条件がいい方に鞍替えしただけじゃない。」

あくまで、軽く言い放つ美月の姿に怒りを覚える幸子。
しかし、この段階になって彼女はやっと、自分が縛られ
ロクに身動きがとれない状態にあることを認識した。

頭痛も、いまだ治まらないし、いまいち体に力が入らない。

「あは、ちょっと薬 強過ぎたかな?、
 あたしは、解毒剤貰ってたからへいきだと、やっぱ、さっちゃんつらそうだね。」

それは、普段の他愛のない世間話でもしている時と同じような調子で話す美月。

「どうして、こんな奴らに、動物を・・・・犯罪に利用する奴らなんかに!!!!」

力いっぱい声を上げてそういった幸子の声に。
わずかに眉を動かした美月は少し考えるようにして・・・・。

「ねえ、さっちゃんは、ラッシュが好き?」
 
「え?」

 突然何を言い出すのだろう。
 話の糸がつかめないのは、薬のせいではなく
 彼女の言動に在るだろう。
 
「あたしは、シローが好き・・・ううん愛してる・・。」

「え・・・・・・」

 思わず声がもれる。何かの聞き間違いだろうか
 
いや・・・・。違った。

「あたしは、シローをどんなに愛しても、
 犬と人間には超えられない壁がある・・・・」

 真剣に、切なそうに言葉を紡ぐ
 美月の様子は、普段の彼女とは全く異なり
 まるで別人のようだ。

「あたし、シローが居なくなったら、あたし生きていけない。
 だからね・・・・・。欲しいの・・・
 シローとの愛の結晶が・・・・。」

「!!!!」
 
 親友の発言に幸子の背中に悪寒が走り、完全に言葉を失う・・・・。
 
 「でもね!!・・・・ここは、それをかなえてくれるのよ!!」

 目を見開いた彼女の瞳には、狂気の表情が浮び、
 まるで、何かを宣言するかのごとく、高々と声を張り上げ美月。
 そこに、幸子のよく知る彼女の姿ではなかった。

「み、みつき・・・・・そ、それは・・・・・。」

 なんとか会話を続けようと口から搾り出される物は、
 禄に言葉にすらならない。
 
「どうしたの?、愛するオスの
 赤ちゃんがほしいってメス犬なら当然の感情でしょ」

不気味な笑みを浮かべたその顔に
思わず、幸子は恐怖してしまう。

「さっちゃんだって、好きなんでしょ。
 ラッシュが・・・・・・・。愛してるんでしょ。」

責めるように、誘惑するように、あやしい声。

「そ、そんな、愛してるなんて、私は!!!」

美月から目を逸らす、幸子だが
その目は、動揺したように泳ぎ
頬はほんのりと赤く染まっていた。

「ふーん、そうなんだ・・・・。
 じゃあ、こんなの見ても平気よね・・・・。」

いかにもつまらなそうに口を尖らせへ、
部屋のドアの方へ視線を動かす。

「え?」

音もなく、すっと開いたドアから入ってきたのは、

「アオオオン!!!、ウォン!!、ウォン!!」

茶色い毛並みの・・・・シェパード犬・・・もちろんそれは・・・。

「ラッシュ!!!」
大事なパートナーの無事な姿に喜びのあまり、
幸子は思わず大声で彼を呼んでしまった。

呼びかけられる主人の声・・・・しかし

「グルルルル、ウォン、ウォン!!」

ラッシュは、舌をだし、興奮した様子で、
うろうろするばかり・・・・。

ラッシュの様子が明らかにおかしい。

「どうしたの・・・・ラッシュ・・・・」

グルグルと唸り声を上げたかと思うと、
興奮したように、部屋の中をうろうろしている。

どうしたのだろう、そんな疑問は直ちに
元同僚の女性に向けられた。

「美月、あんたラッシュに何したの!?」

にらみつけていう、幸子に

美月は、両手を広げ、知らないというゼッシャーをしながら、

「はぁ、あたしは何もしてないわよ。・・・・・
 あんたの馬鹿犬が勝手に発情してるだけなんじゃないのぉ?」

「ええ!?」

まもなくして、
開いたドアからは、ラッシュと同じ毛並みの犬。

「クウウウウン、クウウン!!!」

と鳴きながらラッシュに身を寄せる犬。

「あれは・・・・・・。め・・・・メス・・・・?」

同じ犬種の牝犬・・・・・

「フウウウ!!!、ガウガウ!!!」

メスがよってくるとさらに興奮したよう大きな声で吼え出すラッシュ。

そして・・・・発情した牡と牝が始める事とは
当然・・・・・・

牝の尻尾の上に乗りかかる形で、
大きく勃起した牡の象徴を、牝の精器に接続する。

「・・・・・・・!!」

幸子は目を見開き、体を小刻みに震わせる

背筋に走る悪寒。
そして、頭から冷たい水を掛けられたような
ひやりとした感覚が幸子を襲う。

「アオオオ!!!」
まるでラッシュに甘えるように、甲高い声で鳴く牝犬。

それが聞こえているのかいないのか、
まるで関係ないように、腰を振るラッシュ。

「アウウ、アオオン!!!」

「アオオオオーーン!!!」
 
  興奮して吼える雄と悶えるように啼くオス犬。

「ラッシュ!、ラッシュ!!!、止めなさい、止めなさい!!!!」

気が付くと幸子は声を荒げて、ラッシュに命令する。

しかし、そんな主人の声も発情した犬を止める力などなかった。

それどころか、ヒートアップする犬の交尾。

ラッシュは片足を上げると、
くるりと回って、
牝と尻あわせになる。

「やめなさい、ラッシュ!!、やめ・・・・・、やめて・・・・・」

幸子の声がわずかの間塞き止められると、

続けて出てきたのは弱弱しい言葉。
そして瞳にはわずかに滴を湛えている。

一般にマウンティングと呼ばれる体の上に載る姿は、
牡が自分の優位を主張する体位である。

これは、交尾であればまだ前戯段階。

この尻あわせになったこのロッキングこそ、
交尾の本番、牡の精器が牝のお腹の中で
膨張し、完全に体を接続する。

「いや・・・いやあああ、
 離れて、離れてよぉラッシュ!!、らぁっしゅぅ!!」

両手でほほをかきむしる様にしながら、

パートナーの痴態に声を張り上げる幸子。

呼びかける幸子の声は鼻声になり、
目には大粒の雫が光っている。

拘束された体を無理に動かし、
ロープに擦り切れられた手首からは、
今にも血がにじんでくるように真っ赤に腫れている。

「いや、やめて、やめてよぉ。お願いぃ!!!!」

体をよじり、声のあらん限りなりふり構わず叫ぶその姿は
もはやそれは、恋人を奪われた女性のそれだ。

しかし、ロッキングによって固定された体は、
離れる事などできはしない。

改造犬であるラッシュの放つ大量の精液が、

牝犬の体からあふれ出して、床に滴り落ちる。

「い・・・いやぁ・・・・・ら・・・・、らっしゅ・・・。」

かすかしか出ない声を何とか搾り出した幸子の
もはら彼女の瞳からはとめどなく、
涙の川が流れ続ける。

目の前で、牝と交わるラッシュ。

犬の交尾は、約1時間ほど・・・・・。
彼女の苦痛は、まだ始まったばかりだった。

「いや・・・・ら・・・・しゅ・・・・」

その瞳から涙が零れ幸子は、その場に崩れ落ちた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ラッシュの交尾を見せ付けた
美月は満足したように、ぐったりと疲れた
二頭の犬を連れて部屋から出て行った。

白色の電灯が照らし出す部屋の中で、
幸子は言いようのない孤独感を感じていた。

座ることすら億劫になってしまった
彼女の頬を伝う涙。

「なんで・・・・・なんでよ・・・
 ラッシュ・・・・あんな・・・あんな・・・・」

自分のパートナーを『想い』
それがただただ、涙としてあふれ出てくる。

満身創痍・・・・体こそ傷を付けられたわけではないが

もう幸子の心はもうボロボロだった。


「ふふ、なんでか教えてあげようか・・・・」

突然耳元に声を掛けられ、ハッと我に返る幸子

振り返り目線の先には美月の姿。

「何しにきたのよ。」

普段ならここまで他人の接近を許す事のなかった幸子。

先ほど見せ付けられた物に心身とも疲かれきってしまったようだ。

まるで親の敵にでもあったように、にらみ付ける幸子。

「はは、さっちゃん、ラッシュに振られたの相当応えてるんだ。」

泣きはらし、目じりの辺りを真っ赤に染めた
幸子は、普段の凛々しい警察隊員の姿は、
微塵もなくただただ失恋の打ちひしがれて少女のような
弱弱しささえ感じさせてしまう。

「でもしょうがないじゃん、
 牡犬は、牝犬と交尾するものだよ。
 どんなにさっちゃんが魅力的な『女』でもね~」

意地悪そうに笑いを殺しながら


幸子の胸に美月の言葉が突き刺さり、呆然としてしまう。

そんな幸子の耳元へそっと近寄った美月はやさしくささやく

「牝犬と女だから勝ち目がないんだよ。
 だ・か・ら、さっちゃんも牝犬になればいいんだよ。」

「え・・・・・。な、・・・・何を言って?。」

そのすがる様な瞳には、
捜査官としての力強い意識はなくなっていた。

「見せてあげるねさっちゃん」

「シローぉ」
いつも任務に就くときのような声ではなく
甘ったるい声・・・そうまるで自分の彼氏に
呼びかけるように美月が言うと


「アウアウ!!!!」
主人の呼びかけに
歩み寄ってくる改造犬シロー

「フフ・・・・・・」

微笑みながら、

スゥーっという布のこすれる音と共に

美月の服が下着が床の上に落ちる。


低身長でありながら、
しっかりと自己主張する胸。

幸子ほどではないにせよ。
鍛えられた体は、
肉付きの良い体を適度に押し上げ、魅力的な肌をさらしている。

「あ、あんた・・・・な・・・・何を・・・・・」

「フフ、ねえ、しろー、早く来てぇ」

両手を地面に付き、大きなお尻を左右に振りながら、
シローを誘惑すると

「アウウ、アウウ」

シローは、まるで操られたように、
美月の体に発情し、
その体にのしかかってくる。

「あ、あああん、あうん、あううん、シロー、いい、あうううん。」

そのまま、愛撫もなしにいきなり

シローと美月は自分達の性器を接続し、
美月は快感に体をくねらせる。

「さ、幸子・・・・・・・」

いきなり犬と・・・・始めてしまった
同僚の姿に戦慄を覚える幸子。

そんな美月の体に変化が訪れる。

「あうう、あううううん。あん、あん。」

彼女の長い髪が持ち上がるように
三角の耳がピンと立ち上がる。

それにあわせるように、ふさふさとした毛の塊が
お尻の上で立ち上がる。

「な、何?、何が起こっているの?・・・・」

しかし、幸子を置き去りにして、美月達の行為は続けられる

「あうん、あん、あん、あああ、」

叫ぶ、美月の口の中、
犬歯が鋭く伸びてくると、
その名の通り『犬の歯』となり、
口腔が前に突き出し、頭蓋骨の形を変えていく。

全身を茶色い毛と黒いが覆い、可愛らしい瞳が
獣の目へと変わっていく。

細長い指は短く変形し、
手のひらにはピンク色の物体が覆っていく。

シッポを小刻みに・・・・そしてうれしそうに振る・・・

それはスマートで凛々しい雄犬とは違う
どこか可愛らしさを感じさせる牝のドーベルマン。

美月が、衣服を脱ぎ捨ててから、
ほんの数分後、目の前に居た
一人と一匹は、もはや、つがいの犬へと姿を替えていた。

「み、・・・美月・・・・牝犬ってこ・・・こういうこ・・・と」

戦慄に言葉もとぎれとぎれになる。


「「アウウン、アン、アン」」


甲高い牝の声と、低く唸る牡の声が
二重奏となり、幸子の耳に響いてくる。

『アウウン、アウン、アウウウウウン!!!!』

犬となった美月から発せられるテレパシー。

「そ、そんな・・・・み、美月・・・・あんた・・・・」

人同士では、なし得なかったそれが聞こえるという事は、

もはや彼女は、人間ではなく・・・・・。

雄との交尾に悶える一頭の雌犬となってしまったのだった。

「そ、そんな・・・・」

混乱する頭が整理できない幸子。

「アウウウン、アン、アン」

理知的で、理性的な人の声とは異なる
『獣の声』を内と外に上げる美月。

その姿を見つめている幸子も

同僚が犬に変わってしまった恐怖よりも、
パートナーと交われる美月への羨ましさを感じながら、

ただただ、つがいの犬の交尾を幸子は見つめていた。

	
おわり
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