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獣化作品 No.22

ペイントゲーム

作者 DarkStar

光りは希望、闇は絶望、安易に考えるものたちも少なくないが
多くの動物たちにとって、夜の闇は敵から身を隠しやすくするための

カーテンとなる場合がある。

逃げ惑うもの達に安らぎの時間を与える・・・・

闇にはそんな力もあるかもしれない。


鏡台の前に立つ女性。

彼女が手に取ったのは、黄色の塗料。

いつも顔に塗るファンデーションとは違う感触。
彼女は気にせず大胆に顔全体に塗り伸ばしている。

時に黒の塗料で、模様を描き、
鼻を薄いピンク色に塗っている。

「私は豹・・・・」

そういった彼女は、服を脱ぎ下着を外し、
胸や、腰など、全身に塗料を塗っていく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

事の発端は、
彼氏に誘われて参加したサバイバルゲームだった。

大のおとなが、鉄砲遊びと侮るなかれ、
林に隠れ、木に潜み息を殺してじっと待つ、

見つかるかもしれない緊張感と、
死角から相手を狙い打つ感覚、

自然あふれる森の中に埋もれるその姿は、
さながら、野生動物の感覚。

いわゆる殲滅戦と言われる
一定時間ないでのチームごとでの生存者の数を競うゲームに
彼女は、ビギナーズラックなのだろうか、最後まで弾を受けなかった。

敵から隠れ息を潜めるそのスリルを彼女は気に入ってしまった。

装備を揃え、緑の迷彩服に身を包み、
エアガンを用意し、ゴーグルを装着し、ゲームに参加する
やがて、彼そっちのけで彼女は、のめりこんでいった。

しかし、幾度かゲームをやっていくうちに彼女は、
だんだん、ゲームに物足りなさを感じてくる。

繰返される事によって、独特の緊張感にも慣れてしまい
初めの頃のような、感覚が薄れていってしまった事に対する不満。

そんな時彼女は、一人の女性と出会う。
全身に迷彩を施しながら、さらに、顔にも迷彩のペイントを施す彼女。
そのな奇異な姿に、ついつい目がいってしまう。

「あの・・・・」

「ふふ、どうしたの?」

「あの・・・すごいですね。そのペイント・・・・。」

「あなた、名前は?」
吸い込まれそうな瞳・・・、
特別の力を持つように、彼女の警戒心は薄れていく。

「ひ・・・・陽織です。」
なんとなく頭がボーっとしてくる・・・・。
まるで催眠術か何かをかけられているようだ。

「そう・・・・・・貴女、私に興味あるんでしょ
 ・・・いいわ、こんなゲームよりも面白いもの
 ・・・・教えてあ、げ、る。」


・・・・・・・・・・


「あの・・・・・・いったい・・・・・・・。」

その瞳に惹きつけられるように
陽織は彼女の家まで来てしまった。

「ふふ、さあ、いらっしゃい。」
同い年くらいに見える彼女。
しかし、その雰囲気は年上のような印象を受ける。

「なにこれ・・・・・」

陽織の目に入る塗料の山・・・・・。

そして、おもむろに服を脱ぎだす彼女。

その下に下着はなく、指さされるのは、
顔と同じ豹のペイント。

美しい女性の肌に塗りたくられた黄色い塗料。
そしてアクセントが目を惹く黒いインク。

「どう、あなたもやってみない?楽しいわよぉ。」

「え、あ、いやあ、あ、あたしは・・・・・・。」

「ほら、ね。ここに座って」

そういって無理やり鏡台の前に陽織を座らせた
彼女は、服を脱がし、下着を取り去る。
そして、黄色の塗料のビンを手に取り、
筆を取る。

「ひゃ、つ、冷た・・・・・」

「我慢して、・・・・すぐだから・・・・。」

耳元でささやかれ、まるで催眠術にでも
かかったように言う事を聞いてしまう。

・・・・・・・・・・・

「これが、・・・・・あたし・・・・・。」

体中に塗られた塗料。

その姿は、まるでカツラを被って鏡台の前に座る
豹そのもののようだ。

「さあ、でかけましょう・・・・・。」

「え、これから?・・・・・・・・・」

「そうよ。お楽しみはこれから・・・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・

いくら服を来ているとはいえ、
顔まで豹のペイントは恥ずかしい。

顔が熱いが、ペイントしているため、赤い顔が外からはわからない。

たどり着いたのは、森、だが、ゲームをやる森との違いは、

「ここって、・・・・・・・」

人気がちらほらと見える森の中の公園。
小さなベンチに腰掛けるカップル
走り回る子供達が見える。

「こっちよ。」

すると、藪の奥のほうへつれていく彼女。

そのまま、服を脱ぎ、黄色の肌を出す。

「さ、あなたも脱いで・・・・」

「え・・・・・・。」

「ほら、脱いで・・・・・」

彼女は、耳元でささやき、耳の穴の周りをぺロッとひと舐めする。

「あああ・・・・・。」

ボーっとした彼女は、そのまま、服を脱いでしまう。

(まただ、なんでだろう。あの声に・・・・逆らえない。)

「そうそう、さあ、始めましょう。かくれんぼ・・・・・。」

「かく・・・れんぼ・・・。」

「そうよ。私とあなた・・・・人間に見つからないようにね。」
と彼女は木に足を掛ける。

「あ、ちょっと、私、木になんて登った事・・・・・・・。」

「大丈夫・・・・・わたしたちは『豹』なのよ・・・・・・
 木登りなんて教わらなくてもできるわ。」

そういってするすると高い木に登っていく。

おそる、木に手を掛ける陽織。
その瞬間。

(あ、足をここに乗っければいいんだ。・・・・次の手はこっち、
 次はこっちの枝に・・・・・。)
と気が付かないうちにするする木を登ると

太い枝の一本に体を預けていた。

眼下には、公園で休日を過ごす人々・・・・。

今まで意識の外にあったのが、
自分は全裸だ。

見つかってしまう恐怖に彼女はだんだんと興奮してゆく。

興奮した体は、熱を上げペイントで代謝処理がうまくいきにくい
体は、汗を滴らせる。

(だめ・・・・汗は、・・・・・下の『人』に気づかれちゃう・・・・。)

汗が滴り落ちる体。もし、それに気が付いた人が上でも見上げたら・・・・。

そう思い必死に堪えようと身構える。

すると彼女の口からだらしなく舌が飛び出し、
途端に汗が引いていき、変わりに
太い黄色と、黒の毛が生え、全身を覆っていく。

口からは鋭い牙が生え、顔の形がペイントの通りに変わり、
鋭い牙と共に口元が前に突き出し、


唯一残った彼女本来の瞳も、
金色になって、獰猛な獣の目になる。

「ガルルル・・・・ゴルルルルル・・・・」

顔の横にあった耳が頭の上に移動し、
音の聴こえ方が変わっても彼女は気にならなかった。

綺麗に整えられた爪が、鋭い爪となり、
手足の生えた肉球が枝の上を動く彼女の音を消す。

骨格が変わり、臀部から長い尻尾が生えると。
一匹の豹が、木の上に座っていた。

「ゴルルルル!!」
(ああ、あたし、裸でこんな木の上で・・・・だめはずかしい。)

人に見つからないようにこっそり動きながら隠れる牝豹。

それは、日が陰りひと気がなくなるまで続けられた。

地面にやっと降り立った彼女。

両手を地面に着き、のっそり歩く姿は、
野生の豹そのもの。


現れる別の豹。それは彼女であった。
「ガルルルルルル」
(あら、陽織。どお・・・・・)

「グアアアアアアアア」
(もう最高よ。こんな開放的な気分・・・・サイコーよ)


それから、陽織は、毎週のように体にペイントし、

一匹の雌豹としてすごした。

そんな彼女が、昔の友人と、参加したサバイバルゲーム。

その中で初心者の女の子が自分の方を見つめたまま、視線をそらさない。

(ふふ、かわいい、仔猫ちゃん。・・・・貴女も、立派な雌豹にしてあげるわ・・・・・)

「ねえ、貴女・・・・・楽しいことに興味ない?」

陽織は自然と笑顔で、そう声を掛けていた。

	
おわり
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