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獣化作品 No.21

獣たちのお見合い その2

作者 DarkStar

男女の出会いは、さまざまなれど、
理想の相手と出会う事は、並大抵のことではない。

だからこそ、理想の相手あるいは、出会いを求める手段として
『お見合い』というものがあるが

こちらのそれは『普通』のそれとは、どうも勝手が違うようだ・・・・。

ここは、高級ホテルの一室。

タキシード姿の男性の前には、着物姿の女性が座り
その間に仲人役の男性が入る。

男女とも緊張した面持ちで、相手を見つめていると、

仲人役が、まず男性の方の紹介に入る。

「えーと、早矢さん、こちら、城山啓介さん
 ホワイトシーザーとして、数々の大会で優勝されている方です。」

そして今度は、向き直り

「で・・・啓介さん。こちらは、黒柳早矢さん。
 スピードクィーンとしての方が、わかりやすいですかな・・・。」

「ああ、はいそうですね。
 ご活躍はテレビの方で、拝見しております。」

「わたくしも、シーザーさんのお姿はかねがね・・・・。」

目の彼らは、テレビにでる程の有名選手なのだろうか、
それにしても、本名ではない名前は、リングネームかなにかだろうか?

そんな疑問も、さておいて、二人は、
自分の趣味などに関する話題に触れていく。

「クィー・・・じゃなかった早矢さんは、
 ご趣味の方は・・・・。」

「実は、わたくし・・・・・走る一辺倒で・・・・その
 調整とか、練習とかでほとんど・・・・・趣味らしいものは・・・・。」

早矢が、恥ずかしそうにそういうと

「ははは、僕もそうなんですよ。
 特に大きなレースとか近づくと、他のことが頭に入んなくなっちゃって・・・・。」

走る。レース・・・・などという会話を聞いているとアスリートのようにも聞こえる。

「そ・・・そうなんですよね。もう引退もしましたし、
 そろそろ何か趣味でもと・・・・いろいろ挑戦しているんです。」

「へえ、僕も今週のレースで引退したばっかりで・・・
 参考までに聞かせてください。」


二人の会話は、徐々にぎこちなさが取れ、
お互いの気持ちと同じように弾んでいく。

「ええ・・・実は・・・・・。」

「え?・・・・そうなんですか?、意外ですね~・・・・・それって・・・・」

「ええ、そうなんですよ。それで・・・・・・。」

と二人が自分たちの会話に夢中になっていると・・・・・。

それまで、沈黙を保っていた仲介役の男は、

「じゃあ、年寄りはこのへんで、後は、お若い方だけ・・・・。」

と二人に笑顔を向けながら、すっと席を外して、部屋を出て行く・・・。

これがお見合いであったことをすっかり忘れたいた二人、

仲人が席を外す間、再び感じる緊張感が、

閉じられるドアと共に、薄れ・・・・。

肩を下ろして大きなため息をひとつつくと

お互いの顔を見合わせて笑った。

「緊張しました?」
啓介は、笑いをこらえる様にそういうと、

「ええ、だって初めてのお見合いですもの・・・・。
 でも、途中から、お話に夢中になっていまして、
  仲人さんの事。すっかり忘れていました。」

早矢も、口元に手を当てて、笑顔のままそういう。

「僕は、驚きました。あのスピードクィーンが、
 こんな控えめな女性だったなんて、
  レースの時はあんな怖い顔で力強い走りをしているからつい・・・・。」

「あ、あれは、レースに必死で走っているからです。
 わ、わたくしも、シーザーさんが、こんなにきさくな方だとは・・・、
  てっきりもっと怖い方かと・・・。」

「俺のは、緊張をごまかすためってのもあるんですが・・・・・
 実は、うちの『相方』がたまに、あほな指示を出すんで
 それに怒っているのもあるんですが・・・・。」

「そ、そうなんですか?、それは驚きです。」

世間では優秀を呼ばれる彼の『相方』その実態を聞いて、
目を丸くする早矢。

「それこそ、早矢さんの『相方』も男・・・ですよね・・・・。」

「え・・・、ええ・・・・。」

「こんなことを聞くのは、すごく不躾なのはわかっていますが・・・・・」

お見合いをするとはいえ、やはり男が気にするのは、
どうしても、彼女の一番近くにいる男性の存在。

「ええ、わかりますわ・・・・・でも、わたくし、・・・・
 お顔の長くない男性は、ちょっと・・・・・。」

と少し顔を赤らめていう。

「ああ、そうなんですか・・・・。」

はずかしがる早矢の様子に、
啓介の方も気恥ずかしくなってきた。

「あの・・・・そろそろ外に・・・・でませんか?」

「あ・・・・・・はい・。」

早矢がハニカミながらそういうと

二人はそのまま、部屋の外へ・・・・。

晴れ渡るそれ、青い空が高く心地よい風が、吹き抜けていく。

二人がやってきたのは、
ホテルの庭園・・・・・ではなく、

隣接する牧場の一角、

広大な土地に緑の草が一面を覆いつくしている。

二人の格好は、すでにフォーマルなものから、

普段着になり、

啓介は、チェックのシャツにジーンズ姿。

早矢の方は、白いワンピース姿となっていた。

「素敵な芝・・・・・・ああ、なんていい草の香りなんでしょう・・・。」

目を細め、顔を空に向けながら、
風に香る草の匂いを嗅ぐ早矢。

「そうですね・・・・・。じゃあ、俺・・・・ひとっ走りしてきますよ。
 早矢さん・・・・。」

「はい、啓介さん。」

そういうと、啓介は、なにを思ったか、
シャツに手を掛け、ボタンを外し、上着を脱ぎ、
鍛えられた上半身をさらす。

靴と靴下を脱ぎそのまま、
ベルトを外すと、トランクスと一緒に、
ズボンを下ろす。

あっという間に、全裸となった啓介の姿に

隣にいる早矢もその姿を恥ずかしがる様子もなく、
ただただ見つめているだけだ。

「じゃあ、いってきます。」
そういいながら、牧場の柵を超え、
芝の中に足を踏み入れると、

そのままの格好で走り続けた。

「いってらっしゃい・・・。」

そういう早矢の目の前で、啓介は走り続ける。

牧場に、裸の男が走る奇妙な光景。
しかし、それもごくわずかの間に自然の風景に変わっていく。


裸足で駆ける啓介の速度が、徐々に上がっていき、
やがて、100m走のアスリートもかくやと思われる程に達したころ、

彼の体に変化が現れる。

ほとんど踵を着かずに走っている両足のつま先は
黒く変色し中指が、肥大化しUの字型の蹄なろうと形を変えていく。

体のバランスが崩れ、走りながら、ガクッと体を前に倒し、
地面に疲れた両腕も、もはや人のそれではなくなっていた。

四足になりさらにスピードを上げていく啓介。

引き締まった尻から、房状のものが生え、

整った顔立ちが、立てに長く伸びていく。

全身に白く短い毛が全身に広がっていくと、

青年は、力強い白馬に変わっていた。

「ブルル・・・・・ヒヒーーーン!!!!」

嘶きをあげながら走る。

その雄姿をうっとりと見つめてままの早矢。

「ああ、啓介さん・・・・いいえ。シルバーシーザー・・・・
 わたくしも貴方の・・・・。」

そういった、早矢の両腕は、茶色の毛に覆われ、
両の手のひらはすでに黒い蹄となった馬の肢に形になっている。

長い彼女の髪の中から、ぴんとたつ、耳。

「ふー、ひん、ふひひん。ひん。」

奇妙な声を上げながら、口を左右前後に動かす

早矢の鼻の頭がつぶれながら前へ、
歯が平らに、つぶらな瞳が長く伸びていく、
顔の端のほうに移動していく。

長いままの髪を振り乱し、

4肢を地面に着くと、

はらりと彼女の服が落ち、その下から、

やわらかい二つの膨らみ。

ふっくらとした女性の肌は、走る事のみを追求した

筋肉質に変わり、房状の尻尾が垂れ下がる。

「ヒヒーーン!!!!」

人の時と変わらない美しいかみを揺らして、

栗毛の馬が、白馬の元に走っていく。

「ブル・・・ヒヒーーン!!!」

「ヒンヒンヒン!!!」

よってきた雌に興奮した牡馬は、

右の前足でしきりに地面をけりつけ、興奮を我慢している。

しかし、興奮しているのは、何も雄ばかりではない。

そして、発情した獣たちの行く先はもうすでにきまっている。

興奮している雄に向かって、牝馬は、お尻をむけ・・・。
その上の尻尾を振る。

振られる房の起こす風が運ぶ匂い、時折垣間見える雌の秘所に
牡馬は、

「ヒヒーーーン!!!!」

大きな啼き声と共に体を乗っけてくる。

「ヒンヒンヒン!!!」

雌の歓喜のとも快楽とも取れる悲鳴をあげ、雄の体を受け入れている。

体を交わらす二頭の馬が体を離す頃・・・・太陽は暮れ、

夜の闇を月明かりが照らしていた。



それから数年後・・・・・・



満員の人手でごったがえす競馬場

人を探してきょろきょろしている男に

「あなた・・・・・こっち・・・・こっちです。」

白いふちつきの帽子をかぶった女性は、
遠くにいる夫に声を掛け手を振る。

妻の姿をやっと見つけ、

駆け寄る彼は買ってきた馬券を彼女に見せる。

「はい、早矢・・・・これ・・・・。」

渡されたのは、単勝馬券。

「あの仔のいい記念になりますね。」

「そうだね。今日のあいつには、勝手ほしいよ。」

「だいじょうぶですよ。あなたと、わたくしの仔ですもの・・・・きっと」

誰もが、自分の馬券を握り締めながら

配当金にぎらぎらとして目で馬たちを見つめる中、

二人、いや、二頭の馬だけが、やさしい瞳でわが仔の雄姿を見つめていた。

	
おわり
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