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獣化作品 No.13

猫アレルギー

作者 DarkStar

アレルギーとは、一種の過剰反応。
普通なら、何でもない事でも、
人によっては、咳くしゃみ、ひどければ、発疹してしまう事もある。

アレルギーには、特定の物質に原因があるとされるのが、
実は、そうでない場合も存在する。


「ハックション!!!」
生徒達で賑わう朝の通学路、
そんな中に女子高生の大きなくしゃみが木霊する。

「やだ、ちょっとぉ、やめてよ、美亜、あんた風邪でもひいたの?
 うつさないでよ。」
 
と隣を歩く友人に言われると当の本人は。

「ううん違うよ。この感じ・・・・あ、居た。」
あたりをキョロキョロした少女が、何かを見つけて指差す。
指された方向に眼を凝らすと、

「ニャーーー。」
と小さな子猫が一匹、塀の上の座っていた。

「あたし、猫アレルギーでさ、猫が近くにいると、
 クシャミ止まんなくなって、近くに寄られると、じんましんがでるのよ~。」
 
「え、でも、あんなに遠くにいるのにしかも、子猫だよ。」

「関係ないわよ。ああ、やだやだ 朝っぱらから、猫にペース乱されたぁ。
 もう、やな感じ~。」
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

授業が終わり休み時間、

どうしたの、机に頭をうなだれている美亜。

「どうしたの?」
とは、朝の親友。

「聞いてよ。恵理香。これ」

「あっちゃあ・・・・・これは・・・・」

小テストの点数、ぺけがかなり目立つ。

「どうしよう。今度赤点取ったら、
 お母さんにお小遣いなしって言われてるのに・・・・・」

「もう、ちゃんと普段から勉強しないからでしょう。」

「だってぇ、全然わかんないんだもん。」

「どこがよ言って御覧なさい?」

「・・・・・・全部・・・・・」

これはかなり重症である。

どこが判らないのかが、判らない。
これでは教える方も難しいだろう。

「素直に補習受けたら・・・・。
 あ、あたし次の授業の準備で呼ばれてるから、じゃあねぇ」

既に、赤点を取った先の話を持ち出し、その場を立ち去る親友

「ああ、この白状者!!!」

「あら、どうしたの?」

と声を掛けてきたのは、クラス委員の柳下奈緒子だ。

「え、あっ、クション!!!、ハックション!!!」

「雨宮さん。風邪?、それとも、何かのアレルギー?」

「うーん。風邪では、ないと思うんだけど、
 あたし、アレルギーって猫のアレルギーはあるけど他には、特に・・・
 で、でも、なんで、柳下さんが来ると、ハッ、ハッ、ハックション!!」

「ああ、そうなんだ・・・」
と誰にも聞こえない小声で呟く奈緒子。

「それで、何か困った事でもあったの?相談に乗るけど」


成績優秀な彼女ならと藁をも掴む思いで言うと、

快く勉強を教えてくれる事を了解してくれた。

「ありがとう、柳下さん。」

「やめてよ。『仲間』でしょ。
 奈緒子でいいわよ。」
 
同じクラスだったとは言え、
なんとなく、近寄りがたい雰囲気の奈緒子に
美亜たちは、声を掛けられずにいた。

「ほんと、奈緒子って、なんか近寄りがたいって言うか
 そんな雰囲気があったからさあ。」
 
「そう?、私『人』には、冷たいけど、
 『仲間』には、やさしいつもりなんだけど・・・。」

最後に言った言葉は少し気になったが、
美亜は、その日、奈緒子の家で勉強を教えてもらう事にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

奈緒子の家に着くと、

「お姉ちゃんどうしたの?」
と、小さな女の子達がよってくる。

「妹の美鈴よ。こっちは、お友達の沙希ちゃん。」

「こんにちは、美鈴ちゃん。沙希ちゃん。」
美亜が挨拶をすると、少女達はペコッとお辞儀をした。

「ああ、美鈴。お姉ちゃん達、
 お勉強しなきゃいけないから、邪魔しないでね。」

上からではなく、少女の目線まで顔を落として、
やさしく妹に言い聞かせる。

「うん。私、大丈夫だよ。
 沙希ちゃんと静かに遊んでるから・・・」
と言いかけて、少女達は、何を感じたのか。

「ああ、このお姉ちゃん・・・。」

「うんそうだね・・・・・・。」

そういってニヤッと笑った少女達の瞳は、
光を跳ね返して、ぎらぎらと輝いているように見えた。

「ねえ、どうかした?」

「ううん、なんでもニャいよおねえちゃん。」
という美鈴。

「ハ、ハクション、クシュン」

「おねえチャンこそどうしたの?」
と今度は、沙希が心配して声を掛けてきた。

「あ、あたし猫アレルギーなんだあ、
 やだ、まだ近くに猫でもいるのかな・・・。」

「ああ、うち猫がいるからそう感じるかもしれないわ。」

「ええ、そうなの?」

「うん、でも大丈夫よ。きっと」

さっきの妹たち同様に彼女の瞳も一瞬光ったように見えた。

「さあ、勉強始めましょ。」

「あ、はい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここはね、この公式を使って、こう解くの。」

「え?でも、それから先は・・・・・」

「ああ、そっちは、この例題と同じ解き方をするのよ。」

「へええ。」

進んでいるように見えるが、
美亜が、『全然わからない』状態なので
まだまだ、先が長いのが現状だ。

しかし、奈緒子が
細かくそして根気よく教えているため、着実に理解力は増している。

この分なら、成績上位は無理でも、
なんとか赤点を回避する事はできそうだ。

「一息入れましょ。美亜。」

「そ、そうだね。」

すると、ヘアのドアをノックする音。
奈緒子が入るように促すと、
そこには、お盆に飲み物の入った
グラスを持った美鈴が立っていた。

「お姉ちゃん。ジュースもって来たよ。ねえ、一緒に飲もう。」

後ろから来た沙希も、同じようにお盆を持っている
恐らく彼女達の分だろう。

「へ~かわった、色だね。これなにジュース。」

「またたびジュースよ。」

「またたび?、あの猫が酔っ払うって言う。」

「ふふ、そうよ。美亜も、飲んだら、酔っ払っちゃうかしら・」

「そ、そんなぁ、猫じゃあるまいし・・・ 
 あ、でも、これおいしい。」
一口の飲んだ美亜は、いまま飲んだ事のない
独特の味をすぐに気に入ってしまった。

「でしょぉ。」

「ふ、ふ、ふ、ふ、ふぅ、おねえ、おにぇにゃーーん」
ジュースを飲んだ美鈴が甘ったるい声を上げる。

「にゃーーお」
同じく友人の沙希もまるで猫のような声で美亜に近寄ってくる

「な、なにこの子達ったら、猫みたいに・・・・」
と女の子達の異様な様子に驚く美亜。
だが、瞳を爛々と輝かせた少女達は

「「にゃぁ、にゃあ、」」
と言いながら、ついには美亜に抱きついてくる。

「ハッシュクン、クシュン!!」

「な、なに、なんな・・・クシュン!!、クシュン!!」

「「ニャア、ニャア」」

「な、なにそれ、し、尻尾?、それにその耳」

少女達のお尻から伸びる長い尻尾と
三角の耳、それらは意思を持っているかの如く
ぴくぴくと動いている。

突然変貌を遂げた少女達から驚いて逃げようとするも、
どうがんばってみても、立ち上がれない美亜。

「だ、だめ、な、なんで足が、足に力が入らない・・・・」

「なんでって、またたびでよっぱらっちゃったんだよ。」
奈緒子の言葉に、美亜も

「どうして、ええ、なんで・・・」

「ははは、そうだよね、普通の家にまたたびなんてないから、
 そんな感覚は初めてだよねぇ」

そういう奈緒子の瞳は、妹達と同じように
ぎらぎらと輝いている。

「なんで、あたし、ねこなんかじゃ・・・・」


「「ニャア、ニャア」」
既にその姿を等身大の猫に変えてしまった
女の子達は、美亜の顔を猫の舌で舐め始める。

「い、いや、いやあ。だめ、ザラザラして気持ち悪い!!!
 鳥肌立っちゃうよぉ」

少女の皮膚にブツブツと小さなものが無数に発生した
鳥肌が、全身を覆っていく。

「ふふ、鳥肌じゃないよそれ。毛穴だよ。」
そういう奈緒子にも耳と尻尾が生え、顔や腕などからうっすら
獣毛が生えている。

「いや、クシュン!!、クシュン!!、かゆい、かゆいい!!!」
体中を掻き毟りだす美亜。

そんな姿に
「ねえ、どうして我慢するの?体が猫に戻りたがってるのに
 がまんなんかするから、つらいんだよぉ。
 無理に人間の声で喋ろうとするから、クシャミや堰が止まらないんだよ
 体だって、毛を生やしたいのに、我慢するから痒いんだよぉ
 ほら、早く人間なんかやめて猫になろー、ねぇニャアア!!!」

奈緒子の口元が割れ頬から、白いひげが左右に生えると
少女の頭は猫のそれに変わってしまった。

「「「ニャア、ニャア、ニャアーーー!!」」」
完全に巨大な猫と化した三人に体中を舐められる美亜。

「いやああああああああああああ!!!」

少女の全身の鳥肌から、一本一本毛が生え始め、体中を覆う。

「いやあ、だ、だめ、あー、あー、なあーにゃあ」
ついに、人でない声が聞こえ始めると
臀部から伸びた短い棒状の皮膚にも、毛が覆って
そのまま伸び続けるとふさふさの毛に覆われた猫の尻尾に変わる。

毛長の白い猫の姿になった美亜

「に、にぅにゃう、ニャーーーー!!」

大きく一鳴きしたかと思うと
美亜は、前足と化した手を地面について、
そのまま伸びをすると、
他の猫たちと一緒になって

「「「「ミャア、ミャア、ミャーーー」」」
4匹の猫獣人がじゃれあい毛づくろいを始めだす。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつもと変わらない朝の通学路

「美亜ってさあ、最近、柳下さんと仲いいよねえ」
「え、そう?」

「うん、なにか、あった?」

「ううん、別に~。」

「ああ、美亜お姉ちゃん。」
ランドセルを背負った女の達が、
美亜に声を掛ける。

「ああ、美鈴ちゃん、沙希ちゃん。おはよう。」

「ねえ、この子達誰?」

「え、奈緒子の妹とお友達よ。」

「へええ・・・・・」
名前で呼び合っているのだから
何かをきっかけに親しくなったのは、恵理香にもわかった。

「吉原さん、美亜。おはよう。」

「ああ、おはよう。」

「・・・おはよう。ってホント二人って
 いつからそんな・・・は・・・・ハクション!!」

「どうしたの?恵理香??」

「実は、あたしも、あんたほどじゃないけど、猫アレルギーなのよ。
 でも、へんねえ、あたし触らないでなら、近くに猫が3,4匹はいないと
 症状でないだけど。・・・・ハックション、ハックション!!」

にやりと笑う美亜達、おもむろに
「へえ、ねえ恵理香、あたし実はアレルギー治っちゃったんだ。
 恵理香のも、治してあげようか?」

「え、ほんと、ねえ、おねがい。実はあたしも、結構困ってたんだぁ
 あたし、猫嫌いじゃないから、アレルギーで触れないのが
 いやでさあ。」
よろこぶ、恵理香を尻目に、

4人の少女達は瞳孔を三日月の様に細くして、
にやにやと笑っている。

「恵理香もきっと気持ちいいニャン」

しかし、その姿とつぶやきを
気に止めるものは誰一人としていなかったのだった。

	
おわり
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