作者 DarkStar
夜も遅い住宅地をトボトボあるく、一人の女性 顔を赤くし、千鳥足の姿は、かなり酔っ払っているようだ。 「隆の馬鹿!!!、ちくしょーー!!」 「荒れているな・・・・・女・・・・・・・」 電柱の影から現れたそれは、長身の若い男。 「あによ・・・・アンたぁ・・・・・・・」 突然現れた男に動じるようす泣く絡む女。 「自分を振った男に復讐したいのだろう? 無理もない、お前のようないい女を振る『最低』男なのだから・・・」 男は、あえて「最低」と言う言葉を強調して言う。 それに気を良くしたのか。 「ふふ、そーだわかってんじゃん。あの馬鹿、隆。ぜえええったい 許さないんだから」 腕をグーにして天に突き出し、 深夜である事もお構いなしに大声を上げる。 「そうだ、その嫉妬、そのエネルギーこそ、B SEEDの至高の肥料。 さあ、いまこそ大輪の花を咲かせるのだ。」 男が手に持っていたのは、野球ボール大の物体、 一見すると果物にも、植物の種子にも見える それから、無数のツルが伸びると、女を絡め取る。 「な、何、何なの・・・・コレ・・・・・」 絡みついたツルは、 巻きつくだけに飽き足らず、その先を女の体の中に入り込むように同化していく。 顔の半分に浮き出したいくつものの線、 それは、血管なのか、融合した植物の茎なのか判別できなかった。 「隆、・・・たかし、・・・・あいつ・・・・他の女に・・・・・ゆるさない。 殺してやる、ころしてやる!! タカシも、あのオンナも、みんな、ミンナ、コロシテヤル!!!」 狂ったように叫ぶ女の顔はまるでオニのような形相。 一方女の体の中に飲み込まれた種は、 体を占拠すると外殻となる女の体を変化させ始める。 健康的な肌が不気味な緑色の皮膚に変わり、 体中から、粘り気のある液体が滴り落ちている。 スカートの下から千切れた下着の破片と、足より太い 緑の・・・まるで爬虫類を思わせる尻尾が生えてくる。 開いた口からは、鋭い牙がいくつも生え、飛び出した顔は、 鼻の形を取り込んでいく。 頭からは、長い髪が抜け落ち、 手足には、手足には、円錐形の爪が生えたかと思うと、 女の体が一回り、二回りとどんどん大きくなっていく。 『ぐああああ、グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』 女の唸り声が巨大な獣の鳴き声に変わると、 そこに立っていたのは、巨大な爬虫類だった。 住宅地に現れた、怪獣とも言うべき存在。 普通の民家など、ちょっと足を上げてしまえば、 用意に踏み潰してしまうほど、巨大なものだ。 「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 住民の安眠を妨げる爆音。 振り出される巨大な拳でなぎ払われ 踏み出された足に潰される家。 「きゃああああ」 「な、なんだああああ!!!!!」 怪獣の声よりもその恐怖に慄く住民の声の声が大きくなっていく。 「ふっ、さあ、花は咲いた・・・・・ 後は・・・・実をつけるだけだな・・・・・・」 そういい残すと、女を怪獣に変えてしまった謎の男は、 壁に溶けるようにすぅっと姿を消した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 真っ暗な部屋に点る真っ赤な光り。 鳴り響くブザー。 赤く光る表示板には、「ALART」の文字 すると、真っ暗だった部屋の電気がつき、電子機器にスリープ状態から、 アクティブな状態になる。 個々の機器に付いたLEDが点灯し、冷却用のファンが唸りを上げる。 「・・・・・緊急警報、緊急警報。 ○×地区に、巨大物体出現。 現在、警察と消防が現地に向かっていますが、 通報によると巨大生物が現れたとの事。」 オペレータを勤める男性職員の声。 そして、その隣の席に付いた。白衣姿の妙齢な女性。 「相手は、ビースターに間違いない?」 「間違いないと思います。現地に先行した諜報部に寄れば、 以前、飛来したBX-00が放っていた 特殊な化学物質、及び同一周波数の電磁波を検知。」 「ずいぶん待たせてくれたわねえ。00出現から、今年で丸10年。 ま、解散させられそうなうちとしては、渡りに船かもね。」 と皮肉をこめて言うと 「そんな事といってる場合じゃないわ。 敵が現れた以上迎撃しなくては・・・・・」 彼女達の席より、一段上段。 部屋の中央に席を持つ女性の燐とした声が、部屋に響く。 「でも、どうする?、さすがに市街地じゃあ、さすがに手がだせないわ。」 「とはいえ、なんとならないの。このままじゃ・・・・・・・」 「そうねぇ、・・・・・・・」 2人が頭をかしげながら考えていると、 「それなら、大丈夫そうです。目標は、現在村守山、山頂に向かって進行中です。」 あの当たりなら、民家はないはずですし・・・・・」 とは先ほどのオペレータ。 「じゃあ、叩くなら今ね。・・・・・・・現時刻を持って、目標をBX-01と呼称し、 これよりその排除に当たる。『ヴォルフィーネ』出撃準備。」 手を振りかざし、室内の職員に、命令を下す。司令。 「「「了解!!!」」」 その声に作戦司令室の一同は声を揃えるのだった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ドックに格納された巨大な機械・・・・・。 その内部で、腕を組みながら、今か今かと出番を待っている。 『綾子。出撃準備、大丈夫?』 目の前のスクリーンに映し出されたのは、先ほどのオペレータ。 「了解よ。もう待ちくたびれちゃった。出るわよ。ハッチ開けて・・・・」 地面に立って垂直に立っていたそれは、それを支える柱と共に斜めになり、 そのまま、リフトの上をスライドしていく。 『ハッチ開放・・・・・・カタパルト射出準備良好。 進路クリア、『ヴォルフィーネ』発進どうぞ。』 アナウンスと共に、引かれる天井。 月明かりが、巨大な銀色の機体を照らしていく。 「さあ、あんたのデビュー戦よ。『ヴォルフィーネ』でるわよ!!」 勢いよく飛び出すリフト、それにのった 『ヴォルフィーネ』は「地面」がある限り加速し、 空へ打ち出されていく。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 町を壊しながら、山に向かって突き進む。 巨大怪獣。 『まちなさーーーい』 という声に怪獣振り向いた顔面めがけて、 銀色の足が、振りかぶられていた。 そのまま、足と頭が接触し、 まるで、ゴルフクラブでボールを飛ばすように、 一直線に飛んでいく。 しかし、そこには、建物が・・・・・・ 「ありゃ・・・・・やば・・・蹴る方向・・・・間違えちった。」 といったパイロットの声・・・・しかし、そういった時には、 もうその建物は、跡形もなく砕け散った後だった。 『ちょっと!!、綾子、気をつけてよ。』 オペレータの声がコクピットに響く。 民家から離れ、山間に立つ小さな工場。 それを緑色をした怪獣の体が無残に破壊した。 深夜なのが幸いしたのか、工場の機器も停止しており、 人もいないようだった。 「ごめん、ごめん。ねえ、達也、あの山って、 前に2人で流星群を見にいった山じゃない?」 『うん。確かにあそこは、星がよく見える穴場だけど・・・・・・・ どうしてそんな所に・・・・』 ガレキから、立ち上がる怪獣・・・・BX-01。 しかし、身体にはそれほど大きいダメージはない。 その前に立つ姿は、銀色の巨人。胸と左右に迫り出した両肩には、狼がかたどられ、 赤い巨大タービンが付いた右腕。 小さなひし形状の青いパーツの付いた左腕。 コウモリを思わせる漆黒な翼と、その巨体を支える強靭な足。 『ヴォルフィーネ』 それは、かつて 地球上に現れた恐怖の生命体、ビースター、個体呼称:BX-00。 それにたった一体で戦いを挑んだ謎のロボット・・・ 自らの『命』を投げ打って戦いを挑み。 相打ちになった・・・・・その『彼女』の核を使って生み出された それは、現行の地球のテクノロジーでは今だ解明されていない 多くの可能性、とそして同時に・・・・・危険性をも秘めている。 「さあ、行くわよ!!!」 ピンクのレオタードにいくつもの、 電極のような端末のついた独特の戦闘服に身を包んだ 彼女の名は相沢綾子。 高度な重力相殺システムと、 モーションキャプチャー機能によって、 一流の兵士のような強靭な肉体や、操縦技術がなくとも、 操作が可能な巨大ロボット、ヴォルフィーネ しかし、『彼女』に乗れる者は、誰でもよいわけではない。 彼女には、いや・・彼女でなくてはならない特別な事情があるのだ。 いきなり、顔面を蹴られた怒りからか、 緑の顔を赤くして、襲い掛かってくる。 BX-01・・・・・・・ それを迎え撃つ、ヴォルフィーネ。 右腕のタービンが激しく回転し、 平手にされた手のひらは、まるでドリルのように 猛烈な速さで逆方向に回転していく。 肘から巻き起こる炎をタービンの風がまとい。 炎の渦が腕に巻きつくと。 「よーし、ブラスタァァァーーーーバレッド!!!」 彼女の叫びと共に。前に突き出される右腕。 炎の腕は、肘から先を切り離し、回転したまま、弾丸のように飛んでいく。 『ブラスターバレッド』 高速回転し、炎をまとった鋼のそれは、 ドリルのように相手の体を焼き貫く。 火傷と、貫通の同時作用で、敵に大ダメージを与える ヴォルフィーネの主兵装である。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 作戦司令部のスクリーンには、 今まさにヴォルフィーネのブラスターバレッドが、BX-01を捉える映像。 燃える炎の腕がBX-01に接触したかに見えたその瞬間。 突然推進力を失い。高速回転したまま空中で止まってしまった。 そこには、BX-01との間に光る壁。 先ほどまでの攻撃が決定打を与えていなかったのは、 壁のせいなのだ。 「・・・・・バリアね。でも、あの程度の出力なら・・・・。」 白衣の女史が、言うまもなく。 後方の噴射口から出る炎の大きさが倍に膨れ上がると、 光の壁をギリギリと押しやる。 そして、壁はガラスを叩き割るように砕け散り、緑の皮膚に拳が突き刺さる。 目標に命中しても、回転力を落とさないそれは、その肉体を焼きながら、 体を貫通し、背中から抜け出た。 炎の肘は、その赤い鎧を脱ぎ去り、 自らが巻き起こす風で表面の熱を冷やしながら、 ヴォルフィーネの右腕に戻ってきた。 『グオアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 体を貫かれ、焼かれる激痛に、怪獣・・・BX-01は声を上げる。 ・・・・・・・・・・・・ ヴォルフィーネのコクピットのモニタには、 痛みに叫ぶとも、怒りに震えるとも取れる 怪獣の叫び声。 体はふらふらしているが、 目はぎらぎらと輝いている。 「このまま一気にいくわよぉ・・・・・」 『ヴォルフィーネ』の基本戦術は、 接近格闘戦。 モーションキャプチャーを最大限活かし、 戦闘を進めるには、このスタイルがもっとも効果的だ。 足が振り上げられ、 勢いをつけた蹴りがBX-01を襲う。 体を抱き、まだ動けないBX-01に再び銀の足が触れられた。 バランスを取るため、他の部位より、比重を重くしたそれは その質量そのものがここでは大きな威力を発揮する。 バリアを失った状態で蹴られ、殴られ体や、顔から血を流す怪獣 怒りの余り、顔を赤くし、口を開くと、中には、赤い弾が・・・・・・ それが吐き出されると、巨大な火の玉となって、ヴォルフィーネに向っていく。 ヴォルフィーネは、左腕を体と平行に前に出し、拳を握る。 「ブリザードバックラー!!!」 綾子の掛け声と共に、肘のひし形が 中心点を基準に、形をそのまま大きく展開する。 ヴォルフィーネの左腕の盾から発せられる青い光りの膜。 展開された光に触れた途端。 火の玉は、何事のなかったかのように消え 火球の残り香たる生暖かい風だけが、機体に触れた。 その後も、幾度となく、BX-01は、炎を吐き出し続けるも、 それがヴォルフィーネの機体に触れる事はなかった。 「へっへーん。効かない。効かない。」 『ブリザードバックラー』 左腕に装着されたパーツが展開し盾を作る。 その時に発生した青いバリアを通過した物体は、 運動エネルギーや熱エネルギーを一瞬にして奪われ、 盾に接触する頃には、その大半が失われてしまう。 あらゆる攻撃から身を守る ヴォルフィーネの防御システムである。 「ガルルル、グアアアアアアアア!!」 声を上げる。BX-01 「ようやく観念した・・・・・えっ・・・・・」 綾子が驚くのも無理はない。 唸り声をあげたBX-01の体を黄色い光りが輝くと、 見る見るうちに傷口がふさがっていく。 「な、なんなのよ。こいつ・・・・・くっ!!」 敵に向かい、蹴りを、拳を繰り出すヴォルフィーネ。 しかし、先ほどまでと違った鈍い音。 彼女の手や足には、手ごたえを全く感じない。 (バリアも再生した?・・・・でもさっきとは、 ・・・・まさかバリアの出力が上がっている!?) 前のバリアより、パワーアップしている。 それが証拠に外傷こそ与えられなかったものの、 BX-01の体を飛ばした格闘攻撃が今は完全に殺されている。 「く、ブラスターバレッド!!」 右腕から再び放たれた鉄拳は、 唸りを上げて黄色い幕にぶつかっていく。 至近距離からのブラスターバレッドには、 強化したバリアも耐え切れず粉砕されたが、 それでもさっきより手こずった感が否めない。 「グアアアアアアアア!!」 BX-01が叫ぶと再び全身に黄色いオーラが覆っていく。 バリア喪失のうちに体を殴りつけるも、 攻撃を与えるよりも再生するスピードの方が早く、 最後には、バリアまで復元し、元の・・・・ いや、もとより悪い状況になっている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BX-01の様子は、作戦本部にもすぐに映像として伝えられた。 「これは・・・・・・」 中央の指令が唇を噛む。 「再生能力ね。BX-00にもあったから、やっぱり・・・・・ 楽には、勝たせてくれないか・・・・・」 声こそ、いつもと変わらないが、その額には、 冷や汗が浮かんでいる これこそ、ビースターの恐るべき能力 超速再生。あっという間に傷を治すその姿に、 例のロボットも苦戦を強いられた。 「そ、・・・そんな・・・あんなに早く再生させられたら・・・・・ どうやって勝んですか!!」 「そういわれても、実際、例の『彼女』と同じようにやるしかないでしょうね。」 「まさか・・・・・・」 白衣の女史の提案に、指令は声を荒げる。 「えええ・・・・・ヴォルフィーネの全エネルギーを一点に集中させて、 敵の中枢を体外に摘出・・・・・。」 「でも、そんなことどうやって・・・・・・・」 『できるわ。』 オペレータの声を遮ったのは、パイロットの綾子だった。 『パターンK・・・・・・・』 「ちょ、ちょっとまって、そんな事したら・・・君は、・・・・・」 オペレータ達也は、大声を上げて立ち上がる。 『覚悟の上よ。どのみち、今はパワーで押してても、 あの再生スピードの長期戦なら、あたし達に、勝ち目はない。・・・・・・』 「・・・・・・・・」 彼とて、その手段でなくては駄目かもしれない・・・・。 しかし、なんとか別の方法を探ろうと必死に思考をめぐらせる 「綾子のいう通りよ。あれだけ短期間に肉体の再生行うなら、とてつもない エネルギーを使うはず・・・ でもビースターの力は、衰えるばかりか寧ろ増すばかり、 このまま、敵のエネルギー出力が高まれば・・・・ いずれヴォルフィーネも・・・・・・。」 いかに絶大なる攻撃力と防御力を誇る ヴォルフィーネとて、エネルギーには、・・・ いやなによりパイロットである綾子には、限界があるのだ。 白衣の女史に諭され・・・・オペレータ達也は・・・ 「わかった。でも、約束してくれ・・・・必ず、帰ってくるって・・・・・」 『ええ、こんな所で死んでたまるもんですか!!!』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 黄色いオーラを纏ったビースターに 立ちはだかる巨大な銀色の巨人。 「ビースター!!!、みせてあげる。 『あたし達』の全力! パターンK!!」 ヴォルフィーネの全身から、青白い光りが、放たれ ビースターが動きを止める。 その瞬間。ヴォルフィーネの体が組み変わる。 左右を向いた両肩が前を向き、 頭部が体内に格納される。 すると胸の狼の顔が頭の位置に移動し、 三つ首の狼の顔が、ビースターに向けられる。 両腕の手首・・・・・マニュピレータが引っ込むと 変わりに爪のある動物の前脚が出てくる。 両足は、膝の位置で、前後に分かれ 膝の方が地面に付き、手と同じ鋭い爪が迫り出す。 背中の後部に格納されたブレードが飛び出し、尻尾を形作る。 そして、銀色の巨人は、 羽の生えたケルベロスとも言うべき、 巨大な三つ首の狼へと姿を変えた。 しかし、『変化』はコレに止まらない。 「う・・・うう・・・・あ、・・・・・・・」 レオタード姿でうずくまる綾子 顔の前に出された両手の指は、 短くなりながら、その形を変えていく。 尖った爪でレオタードを切り裂くそこには、 銀色の犬の前脚がそこにはあった。 足も、レオタードを引きぢぎるようにかかとが伸び、逆に太ももは短くなっていく。 長く伸びていく生地が耐え切れず破れたそれにも獣の肢が 「うん。ううう、うううう・・・・・・」 綾子が唸り声をあげると割れ目がくっきりとした お尻の付け根が膨らみ、 伸びたゴム状の布が悲鳴を上げるように千切れると。 ふさふさの尻尾が窮屈なスーツから飛び出すように生えてくる・・・・・・。 口が伸び、顔の中央にマズルが生える頃には、 頭の上の耳をピンと立てた狼の顔。 髪が吸い込まれるように消え。 コクピットの空間には、人間大の狼が・・・・・ いや、その首の横から、二つの突起が飛び出し、 ソレを突き破るようにして出てきたのは、2つの狼顔・・・・。 そう機体と同じケルベロスの姿になった綾子の姿だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 巨大な人型から、ケルベロスに変形したヴォルフィーネ。 「ゴアアアアアアアアア!!!」 敵の姿に威嚇するBX-01。 『グルルルルガアアアアアアアア!!!!』 ロボットも負けじと、声を上げ、 牙をむき出して、襲い掛かろうとする綾子。 スーツが引きちぎれても、 反応するモーションシステム。 動きに合わせて、変形したウルフィーナが向かっていく。 3つの頭がそれぞれ違った色に輝きだし、 空気を切り裂く爆音と共にBX-01の方に突進する。 左の頭は青く輝き、その牙がビースターを捕らえる ビースターは動きを止めた。 続いて、右の頭が、赤い牙で肉を引き裂き。 胸に大きな亀裂を作る。 最後に銀に輝く中央の顔が、開いた胸から脈打つ核に喰らいつき 引きずり出した 『ヘルズゲート』 ブリザードバックラーの力を備えた左の頭が 敵のバリアを無効化し、喰らいついた牙から送られる波動が再生活動を停止させる。 続けざまに、ブラスターバレッドの攻撃エネルギーを備えた右の頭が、 物理的に肉体を破壊し、 最後に中央の頭が、トドメを指す ヴォルフィーネの最大にして、最後の切り札。 その代償として、 モーションシステムと完全リンクした綾子は、一時的にケルベロスの姿になってしまう。 脈打つ、赤い心臓。ビースターの核。 ケルベロスに加えられたそれが今にもつぶされようとする時。 『だめ、それを壊してはいけないわ・・・・・・』 ケルベロスと化した綾子に問いかける声・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (だれ・・・・・・・・・・・・・) (綾子・・・・・私の声が聞こえるのですね・・・・・・・) (あなた・・・誰・・・・・・) (綾子・・・・・・今は一刻も早く、『彼女』を助けなくては・・・・・) (彼女?) (そう、貴女がビースターと呼んだ彼女・・・・・元は人間なのです・・・・。) (そ、そうんな、どうして、・・・・・・・第一どうやって助けるの・・・・・・・) (唄って下さい。私と同じように・・・・・・・・) (唄う?) (・・・・・・・そう・・・・・『ウォオオオオオオオオオオオオン!!!』) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」」」 勝利に酔いしれる・・・・作戦司令室、ソレを止めたのは、 獣の啼き声・・・・・いや、ケルベロスヴォルフィーネの声だった。 スクリーンに目をやると、 銀色の光に包まれ、宙に浮いた核に向かってヴォルフィーネが吼える。 三つの口が合唱するに一つに声を合わせ、 音の波動が響き渡る。 その声からでた波動が核に触れ丸い核は、形を激しく形を変える。・・・・・・・ やがて、卵が割れるように裂けると・・・・・・・・核は蒸発するように消えていき、 中から、裸の女性が飛び出てくる。 黄金の光に包まれた女性が、地面にゆっくり下りていく。 彼女が地面に到着すると・・・・・・・その光りは静かに消えていく。 そして、作戦司令室に走る戦慄。 「ビースターの核に人間が・・・・・いや・・・・・・・」 「人間が、ビースターになっていたの・・・・・?」 司令の言葉を続けるように白衣の彼女は、言葉を搾り出した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 全エネルギーを使い果たし完全に機能を停止した ヴォルフィーネに駆け寄る。達也。 コクピットを開けるとそこには、ケルベロス・・・・・ いや、銀色の毛並みをもつ美しい狼がいた。 システムが完全停止したため、ケルベロスの姿は維持できなくなったが それでも、その後遺症として、いまだ獣の姿のままだ。 彼女は、達也の顔に飛びつくと、尻尾を千切れんばかり左右に振りながら、 顔をペロペロと舐める。 「は、博士・・・・・・こ、これって・・・・・・なんとか・・・・・・・」 達也のすがるような声に・・・・・・。 「うーーーん。一度完全リンクしてるからね~。 しばらくはやっぱり、このままだと思うよ~。」 と後から歩いて来た女史が応える 後ろで、「そんな~」と声を上げながら狼に押し倒される達也。 「それよりも・・・・・・・問題はこっちよね・・・・・。」 やってきた救急隊に救助され毛布を掛けられ、担架に乗せられる全裸の女性。 彼女の姿を見送りながら、博士と呼ばれた彼女は深い溜息をついた。 ビースターとは、なんなのか? 人々をビースターに変える謎の男の正体は・・・。 そして、ヴォルフィーネが、ビースターと化した 人間を救ったあの能力とは・・・・・。おわり
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