星獣殿 NOVELページ >その他の獣化作品 > 獣化作品 No.09

獣化作品 No.09

僕の初恋

作者 DarkStar

僕の初恋。

久々に家の整理をした僕は、
実家から持ってきた昔のアルバムを見つけ、
ついつい見入ってしまっていた。

「貴方、何みてるの。」
妻に呼び止められ、
僕は見ていた物の表紙を見せながら、

「あ、ああ、昔のアルバムだよ。・・・・・」
そして、次のページを開いた僕の目に入ってきた
一枚の写真。

そこには、かつての僕と、
僕の初恋の女性の姿が映っていた。

・・・・・・・・・・・

黒いランドセルと背負って、
学校までの道のりを走っていく僕。

「よーた君。おはよう。」

「お、おはよう。沙代子(さよこ)ねーちゃん。」

僕に声を掛けてくれたのは、
隣に住んでる美人のお姉さん
沙代子さんだった。

「陽太君、今日も本当に元気だね。」

僕よりも背の高い、お姉さんが、
かがんで僕の視線に合わせて声を掛けてくれる。

「あ、ありがとう。」

顔を真っ赤にする僕。

だれに対してもやさしく、
明るく接する姿。
美人なのもあったけれど、

それ以上に心を暖かくしてくれるような
彼女の姿に幼いながらも
僕は惹かれていった。

小学生の僕と、大学生の彼女。
年の差は、10歳くらいだっただろうか。

僕の真剣な思いは募れども、
それは彼女に決して伝わる事はなかった。

そして、僕が小学校を卒業する頃、
僕と沙代子さんの関係が
大きく崩れだす事になる。

「あれ、沙代子さん、今日もいないや。」

余裕のあった大学生時代と異なり、
既に社会人となっていた彼女は、
忙しく、隣同士であっても、
なかなか会う機会も減ってきていた。

「このまま、僕、沙代子さんに会えないのかな・・・。」

そんな不安ばかりが僕の心に大きくのしかかってきた。


「じゃあな、陽太。」

「うん、じゃあ、また明日。」


その日も、僕はいつものように
暗くなるまで友達と遊んだ後、
家に帰る途中だった。

(すっかり暗くなっちゃったなぁ・・・・。
 早く帰らないと母さん達心配するなぁ。)

「あれ、陽太君、ひょっとして陽太君?」

そんな僕の後ろから突然声を掛けてきたのは、
沙代子さんだった。

「しばらく見ないうちに背、伸びたねぇ。
 あたし、もう少ししたら、越されちゃうかなぁ」

出会った頃は、見上げてばかりの彼女だったが、
実は身長はあまり高い方ではなかった。
そのため、その当時の僕と大体同じくらいの背しかない事

その事に、僕自身驚いた。

そして・・・・・。

(そうだ、言わなきゃ、僕の気持ち、
 沙代子さんに、沙代子にあえなくなっちゃうかもしれないから
 ・・・・・・・)

いま考えれば、遠くに行くわけではない彼女に
あそこまでして、
思いを伝える必要はなかったかもしれない。

それから先、一生後悔する出来事になるなど、
その時の僕は予想だにしていなかった。

「あ、あの、沙代子お姉さん!!!!」

「なあに、陽太君。」

目線がそれほど変わらなくなっても、
彼女にとって僕は、まだ子供だった。

「沙代子お姉さんは、す、すきな人、いるんですか?」

「え、な、何を急に・・・・。」

突然の事に困惑する沙代子さん。
でも、笑って。

「ふふ、そうねえ、まだいないのよ。
 好きな人。あたし今仕事が大事だから。」

その言葉に僕は歓喜した
そして、次の瞬間には口から声が飛び出していた。

「そ、それじゃあ、ぼ、僕と、
 僕と付き合ってください!!!。
 ぼ、ぼく、・・・・ぼく・・・・
 沙代子さんが、大好きなんです!!!!」

最後の所は、目をつぶり
あらん限りの声で僕は叫んだ。

そんな僕の様子に沙代子さんは、
目を丸くしていると
少したって、いつもの顔に戻り。

「ふふ、ごめんね。陽太くん、
 陽太君が大人になっても、私の事
 好きでいてくれたら・・・・・・・
 いいわよ。」
 
それは、大人の断り方だった。
でも、当時の僕には、それでは納得できなかった。
やっぱり、僕は子供だったのだ。

そして・・・・。

「僕は、僕は、子供じゃない!!!。
 ちゃんと、ちゃんと、沙代子に子供を産ませられる
 立派な雄豚だ!!!」

僕達獣人は、人間の姿でこそ、
ヒトと同じスピードで年を重ねていくが、

獣の姿は成獣するまでは
その動物とほどんど変わらないスピードで成長し、
その後は人の姿と同じような感じで
年を取っていく。

生まれて、10年以上たった僕は、
豚としてはもうとっくに大人の雄だった。

「な、何を言ってるの?
 陽太君・・・・・。」

彼女は知らなかった
自分自身が本当は人間でない事を。

そして僕も、彼女が自身の真実を知らないこと
を知らなかったのだ。

『獣人』そんな単語すら知らない彼女は
突然『豚』だと言った僕の事が
理解できなかったのだろう

「ふー、ふひぃ、ぶうう。」

余りに興奮した僕は、
そのまま勢いに任せて、
豚の姿に戻っていく。

「え、よ、陽太君、陽太くんがぁ・・・・」

その光景を人間が見れば、驚くだろう。
彼女もその場に立ち尽くし、
僕が豚に戻るのを待っていた。

「ブヒーーーー!!!!、ブヒッ!!、
 ブヒィィィ!!!」

僕は、声を上げる。

「そ、そんな、よ、陽太君が、ぶ、豚に・・・・・」

「ブヒィ!!!」

沙代子さん近付く僕、
しかし、

「いや、こ、こないでぇ」

彼女はあとづさって行く。

(どうしてそんな事言うの?沙代子さん。
 僕、立派な雄豚だよ。ねえ見てよ、
 子供じゃないでしょ。)

「いやぁ、来ないで、来ないでよぉおお」

僕に背を向けて走り出す沙代子さん。

「ブヒィ、ブヒヒヒヒ!!!!」
(ま、待ってよ、沙代子さん、
 どうしてどうして逃げるの?)

走る彼女を追いかける僕。

僕の変身が引き金になって、
彼女自身初めてとなる体の変化が訪れる。

「はぁ、はぁ、はっ、はっ、ふぅ、ふぅ、
 ふひっ、ふひっ」
と息が荒くなってくるにつれ、
彼女の鼻が大きくなっていく。

ハイヒールが脱げ、ストッキングの下には、
黒々とした蹄が生え、
コツコツと音を立てながら、走っているが、

そんな足ではまともに走れず、
彼女は転んでしまう。

「ブヒィイイ!!!」
自分の口から出てきた声に
彼女は、目を見開いて驚く。

「え、い、今の、あ、あたし、
 いやぁあ、あたしの手が、あ、足がぁ、
 何、このでっぱりは・・・・・」
 
自分の視界に入る手と足、
そして、顔から伸びる肌色の物体。

近くのカーブミラーに自分の顔を映し出すと

「いやあああああ、あたしが、ぶひぃ、ぶ、ブタに、
 ブヒ、ぶひぃいいい。」

泣き声交じりに絶叫する彼女。

ミラーに写る彼女の顔は、
中央に突き出た大きな鼻。
耳は垂れ下がり、スレンダーの肉体は、
脂肪によって膨らみを帯びている

「いやあたし、ブタ、なんて、フゴッ、
 いやぁ、ブヒィ、ブゥ、ブゥ、ブゥ、ブゥ」

彼女の口からついに人の言葉がなくなり、
ブタの鳴き声に変わっていく。


・・・・・・・・・・

突然、豚の姿に変わってしまった私。
町中を走り回っていた

そんな私は、
見知らぬ男たちに取り押さえられると、
どこかへ連れて行かれてしまった。

目を覚ました私は、
全裸の格好で横たわり、
その上には、毛布が巻かれていた。

どうやら、ここはどこかの施設みたいだ。

「お目覚めになりました?」

と突然ドアが開き男の人が入ってくる。

「キャーーーーー!!!」
突然の来訪に私はあらん限りの声を上げた。

「と、突然、何ですか。」

「で、でてって下さい。!!!!」

「え、ででも・・・・・・。」

「いいから!!!」

見知らぬ人に裸をさらすはずかしさの
余り、私はあらん限りの声で
叫んだ。

「わ、わかりました。そこに服がありますから、
 それを着て、こちらに来て下さい。」

男の人はそういいながら、私に背を向け
出て行く。

私はいわれた通り
そこにあった服を着ると、
部屋の外へ出て言った。

そして、私は男の人から
信じられない話を聞く。

私が人間でない事。
本当は豚であること。

とても受け入れられるような事ではなかった。

「まあ、いきなり信じろといわれても無理ありません。
 現に貴女は、20年近く、ご自分を人間として
 生きてきたのですから・・・・・。
 でも、ここは貴女がご自身の本当の姿を
 ご理解していただく為の施設です。」

そうして、案内されたのは、
大きな豚小屋。

「ここには、豚が何頭か飼育されています。
 まず、彼らと接して
 貴女の自分自身を見つめなおして下さい。」

「あ、あの豚達と、そ、そんなあたし、あたし
 人間です。豚じゃ、豚じゃない。」
 
私は、走り出した。
しかし、サンダル履きの私の足は、
わらの敷き詰められた
地面に足を取られ、すぐに転んでしまう。

「あいたたたぁ。」

「フゴォ!!!!」

「ブヒ、ブヒ!!!!」

と豚たちが心配したのか、
私に寄って来た。

豚たちは鼻をならし、
私の匂いを嗅いでいると

突然後ろを向いて、
お尻を向けてくる。

私の鼻孔に
豚の肛門から、甘い匂いが
ただよってくる。

私は、気が付かない内に
豚の肛門に鼻をぴったりとつけ

その匂いを嗅いでいた。

ふー、スン、スン、クン、クン

鼻をならして、
雄豚のフェロモンを肛門から
直接嗅ぐ私。

顔には、豚の尻の泥ついたが、
それでも頭を摺り寄せるように嗅ぎ続ける。

「だ、だめです。!!!・・・・さん。!!!!」

遠くでさっきの人が何かいってる。

『・・・・』?

あたしの名前?よく聞こえない。

あれ、名前って何だったけ?

よく判らない。

ぶー、だめ、何考えているんだろ。
アレ?、ブヒィ、ブヒィ。

視界に入ってくる突起した鼻。

あたしは、ズボンを下ろし、
下着を脱いで、
尻尾を振ってオスを挑発する。

ねえ、来て、あなた、発情してるんでしょ。
ブヒィ。あたし、交尾、こーブヒィ。したい。

わたしの初めて。『処女』を
あなたにあげる・・・・・

あれ、ブヒィ?、
『ショ・』って何?

ブヒ?、言葉も思い出せない。

言葉?、ことばって・・・・・・何?

何?、何を?、何が?

何って、なに?

ブヒィ、ブヒィ、ブヒィ。

ついに私の頭の中は、
人の声でなく、豚の鳴き声が響き、
私の後ろの雄豚は、自分のシンボルを
私の秘所に挿入してきた。

「ブヒィ!!!、ブヒィ!!!!」

その時
私は、もう一頭の牝豚になっていた。

・・・・・・・・・・

豚に戻ってしまい、パニックを起こしていた
沙代子さん。

僕から逃げるのも忘れ、
走り回っていた。

そんな沙代子さんに
たまたま近くを通りかかった
『獣人保護施設』の人の手で彼女は保護された。

暴れる彼女を数人の男達が抑えつつ、
僕は家に帰された。

それから数日して、
僕は施設の人に呼びだされ、
そこへ言ってみると

「アレが、沙代子さんです。」

「あ、あれが、お姉ちゃん・・・・・」

「ブヒィ!!!、ブヒィ!!!ブヒィ!!!」
そこには、雄ブタと交尾をし
声を上げる雌ブタの姿があった。

「お、お姉ちゃんどうしちゃったの?」
僕に聞こえた彼女の声は、
もはや獣人のものではなく、だたの豚のものに
なっていた。

「お、お姉ちゃん。僕だよ。陽太だよ。」

「フゴゥフゴ!!!、フゴオオオオオオオ!!!」
僕の声が届かない彼女は、只ひたすら
雄豚の腰の動きによがっているだけだった。

「ど、どうして、こんな。」

「彼女は、人間としての自我が強すぎたんです。
 そのため、発情した雄の匂いに
 人間としての自我が崩壊し、
 そして、豚の心だけになってしまった。」

その当時、僕は施設の人が言っている事が
理解できなかった。
だが、目の前の異様な光景だけは理解できた。

「沙代子お姉ちゃん!!!、
 さよこおねえちゃああん!!!!」

「ブヒィ、ブヒィイイ!!!」

何度呼びかけても、牝豚になってしまった
彼女には届かなかった。

「陽太くん、もう、もう結構です。
 やっぱり、君の声でも駄目でしたか・・・。」

沙代子さんの両親は、れっきとした
人間だった。

沙代子さんは、覚醒型の獣人だった。
だから、彼女の両親も、
ここに呼ぶことが出来ない。

無論会社の人や、学校の友人達も。

彼女と親しい獣人は僕だけだった。

目を伏せた職員の男の人が、
豚の檻にすがって泣き叫ぶ
僕を引き剥がし、連れて行く。

「ブヒィ、ブヒィイイイイイイ!!!」
よがる牝豚の鳴き声だけが

僕の耳にいつまでも、響いていた。

・・・・・・・・・・・・・・・

あれから、数年たって、
施設の人から手紙が届いた。

僕が帰らされた後、

沙代子さんは、何匹かの
元気な豚の赤ちゃんを出産し、
その仔達が乳離れする頃。

彼女は一頭の牝豚としての生涯を終え
亡くなったそうだ。

その事実に僕は震えた。

もう、高校生に
なろうとしていた僕に施設の人は、

自分達の管理のミスであったという謝罪と、
僕のせいではないという慰めの言葉が綴られていた。

その手紙の最後に書かれた
事だけが僕にとって唯一の救いだった。

沙代子さんの赤ちゃんたちは、
みんな、ちゃんと人間の姿になれ、
いまや獣人の孤児院で元気に暮らしているそうだ。

同封された写真には、男の仔と女の仔が
幾人か写っていた。

女の子の一人は、沙代子に
そっくりで将来が楽しみな感じだ。

沙代子と同じやさしい子供達の笑顔が
僕の罪悪感を少しでも軽くしてくれたように思えた。

・・・・・・・・・

あれから、さらに十年たって、
僕は同じ豚の女の仔と結婚した

自暴自棄になったときもあったけれど
今日まで何とかやってこれたのは、
彼女のおかけだ。

沙代子さんとの日々は
遠い過去のようでありながらも、
今でもはっきりと覚えている。

人としての意識をなくすその瞬間。
沙代子さんが何を思ったのか

僕にはわからない。

沙代子さんの仔供達も
もう大きくなったことだろう。

僕が、沙代子さんを
彼らから奪ってしまったのかもしれない。

でも、僕が行動していなければ
雄豚と交わらず、『あの仔達』は生まれなかった。

それを考えると僕は複雑な気持ちになる。

こんな僕はゆるされるのだろうか?と・・・。

「どうかしたの?」
心配そうな妻の顔。

「え、な、なんでもない。」

僕は自分でも気が付かないうちに
泣いていたようだ。

「そう、ほんと、大丈夫。」


「大丈夫だよ。」

僕は、涙を拭いて、
笑顔を見せる。

そうだ、僕はゆるされなくても、
彼女を、妻を守らなくてはいけないんだ。

ごめん、沙代子さん。

僕には、守らなくてはいけない女性が
出来たんだ。

彼女のためにも僕は生きる
人として・・・・・・生きていくよ。

・・・・・・・・・・・

人は生きる上で間違いは必ず犯すもの。

ゆるされる罪、ゆるされざる罪。

いろいろあるだろうが、

生きている以上、生き続けなくてはならない。

その罪を背負って・・・・・。

それこそが
罪を償うという事ではないのだろうか。

	
おわり
Page TOP