巨人の阿部慎之助2軍監督(41)が、2軍で再調整中だった沢村拓一投手(32)を3軍降格させる決断を下した。7月26日に1軍登録抹消となった右腕だが、2軍戦でも本来の姿を取り戻せず。2軍指揮官は「あの状態では、2軍でも投げさせられない。このままだと終わる」と話し、3軍合流後はボールを使わせず、映像研究などによるイメージトレーニングに重点を置く考えを明かした。
阿部2軍監督が、異例ずくめの剛腕再生計画に乗り出す。
「沢村は3軍。じっくりやっている暇はない人間だけど、今のあの状態じゃ、2軍でも投げさせられない。このままだと終わるから、あいつ。厳しい言い方だけど」
不調で2軍落ちした1軍投手が、リフレッシュのため、一定期間、投球練習などから遠ざかるケースはある。しかし、沢村ほどの実績ある選手が、故障以外で3軍合流となるのは巨人以外でも極めて珍しい。2軍戦に登板して復調のきっかけを見つけるより、あえて実戦から遠ざけ、時間をかけて問題点を根本から解決する方針だ。
沢村は今季1軍で13登板し、防御率6・08。7月25日のヤクルト戦(神宮)では緊急先発に抜てきされ4回途中2失点と奮闘したものの、1軍首脳陣は本来の状態ではないと判断し、翌26日に登録抹消となった。2軍降格後は5試合に登板も、7日のDeNA戦(横須賀)では同点の8回に3四球で4失点。バックのミスが絡んだ不運もあったが、復調への糸口がなかなか見えず、3軍降格という決断が下された。
再生の方法も、驚くべきものだ。「会田(3軍投手コーチ)とも相談したけど、いろんなことを試してみる。とりあえず、ボールを一切持たせない。シャドー(ピッチング)もやらせない。『自分のいい時のビデオを見ておけ』と。それが、今の彼にとっての最善策」。実戦どころか、当面はボールすら握らせない。映像研究などによる座学によってイメージを描くことがメインになるとみられる。
2人は中大の先輩、後輩という関係でもある。過去には日本シリーズのマウンドでサインを見落とした沢村を公開説教したように、重要な局面ではいつも阿部2軍監督のムチが入った。「今、(実技的な)練習をしても何も良くならない。近々、1軍に呼ばれるということは一切ないから、その時間はある。そこを自分でどう捉えてやっていくか」と慎之助監督。11年に新人王、16年にセーブ王を獲得したように、沢村の能力は誰もが認めるところ。リーグ連覇、日本一奪回へ欠かせない存在だからこその荒療治だ。(尾形 圭亮)