子どもに習い事をさせている方、また子どもに何かを教えている方、次のような言葉に思い当たるふしはありませんか?
「どうしてできないんだ」
「ちゃんと聞いてたのか」
「何回失敗してるの」
筆者は現在42歳。サッカーが好きで小学生の時から30年続けてきましたが、しばしば耳にしてきた言葉です。悔しい気持ちがバネになる子もいるでしょうが、これらの言葉は「コーチに言われた通りにやる」「厳しい練習に耐える」という練習の仕方に繋がり、コーチの想定内の上達しか望めないのだそうです。
Jリーグでジュニア育成に携わってきたサッカー指導者の池上正さんによれば、このような声掛けは「指導力のなさを示しているようなもの」だそう。「ほめて伸ばせ」とよく聞きますが、直してほしいところはすぐに見つかっても、ほめるのはなかなか難しいもの。子どもたちにどんな言葉をかけ、どんなふうに指導するのが良いのでしょうか?
12月5日、池上正さん監修による『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』という本が発売されました。
これは「辞典」というタイトルの通り、さまざまな言葉を集め、解説した一冊。目次はこんなふうになっています(クリックすると新規ウィンドウで拡大して見られます)。
「わかった?」「どんな感じ?」「どうすればうまくいく?」言った覚えのある言葉が並んでいるのではないでしょうか。それではこれらの言葉は、子どもの力を引き出すものなのでしょうか? それとも、逆に可能性の芽をしぼませてしまう言葉なのでしょうか。
たとえば「わかった?」という言葉。この裏には「わかったような顔をしているけれど、本当はわかってないんじゃないの?」「この間も『わかった』って言って、同じ失敗をしたよね」という気持ちが隠れています。また言われた側は、「わからない」と答えれば同じ説明が繰り返され、それどころか相手が不機嫌になることも分かっています。「わかった?」という言葉をかけることによって、このような悪循環が生まれているのです。
でも「わかったのかどうかが知りたい」「どこがわからなかったか教えてほしい」という気持ちはなくならないはず。そんな時には、「わからないところはどこかな?」と声をかければいいのです。
『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』では、かけてあげたい言葉・避けたい言葉とともに、「なぜその言葉をつい言ってしまうのか」「なぜこのような言い方がよいのか」「子どもはどんなふうにその言葉を受け取るか」が丁寧に説明されています。何気なく使っているフレーズにも、はっとさせられるポイントがたくさんありますよ。
『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』では、高い集中力やモチベーションをもって練習や試合に取り組むこと、そのためには子どもが自分でプレーを判断したり、目標を設定したりすることが大切だと説明されています。コーチの役割は子どもの選択の幅を拡げ、できることを増やすこと。なるべく型にはめず、自分の考えを押し付けずに、子どもの考えやチャレンジを引き出すのがよいそうです。
サッカーに関する本ではありますが、「人の力を引き出す」ということにおいては、サッカーだけでなく子育てや部下への指導についても同じことが言えるのではないかと思います。
悩んだ時にその都度調べて読むことで、まず自分の言い方が変わり、きっと相手の取り組み方が変わります。お手元に一冊、置いてみてはいかがでしょうか。