岡山県の日本酒の選び方|日本酒学講師に聞きました
酒匠で日本酒学講師の石黒建大さんに、岡山県の日本酒を選ぶときのポイントを4つ教えてもらいました。
岡山県で作られる酒造好適米「雄町」の酒に注目
酒匠/日本酒学講師
岡山県で造られる酒造好適米の代表と言えば雄町。江戸時代末期より盛んに栽培がおこなわれ、昭和初期には酒造好適米の代表格になりました。
栽培がむずかしく収量が少ない雄町は、戦後、栽培面積が減少し「幻の米」と呼ばれるように。昭和40年代後半から、利守酒造が中心となって雄町の復活栽培がおこなわれるようになり、現在では岡山を代表する酒米となっています。
雄町で造ったお酒の特徴は、濃醇でふくよかな旨味を持つこと。お酒選びに迷ったら「雄町米」が使われているものをチョイスしてみるといいでしょう。
利守酒造『酒一筋 純米吟醸 金麗』
雄町米を復活させた利守酒造の『酒一筋 純米吟醸 金麗』です。ふくよかでなめらか、後味のキレのよさが特徴。ひや酒、燗がおすすめです。
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酒匠/日本酒学講師
岡山県の地形は北部には中国山地が、南部は吉井川、旭川、高梁川(たかはしがわ)の三大河川の堆積作用によってできた岡山平野が広がっていて、その伏流水が酒造用水として利用されています。
旭川の伏流水である雄町の冷泉は、舌に優しくのどごしもさわやか。清浄、高潔と言われ、この水の出る地域に酒蔵が多く存在します。岡山県北、真庭市にある「塩釜の冷泉」は舌にやわらかく甘く、冷たい清涼な湧水。
岡山の水は水量が豊富で軟水又は、中軟水が多いです。「どんな水が使われているか」に注目して日本酒を選ぶのもいいでしょう。
「杜氏」の技術に注目して選ぶ
酒匠/日本酒学講師
岡山県には備中杜氏(びっちゅうとうじ)と呼ばれる杜氏集団が存在します。江戸時代後期より備中杜氏と呼ばれるようになり、大正年間には隆盛(りゅうせい)を極めました。現在では、ほかの流派の杜氏さんも加わって酒造りがおこなわれています。
地域の食文化と密着し、県北部の美作地方(津山市、真庭市、美作市など)では濃醇旨口型の酒が多くみられ、県南部の備前、備中地方(岡山市、玉野市、備前市、赤磐市、倉敷市、総社市、高梁市など)では淡麗辛口、甘口の酒が多くみられます。
どの地域で作られているのか、そしてどんな杜氏の技術が採用されているのかにも注目してみましょう。
辻本店『御前酒 純米 美禄 山田錦』
女性杜氏の辻麻衣子氏が造る『御前酒 純米 美禄 山田錦』。地元産の山田錦を全量使用した食中酒で、ふくらみがありしっとりした味わい、後味はスパッと切れるお酒です。少し冷やしてキレを楽しむか、燗にしてしっとりとした味わいを楽しむのがおすすめ。
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酒匠/日本酒学講師
岡山県は古くからの銘醸地で、奈良時代末期の万葉集には吉備の酒を詠んだ歌が登場しています。
また、安土桃山時代に豊臣秀吉公がおこなった醍醐の花見にも、児島諸白の酒が登場しています。明治後期から昭和前期におこなわれた全国清酒品評会では、昭和初期に岡山酒の躍進が目立ち、現在でも銘酒が数多く存在。歴史ある銘醸地だけあって、知名度が低いものでも高品質のお酒が数多く存在します。
岡山県の日本酒おすすめ9選|日本酒学講師が厳選
ここまで紹介した、岡山県の日本酒の選び方のポイントをふまえて、日本酒学講師の石黒建大さんに選んでもらったおすすめ商品をご紹介します。
辻本店『御前酒 純米 美禄 山田錦』
出典:Amazon
原料米 | 山田錦(岡山県産) |
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精米歩合 | 70% |
使用水 | 旭川の伏流水 |
アルコール度 | 15度以上16度未満 |
容量 | 300ml、720ml、1800ml |
地産地消にこだわった勝山藩御用達の銘酒
創業は1804年、御前酒の銘は美作勝山藩御用達の献上酒「御膳酒」の銘を受けたことから。地元の米、地元の水、地元の技にこだわり、水は旭川の伏流水、米は地元産の雄町や山田錦を主に使用しています(岡山県は雄町米だけでなく、良質の山田錦の産地でもあります)。杜氏は女性杜氏の辻麻衣子氏で、旨味があってキレのいい酒造りを目指しています。
こちらの『美禄 純米酒』は、地元産の山田錦を全量使用した食中酒で、ふくらみがありしっとりした味わいで、後味がスパッと切れるお酒。
おすすめの飲用温度帯は15℃前後で、少し冷やしてふわりとしつつキレのいい味わいを楽しむか、50℃前後で燗(かん)にしてふくらみがありしっとりとした味わいを楽しむかです。
嘉美心酒造『嘉美心 特別本醸造酒 秘宝』
出典:Amazon
原料米 | 岡山県産米 |
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精米歩合 | 58% |
使用水 | - |
アルコール度 | 15度以上16度未満 |
容量 | 720ml、1800ml |
IWCで2年連続金賞を受賞したベストセラー商品
1913年創業の比較的若い酒蔵で、常に自分たちも消費者であることを意識した酒造りをおこなっている酒蔵です。
こちらの『特別本醸造酒 秘宝』はイギリス・ロンドンで毎年4月に開催されるワインコンペIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の「SAKE部門」で、2017年と2018年の2年連続でゴールドメダルを獲得した嘉美心酒造の代表作。その味わいは、ふわりと繊細でやわらかく、後味がさらりと消えるのが特徴です。
おすすめの飲用温度帯は12℃前後や40℃前後で、冷やしてやわらかくさらりとした味わいを楽しむ、または燗にして、ふくらみがありやわらかく繊細な味わいを楽しめます。
丸本酒造『純米吟醸 かもみどり 雄町』
出典:Yahoo!ショッピング
原料米 | 雄町(岡山県産) |
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精米歩合 | 60% |
使用水 | - |
アルコール度 | 15度 |
容量 | 720ml |
米の自社栽培からおこなう農産酒蔵の逸品
創業は大政奉還(たいせいほうかん)がおこなわれた、幕末の慶応三年の1867年で、以来地産地消にこだわった酒造りをおこなっています。
現在、全量ではありませんが自社栽培のお米を使用していて、掃除と勉強を標語に、常に清潔に蔵内を保ち、問題意識を持ちながら新しい技術や情報を酒造りに取り入れています。
こちらの純米吟醸酒は、地元産の雄町米を全量使用。シャープでさわやか、ふわりと滑らかな味わいに仕上がっています。
おすすめの飲用温度帯は10℃前後や38℃前後で。冷やしてシャープでさわやかな味わいを楽しむ、またはぬる燗にてふわりと滑らかな味わいと後味のキレのよさが楽しめます。
菊池酒造『燦然 特別純米 雄町』
出典:Amazon
原料米 | 雄町(岡山県産) |
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精米歩合 | 65% |
使用水 | - |
アルコール度 | 15.5度 |
容量 | 300ml、720ml、1800ml |
白菊酒造『大典白菊 純米吟醸 備州』
出典:Amazon
原料米 | 雄町、山田錦、朝日(岡山県産) |
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精米歩合 | 55% |
使用水 | 高梁川水系の伏流水 |
アルコール度 | 16度以上17度未満 |
容量 | 300ml、720ml、1800ml |
備中杜氏の技で仕込まれた穏やかな味わいの逸品
創業は明治期の1886年、備中杜氏のふるさとのひとつ高梁市成羽町にある酒蔵です。地元産の雄町や山田錦、朝日米、幻の酒米である造酒錦(みきにしき)や白菊を復活させ、高梁川水系の伏流水を使用し、備中杜氏のなかの成羽杜氏(なりわとうじ)の技で酒造りをおこなっています。
こちらの『大典白菊 純米吟醸 備州』は、雄町、山田錦、朝日米で造られ熟成した原酒をブレンド。スッキリシャープでややふくらみのあり、おだやかな香りが特徴です。
おすすめの飲用温度帯は10℃前後、45℃前後。少し冷やしてスッキリシャープな飲み口とほのかな柑橘香を楽しむか、燗にするとふくらみがあり滑らかで、シャープな後味を楽しめます。
熊屋酒造『庵 特別純米 備前雄町』
出典:Amazon
原料米 | 雄町(岡山県産) |
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精米歩合 | 60% |
使用水 | ‐ |
アルコール度 | 16度 |
容量 | 720ml、1800ml |
岡山の雄町米の良さを最大限引き出した逸品
1716年、徳川吉宗公の時代に創業され、300年以上の歴史を誇る老舗。熟練した蔵人が伝統的な酒造りの技法のもと、酒蔵の北に日本第一熊野神社、南に五流尊瀧院(ごりゅうそんりゅういん)と寺院に囲まれた地で、裏山より湧き出た霊水を使った酒造りをおこなっています。
こちらの『庵 特別純米 備前雄町』は、大阪の酒類専門商社であるモトックスとの共同開発商品で、地元の契約栽培の雄町米を使用した特別限定ボトルです。その味わいはなめらかでふくらみがあり、後味のキレのよさが特徴で、清楚な果実香を含んでいます。
おすすめの飲用温度帯は12℃前後、または40℃前後。冷やしてふわりとしつつ、キレのよい味わいを楽しむか、ぬる燗にてなめらかでふくらみのある味わいが楽しめます。
芳烈酒造『櫻芳烈 有漢 生原酒』
原料米 | アキヒカリ(岡山県産) |
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精米歩合 | 60% |
使用水 | 有漢川の伏流水 |
アルコール度 | - |
容量 | 720ml、1800ml |
室町酒造『櫻室町 純米吟醸 備前幻』
出典:Amazon
原料米 | 雄町(岡山県産) |
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精米歩合 | 60% |
使用水 | 雄町の冷泉 |
アルコール度 | 15.3度 |
容量 | 720ml、1800ml |
地産地消にこだわった老舗の銘酒
創業は1688年(元禄元年)の老舗酒蔵です。1891年は千石蔵となり、その後に開催された全国清酒品評会でも入賞を重ね銘酒として知られるようになりました。1985年より全面的に地元雄町米の使用に切り替え、地産地消の酒造りをおこなうようになり、水は雄町の冷泉を使用しています。
こちらの『櫻室町 純米吟醸 備前幻』の味わいはやわらかくふくらみがあり、シャープでスッキリとした後味が特徴です。おすすめの温度帯は12℃前後、または40℃前後。冷やしてふくらみのある滑らかでシャープな味わいと清楚な果実香を楽しむか、ぬる燗にてやわらかくふくよかな味わいを楽しむかです。
利守酒造『酒一筋 純米吟醸 金麗』
出典:Amazon
原料米 | 雄町(岡山県産) |
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精米歩合 | 56% |
使用水 | - |
アルコール度 | 15度以上16度未満 |
容量 | 1800ml |
雄町米を復活させた酒蔵の逸品
雄町米は、昭和初期に全国清酒品評会で「上位入賞するには雄町米で醸した吟醸酒でなければ不可能」とさえ言われていたほど。
なかでも軽部産の雄町は最高と言われていましたが、草丈が高く病害虫に弱いうえ農業の機械化に不向きでした。戦後、農業の機械化が進むとともに栽培面積が減っていましたが、その軽部産雄町を復活させ、「赤磐(あかいわ)雄町米」と命名したのが利守酒造の四代目の利守忠義氏です。
こちらの雄町米を使用した生酛(きもと)造りの純米吟醸酒は、ふくよかでなめらか、後味のキレのよさが特徴。おすすめの飲用温度帯は20℃前後、または45℃前後の普通燗です。ひや酒にてふくらみがありスッキリした味わいを楽しむか、燗にてやわらかくふくよかな味わいを楽しむかです。
「岡山の日本酒」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 岡山 日本酒の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの岡山 日本酒の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
そのほかの日本酒のおすすめはこちら 【関連記事】
日本酒の基礎知識も紹介しているので、これから日本酒を楽しもうという方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
高品質の酒造好適米で地産地消にこだわり 日本酒学講師より
酒匠/日本酒学講師
岡山県の酒造好適米と言えば雄町米ですが、同時に高品質の山田錦の産地でもあります。日本酒造りに欠かせない水に関しては、吉井川、旭川、高梁川の三大河川の非常に豊富で高品質の伏流水が酒造用水として利用されています。
また、江戸後期の文化年間より備中杜氏の流派が確立し、明治時代後半におこなわれた第一回の全国清酒品評会で岡山の「口印 三角正宗」が優等5等に入賞。以降の品評会でも岡山県のお酒が上位入賞しており、岡山の高品質の酒造りの基礎を築いたと言えます。
現在では、備中杜氏のほかに越後杜氏、南部杜氏、但馬杜氏等が加わり酒造りをおこなっていますが、水、米、技と地産地消にこだわる酒蔵が多く存在し、隠れた銘酒もたくさん存在しています。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
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2020/02/18 一部コンテンツ情報を修正いたしました。(マイナビおすすめナビ編集部 水貝英斗)
前職にて大手飲食企業でアンテナショップの酒屋の店長を経験し、日本酒、焼酎の仕入れを経験し、現在は飲食店に勤務。酒匠、日本酒学講師を取得し、2011年より日本酒サービス研究会の研究室専属テイスターとして活動しています。 また、日本酒セールスプロモーション研究会研究員、日本酒学講師として日本酒の研究と通して日本酒の魅力を世に広める活動を行っています。