住人約3割が外国人の「九番団地」…10年以上支援続けるNPOの女性
新型コロナウイルスの感染拡大は、東海地方の外国人たちにも深刻な影響が出ている。名古屋の団地で暮らす外国人たちの切実な悩みと、彼らを支援する日本人の女性を取材した。
名古屋市港区にある「九番団地」。住人の約3割が外国人といわれていて、ブラジル、ベトナム、中国など様々な国籍の人が住んでいる。
「NPOまなびや@KYUBAN」の代表、川口祐有子さん(44)は、ここで10年以上外国人たちの支援を続けている。
川口さん:
だいたい1か月の給料は10万円ぐらい?
外国人の女性:
いや、そんなにないよ。コロナウイルスがあったから
川口さん:
仕事が少なくなっちゃった?
この日は、新型コロナウイルスの影響で収入が減った外国人たちのため、食べ物や花を無料で配っていた。
食べ物を受け取り、アンケート用紙に仕事や生活の悩みなどを記入するのが決まりになっている。
この日、集まって来たのは、日本に30年以上暮らしている50代のフィリピン人女性がほとんどだった。
フィリピン人の住民の女性:
生活のお金、ちょっと大変です。今はこういう年齢で多分フィリピンパブでも使わない(雇わない)ですよ(笑)。だから今ね、介護職でも探して…
こうした女性の多くが、30年以上前に日本に出稼ぎに来て、フィリピンパブで働いていた「ジャパゆきさん」と呼ばれた人たち。
日本で長く暮らしてきた外国人たちも今、新型コロナの影響で苦境に立たされている。
自分は申請できるのか…伝わらない情報 新型コロナ対策の協力金
団地の中や周りには商店街や店舗もあり、外国人向けの店が立ち並んでいる。その1つ、ブラジル人が経営する店に、川口さんは新型コロナで休業した店に支払われる協力金の受給方法を説明に訪れた。
川口さん:
50万円もらえるやつの書類なんだけど、マイブラジルさんも大丈夫
店長:
え?本当?
川口さん:
6月30日までだから、やりましょうね
コロナで苦しむ中、行政が支援する制度があるが、川口さんは、外国人には自分たちが申請できるかどうかわからない、また伝わっていないケースもあるといい、こうした相談にも乗っている。
アメリカに住む1人娘に会いたい…ホテルを解雇された女性 生活は限界に
川口さんは週に4日ほど、集会所で外国人の相談に乗っている。この日、川口さんのもとを訪れたのは中国人の于さん。
名古屋にあるホテルの調理場で働いていたが、仕事のミスを理由に2019年の末、解雇に。その後、新型コロナの影響でなかなか仕事が見つからず、このままでは家賃が払えなくなってしまうと相談に来た。
川口さん:
お金はゼロ?
于さん:
ゼロ
川口さん:
今どうやって暮らしているんですか?お金どうしてる?貯金?
于さん:
そうです。貯金、貯金
川口さん:
大変だ、それは大変だ、そうかそうかそうか
于さんは失業などで経済的に困窮した人の家賃を、自治体が補助する制度を利用することにした。
于さんには夫はいないが、アメリカのサンフランシスコに留学している娘が1人いて、、建築士になるための勉強をしている。
于さん:
(娘に)毎日会いたいよ
于さんは、娘の夢のために100万円の仕送りを何度もしてきた。もう、お金は手元にほとんど残っていない。
新型コロナで苦しむ外国人にも救いの手を…必要な「サポート」
団地のすぐ隣にある「モンゴルレストラン郷」。
名物は、ラム肉を使った “ジンギスカン丼”だ。
お店の奥には、モンゴル伝統の移動式住居「ゲル」がある。
経営しているのは17年前、モンゴルから日本に来た海渡さん。
海渡さん:
本当はこの中に25人ぐらい入るんですけど、今は大人数で来るお客さん自体も減っているし、1組だけにしています。2組は入らないように
モンゴル伝統の暮らしも、今では“3密”になってしまうと思い、大人数の団体客の受け入れを自粛した。
新型コロナが広がったあとは、テーブルの数も半分に減らし、飛沫を防ぐ仕切りも作ったが、それでも、以前のように客足は戻らず、毎月30万円ほどの赤字が続いているとのこと。
海渡さん:
日本食ではないというのもあるし、やっぱり外国人だと安心してもらえないというのもあるんじゃないかなと私は思うんですけど
お店を続けてもらうため、川口さんは、国の新しい支援制度を伝えにきた。
川口さん:
『家賃支援給付金』なんですけど、申し込みは7月1日からって聞いてます。20万円くらい助けてもらえる
海渡さん:
ありがとうございます
川口さん:
すごくお店大変だったよね、でもまだまだすぐにはお客さん戻ってこないので
海渡さん:
一日でも早くそれがなってほしいです
新型コロナで苦境に立つ外国人に差し伸べる手が必要だ。
(東海テレビ)