サンマの品薄と価格の高騰が今年も続きそうだ。一足早く先月中旬に水揚げされた北海道釧路市の市場の取引では過去最高値をつけ、鮮魚店では1匹5980円で売り出された。
このところ漁獲は減少傾向にあり、昨年の水揚げ量は10年前(31万トン)の8分の1の4万トンの記録的不漁だった。漁が本格化するのは今月20日からだが、国の研究機関「水産研究・教育機構」は、今年はさらに厳しい大不漁になるとみている。
サンマは毎年、夏から秋にかけて、太平洋北部の公海から日本近海に来遊する。冷凍は消費者に敬遠されるため、日本の漁船は近海で操業し、とったサンマは冷凍せずに漁港に運ぶのが主流だ。
ところが近年、需要が増えている中国や台湾の漁船が公海でのサンマ漁を急拡大。日本の漁船より「先取り」する形になり、これが日本近海での不漁の一因とされてきた。
ただ、昨年は、日本だけでなく、中国や台湾も深刻な不漁だった。乱獲による資源量の減少の可能性が指摘されている。資源の回復は、すべての関係国に恩恵があることを、日本は積極的に訴えるべきだ。
日本、ロシア、中台など8カ国・地域でつくる国際機関、北太平洋漁業委員会(NPFC)は昨年、初めてサンマ漁への漁獲枠の導入で合意した。3年越しの交渉で日本の提案が受け入れられたが、年55万トン強という枠は、19年の各国の漁獲量の合計(19万トン)の3倍近い。資源を守るには甘すぎるため、早急に厳しくする必要がある。
気がかりなのは、コロナ禍で国際的な人の移動が制限され、会議が開けないことだ。4月に予定されていたNPFCの科学委員会は11月に延期されたが、水産庁によると、更に遅れる可能性もあるという。
歴史的な不漁が続けば、庶民の食卓からサンマが遠ざかるだけでなく、漁業者も廃業や廃船に追い込まれる。政府はウェブ会議を有効に使うなどして、来年の漁期までに枠を見直すよう最善を尽くす必要がある。
資源の枯渇が心配されているのはサンマだけではない。クロマグロやニホンウナギをめぐっては、海外のNGOから日本の乱獲や密漁が指摘されている。日本は昨年、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、31年ぶりに商業捕鯨も再開した。
日本はかつて、世界の海で乱獲を繰り広げ、国際社会から厳しく批判された。その過去を反省し、率先して持続可能な漁業を実践するべきだ。
ご都合主義で資源保護を訴えても、国際社会の理解は得られぬことを忘れてはならない。
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