文春オンラインが2本のインタビューを載せています。1本目は「山本裕典 懺悔告白60分『「とっとと引退してください」とまで書かれたけどホストまがい営業はしてない』」です。
「小劇場でやるような舞台の場合、テレビCMとか広告宣伝にお金をかけられないし、チケットがすごく売れるような人たちをキャスティングしたりするのは、どうしても厳しくなってくる。それでも人件費を考えるとチケットは5000円から、高いと1万円以上します。そうなると2.5次元系だったりイケメン系が出るような舞台に関しては、チケットを捌くには、(出演者と写真が撮れる)『特典チェキ』とか、握手会、ハイタッチ見送りとか、推しの役者との交流ができる特典が必要だった。ファンの人たちは、遠方から高いお金を払って観劇しにきてくれるわけですから。客の入りにくい平日の公演は、こういうイベントを打って集客を増やすことは、舞台ではよくあることです。
ですが、繰り返しになりますが、今回の舞台に関してはそういった演出を一切やっていない。ソーシャルディスタンス、密を避けましょうっていう部分を初日から心がけていたつもりでした。ただ、熱狂的なファンの方々は出待ちをしているから、そこで僕ら出演者が心を鬼にして『それはダメです』『しません』って言えればよかったんですが、欠けていました」
(中略)
「僕は千秋楽の時にファンと握手をしてしまいました。今回の公演では、それまで、僕のマネージャーがファンに帰ってもらうように説明してくれたり、プレゼントを受け取ったり対応してくれたのですが、千秋楽の日に、どうしてもという何十人っていうファンが外に待っていてくれて、そこで軽い握手みたいなものはしてしまいました。
どうしても僕らタレント側が『やめてください』とか『帰れ』とか言えない。悪者に見えてしまうので。だから、ほかの共演者の子たちの場合でも、やっぱり運営側のスタッフやマネージャーさんが外でそういう動きをできたんじゃないかなっていうところはあります。
ただ、予算がなく人がさけないのも事実です。僕はありがたいことに車で帰れてますけど、大抵の共演者は電車で劇場に来る。そうなると、ファンの人たちを“剥がす”行動ってすごく難しいし、僕らも強く断る勇気を持たないといけない。お客さんの方も意識を高めて、お互いの共通認識がちゃんと働かないと難しい」
(中略)
「よく報道で、舞台関係者が『密だった』って話していますけど、自分はそれほど密だなっていう印象は受けなかったです。やはり100近く座席を減らしていたから。ただ小劇場なんで、箱自体が元々ちっちゃいのもあるので悩ましいです。フェイスシールドが配られているとは知りませんでした。そこは認識不足でした。すいません。
今回の舞台は、最初20分お芝居をして、そのあと1時間『人狼ゲーム』。そして最後に歌があるというトータル2時間くらいの舞台。最初のお芝居が終わったあと1回休憩をいれていました。通常だったら2時間ぶっ通しでやるような芝居に休憩を挟んだのは換気のためと僕らは聞いています。出演者は、稽古中からもソーシャルディスタンスを保ったり、換気したり、手洗い、うがい、アルコール消毒を徹底するなど気を使って動いていました」
もう1本は匿名でA氏となっていますが、「舞台クラスター出演俳優を直撃『“出待ち禁止”にしていたが、ファンは握手しないと家までついてきちゃう』」です。こちらは劇場が変更になった経緯についても載っていて、そこは理由がわかってすっきりしました。
「公演や稽古ではこまめに換気をしましたし、体温チェックや初めと終わりの消毒も徹底していました。水道の前で並んで、俳優みんなでうがいもした。僕らの身のまわりを世話してくれるスタッフさんもマスクやフェイスシールドをつけていましたし、一番危険視されていた楽屋も3つに区切ったりしていた。
当初は恵比寿や渋谷の劇場で公演する予定でしたが、感染防止策を守ると30~40人程度の観客しか入れられないことがわかり、(会場については)二転三転しました。結局は『100人までなら観客を入れられる』と言ってくれた新宿シアターモリエールに決まったんです。それなら(観客減の)赤字分をグッズ販売で補えそうだと。
出演者が約20人もいる中で、どうしたらソーシャルディスタンスを守れるかって、演出も工夫していました」
(中略)
「確かに“イケメン系”の舞台ではそういうファンサービスが当たり前のように行われてきました。でも今回はまったくしていない。一番お金になる握手会やツーショット撮影会などの接触行為も中止していましたし、僕らはグッズ販売にも参加していません。お客さんには “出待ち禁止”をお願いしていたんです」
(中略)
「でも……、お客さんに対しての認識には甘いところもあったかもしれません。スタッフも限られているので、ファンの方が監視の目をすり抜けて劇場の出口付近や駅に潜んで(出待ちして)いることもありました。熱心なファンの方は握手しないと家までついてきちゃうので、仕方なく対応した演者もいたとは思います。それはダメだったんだろうなと反省しています」
(中略)
「最初にスタッフに体調不良を訴えたのは若手舞台俳優のBでした。7月4日の公演後の夜にBが『体がだるい』と報告したので、運営の指示で抗体検査をおこないましたが結果は陰性。熱はなく味覚もあったので、大丈夫だろうと翌日の千秋楽公演にも出演しました。
体調不良を訴えた段階で、代役を立てようとすればできたと思います。ただ、Bは主要キャストでもあったし、主催者側にも出演してほしい気持ちがあった。それでB自身も無理をしてしまったところはあると思います」
(中略)
「千秋楽では別の出演者Cも体調不良を訴えました。実はCは数日前から体調が悪かったようなのですが、周りに迷惑をかけるかもしれないし、ということで黙っていた。でもBが4日に体調不良を訴えたことを聞いて、5日に自分も体調が悪いとスタッフに相談したそうです。そして千秋楽後にCがPCR検査を受けたところ、6日に陽性反応が出てしまった。僕たちがそのことを知らされたのは7日です。他の演者やスタッフも『マジか!!』『ヤバイよ』『そういわれてみれば自分も……』となって、病院へ駆け込んで検査を受けたところ次々にコロナ感染が発覚した。僕もその中の1人です」
(中略)
「実は……僕も千秋楽後に気だるさがありました。なんていうか、めっちゃ眠いんですよ。めっちゃ眠いし、とにかくだるかった。でも、体調が悪いのは舞台の疲れからきているものだと思っていました。今回の『THE★JINRO』は2部制で、1部は20分の演劇で、2部は人狼ゲームを60分するんです。普通の演劇よりも頭を使うので、終わったときはいつもヘトヘトで……。言い訳になるかもしれませんが、まさかコロナに感染しているだなんて思いもしなかったんです」
どちらにも共通しているのは、
・演出上の観客との接触はやっていない
・終演後の出待ち観客との握手はやった
です。でもこれは、観客側へのクラスター発生の説明にはなりますが、出演者やスタッフのクラスター発生は説明できません。
6月30日が初日で、B氏は7月4日に、C氏はその数日前から、A氏は千秋楽(7月6日)後に、体調不良。感染してからおおよそ4-5日で発症しているとすると、稽古場の終盤でスタッフ総見の通し稽古の時に感染、という可能性もあります。十分ありそうな話ですが、おそらくロビースタッフも陽性対象ですよね。とすると、小屋入り後の仕込みからゲネプロで対策がいまいちだったのでしょうか。それとも、「2.8次元」を髣髴とさせるような、事務所と稽古場が隣り合った環境だったのでしょうか。
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