「タナゴ池」でミヤコタナゴの採集調査
内水面試験場のビオトープ、生態試験池の一部のタナゴ池では、従来から国指定の天然記念物であるミヤコタナゴの復元試験を行っています。
今春もミヤコタナゴの生残・成長等を調べるため池の水を一部抜き、採集を行いました(2001/05)。
ミヤコタナゴとは
コイ科の魚で、関東地方に広く分布していましたが、都市化による生息地の減少により激減し、昭和49年、国の天然記念物に指定されました。現在は千葉県と栃木県のごく限られた水域にしかおらず、絶滅が懸念されています。ミヤコタナゴは、雑食性の小魚で、春にドブガイやマツカサガイ等の二枚貝に産卵し、全長6cm前後になります。
神奈川における保護の経緯と現状
内水面試験場では、神奈川県の最後の生息地であった権田池(横浜市港北区)から採集した個体から増殖に成功し、これまで1,000尾程度の飼育を行ってきました。
最近は、人工授精によるミヤコタナゴの増殖に加えて、自然水域に生息地を復元するための研究に取り組んできました。それに関連して、場内のビオトープである生態実験池や横浜市のため池で、網生け簀放流試験等を実施し、多くの成果を得ることができました。
タナゴ池における研究
平成7年よりタナゴ池にミヤコタナゴと産卵用の二枚貝を放養し、繁殖試験を行っています。タナゴ産卵用の二枚貝には、ドブガイ、マツカサガイ、カワシンジュガイ等を使用していますが、ミヤコタナゴは特に、カワシンジュガイを好みます。
最近は、カワシンジュガイを利用して、毎年数百尾の稚魚が安定して浮上しています。
内水面試験場のビオトープ、生態試験池の一部のタナゴ池を使って、ミヤコタナゴの復元試験を行っていますが、今春もミヤコタナゴの生残・成長等を調べるため池の水を一部抜き、採集を行いました。 |
2001年5月15日の調査結果
曳き網を用いて、研究員と研修生4名で採集を行い、163尾採集されました。このうち、昨年生まれた1歳魚は94尾、多年魚が雄37尾、雌 32尾でした。1歳魚は体重の平均値が0.29gでしたが、かなりばらつきがあり(図1)、昨年の産卵期が長かったことを示唆しています。タナゴ池の多年魚は、大きく成長し、とても美しく、屋内水槽で育成したミヤコタナゴとはまるで別種のようです。
昨年の4月14日の調査では、ミヤコタナゴは223尾採集されているので、今年は昨年 よりは少ない採集数でした。
ギンヤンマ類 |
ミヤコタナゴの他にも、本池にはメダカ(酒匂川水系小田原産)が放養されています。 今回の調査では、60尾が採集されました。
他にもトンボのヤゴ(ギンヤンマ類、イトトンボ類、ハグロトンボ、コオニヤ ンマ、コヤマトンボ、シオカラトンボ他)、ミズカマキリ、マツモムシ、ク ロズマメゲンゴロウ、カワニナ、サカマキガイ等が採集されました。
生態試験池本流から侵入したモツゴとギンブナも採集されました。
今後の計画
・採集した生物は、一部を除いて、タナゴ池に再放流しました。
・6月中旬より、カワシンジュガイを池へ放養し、ミヤコタナゴのなわばりと産卵行動(特に 集団産卵)の研究を行います。