「国民が十分だと判断するまで、疑惑を明らかにしていきたい」
5月29日、元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(正義連)の前理事長で、国会議員の尹美香氏(55)が会見を開き、横領疑惑について全面否定した。
「会見が行われたのは国会が開く前日のこと。疑惑が報じられてから20日間、口を噤んでいた尹氏がこのタイミングで会見を開いたのは、会期中は逮捕されない国会議員の不逮捕特権が念頭に置いてのことと見られる。ただ疑惑の核心である寄付金の個人口座への振込などについて具体的な証拠を示せず、疑惑は深まった」(一般紙記者)
検察は尹氏の捜査を続けている ©共同通信社
大学院卒業後の20代の頃より、同団体で幹事を務め、今年3月まで約30年元慰安婦の支援活動を続けてきた尹氏。娘の米国留学費用に正義連への寄付を使った流用疑惑も全否定し、次のように述べた。
「大半の資金は、夫の刑事補償金および損害賠償金から賄っており、その他、不足した費用は家族と自分のお金を充てた」
前出の記者が明かす。
「尹氏の娘は、慶熙大学音楽学部器楽科でピアノを専攻。3月まで米ロサンゼルスの名門・カリフォルニア州立大学(UCLA)音楽大学院に留学していた。当初、尹氏は、娘の留学費用について『奨学金を受けた』と話していましたが、後に夫が得た刑事補償金で賄ったと説明を変えている」
「刑事補償金」はどのように手にしたのか
韓国国内の関心が高まりつつあるのが、尹氏夫妻と北朝鮮の密接な関係だ。
尹氏の夫で、反核活動家だった金三錫氏は、1993年に北朝鮮の工作資金を受け取ったとして、妹とともに軍事機密漏洩などの罪で起訴。この「兄妹スパイ団」事件によって懲役4年を受け服役している。
「2017年、金氏兄妹は再審請求を起こし、国家保安法違反はそのまま認定されたが、一部無罪が認められた。今回の会見で尹氏が言及した夫の刑事補償金は、この再審請求で手にしたものを指す」(別の記者)
さらに夫妻らは、18年、中国浙江省の食堂で働く脱北者を慰安婦施設に招き、北朝鮮に戻るよう懐柔したと報じられている。食堂のマネジャーが複数のメディアに明かした。
「帰国の説得がうまくいかないとみると、脱北者に対し、正義連の資金が毎月30万~50万ウォンを半年間振り込まれたと、マネジャーが証言しています」(同前)
尹氏は否定するが、直近の世論調査では「辞職すべき」という意見が7割以上を占める。彼女は自身の現状について「曺国(チョグク)前法相が思い出される」と語っているという。
(朴 承珉/週刊文春 2020年6月11日号)