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【るろうに剣心・神谷薫と神谷活心流】
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江戸時代までの活人剣
薫と弥彦が習得する「神谷活心流」もまた、実在の剣術ではなく少年漫画ならではの設定です。
神谷活心流を悩ませた殺人鬼の噂にしたって、“幕末”という地獄を味わった江戸っ子が驚いたかどうか。
「バカくせぇ。あんなとこ、ろくすっぽ弟子もいねえし、竹刀を打ち合う音すらねえよ」
「警視庁に頼めばいい」
明治初期の東京は治安が無茶苦茶でしたが、剣術はもう廃れて終わるしかない状態です。
そんな流派を剣心は戯言だと突っ込んでおります。
しかし、「人を殺傷しない剣術」というのは、別に薫の父・神谷越路郎だけの発想でもありません。
薩摩ジゲン流や天然理心流のような一部の例外を除き、幕末当時、多くの剣術は殺傷力を有しておりませんでした。稽古に木刀を使うのは危険ゆえ、竹刀に代わったほどです。
刀を持つ武士が実際のところ戦えないことは、幕末期に散々皮肉られたことであり、近藤勇あたりも苦々しげに書き残しております。
剣術は、あくまで教養の一種であり、あれほど強い天然理心流も「田舎者の肥溜め道場」と言われたほどなんですね。
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薩摩の藩主・島津斉興からして、最後まで稽古を見ていられなかったほど。
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「剣術っていうのは、クールでスマートであるべき。殺し合い? 戦国時代なんてとっくの昔に終わってるだろ」
武器を持った凶悪犯を捕縛するときには“刺又(さすまた)”を使い、刀はただのファッションアイテムでした。
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薫のモデルである千葉さな子の千葉道場にしたって、人格形成や教養として剣術を身につけるための場所であります。
柳生宗矩の発想と結びつける記事も見かけますが、宗矩の場合は剣術師範を超え、政治に関与する意味合いもあったでしょう。
柳生一族は松永久秀に忠誠を誓っていたころから、政治に関与して世の安寧を求める思想があったと感じますし、実際に政治を動かせたということは大事です。
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余談ですが、マンガ『衛府の七忍』(→amazon)では、柳生宗矩が邪悪極まりない発想の「活人剣」を披露しております。
「拷問するなら殺しちゃいけないよ!」
こういう発想です。よろしければ実際のマンガでご確認ください。
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明治時代の活人剣
『るろうに剣心』には、明治流活人剣の実践者がいるところが厄介です。
なんだかヒゲのおっさん、斎藤一にガツンといえない情けない存在のようで、そんなことはありません。
川路もフィクションでの扱いで割を食う明治の人物典型でしょう。
初代大警視(のちの警視総監)であり、フランスでは恥ずかしい事件を起こしたこともありますが、
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極めて有能であったことは確かです。
フランスのフーシェを参考にし、現在まで続く警察組織を作り上げました。
川路の方針で武士出身の者たちを数多く採用し、警察官に武術を習得させ、明治の治安を維持していたのです。
現在でも警察官といえば何かしらの武道を習得していますが、その伝統を作ったのが川路でした。
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斎藤一もワクワクしながら参戦したことが伝わっています。
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そういう史実を踏まえると、『るろうに剣心』の斎藤一は、川路を舐めすぎていて大問題があると思えるのですが……そのことは後日、『るろうに剣心』斎藤一の記事で考察させていただくとして。
「剣心はさ、川路の要請に応じているんだから活人探求はもう終わりでいいでしょ」と、ある意味言えなくもないのでした。
目的達成できているから、あとは好きに世直しをしてよいということです。
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文:小檜山青
【参考】
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―カラー版』(→amazon)
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』(→amazon)
映画『るろうに剣心』(→amazonプライム)
映画『るろうに剣心 京都大火編』(→amazonプライム)