静岡の日本酒【花の舞(はなのまい)】食事に合うお酒をめざした逸品

静岡の日本酒【花の舞(はなのまい)】食事に合うお酒をめざした逸品
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「花の舞」は、静岡県産「山田錦」と、南アルプス山系の清冽な地下水を活かして生み出された地酒です。“料理を引き立てる”と評判のこの銘柄、いったいどのようにして造られているのでしょうか? 蔵元の歴史とともに、こだわりの酒造りを紹介します。

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「花の舞」は江戸末期創業の歴史ある蔵元が醸すお酒

「花の舞」は江戸末期創業の歴史ある蔵元が醸すお酒

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「花の舞」の蔵元、花の舞酒造が浜松の地で酒造りを始めたのは、江戸幕末の元治元年(1864年)のこと。じつに150年以上にわたって酒造りを続けてきた老舗蔵です。

蔵の名を冠した「花の舞」を造り始めたのは戦後まもない昭和24年(1949年)からで、以来、現在に至るまで、花の舞酒造の代表銘柄として広く親しまれています。
ちなみに「花の舞」という名前は、天竜川水系に伝わる奉納踊り「花の舞」が由来です。「花」は稲の花のことをさしていて、五穀豊穣を願う人々の思いが込められているのだとか。

現在、花の舞酒造が、全国的な評価を得ている理由は、その歴史と伝統だけではありません。むしろ、伝統にあぐらをかくことなく、挑戦を続ける姿勢にあります。
代々の蔵人が培ってきた酒造りのノウハウを大切に受け継ぎながらも、近代的な設備の導入や、徹底した原料米の管理を行い、杜氏を中心とした蔵人が技術と品質を追求し、時代のニーズにあった日本酒造りに取り組む――そうした姿勢を絶やさぬからこそ、静岡を代表する蔵元のひとつとなっているのです。

「花の舞」のこだわりは地元・静岡産の水と米と人

「花の舞」のこだわりは地元・静岡産の水と米と人

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「花の舞」は、地元・静岡の風土が育む水と米、そして人に徹底的にこだわって造られる、まさに静岡の地酒です。

まず、酒造りの品質を左右する水は、浜松市の北側にそびえる南アルプス赤石山系からもたらされる、清冽で潤沢な地下水を使用。その水質は軟水で、雑味のない淡麗な飲み口が特徴のお酒造りに重要な役割を果たしています。

酒米はおもに、酒造好適米として名高い「山田錦」を、静岡県産にこだわって調達しています。山田錦は、もともと兵庫県で生み出された品種ですが、花の舞酒造では地元農家と契約を結び、酒造りに必要な山田錦を確保しています。

さらに、蔵人たちをまとめる杜氏も地元出身にこだわります。社内で技能集団を育成し、伝統技術の習得に注力。現在、花の舞酒造の杜氏として酒造りの指揮を執る土田一仁氏もまた、この蔵元が育て上げた地元出身の人材なのです。

「花の舞」はすっきり軽快な飲み口で食事を引き立てる

「花の舞」はすっきり軽快な飲み口で食事を引き立てる

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「花の舞」の特徴は、何といっても、すっきりとした軽やかな味わいです。米の旨味を最大限に引き出しながらも、余韻はさわやか。あと味にクセがないため、飲み飽きしない日本酒に仕上がっています。
そのため、日本酒はもちろん、洋食や中華など、どんな料理にも合わせやすく、食事を引き立てる酒として好評です。

こうした「花の舞」の味わいの根底には、花の舞酒造の酒造りに対する信念があります。それは、「飲んでたのしく、食卓に溶け込む酒」というもの。蔵を代表する「花の舞」は、まさしくその理想が結実したものであるといえます。

近年、「日本酒離れ」が指摘されるなか、花の舞酒造が新たな目標として掲げているのが、若者や女性など、今まで日本酒を飲んでこなかった人にも親しめる日本酒を造ること。日本酒本来の味と香りを大切にしながらも、より飲みやすい酒造りを追求する一方、蔵開きのイベントや酒造工場の見学など、誰でも気軽に参加できる場を積極的に設けています。最寄りの宮口駅(天竜浜名湖鉄道)から徒歩5分と交通の便もよい立地。興味があればぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

地元の水と米と人にこだわって造り上げた地酒「花の舞」。どんな料理にも寄り添う味わいのため、外食のときはもちろん、家での食事のおともとして、ぜひ試してもらいたい日本酒です。

製造元:花の舞酒造株式会社
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静岡の日本酒【磯自慢(いそじまん)】原料や品質にこだわり抜いたお酒

静岡の日本酒【磯自慢(いそじまん)】原料や品質にこだわり抜いたお酒
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「磯自慢」は静岡県焼津市に蔵を構える老舗、磯自慢酒造の醸す酒です。今や静岡はもちろん、日本を代表する銘柄ともいわれる「磯自慢」ですが、その背景には、苦難の時期を乗り越えた蔵元の努力がありました。磯自慢の歴史とその魅力に迫ります。

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目次

  • 「磯自慢」を造るのは伝統と革新の蔵元
  • 「磯自慢」はこだわりの原料を独自設備で醸すお酒
  • 「磯自慢」の魅力はフルーティな風味

「磯自慢」を造るのは伝統と革新の蔵元

「磯自慢」を造るのは伝統と革新の蔵元

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「磯自慢」を醸すのは、静岡県焼津市の鰯ケ島(いわしがしま)に蔵を構える老舗、磯自慢酒造です。その創業は、江戸時代後期の天保元年(1830年)。この地の庄屋であった創業者が、農業経営を営むかたわら、年貢米の余りを使って酒造りを始めたと伝えられています。

明治から大正、昭和にかけて、大地主として農業を営みつつ、冬場の農閑期には酒造を営むという形で、蔵の名を冠した「磯自慢」を造り続けてきました。
酒造りを専業とするようになったのは、第二次大戦後の農地解放を受けてのこと。その後、周辺の小規模な蔵元が整理・統合されるにともない、焼津で唯一の蔵元として、この地の酒造りを担うことになります。

その後、戦後の経済成長にあと押しされる形で、各地の蔵元は売り上げを伸ばしましたが、昭和末期になると日本酒の人気は低迷。磯自慢酒造もまた、この状況に危機感を覚えていたといいます。そこで行きついたのが、「生き残るためには本当に高品質な日本酒を造るしかない」という考えでした。

業界に先駆け、「吟醸酒」「純米酒」など特定名称酒だけの製造に切り替えたことで、「磯自慢」は全国の日本酒好きから人気を集め、近年の日本酒ブームを牽引する存在に。その酒造りの姿勢を見た周辺の蔵元が切磋琢磨することで、静岡の酒造りのレベルを引き上げ、いつしか「吟醸王国・静岡」と呼ばれるようになったのです。

「磯自慢」はこだわりの原料を独自設備で醸すお酒

「磯自慢」はこだわりの原料を独自設備で醸すお酒

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「磯自慢」は、その名のとおり、海に面した焼津の地で育まれた“海の酒”。古くからの漁港として知られた地にふさわしい、さっぱりとした辛口の酒として、海の男たちから人気を集めてきました。
また、海の幸との相性がよく、食中酒としても親しまれてきました。

近年、特定名称酒だけの製造に切り替わってからも、こうした「磯自慢」本来の魅力を受け継ぎつつ、原料や製法にこだわり抜くことで、さらなる高みを追求しています。

たとえば、「磯自慢」に用いられる酒米は、兵庫県加東市で生産される酒造好適米「山田錦」のみ。加東市は全国でも数少ない「特A地区」にあたり、最高ランクの酒米が獲れる地として名を馳せています。
2010年からは、加東市のなかでも3つのエリアから収穫される山田錦だけを用いることを決めました。これほど厳格な生産地指定は、日本酒業界でも類を見ません。

また、古きよき時代の面影を残す蔵の内部は、一面ステンレス張りになっています。これが冷蔵庫のような働きをするため、酒造りの最中に雑菌が入り込むことを防止。蔵内を常に清潔に保つことを可能にしました。

さらにもろみを入れるタンクには、ガラスをコーティング。県内でも珍しい急速加熱、急速冷却機能を備えた火入れ装置を導入するなど、安定した日本酒造りのためなら徹底した設備投資もいとわない姿勢が、「磯自慢」の味わいを支えているのです。

「磯自慢」の魅力はフルーティな風味

「磯自慢」の魅力はフルーティな風味

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「磯自慢」はときに、静岡型吟醸の代表とも称されます。静岡型吟醸とは、同県が開発したオリジナル酵母「静岡酵母」によって醸される日本酒のこと。やさしい果実香をもち、飲み飽きないきれいな風味が特徴です。なかでも「磯自慢」は、全国新酒鑑評会でもたびたび金賞を獲得するなど、静岡酵母の特性を引き出した酒として全国から高い評価を得ています。

こうした「磯自慢」の確かな品質は、グレードを問わず、あらゆる商品に共通しています。
たとえば「磯自慢 吟醸」は、澄んだ甘味とフレッシュな酸味のバランスが心地よい1本。それでいて料理の味をふんわりと包み込むような奥深さも備えています。
また、「磯自慢 純米吟醸」は、特A地区の山田錦を50%まで精白した、こだわりの酒です。白桃やメロン、洋ナシを思わせる香りがさわやかに吹き抜け、あと味は白雪のようにすっきりとしています。

安定した品質を備える一方、商品ごとに確かな個性を発揮する「磯自慢」。その魅力を知るためにも、各商品を飲みくらべることをおすすめします。

「磯自慢」は原料収穫から仕込み、流通段階に至るまで、徹底的に品質管理がなされているこだわりの日本酒です。老舗酒造がたどり着いた「本当においしい酒」を、ぜひ一度味わってみてください。

製造元:磯自慢酒造株式会社
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