ミトコンドリアを動かす栄養素
ミトコンドリアでのエネルギー産生は酵素によって行われます。
酵素とは、生体の代謝において、化学反応を触媒(スピードを速める)するものと定義されます。
例えば、角砂糖を燃やそうと火をつけても部分的に焦げるが、全体が燃えるということにはなりません。
しかし、タバコの灰をふり掛けてから燃やすと勢いよく燃え上がります。
また、昔あった白金カイロ(携帯式保温器)は、ベンジンに直接火をつけなくとも気化したガスがプラチナ(白金)と接触することで低温で発熱します。
人の体内では、低熱(36.5度)なのにもかかわらず、食べた肉が燃やされて血や肉となります。
触媒はこのように、化学反応が低温でも進みやすいように反応の閾値を下げてくれるものを言います。
タバコの灰、白金、体内の酵素は触媒として働いているわけです。
この酵素が体内で働くのを助けてくれるのが補酵素です。
ミトコンドリアが働くのに必要な補酵素はたくさんありますが、その中でも重要なものはビタミンB群、鉄、CoQ10です。
下記は、ミトコンドリア内で行われるTCA回路(クエン酸回路)で使われるビタミンを図示したものです。
ビタミンはそれぞれ活性型の状態に変換されて、はじめて補酵素として使うことができます。
■TCAサイクルに関わるビタミンのはたらき
これらの補酵素が十分あるかどうかが、ミトコンドリア機能を左右します。
補酵素の必要量は人によって大きく異なりますので、それを検査で見極める必要があります。
栄養素が薬と違う大きな点の一つです。
ミトコンドリアの活動を支える上記の栄養素が十分に保たれていることも重要ですが、代謝活動をブロックしてしまう要因がないかを探ることも重要です。
近年益々加速する工業化の波を受けて、我々が生活する周囲の環境は、化学物質や金属で汚染されています。
水銀やアルミ、鉛といったものに暴露すると、体内に入り込んで、長年蓄積されてしまい、エネルギー生産に支障をきたしてしまいます。
普段の生活ではあまり意識されていない方がほとんどかもしれませんが、食品や日用品、化粧品、衣類、洗剤、排気ガス、水道水や薬にもこうした化学物質は使われており、特に日本人はマグロやカツオなどの大型魚から、水銀の暴露量も多いのです。
■TCAサイクルを阻害する重金属
必要な栄養素を摂取するほかにも、こうした有害物質を如何に生体内から排除するかというポイントも重要になります。
「栄養療法のフレームワーク」を身に着けるために
ここまで説明してきたように、
栄養素が細胞やミトコンドリアといった、
生体を構成する最小単位レベルでどう代謝・利用されているのかを踏まえながら、不足している栄養素や摂るべきサプリメントの種類を、
論理的に考え、自分の治療に応用していけるようになることが
「臨床分子栄養医学研究会」のゴールです。
摂った栄養素がミトコンドリアや細胞や各臓器でどのように利用されているのかをイメージすることができれば、
・毎日、朝が辛くて起きられない
・仕事でぼんやりしてしまい、集中できない
・食べたものがきちんと消化され、正しい排泄リズムがない
・慢性の炎症が治らない
ことに対して、筋の通った説明づけや原因解明まで導くことができる確立がぐっと高くなります。
生体機能が低下している原因を、身体の各部位で使われる栄養素とリンクさせることが基本です。
更に、「栄養療法」を効かせるためのコツとして
摂取した栄養素がきちんと消化・吸収されているか
栄養素の機能を、阻害している要因はないか(重金属や炎症等)
隠れた病態の根本的原因を見落としていないか
「断食」などを行って、身体をリセットすることで、効果が得られないか
など、様々な選択肢を考慮し、幅広い視野から俯瞰してみることで、
よりポテンシャルの高い治療方法が検討できるようになります。
皆さんに目指して頂きたいのは…
自由自在にサプリメント処方を構築できる、サプリメントを効かせるための方法論
です。
「分子栄養学実践講座」にお申込み頂いた方には、
基礎編と応用編のテキストを配布しています。
■分子栄養学実践講座 基礎編 目次
考え方編- 分子栄養学のファンダメンタルな捉え方
血液検査の読み方編- 一般的な血液検査項目でここまで読める
ミトコンドリア編- 疲労を起こす病態
細胞膜編- 情報伝達の要
食事編- 俯瞰力が決めて
■分子栄養学実践講座 応用編 目次
核編- 脂溶性ビタミンA、D、甲状腺ホルモン
潜在性感染症編- マイコプラズマと真菌
重金属の蓄積編- 諸悪の根源重金属
腸内環境編- 腸を制するものが体を制する
副腎疲労編- 栄養療法の考え方の要
「分子整合栄養医学」に関して、統計的にまとめています。
600名以上の参加者からのフィードバックをもとに、改定に改良を重ねてきました。
皆様に分かりやすいように、栄養素の効く機序やサプリメントの選び方、患者の人生哲学や治療方針に基づいた治療の提案をしています。
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このテキストを読み込んだ上で、「実践講座の症例検討会」のテーブルで議論したり、各種セミナーや抄読会に参加することで、参加者の方の理解度も各段に高まっています!
当初は、何をやっていいのか、まったく分からなかった方でさえ、
最終的には、患者さんのためにどんな栄養素が必要なのか、サプリメントは何を、どのくらい、いつ使ったらいいのかを考えられるようになります。
医師が患者さんを治したり、一般の方が自分の病気と向き合うにおいて、分子栄養学の考え方の「フレームワーク」を脳内に構築し、
自由自在にサプリメント処方が行え、栄養素を効かせるための方法論を身に付けて頂くことが目標です。
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