概要
フジテレビのリアリティショー形式の番組テラスハウスに出演していた木村花さんが亡くなるという事件があった。花さんの死を受けて、政府がSNS上の誹謗中傷に関する取り組みを行う用になった。
女性のみがSNS上で誹謗中傷を受けているのか?
花さんの死を受けて、SNS上で女性が主に誹謗中傷にさらされるといった言説が見られるようになった。「ネット上で女性が攻撃されている実態は広く知られていない」1といった記事はよく目にする。しかし実際にSNSを調査するとテラスハウスの男性出演者の方がより多くの誹謗中傷を受けていた。我々は男性が攻撃的で女性は攻撃的ではないと思い込みがちだ。しかしそれはバイアスである。テラスハウスに言及したtweetを取得しテラスハウスの出演者がどの様に誹謗中傷を受けたかを調査する。
調査概要
概要 | 値 |
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取得ツイート | 97584 |
取得期間 | 2020-03-20 00:00:00-2020-05-23 00:00:00 |
検索ワード | "テラスハウス" OR "TERRACE HOUSE" OR "テラハ" OR "女子プロ" OR "女子プロレス" OR "木村花" OR "木村 花" OR "木村 花" |
調査日 | 2020-05-26 |
もともとはSNSでの誹謗中傷を調べるため、木村花さんに言及したツイートのうち死んでしまえなどの暴言的なツイートがどのくらいあったのかを調査しようと考えた。そのため女子プロや木村花さんに関するツイートも合わせて取得している。twitter社は検索語ですべての言及ツイートを取得できるか明言していないため、すべてのツイートを取得でいたかはわからない。
最も言及された出演者は誰か?
ツイッター出演者のうち言及が多かったのは、社長(新野俊幸さん)であった。
名前 | 言及回数 |
---|---|
社長 | 6951 |
花 | 4935 |
夢 | 3676 |
ピピ | 2429 |
快 | 2350 |
twitterでの検索ワードを木村花さんを含まれるワードが多くなるように設定した(木村花さん個人名も含めた)にも関わらずそれを超えて、社長が言及されていた。
社長はどの様に語られたか?
社長とはテラスハウスに出演した新野俊幸さんの愛称。
テラハに新モンスター誕生。山里亮太も激推しの社長・新野俊幸氏がヤバイ(女子SPA!) - Yahoo!ニュース
テラハ登場の社長は、そもそもテラハ上も気持ち悪いキャラクターとして扱われており、紹介記事でもモンスター扱いだった。
彼がテラスハウスを含むtwitterでどの様に言及されたか見てみよう。
社長とテラハを含むツイートを調査(n=6322)。
社長とよく使われた言葉は、面白いと言ったポジティブな言葉もあったが、キモ、マジ無理、気持ち悪いといったネガティブな言葉と一緒に使われている。下に使われている図は共起ネットワーク図と言って、ある単語と一緒に使われてる単語はなにかということを表す図だ。下の例では、社長は、気持ち、悪い、といった単語と一緒に使われていることがわかる。単語の分割とネットワーク図の描画は、KHcoderを利用した。
花はどの様に語られたか?
花とは、亡くなった木村花さんの愛称。
花さんとテラハを含むツイートを調査(n=4378)
話されていることは、出演者(快さん)の一人が誤って、花さんのコスチュームを洗ってしまったことに関する話で、その出演者と花さん何方が悪かったの議論に集中している。社長のように気持ち悪いキモいといったワードは余りなかったか。キモいというワードは30個(そのうち大半は社長がキモいというツイートだった)。
夢はどの様に語られたか?
夢とは、吉田夢さんの愛称
<テラスハウスインタビュー>林ゆめ(吉田夢)、反響への不安は?「流されやすいので…」 - モデルプレス
夢さんとテラハを含むツイートを調査(n=3611)
夢さんの、気持ち悪いというワードが目立つ。しかしよく調べると、夢さんとよく絡んでいた社長が気持ち悪いという意味で使われていた。
快はどの様に語られたか?
快とは、小林快さんお愛称
「テラスハウス」は敗者の味方、小林快、おまえこそ「テラスハウス」だ!
快さんとテラハを含むツイートを調査(n=2682)
仲の良かった木村花さんとの共に使われている。洗濯機で花さんのコスチュームを洗ってしまった事件が多く言及されている。
社長への誹謗中傷はなかったことにされている。
テラスハウスでの誹謗中傷を調べると、社長(新野俊幸)さんへの誹謗中傷が一番多かった。しかしそれを取り上げるメディアは極めて少ない。彼が亡くなっていないというもの大きな要因だろうが、そもそも男性への誹謗中傷は余り問題視されていない。
誹謗中傷はどの性別に対しても起こりうる。
SNSへの誹謗中傷の話はあたかも女性に対して行われるといった言説があるが実際に調べてみると、必ずしもそうは言えないのではないか? 例えば次のような記事は新野俊幸さんへの誹謗中傷は見えていない。
木村さんをSNSで誹謗中傷/明戸隆浩/ネット攻撃 女性標的/男性優位の社会構造反映 | 沖縄タイムス紙面掲載記事 | 沖縄タイムス+プラス
関心も同情も寄せられない男性への誹謗中傷
矢を受けた女性二人には。心配そうに人が集まるが、それより多くの矢を受けている男性には誰も関心を向けない。
実感ではなく、データに基づく議論を
紹介した2つの記事では実感として誹謗中傷を語っており具体的な数値を調査したわけではない。データに基づかないため実際の誹謗中傷ではなく メディアや世間が関心を向けた人たちへの誹謗中傷ばかりが拾われる。そして実際に誹謗中傷をより多く受けている人たちは無視される。それは公平ではない。私達はデータに基づき誹謗中傷を議論をすべきだし、すべての誹謗中傷を許さない姿勢を示すことが大事だ。
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ネット上で女性が攻撃されている実態は広く知られていない?ネットで“議論”はできるのか?『オンライン・フェミニズムの限界と可能性』ルポ↩