新型コロナウイルスの感染拡大のため、マスクが手放せない日が続き、ネット上では「マスク肩凝り」や「マスク頭痛」といった言葉が多く見受けられる。実際にマスクが影響しているのかは証明されてはいないが、日本頭痛学会認定専門医の浜野忠則・福井大学医学部脳神経内科診療教授は「マスクによる締め付けや暑さなどで、頭痛や肩凝りを強める可能性はある」と話す。
頭痛は、血管が広がることで起こる「片頭痛」と、肩凝りなど筋肉の凝りから引き起こされる「緊張型頭痛」がある。過去の調査では、国内の3割程度の人がこれらの頭痛や頭痛疑いを持っているとされる。浜野教授ら頭痛の専門家は「マスクを長い時間着けることで、頭痛持ちの人は重だるさを強く感じたり頭痛を感じる頻度が増えたりして、調子が悪くなっている人は多いのではないか」と話す。
マスクの長時間着用は、耳を引っぱる圧がかかって肩の筋肉が凝り、緊張型頭痛を引き起こすことが推測される。また、マスク内の暖かい空気を吸い込むと血管が広がり、片頭痛を悪化させる可能性があるという。このほか、マスク着用を煩わしく思う心理的苦痛や、表情が乏しくなることで顔の筋肉の凝りが強まる、歯ぎしりや食いしばりが誘発されるなど、さまざまな要因が考えられるという。
緊張型頭痛は、ストレッチや運動で症状が改善されるとし▽両肩をすぼめて落とす▽首を前後左右に動かす▽しっかり笑って顔をほぐす―などの方法を勧める。冷たい飲み物を飲む対処法もあり、片頭痛にも効果があるという。
「これだけ長期間マスクを着けるのは、おそらく人類史上初めてだと思う」と浜野教授。「日本頭痛学会では『マスク頭痛』といった言葉はまだ出たことがないが、これから出てくるだろう」と話す。感染対策が第一とした上で「屋外など安全な場所では適宜マスクを外すと良い」とした。