互いに怒鳴り合う警官と記者たち。新聞社のフロアは、次第に修羅場と化していった。
<新聞機構の正常な運行を阻害されても、『蘋果日報』の人々は恐れる態度を見せることなく、この非合法で不合理な蛮行に立ち向かった。プレッシャーが続く中で、真相を明らかにしようとしたのだ・・・>
さらに動画では、報道の自由について強調する。
<香港国家安全維持法では、香港住民の言論・新聞・出版の自由を謳っている。しかし警察隊の各種の行為は、すでに香港及び国際社会に向かって反面教師ぶりを示している。新聞社を捜査することは、報道の自由に大きな衝撃を与えるものであり、文明社会にとって容認できないものだ。
香港当局は擾乱と威嚇によって、われわれの口を塞ぐことができると考えている。そうして国際文化都市の社会レベルを、発展途上国の町に貶めようとしているのだ。
香港の報道の自由は、いまや大変な危機に陥っている。断崖絶壁に追い詰められた危急の時だ。『蘋果日報』は必ずや職場を守り、報道の自由を死守していく。まさに『蘋果日報』の張剣虹社長が述べているように、「蘋果は必ず耐えてみせる」>
動画では、ガランとして、ひと気がなくなったオフィスを、象徴的に俯瞰して終わっている。そしておまけに、次のような風刺アニメを載せている。
「自」と「由」と書かれた二本の芽が、地面から出てくる。それが突然、マサカリによって切り取られてしまう。地面に切り落とされた「自」と「由」は、大きな足にグチャッと踏みつけられる。それによって「自」と「由」は、(中国共産党の党色である)真っ赤に折れ曲がった「檻」に変わってしまう。最後に標語が現れる。「自由は罪に変わってしまった。われわれはもう退かざるを得なくなった」
『蘋果日報』は、翌11日付の朝刊を、部数を減らすどころか、通常の35万部から55万部に増刷した。その一面トップの見出しには、「蘋果は必ず耐えてみせる」という張社長の言葉が躍っていた。
『蘋果日報』の元幹部は、私にこう言った。
「今後、どこまで耐えられるかは、ひとえに香港市民と国際社会の応援にかかっている。そして『蘋果』が倒れる時が、香港の報道の自由が完全に消滅する時だ」
その後、8月11日夜に周庭氏が、12日午前0時過ぎには黎智英氏が、それぞれ保釈された。だが、香港の緊張状態はこれからも続くだろう。