友好新聞と非友好新聞

 その時、分かったことが二つあった。第一に、中国当局は「香港6大紙」を、「友好新聞」と「非友好新聞」とに二分していることだ。前者は、『文滙報』『大公報』。後者は、『蘋果日報』『東方日報』『明報』『星島日報』である。

 第二に、中国当局は「非友好新聞」の中でも、『蘋果日報』に対して、不倶戴天の敵のような恨みを抱いていることだ。その時、中国当局はこの新聞社を、何としてもお取り潰しにしたいのだと実感した。

 そして、私が説教を喰らってから半年余りを経て、ついに「中国の夢」を実現しようとしたのである。

創業者連行の様子を動画配信

 それでは『蘋果日報』は潰されてしまったのかと言えば、さすがに筋金入りの新聞だけあって、そんなことはなかった。逆にひるむことなく、警察が急襲してきた様子を、「職場を堅守し最後まで貫く」と題した3分31秒の動画にして公開したのである。

当局に連行される「壱伝媒」創業者の黎智英氏(「蘋果日報」配信動画より)

(参考:蘋果日報https://hk.appledaily.com/local/20200811/PKBEO4C6TCXINSF2JJEWTHHIKE/

 この動画は冒頭で、71歳になるマスク姿の黎智英氏が、警察に連行されていく姿を映し出す。そこに被せて、女声のナレーションが入る。

<昨日、創業者の黎智英や壱伝媒の幹部たちが、国家安全維持法やその他の法律違反を犯したとして、次々と連行された・・・>

 続いて、本社に警官隊がなだれ込む様子が映される。警官隊が内部の記者たちと押し合いへし合いし、大混乱になっている。

<数百人の警官隊が『蘋果日報』のビルを封鎖し、捜査に入った。威嚇手段によって報道の自由を侵害し、白色テロを作り出したのだ。『蘋果日報』は、極度の怒りを覚える。かつ最も強い譴責を与える。

 香港警察は、法に基づいて執行したと言う。その実、公然と法に違反し、職権を乱用しているのだ。法廷の捜査令状の制限を無視し、ニュースの取材データを遠慮なく検閲し、記者や編集者の活動や取材業務の履行を制限したのだ>