なぜ中国は「尖閣諸島」にこれほどこだわるのか…理由が明確になった

日本が失った「解決のチャンス」とは
髙橋 洋一 プロフィール

米国の強烈な台湾支持

米国も強烈に台湾を支持している。米厚生省は、台湾と断交した1979年以来、最高位の米高官であるアザー厚生長官の台湾訪問を発表した。これに中国は激しく反応している。

となると、中国が現時点で仕掛けられる「核心的な利益」の得点は、尖閣に限られてくる。そこで、冒頭に述べた、111日間連続で尖閣周辺での航行は、北戴河会議へのアピールだったのかしれない。

 

さらに、中国の尖閣への仕掛けとして、今月2日に産経新聞は「中国、漁船群の尖閣領海侵入を予告 「日本に止める資格はない」は、注目された。

8月16日に尖閣周辺で中国が設定する休漁期間が終わり、漁船と公船が領海に大挙して侵入するおそれがあるという。この種の話はまったくもって冗談ではない。実際、2016年8月にも、中国漁船200隻以上が尖閣周辺にきて、中国漁船と中国公船が領海侵入を繰り返したこともあった。

筆者も、この状況は十分あり得ると思っている。ただし、中国漁船の偽装漁民が尖閣に上陸し、それを助けに中国公船やその乗組員が相次いで尖閣上陸というシナリオまであるが、その可能性よりも、領海侵入した中国漁船を海上保安庁の巡視船が手に余ると、中国公船が中国漁船を退去させるという「出来レース」をする可能性が高いと思う。

中国漁船と中国公船はいわば仲間なので、この「出来レース」は簡単にやれるというほかに、中国公船による警備行動なので、中国による施政権行使という証拠にできるからだ。

中国の狙いは単純で、米国の出方を見ている。米国は、日米安保条約で日本の施政下であれば、防衛義務がでてくるが、施政下でなければ手出しができない。ということは、尖閣が日本の施政下でないことを示せばいいとなる。