なぜ中国は「尖閣諸島」にこれほどこだわるのか…理由が明確になった

日本が失った「解決のチャンス」とは
髙橋 洋一 プロフィール

「手足の多い怪物」中国

日本として大いに気になる尖閣について、「核心的利益」というのは、日本の報道では、中国がはじめ明言したのは2013年4月という(出典)。それによれば、中国外務省の華春瑩副報道局長は記者会見で、沖縄県の尖閣諸島について「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国の領土主権に関する問題であり、当然、中国の核心的利益に属する」と述べたという。

しかし、これはちょっと間抜けな報道だ。筆者10年以上前から本コラムを書いてきているが、2010年10月5日付け「尖閣問題を『核心的国家利益』と位置づけた中国の『覇権主義』」がある。

以上をまとめると、中国は2003年頃から「核心的利益」という言葉を使い出し、その後、それには、台湾、香港、チベット、ウイグル、南シナ海、尖閣が含まれていたが、遅くとも2010年頃までに明らかになった。

英エコノミスト誌の風刺画について筆者はファンで、6月18日号でも、中国がインド、南シナ海、台湾、香港をそれぞれ相手にしている面白いものが載っていた。

英『エコノミスト』紙より
 

しかし、そのほかにも、チベット、ウイグル、尖閣とも中国はトラブルを起こしている。とても、龍の手足だけで書き足りない。もっと手足の多い怪物でないと不味いだろう。

今の時点で、中国にとっての「核心的利益」の確保状況をみると、香港は先般の香港国家安全法でほぼ掌中にあり、チベット・ウイグルも民族浄化にも似たような強烈な押さえ込みをしており、南シナ海も実効支配を完成しつつある。

残りは台湾と尖閣である。台湾は、「二つの中国」の立場にたっている民主進歩党の蔡英文総統が、コロナ対策を上手くこなして、民衆の支持がある。