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やみくもにPCR検査を広げるべきでない…これがその「基本計算」だ

「陽性」でも本当の感染確率は3%!

そもそも新型肺炎とPCR検査には誤解が多い

5月16日の記事「歪んだ日本のPCR検査信仰、死者・感染者が少ないのには理由がある」で述べたように、「PCR法」というのは、映画「ジュラシックパーク」で古代の化石に残っていた遺伝子から生きた恐竜を復活したり、犯罪捜査で容疑者のコーヒーカップから採取したDNAで判定したりなど、「少ないDNAを増やして増幅する」方法である。

鼻の粘膜の採取は「生きた人間」が「生きた人間」から行うので、工業製品の検査のようにはいかない。検査員の熟練度に大きく左右されるし、採取・運搬する際の混入も避けられない。

例えば、Aという感染者のウイルスのDNAがBという検査者の検体に混じればBは感染していなくても陽性反応が出る。

また、増殖・鑑定するのはすべてのDNAではなく、遺伝子の特定の部位である。裁判でDNA鑑定の精度がよく問題になるが、PCR法ではすべての遺伝子を検査しているわけではないのがその理由の1つである。

そもそも、感染症において「感染している恐れのある検体(鼻の粘膜など)」を、受診者を集合させた(密)状態で採取することはリスクが高いし、その検体が検査機関に運ばれるまでの間にも感染リスクがある。万全の備えをしているとはいえ、検査機関でも感染する可能性があるのは事実だ。

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しかしながら、そのような医学・生物学上の問題だけではなく、「確率・統計学」的に「検査で陽性であった場合に本当に感染者である確率が低い」ことも、見過ごされている重大な事実だ。

医師は一般的に「確率・統計」に詳しい知識を持っていないし、一般の人々も同じだ。

しかし、「ベイズの定理」を始めとする「条件付き確率」を知らなければ、非論理的・非科学的情報に翻弄されるままになる。

 

新型肺炎に限らず、がん検診においても、「検査の陽性者が本当に病気」である確率は低く、現在一般的に使われるデータを基に計算してみると、新型肺炎のPCR検査で陽性となった人のうち、本当に感染しているのは全体の3%程度しかいないことになる。残りの約97%の人は、本当は感染していないことがはっきりとわかるのだ。