ようやく政府が重い腰を上げた。時間はかかったが、政策転換の方向性は現場の要望を踏まえたものだ。一刻も早い実現を求める。
地震や水害などの自然災害で壊れた住宅の再建制度を拡充する法改正である。
具体的には、被災者生活再建支援法に基づく金銭支給の対象を、これまでの「全壊」と「大規模半壊」から、「半壊」の一部にも広げる。
阪神・淡路大震災の復興の市民運動を機に、議員立法でできた同法は、支援額を最大100万円から300万円に引き上げるなどの改善はされてきた。
ただ、支援範囲を限定的に運用する点に批判があった。9年前の東日本大震災では、約28万戸も半壊があったのに、それらが対象外だったことで不満が募り、被災地では「半壊の涙」という言葉も生まれた。
その後も熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨、大阪北部地震や北海道胆振東部地震などの大災害が相次いだ。そのつど、被災者の生活を支える制度の手薄さや、役所的な「線引き」の厳しさが指摘された。
このため、全国知事会は2年前に「半壊」も対象にする同法改正を政府に要望した。支援金は全都道府県が拠出する基金と国の予算が半分ずつなので、被災住宅の再建の実態を詳細に調べ、国の予算額も明示した。
立憲民主、共産など野党は既に、半壊を支援する法改正案を国会に提出している。
だが、政府・与党は審議入りすら拒んできた。この間も、台風災害や河川の氾濫(はんらん)が各地で続発した。政府は応急修理の一部負担などを始めたが、小手先の対応では追いつかず、法改正を迫られた格好だ。
今回の政府案は知事会などと協議してまとめた。住宅の損害割合が20~40%未満の「半壊」のうち、30%台を対象に最大で100万円を渡す。
損害算定の区分が大まかすぎるとの批判や、金額の上積みを求める意見など、今後の検討課題は残る。それでも、法改正は一歩前進であり、早急に臨時国会を開いて成立を図るべきだ。
同時に、「災害大国」といわれるなか、支援策の改善を求める声の広がりに、もっと目を向ける必要がある。
たとえば、複雑な支援制度を見定めて、みずから申請しなければ援助を受けられない「申請主義」は不親切すぎる。
物資不足の時代の名残である「現物給付」の原則に固執せずに、もっと金銭給付を柔軟に活用すべきだ。
こうした多様な意見を実現する契機に、今回の法改正がなることを期待する。
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