第6章
78.勇者、冒険者ギルド試験を受ける
俺は同好会のみんなと合宿へ行くことになった。
数日後、王都南西にある【カシクザキ】の町へやってきた。
冒険者ギルドにて。
「それでは、ギルド入団テストを行う」
俺たちがいるのは、建物の裏にあった運動場だ。
40代くらいの筋骨隆々の、鎧を着こんだ男が言う。
「諸君らの試験を監督するのはこの私、元S級冒険者の【カマセーヌ】だ」
「かませいぬ? あにうえ~こいつ変な名前~」
「口を慎みたまえ。私の機嫌を損ねると試験不合格にして、冒険者にはなれないぞ?」
「雑魚の癖にどうしてこんな偉そうです?」
ビキっ、とカマセーヌが青筋を立てて言う。
「……私は元とはいえS級冒険者。つまりこの国最高峰の実力を持ったパーティに所属していたのだ。言うに事欠いて雑魚だと?」
「雑魚に雑魚って言ってなにがわるいです? ぼく、弱いくせにくちばっかりなやつ嫌いです?」
殺気が伝わってきた。
俺は義弟の頭をポンポンする。
「それくらいにしとけ。すまん、こいつ子供なんで、許してやってくれ。ほら、ごめんなさいは?」
「はーい、ごめんなさーい」
イラついた表情で、カマセーヌがため息をつく。
「……今日の受験者は全員子供だと? まったく、冒険者ギルドも、舐められたものだな」
ビシッ、と俺たちを指さして言う。
「冒険者とは危険と隣り合わせ。弱肉強食、力なきものは死ぬ厳しい世界だ。当然、最低限の強さを持っていないものは成る資格すらない。ゆえに実力を試させてもらおう。もっとも……」
ふんっ、と小バカにしたように鼻を鳴らして言う。
「子供が合格できるほど、冒険者は甘い世界じゃない。百戦錬磨の私の見たところによると、君ら程度の実力では合格はできんな」
「あにうえ、こいつ目が悪いです?」
「はいはい、少し黙ってような」
俺は義弟の背後に回り、手で口を押える。
ミカエルは目を閉じて、俺の胸にほおずりしてきた。
「それでは、テストを始める。冒険者は主に魔法を使う後衛、武器で戦う前衛に分かれる。まずはどっちか決めてくれたまえ」
協議の末、パーティ構成はこうなった。
前衛→俺、ガイアス。
後衛→エリーゼ、サクラ、ミカエル。
「あにうえー、ぼくも前に出て戦いたい~」
「後衛を守る役割もいるからな。おまえ防御魔法得意だし」
「でも~」
「頼むよ」
「わかったです! あにうえの頼みなら!」
そんなふうに、パーティでの役割が決定した。
「ではまず、後衛組の強さを見せてもらおう。おのおの魔法を的に向けて打ってくれたまえ、こんなふうに!」
カマセーヌは片手を伸ばす。
ぽひ……。
右手から初級火魔法【火球】が出る。
無詠唱での魔法発動だったが、威力は全然だった。
「ふっ! どうだい諸君。無詠唱魔法だ! さすがはSランク冒険者だろう?」
「「「…………」」」
「はは! すごすぎて声も出ないか! うんうん、無詠唱は高等技術だからな、無理もない!」
エリーゼも含めて、全員が唖然としていた。
俺もちょっとコメントに困るなこれ。
「ではそこのハーフエルフくんから」
「は、はい……」
困惑しながらも、エリーゼは前に出る。
「詠唱時間も評価点に入るからな。まあ無詠唱は無理だろうけれど、なるべく短い方が良い評価となるぞ」
「わ、わかりました。えっと【
エリーゼが手を前に出し、無詠唱で魔法を使う。
彼女の周囲に、巨大な岩が出現する。
その数は10。
全部が的に向かって、正確に飛翔した。
どがががががぁあああああん!
「…………」
ぺたん、とカマセーヌが腰を抜かす。
「い、今のはじょ、上級魔法……? しかも、無詠唱で?」
ぶるぶると体を震わせながら、カマセーヌが彼女を見やる。
「そ、その歳で上級魔法を使うなんて……宮廷魔導士でも使える人はわずかなのに……」
「次うちいくなー」
サクラが手をあげる。
「【
上空に魔法陣が出現。
雷の剣が、100本出現。
グラウンド広範囲に落ちる。
ずががががががぁあああああああああん!
「ひぃええええええええ!」
カマセーヌが鼻水を垂らしながら震える。
「ま、また上級魔法ぉ……ど、どうなってるんだぁ……?」
最後に、義弟ミカエルが、指を前に出す。
「どーん」
カッ!
指先にすさまじい量のエネルギーが集約する。
それは極太のレーザーとなって、前方へと射出される。
ズドォオオオオオオオオオオオオン!
ミカエルの【天の矛】だ。
超高密度の熱線が、地面をドロドロに溶かす。
ギルドは町外れにあったので、背後には建物はなかった。
しかし街を囲む魔物対策の防壁には、巨大な穴が空いている。
「ミカ、手加減しないと駄目だろ」
俺は創生魔法を使って、壁の穴や地面を一瞬で直す。
「はひ……はひ~……」
カマセーヌはなんだか知らないが、完全に気が抜けていた。
「おいあんた、大丈夫か?」
俺は彼の肩に触れて、
闘気は応用すれば、相手の体を活性させ、治癒効果を示すのだ。
「はっ! い、今私は……いったい……?」
よろよろとカマセーヌが立ち上がる。
「す、凄まじい才能だ……3人とも上級魔法が使えるなんて!」
「「「え……?」」」
エリーゼ達が首をかしげる。
「そんなにすごいかなぁ。ユリウス君と比べたらねぇ」
「旦那様は極大魔法を無詠唱で使うからな~。うちらはまだまだや」
「あにうえは全てにおいてすごいです! ぼくなんてミジンコです」
がくん……とカマセーヌが顎を下げる。
「さ、さらにすごい魔法の使い手がいるのか……! なんてことだ、あとで探さねば! ぜひうちのギルドに勧誘しないと!」
「あにうえ、やっぱりこいつ目が悪いです?」
ややあって。
「ま、魔法はわかった。次は剣だ。言っておくが、私は剣の方が得意なのでな!」
カマセーヌが黄金の剣を構えて、シュパパッと【無駄な動き】をする。
「ふ……どうかね、私の流麗な剣舞に目を奪われてしまったかい?」
「どうでもいいから、さっさと始めようよ」
ガイアスはなぜか、イライラした表情で言う。
「弟よ、なんでそんなイラついてるんだ?」
「別に。……こんな無駄なことして何になるんだよ、兄さん」
ビキッ! とカマセーヌが額に青筋を浮かべる。
「無駄……ほぅ、デカい口をたたくではないか。若さ故の無知かな。自分より強いものに会ったことがないのだろう?」
ビキッ! とガイアスの額に、青筋が幾本も浮かぶ。
「……なに、言ってるんだよ」
ゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
ガイアスの体から、莫大な量の魔力と
「な、なんというプレッシャー! 凄まじすぎる!」
「いいからさっさときなよ、三流」
カマセーヌは剣を構えて、びっくりするくらい遅いスピードで弟に斬りかかる。
「く、くらえ! わが秘剣【飛燕連剣】!」
たったの10連撃。
あまりに遅いその一撃一撃を、ガイアスは全て避ける。
「なっ!? わ、我が光速の剣を、かわすだと!?」
「もう終わりなの? じゃあこっちもいくよ」
「ふ、ふん! ちょっとすばしっこいだけでなんだ! 剣士の力量は早さだけでははかれんぞ!」
ガイアスは、カマセーヌが取ったのと同じ構えをする。
スパパパパパパッ……!
「ほ、ほげぇええええ! そんな馬鹿なぁああああ! 【飛燕連剣】だとぅうううううう!」
ガイアスの斬撃は、カマセーヌより明らかに早かった。
そして、10連撃じゃない。
「い、一度見ただけで、我が秘奥義を、完璧に模倣された……」
「は? 何言ってるの?」
「そうだぞ、今の1000連撃じゃないか」
「せっ……!?」
信じられない者を見る目で、ガイアスを見やる。
「て、適当なことを言うな! 1秒で1000もの斬撃が放てるわけがない!」
ガイアスは無言で、的の前まで移動。
スパパパパパパッ……!
的は、極小のブロックとなって、足下に山を作る。その数は1000。
「し、信じられない……て、天才か……?」
「は? 馬鹿にしてるの? こんなの兄さんに比べたらゴミカスだよ。くそっ! もっと強くならないと!」
ガイアスが肩を怒らせながら戻ってくる。
ミカエルは「がいあす頑張ったです」と弟の肩をたたいて慰めていた。
「い、異常者……今回の受験者は、化け物の集団か……?」
「「「いやいやいや」」」
全員が首を横に振る。
「あんた何言うてん?
サクラが俺を指さす。
ふらり、とカマセーヌが立ち上がる。
「ふ……ふふっ。なるほど、君はほか4人と比べて、大したことなさそうだ」
「やっぱりこいつ目が悪いです。眼科行くです?」
カマセーヌは俺の前までやってくる。
「申し訳ないが、本気でいかせてもらおう。君も本気できたまえ。別に憂さ晴らしをするわけじゃないからね」
「え、まあいいよ」
「「「いやちょっと待て!」」」
ガイアス達が大慌てで、俺の元へやってくる。
「兄さん! やめて!」
「本気は出しちゃ駄目だよ!」
「さすがに死人を出すわけにはいかんからなぁ」
引き留めるガイアス達に、俺は言う。
「え、でも本気で来いって……なぁ?」
「そうだぞ、遠慮せず来い!」
「だってさ。よーし、いくぞぉ」
俺は魔剣ヴェノムザードを手に取る。
「「「やめてぇええええええ!」」」
「そーい」
ズバンッ……!
俺はその場で、斜めに切った。
しーん……。
「は、ははっ。素振りかい? まあいいだろう。では本気の立ち会いを……」
そのときだった。
ゴゴゴゴゴゴ……!
「な、なんだ!? じ、地面が! ずれていく!」
地面に線が入り、片側が沈んでいく。
「兄さん! 何をしたの!?」
「え、斬っただけだぞ、俺たちのいるこの星を」
切断した側の大地が、ずり下がっているのだ。
「ひぃいいいいいい! うぎゃぁあああああああ!」
沈みゆく大地を前に、カマセーヌがなんか泣き叫ぶ。
「もう! 何やってるんだよ! 【疑似・創生】!」
ガイアスの魔法によって、切断された大地が、元に戻った。
「…………」
カマセーヌが、ション便を漏らし、白目をむいて倒れる。
「ほんと、兄さん規格外すぎるんだよ……」
「「いやあんたも結構だよ!?」」
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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので