大林宣彦監督が20年ぶりに故郷である尾道を舞台に完成させた遺作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』がついに公開となった。
わずか17館でのスタートながら連日満員を記録し、すでに69館での拡大公開も決まるなど話題の『海辺の映画館』だが、大林映画の集大成とも言える本作の魅力をより深く味わうため、MOVIE WALKER PRESS編集部は広島県尾道市で取材を敢行。尾道在住の方々のコメントと共に、“聖地巡礼”レポートをお届けしたい。
『海辺の映画館-キネマの玉手箱』
尾道駅を降りると、まず目に飛び込んでくるのが尾道水道のキラキラした水面だ。この尾道水道は尾道市の本州と向島を隔てており、市街地に沿って尾道市の中心部を流れている。
現在でも瀬戸内海の島々と尾道市街の行き来はさかんに行われており、『海辺の映画館』も、吉田玲演じるヒロインの希子が船に乗って尾道にやってきて、自転車を漕ぎだすシーンから幕を開ける。
大林監督の“映画への情熱”と“平和への想い”が凝縮された本作の舞台は、希子が手伝いを務めている海辺の映画館「瀬戸内キネマ」。閉館を迎える夜、「日本の戦争映画大特集」のオールナイト興行に足を運んだ3人の若者たちは、スクリーンのなかに消えた希子を追って映画の世界へタイムリープしてしまう。幾多の戦争の記憶を辿りながら、原爆投下前の広島に行き着いた彼らは、そこで移動劇団「桜隊」と出会うことになる…。
クランクイン当日に撮影されたという、希子が尾道に降り立つシーンのロケ地は、尾道駅を出て水道沿いに車で5分ほど走った旅客船のりばにある。背筋を伸ばして自転車を漕ぐセーラー服の希子は、これぞ大林映画のヒロインというたたずまいだ。
このように『海辺の映画館』には、これまでの大林映画、特に尾道で撮影された名作群を彷彿させるイメージがあふれている。
ここからは40年前の『転校生』まで時計の針を戻して、尾道に残る大林映画の“記憶”をたどってみたい。
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