第5章
64.勇者、熾天使を余裕で倒す
教室にて。
理事長の弟ミカエルが、勝負を挑んできた。
「なんで出会い頭にバトルなんてするんだよ?」
ガイアスが警戒心をミカエルに向ける。
「ぼく、今まで自分より強い人にあったことないです。だから兄上が高く評価する、ユリウスさんと手合わせしたいです。だめです?」
ともすれば少女と見まがうほどの、華奢な彼が問うてくる。
「いいぜ別に。どこでやる?
「必要ないです。【領域結界】」
ミカエルが印を組む。
その瞬間、彼を中心として魔法が発動。
俺たちは一瞬で、別の空間へと飛ばされる。
「なっ!? なんだよここは!?」
空間には俺とミカエル、そしてガイアスの3人だけがいた。
「領域結界だ。自分の空間を作り、相手を閉じ込めることができる。上位の存在は結構使うぞ」
「そのとおりです。さすがユリウスさんです」
ミカエルは6枚の翼を広げ、少し高い位置から俺たちを見下ろす。
「ところで、なぜそこの少年がいるんです? この領域には一定レベル以上の強者しか侵入できないようなってるはずですが?」
「そりゃうちの弟は強いからな」
「なるほど……ですが、立ってるのでやっとみたいですね」
弟はうずくまり、荒い呼吸をする。
「なに……これ……?」
「領域結界は敵の力をダウンさせるんだ。逆に自分の力は上昇させる」
「そのとおり! ですがユリウスさんは余裕と見受けられます」
「この程度の領域じゃ俺を弱体化はできないぞ」
にやり……とミカエルは笑う。
「いいです……そう、ぼくは探していたんです。全力で戦っても壊れない……玩具を!」
バッ! と天使が翼を広げる。
無数の羽が彼の周りを囲む。
光の羽が、俺めがけて打ち込まれる。
ズドドドドドドドドドドドッ!
「なんだよこれ!?」
「【天の矛】。天使の使うレーザー攻撃だな」
「そんな! 前に学園長室で見たのより高威力だし、数もとんでもないよ!」
「それだけミカエルが高位の天使なんだろ?」
「そのとおり、ぼくは熾天使。天界で実力トップの【七大天使】のひとりですー
俺はガイアスに結界を張る。
光のレーザーが俺を射貫こうとする。
そんな中で、俺は最小限の動きだけで全てを回避する。
「今のをかわしますか! すごい、すごいですよぉ!」
ミカエルがさらに翼を広げる。
先ほどの比ではないレベルの翼が、空間一杯に敷き詰められる。
「に、兄さん……危ないよ……」
「安心しな。結界内は安全だから」
「いやボクの話じゃなくて! アア来るよ!」
ズドドドドドドドドドドド!
「よっと」
俺はレーザをよける。
バク宙、半身をひねる、時には剣で軌道をそらす。
「きゃはははっ! すごいです! 天の矛は1000発。どうしてこれを避けられるンですかぁ!?」
「え、1本1本を目で捕らえてるからだけど?」
闘気で動体視力を強化すれば、高速で飛来する無数の攻撃なんて容易く避けられる。
「あ、あんな無数の超高速レーザーを目で捕らえられるとかどうなってるんだよ……!」
「え、2000年前のレーザー使いって基本1度に1万発のレーザー出してたぞ?」
「なんかもう怖いよ! そんな地獄みたいな時代があったことが!」
あのときと比べて、確かにこの時代は平和になったものだ。
「きゃははっ! あははは! はーっはっは!」
ミカエルは実に愉快そうに笑う。
「信じられないです! 今の全部避けるなんて!」
「え、この程度ならうちの弟でも全部避けられるぞ? なぁ」
「だから! 兄さん基準でものを語るなっていつもいってるだろっ!」
俺は天使を見上げる。
「これで終わりか?」
「まさか、これからですよ……」
ミカエルは6枚ある翼のうち、2枚の翼を分解。
領域内部に、白い翼が吹雪のように舞い散る。
そのうちの1枚が床に落ちる。
ドガァアアアアアアアアアアン!
大規模な爆発により、地面にかなり大きめのクレーターができる。
「な!? 何が起きたんだ!?」
「【天の機雷】。爆弾です。触れれば爆発です」
「こ、こんな無数の翼ひとつひとつが爆弾なんて……」
「ちなみにぼくにはノーダメージです」
ミカエルは手を伸ばす。
レーザーソードが顕現する。天の剣か。
「さしもの勇者神も、この隙間なく埋め尽くされた地雷の中、ぼくの攻撃をしのぐことは不可能!」
光を超えた速さで、ミカエルが俺に近づく。
一度に1000回。
超高速の連続切り。
そして地雷がすべて爆発する。
ドガァアアアアアアアアアアン!
「ふぃー……なかなか楽しめたです。けどやっぱりぼくには勝てないようですね。おや、弟君、なぜそんなに冷静です? お兄さんがやられたのに?」
「いや、君の負けだよ」
「ははっ。ご冗談を。あの攻撃を受けて無事でいたものなどこの世には……」
そのときだ。
俺は一瞬で、ミカエルの間合いに入る。
「なっ!? そんな……ばかな!?」
「遅い」
俺は魔剣ヴェノムザードを出現させ、ミカエルの胴体をぶった切る。
ズバンッ……!
「あ、あぁあああり得ないです……あの斬撃を、あの爆撃を受け、なぜ無傷なのです!?」
倒れ伏すミカエルが、驚愕の表情を浮かべる。
「え、領域外へ転移してたからだけど?」
「そんな馬鹿な!? この領域結界はぼくの許可なく誰も出入りできないはず!?」
「え、普通に虚空剣で切り裂いてでれたけど?」
結界の一部に、縦に大きく斬られたあとがあった。
穴が空けばそこから転移ででれる。
あとは普通に戻ってきた次第。
「そんな……絶対破れない結界なのに……」
愕然とした表情のミカエル。
その間に、彼の体は再生した。
天使は人間と違って、再生能力が桁外れなのである。
「あの刹那の間に、結界を斬って外に出て戻ってきたとか……兄さんが本当に人間なのか、疑いたくなるよ」
はぁ、とガイアスがため息をつく。
「いやいや、この程度2000年前じゃ普通だって」
「その時代に生まれなくて良かった! ああ良かった!」
さて。
俺はミカエルに近づく。
「素晴らしい……」
「え、なに?」
「素晴らしいです!」
ミカエルは立ち上がると、俺に抱きついてくる。
「最高です! あなた、とってもとってもエクセレントです!」
「なぁ! ふ、ふ、ふざけんな! ボクの兄さんになにしやがるんだ! 離れろ!」
ガイアスは勢いよく近づいてきて、ミカエルを引き剥がす。
「感謝のハグです。これくらい常識です?」
「おまえも
弟が同世代の子と楽しそうにする姿を見て、俺は満足するのだった。
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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので