第3章
40.勇者、星を穿つ
俺の家に、魔族が襲撃してきた。
狙いは弟だった。
捕縛して俺に言うことを聞かせようって魂胆らしい。
「ぐすっ……ふぐっ……」
ガイアスは先程から、へたり込んで涙を流している。
よほど、魔族が怖かったのだろう。
「怖い思いさせてすまないな」
「ちがうよアホぉ~……」
そのときだった。
ドガァアアアアアアアアアアアアン!
屋敷を、巨大な何かが突如として襲った。
「う、うわぁあああああ! って、えぇえええ!? なにこれぇ!?」
ガイアスが腰を抜かしている。
「壁やガラスの破片が、く、空中に浮いてる。音も……しない。これ、どうなってるの……?」
「え、時間を止めただけだけど?」
【
ほんの短い間だけ、時を止める魔法だ。
「もう……無茶苦茶だ……兄さんあんた、魔王の生まれ変わりなんじゃないの……?」
惜しい。
本当は勇者の生まれ変わりだ。
「さて、っと、襲ってきたのは隕石か」
10mほどの巨大な岩が、屋敷に衝突したようだ。
「こんなでかいのが近づいているのに、まったく気配を感じなかったのはどうして?」
「たぶんさっきの魔族が仕込んでいたんだろ。隠密能力が付与してある」
彼の死後、隕石が落ちるように魔法がかかっていた。
「こんなの衝突したら、この国滅びちゃうよ……」
「え、滅びないぞ」
「は? いや、いくら時間停めてたとしても、もう衝突した事実は変わらないんだし、終わりだよ……」
俺は右手を前に出し、全集中を使って魔力を練り上げる。
「な、なんだよこの膨大な魔力量は!?」
「これから使う魔法、結構魔力食うからな。【
その瞬間、俺の周囲に無数の魔法陣が出現。
それは時計を模したデザインのものだ。
時計の針が逆に回りだす。
「こ、壊れたものが元に戻ってく!? い、隕石も!?」
衝突寸前だった隕石は、宙へ向かい戻っていく。
壁は元通り、そして隕石は、衝突する前の位置まで戻っていった。
「い、今の何なの……?」
「え、時間を魔法で10秒だけ戻しただけだぞ?」
弟はその場にへたり込む。
「さて、じゃあ後始末しますか」
俺はさっきの魔族が吹っ飛ばされて、開いた穴の前に立つ。
「なに、するのさ……?」
「隕石ぶっ壊す」
「は、はは……なにを、バカなこといってるの? そんなの、できるわけが……」
俺は剣を創生し、構える。
『勇者よ。これでは駄目だ。剣がもたぬ』
そういうと、俺の体から
彼女は黒く輝くと、体を変化させる。
それは1本の黒い剣となった。
『魔剣ヴェノムザード。魔王が自ら剣に変化して作った剣だ。これなら耐久性は申し分ないだろ?』
「ああ、サンキュー」
装飾の少ない、黒い刃の剣を、俺は構える。
膝を曲げ、重心を落とす。
左手を前に出し、刃に添える。
キィイイイイイイイイイイイン!
「すごい量の魔力が……剣先に一点集中してる……なんだあれ?」
次第に魔力が、黒く、輝いていく。
「魔力に色がつくとこ、はじめてみた……」
「膨大な量の魔力を圧縮すると、黒く輝くようになるんだよ。……さて、いくか」
俺は前に踏み込む。
右手に持った魔剣を、超高速で突き出した。
カッ……!
落雷時のように、黒い光が周囲に瞬く。
俺の剣先から一直線に、黒い光線が放たれる。
ビゴォオオオオオオオオオオオオ!!
黒い光は真っ直ぐ、落ちてくる隕石に衝突し、貫いた。
「だ、駄目だ……小さな穴を開けただけ。意味ないよ……!」
「え、そんなことないぞ。ほら見ろ」
「!? い、隕石が……穴を中心に【崩れてく】」
ボロボロと、濡れた紙のように巨大隕石は崩壊していった。
やがて、文字通り跡形もなくなった。
破壊による衝撃も余韻もない。
元から何もなかったかのように、穏やかな夜空が浮かんでいる。
「……い、いまの、は?」
「え、【
魔力を超圧縮して打つ。
その光に触れたもの全てを崩壊させる、剣聖の持つ奥義の一つだ。
『魔王である我も、あの奥義には苦戦させられた。見事な技だぞ、さすが勇者だ』
全てを片付けた俺は、修復魔法で壊れた壁等を元通りにする。
「ん? どうした弟よ?」
ガイアスは魂が抜けたような表情で、俺を見つめている。
「レベルが、違いすぎるよぉ……」
ポロポロと、弟が涙を流す。
「だ、大丈夫か? どこか痛いのか?」
「こんな人外のバケモノと、勝負するのが間違いなの……? ボクじゃ、一生勝てないのかよぉ……」
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え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので