日めくりプロ野球 5月
【5月3日】1997年(平9) 満を持して登場?グリーンウェル、華々しく2安打も…
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【阪神7-3広島】ゴールデンウイーク真っ只中。阪神の4億円助っ人、マイク・グリーンウェル外野手がようやく5番・左翼で初出場した。
いきなり5打数2安打2打点。5打席目の右越え三塁打は、二塁を回ったところで足がもつれながら三塁ベースへ“突進”。大リーグ、レッドソックスで12年、通算1400安打を放ったバッティングの片りんを見た4万人の観衆は、低迷するタイガースの救世主として大きな期待をかけずにはいられなかった。
「オレはとても攻撃的なバッターだ。だから狙った球はいつでも打ちに行く」とグリーンウェル。“早打ちマック”はその言葉通り、3打席目まですべて初球に手を出した。1回は広島の先発・黒田博樹投手を一死満塁と攻めながら、この早打ちで併殺打。「もっと狙い球を絞って」と吉田義男監督も注意を促す間もなく迎えた3回の第2打席では真っ直ぐを中前打。先制の1点となった。
「いろいろあったけど、いい仕事をしてくれた。これからやな」と安堵の表情を浮かべた吉田監督。たしかにこの日にたどり着くまでにいろいろな事がありすぎた。
球団史上最高額となる4億円で契約したグリーンウェルは、レッドソックスの赤から阪神の黄色にリストバンドを変えて安芸キャンプに参加。ややウエートオーバーの体が気になったが、バッティングはメジャー通算3割3厘が証明するようにライナー性の当たりを外野へ連発した。
問題が発生したのは2月中旬。「私用でアメリカに帰らせてほしい」と申し出たのが最初だった。私用とはサイドビジネスでやっていた牧場と遊園地経営の契約更新だった。毎年2月に新年度の契約を結ぶ決まりになっていたが、これをグリーンウェルはきちんと球団に説明していなかった。やむなく帰国を認めた阪神だったが、それ以上の問題が直後起きた。
2月21日、代理人のジョー・スローバー氏から「背筋痛のため、しばらく来日できない」という連絡が入った。本人いわく「外野ノック中に痛め、気にしながら練習してきたが限界だ」。自宅のあるフロリダで精密検査を受けてから来日するとまで言い切った。
事情がのみこめない神側は困惑するばかり。「このまま退団するのでは…」という憶測が現場には流れた。なにせ代理人の名前が気になる。スローバー氏は95年、ダイエーで史上初の開幕戦初打席満塁本塁打を放つも無断帰国などやりたい放題をやって退団した、ケビン・ミッチェル外野手の代理人。4億円を取られて、ハイ、さようならという嫌な予感が脳裏をかすめた。
なんとか4月下旬に再来日を果たし、ホッとひと息ついたタイガース首脳陣は、ゴールデンウイークに地元デビューの舞台を用意し、初スタメンで起用。この後3試合連続安打と打点をマークした。
グッズ生産を球団が検討し始めた5月10、日東京ドームでの巨人7回戦で自打球を右足の指にあてて骨折。するとグリーンウェルはこんなことを球団に話した。「背中の痛みに加えて今度は足を折った。ケガが重なるということは、野球から身を引けという神のお告げだ」。
こうなるともう話にならない。引退の意思を固めたグリーンウェルの考えを尊重し、球団は了承。契約金と年俸の計4億円のうち、75%の3億円を支払うことで合意した。通算7試合26打数6安打5打点、打率2割3分1厘。ヒット1本、5000万円ナリで“最強助っ人”は帰国。特注していた足にやさしい大きさ29センチのスパイクが完成したのは帰国した5月15日。主のいなくなったスパイクがその後どうなったかは定かではない。
甲子園球場が20個以上は入る敷地に住み、ここでサイドビジネスで成功を収めたグリーンウェルにとってもはや野球は興味の対象ではなくなっていた。その後もメジャーには復帰せず、趣味のカーレースに参戦するなど、悠々自適の生活を送っていると聞く。
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