[新型コロナ] 政府対策 家賃支援金 農地賃料も対象に 売上減が条件、半年分支給
2020年08月09日
新型コロナウイルス対策として、事業者の家賃や地代の負担軽減を目的とした政府の「家賃支援給付金」は、農地の賃料も給付対象となる。新型コロナの影響で売上高が大幅に減った個人農家や農業法人などが対象だ。給付額の上限は個人300万円、法人600万円。賃料の負担を減らし、経営の継続を後押しする。2021年1月15日までに専用ホームページから申請する。

資本金10億円以上の大企業を除く、個人農家や農業法人、協同組合などが対象。新型コロナの影響による売上高の減少が条件だ。今年5~12月のうち、いずれかの月の売上高が前年同月より50%以上減ったか、連続する3カ月の売上高が前年同期より30%以上減った場合に給付する。農水省は、外出自粛などで需要が減ったり、外国人技能実習生が来日できずに収穫を断念したりした場合などを想定する。
農地の賃料は年額で払う場合が多いが、申請時の直近に支払った賃料を月額換算し、給付率をかけた額の6カ月分を支給する。給付率は個人の場合、賃料が月額37万5000円までは3分の2、それより上から同112万5000円までは3分の1。法人は、賃料が月額75万円までは3分の2、それより上から同225万円までは3分の1となる。
例えば、個人が農地などの賃料を年間36万円支払った場合は、12で割った月額賃料の3万円に給付率の3分の2をかけ、その6カ月分として、12万円が支給額になる。
申請には①賃貸借契約書や農用地利用集積計画書など賃貸借契約を証明する書類②確定申告書など売上高の減少を確認できる資料③銀行通帳の写しなど賃料支払いを証明する書類──が必要。個人は運転免許証などの本人確認書類も用意する。
受給後も事業を続けることや給付条件を満たしていることを誓約する書類なども必要になる。
問い合わせは家賃支援給付金コールセンター、(0120)653930。
農地の賃料は年額で払う場合が多いが、申請時の直近に支払った賃料を月額換算し、給付率をかけた額の6カ月分を支給する。給付率は個人の場合、賃料が月額37万5000円までは3分の2、それより上から同112万5000円までは3分の1。法人は、賃料が月額75万円までは3分の2、それより上から同225万円までは3分の1となる。
例えば、個人が農地などの賃料を年間36万円支払った場合は、12で割った月額賃料の3万円に給付率の3分の2をかけ、その6カ月分として、12万円が支給額になる。
申請には①賃貸借契約書や農用地利用集積計画書など賃貸借契約を証明する書類②確定申告書など売上高の減少を確認できる資料③銀行通帳の写しなど賃料支払いを証明する書類──が必要。個人は運転免許証などの本人確認書類も用意する。
受給後も事業を続けることや給付条件を満たしていることを誓約する書類なども必要になる。
問い合わせは家賃支援給付金コールセンター、(0120)653930。
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[新型コロナ] 二番茶諦め 苦渋の決断 相場低迷…コロナ追い打ち 静岡
荒茶生産量が全国一の静岡県を中心に主産地で二番茶の生産をやめる生産者が出ている。長期的な茶相場の低迷に加え、今年はコロナ禍と新茶シーズンが重なり、茶産地は大きな打撃を受けた。生産量の減少が続く中、産地は生産基盤の維持に向け、紅茶生産や実需とのマッチングに取り組み、需要回復を模索している。(木村薫)
今年、産地は苦渋の決断を迫られた。静岡市清水区の茂畑共同製茶組合は、1962年に設立して以来、初めて二番茶の生産をやめることを決めた。組合長を務める杉山一弥さん(44)は「年々相場は安くなり、出荷しても採算割れをする。加えて今年はコロナ禍で問屋からの引き合いも減り、仕方がなかった」と理由を説明する。最も取引量のある茶問屋でさえ、一番茶の時点で例年の半分以下に落ち込んだ。
茶相場は低迷が続き、二番茶の価格についても前年割れを見込む。加えて今年はコロナ禍で新茶初取引のセレモニーや呈茶イベントが各地で中止となり、「盛り上がりに欠け、売り込む時期がほとんどなかった」(県内の茶商)。JA静岡経済連によると、需要の縮小を見越し一番茶の生産量は1万トンの大台を割る見通し。二番茶も前年の約7600トンから2割減と見込む。
一番茶の情勢を受け、経済連は5月中旬時点で二番茶の生産について「販売先が決まっていない状態での生産は前年以上にリスクが高い」と例年以上に強く生産抑制を呼び掛けた。加えて来年産の一番茶の品質向上のため茶樹を切り込み樹勢を回復させる更新処理も促した。県茶業会議所も「個々の農家の判断で生産をやめたり、出荷しないことはあった」と話す。
九州の主産地でも静岡県と同様の動きが目立つ。佐賀県嬉野市では二番茶の段階で10アール当たり1万円を補助し、生産調整を促した。鹿児島県の南九州市では三番茶で更新処理を呼び掛けた。
紅茶、「香り緑茶」に活路 産地は巻き返し模索
産地では茶の生産基盤の維持へ、加工方法や需要開拓に向けた売れる茶生産へ試行錯誤をする。
静岡県のJAしみずは紅茶生産に活路を見いだす。JAは2013年ごろから二番茶を使った紅茶の生産を本格的に始めた。現在では二番茶の1キロ平均単価が1000円を下回る相場が多くみられる中、JAではこれまで通り紅茶向けの荒茶を1キロ当たり1200~1300円で買い取り続けている。JA営農振興センターの森真一センター長は「10年以上前から茶の価格下落は予想されていた。国産紅茶で付加価値を付け、安定した価格の取引で茶産地の振興を目指した」と経緯を話す。当初はJAが販売する分だけで約4トンの生産量だったが、今年はコロナ禍の中でも9トンを見込む。
静岡県牧之原市の勝間田開拓茶農協は県が開発した「香り緑茶」の生産に力を入れている。煎茶の製造では行わない「萎凋(いちょう)」の工程を加えることで、香りを引き出す。県は普通煎茶、深蒸し煎茶に次いで「第三の煎茶」と位置付ける。
同農協は17年に二番茶で試験的に製造を始め、昨年は800キロ生産し、今年は850キロを予定する。広報担当の白松孝之さんは「まだ認知度が低く取引量は少ないが、香りで楽しむ煎茶として、お茶を飲む習慣がない層などの需要を開拓したい」と話す。取引がある茶商からの注文は昨年を上回る。
他業種と販路開拓 県が新事業
静岡県は販路を新たな模索している。県は今年度、県単独の新規事業として「ChaOI(チャオイ)プロジェクト推進事業」を立ち上げ、1億7500万円を充てた。幅広い業者が連携し、静岡茶の新たな価値を創造する狙い。県お茶振興課の小林栄人課長は「生産支援に加え、販売方法など出口戦略の支援にも力を入れ、茶業振興を進めたい」と話す。同プロジェクトの推進組織には現時点で290個人・組織が登録。東京都や京都府などから参加し、さまざまな業種を巻き込んで茶消費を盛り上げる。
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2020年08月07日
メロン VR“収穫”… いつかこの手で
自宅にいながら農業体験を楽しんで──。茨城県鉾田市の深作農園は、仮想現実(バーチャルリアリティー=VR)でのメロンの収穫体験を提案している。専用のゴーグルやディスプレーで動画を視聴すると、まるで農園にいるような感覚で、栽培や収穫の方法を学べる。農家が提供するVRサービスは珍しい。
VR動画と呼ばれる仕組みで、動画は長さが約4分。同園社長の深作勝己さん(39)の案内でハウスに向かい、収穫方法などを聞く内容だ。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、同園のメロンの収穫体験に訪れる観光客は今年、例年の半分ほどに減ったという。深作社長は“3密”を避けながら収穫体験ができる手法としてVRに着目。県内の映像制作会社の協力で作った。
メロンとサービスを組み合わせたセットを販売したところ、すぐに完売した。深作社長は「気軽に来られない遠方の消費者にも農園を知ってもらうきっかけになる」と話す。
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2020年08月09日
日英協定の交渉大詰め 閣僚級協議を開始
日英両政府は6日、ロンドンで貿易協定交渉の閣僚級協議を始めた。焦点となる自動車・同部品などの扱いで、茂木敏充外相とトラス国際貿易相が詰めの協議に臨み、大筋合意を目指す。
対面での閣僚級協議は初めて。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、6月の交渉開始から閣僚級、事務レベルともに、テレビ会議などで協議してきた。
茂木外相は訪英を発表した4日の会見で「国益を懸けた難しい交渉を電話でやるのは無理だ」とし、対面で合意につなげたい考えを示した。
農産物では、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入枠を設けたチーズなどの扱いが焦点。日本は英国枠を新設しない方針だ。
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2020年08月07日
甲子園でかっ飛ばせ! 北海道29校農業クラブ 帯広農高を激励 寄せ書き、「FFJの歌」贈る
甲子園球場で10日から始まる「甲子園高校野球交流試合」に出場する帯広農業高校野球部を応援しようと、日本学校農業クラブ北海道連盟は5日、旭川農業高校(旭川市)で道内の農業高校からの応援メッセージなどを贈り激励した。応援を受け取った帯農ナインらは、一丸となり全力でプレーすることを誓った。
応援メッセージは道内29高校の農業クラブの代表者が、各クラブの思いをタペストリー(縦119センチ×横84センチ)にした。北海道の農業クラブの事務局を担う旭川農業高校の農業クラブ生徒代表で、同連盟の会長である古瀧朋香さん(17)が、帯農野球部主将の井村塁さん(17)に手渡した。
また、別海高校(別海町)吹奏楽部の杉本楓華部長(17)が、同校、旭川農高、岩見沢農高(岩見沢市)、美幌高校(美幌町)の4校が演奏した「FFJ(農業クラブ)の歌」を収録したCDを贈呈した。杉本さんは「私たちの応援歌が少しでも皆さんの糧になってほしい」と述べた。
会場では昨年の北北海道大会で帯農の応援に駆け付けた旭川農高吹奏楽部が応援ソングを演奏し、「かっ飛ばせ帯農!」とエールを送り、盛り上げた。
旭川農高の校長で、同連盟の田村弘樹代表は「新型コロナの影響が長引く中、多くの人の励みになる。全国の農業高校代表として、自信と誇りを持ってプレーしてほしい」と激励した。
応援を受け取った井村主将は感謝を述べ、「全力で戦い抜く」と誓った。前田康晴監督は「皆さんの温かいメッセージは心に残っている。甲子園に持っていきプレーします」と話した。
同校は16日の第2試合で高崎健康福祉大学高崎高校(群馬県)と対戦する。
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2020年08月06日
「地域の防災任せて」 自治体消防団への加入強化 業務中の活動認める JAならけん
声掛け奏功 新たに32人
JAならけんは、職員の自治体消防団への加入促進に力を入れている。近年の自然災害増加を背景に、JAとして地域防災力の向上と支援を強化する。団員のなり手が減る中、職員への声掛けにより新たに32人が各地域で加入した。また災害被害に遭った時に活用する支援対策積立金(目標5億円)を創設し2億円を積んだ。人的、経済的の両輪で組合員、地域を支えていく。
奈良県一円を事業区域に持つ同JA。職員の1割弱に当たる総勢147人が、山間部を含め広く各地域の消防団に所属する。JAでは、業務時間内であっても職員の消防団活動を認めてきた。災害発生時に一番近くで地域を支える存在であり、「業務も大事だが、消防団活動も同等に大事」とし、業務の一環と捉えている。
4月以降加入した32人は20、30代が8割、50代もいる。今年度の経営管理重点事項として、地域防災力の充実・強化に向けた職員の自治体消防団への加入促進、防災関係機関・団体などとの連携強化を盛り込んでいる。
消防団員のなり手は、全国同様、同県でも減少傾向にある。……
2020年08月06日
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資本金10億円以上の大企業を除く、個人農家や農業法人、協同組合などが対象。新型コロナの影響による売上高の減少が条件だ。今年5~12月のうち、いずれかの月の売上高が前年同月より50%以上減ったか、連続する3カ月の売上高が前年同期より30%以上減った場合に給付する。農水省は、外出自粛などで需要が減ったり、外国人技能実習生が来日できずに収穫を断念したりした場合などを想定する。
農地の賃料は年額で払う場合が多いが、申請時の直近に支払った賃料を月額換算し、給付率をかけた額の6カ月分を支給する。給付率は個人の場合、賃料が月額37万5000円までは3分の2、それより上から同112万5000円までは3分の1。法人は、賃料が月額75万円までは3分の2、それより上から同225万円までは3分の1となる。
例えば、個人が農地などの賃料を年間36万円支払った場合は、12で割った月額賃料の3万円に給付率の3分の2をかけ、その6カ月分として、12万円が支給額になる。
申請には①賃貸借契約書や農用地利用集積計画書など賃貸借契約を証明する書類②確定申告書など売上高の減少を確認できる資料③銀行通帳の写しなど賃料支払いを証明する書類──が必要。個人は運転免許証などの本人確認書類も用意する。
受給後も事業を続けることや給付条件を満たしていることを誓約する書類なども必要になる。
問い合わせは家賃支援給付金コールセンター、(0120)653930。
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2020年08月09日
[新型コロナ] 二番茶諦め 苦渋の決断 相場低迷…コロナ追い打ち 静岡
荒茶生産量が全国一の静岡県を中心に主産地で二番茶の生産をやめる生産者が出ている。長期的な茶相場の低迷に加え、今年はコロナ禍と新茶シーズンが重なり、茶産地は大きな打撃を受けた。生産量の減少が続く中、産地は生産基盤の維持に向け、紅茶生産や実需とのマッチングに取り組み、需要回復を模索している。(木村薫)
今年、産地は苦渋の決断を迫られた。静岡市清水区の茂畑共同製茶組合は、1962年に設立して以来、初めて二番茶の生産をやめることを決めた。組合長を務める杉山一弥さん(44)は「年々相場は安くなり、出荷しても採算割れをする。加えて今年はコロナ禍で問屋からの引き合いも減り、仕方がなかった」と理由を説明する。最も取引量のある茶問屋でさえ、一番茶の時点で例年の半分以下に落ち込んだ。
茶相場は低迷が続き、二番茶の価格についても前年割れを見込む。加えて今年はコロナ禍で新茶初取引のセレモニーや呈茶イベントが各地で中止となり、「盛り上がりに欠け、売り込む時期がほとんどなかった」(県内の茶商)。JA静岡経済連によると、需要の縮小を見越し一番茶の生産量は1万トンの大台を割る見通し。二番茶も前年の約7600トンから2割減と見込む。
一番茶の情勢を受け、経済連は5月中旬時点で二番茶の生産について「販売先が決まっていない状態での生産は前年以上にリスクが高い」と例年以上に強く生産抑制を呼び掛けた。加えて来年産の一番茶の品質向上のため茶樹を切り込み樹勢を回復させる更新処理も促した。県茶業会議所も「個々の農家の判断で生産をやめたり、出荷しないことはあった」と話す。
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2020年08月07日
新型コロナで自治体要請 外食大手の営業再び縮小 経営さらに打撃
新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、大手外食チェーンは営業自粛や時間短縮を再開する。1日の宮崎県などを皮切りに、東京都、大阪府の要請に応じる。ただ、5月下旬までの緊急事態宣言で大半が赤字に転落している。再び営業縮小が広がれば、経営への一層の打撃は必至で、農畜産物の業務需要にも影響を及ぼしそうだ。
居酒屋チェーン大手のコロワイドは「自治体の要請には基本的に応じる」として、時短を再開する方針を明らかにした。回転ずし大手のくら寿司(ずし)、ファストフードの日本KFCホールディングスも同様の方針を固めた。ワタミなど他社も同調する見通しだ。
牛丼チェーン大手のすき家ホールディングスは1~16日、宮崎県全14店舗で店内飲食を午後8時までとし、全時間帯で酒類提供を休止する。都内は3~31日、酒類提供を休止するが、24時間営業は続ける。吉野家ホールディングスは都内で同様の対応を行う。いずれも自治体の要請に応えつつ、営業時間は確保して売上高を少しでも維持しようとしている。
外食業界は緊急事態宣言期間中の4、5月の売上高が過去最大級の減少となった。居酒屋業態の約9割減を筆頭に壊滅的な打撃を受け、居酒屋やファミリーレストラン、牛丼チェーンは不採算店の閉店に追い込まれた。通常営業を再開した6月から回復基調に戻り始めた矢先に、7月中旬の感染再拡大で客足は鈍り始めており、8月の休業や時短で売上高が再び減少に転じる恐れがある。
宮崎県と東京都は全域が要請対象だが、大阪府は大阪市の一部繁華街だけと、「自治体ごとに期間が異なり、対応に手間取っている」(ファストフード大手)のも負担だ。また、愛知県が名古屋市の繁華街で休業や時短要請を行う見通し。時短要請はしないものの独自の緊急事態宣言を発令した沖縄県や岐阜県の他、京都府、千葉県は大人数での会食自粛を住民に求めており、外食業界への再打撃は避けられない。
このため、企業によっては要請に応じず、通常営業を続けるところも出るとみられる。都内を中心にカフェやレストランを展開する「グローバルダイニング」は2020年12月期の中間決算で売上高は前年同期比47・6%減、純損失は9億円の赤字だった。7月31日の決算会見で、長谷川耕造社長は「東京都の要請は受けないつもりだ。飲食業界では多くの店が閉まっていて、経済への影響の方が深刻だ」と述べた。
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2020年08月02日
[新型コロナ 備えて前へ] “密”避けて 「アンシン オトドケ」
「お待たせしました。お客さまのお料理をお持ちしました」
料理の配膳でロボットが活躍するのは、新潟市の焼き肉店「キラキラレストラン焼肉黒真」。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら、ブランド牛「にいがた和牛」などの消費拡大につなげていく。
ロボットの名前は「エイミー」。高さ1・5メートルの人型で、胸部のトレーに料理を載せて客席まで運び、客が受け取ると自動で待機位置まで戻る。タイヤを備え、店内を自在に移動する。
同店は新型コロナ対策で4カ月ほど休業していたが、7月の営業再開に当たってロボットを取り入れた。従業員と客が接近する回数を減らし、安心して食事を楽しんでもらう。現在は、配膳作業の1、2割をロボットが担っている。
同店の山田菊夫支配人は「新型コロナ対策だけでなく、ロボットの配膳は面白いと家族連れに非常に人気」と手応えを話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=RaWq60cR9iU
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2020年08月02日
つまもの苦境 少量パック、高級弁当、お節用…新たな需要に活路
コロナ禍で旅館や料亭など業務用需要が激減したつまもの産地が、新たな販路開拓に挑戦して成果を上げている。家庭需要を狙った商品開発やスーパー向けの荷姿の多様化、高級仕出し弁当の提案などを強化。ニーズを掘り起こし、活路を見いだしている。
愛知県豊川市で、つまものを専門に生産する「東三温室農協」。4~6月は飲食店の営業自粛や時短営業の影響で、ハーブや大葉などで販売の中心となる業務用需要が激減し、半値近い取引となることもあった。
打開に向け、同農協ハーブ部や大葉部はスーパーでの販売に活路を求めた。ハーブ部は県の事業を活用し、6月下旬にハーブティーやハーブサラダを楽しめる2種類のセット商品を発売。市場関係者の意見を聞いて、現在も工夫を重ねながら出荷している。
農家でハーブ部部長の小玉健太郎さん(39)は「業務向けを全てスーパー向けには変えられないが、経営を続けられる販路確立が必要だ」と見通す。名古屋青果の野村幸市担当も「ハーブのセット商品は比較的少ないので、売り込んでいきたい」と評価する。
大葉部は、業務向けに1パック100枚入りをレギュラーパックとして出荷してきたが、スーパー向けには小容量パックを用意。さらに内容量で5~50枚に分けて、9種類の荷姿での出荷に挑戦している。
同農協の周囲には大葉を生産する農協が他に四つあり、差別化のため強化した。その結果、スーパー向けの4~6月の出荷量は前年同期比1・5倍にまで増えた。農家で大葉部部長の前川明さん(50)は「コロナ禍で家庭調理や総菜購入が増えた。スーパー向けの出荷をさらに増やしたい」と意気込む。
“葉っぱビジネス”で知られる徳島県上勝町。JA東とくしま上勝支所や第三セクター「いろどり」が仕掛け、農家154人が年間300種、全国150市場に出荷する。コロナ禍で売り上げは一時期、前年比3割まで落ち込んだが、「あの手この手の作戦」(いろどりの横石知二社長)で危機を脱しつつある。
最大の仕掛けが、高級弁当や仕出し料理への活用提案だ。夜の懇親会は軒並み中止になるが、会議は開かれている。そこで、会議後に地産地消の高級弁当を味わってもらう機運を高め、つまものの消費拡大を狙った。
例えば仕切りにはハランや大ささ、ツバキ葉、器にはレンコン葉、敷葉などを使えば、プラスチックのおかずカップやバランには出せない高級感、季節感が表現できる。
評判は上々で、農家の西蔭幸代さん(82)は「収入が落ち込んで心配したけれど徐々に回復してうれしい」と手応えを話す。
料理人らに相談し、旅館や料亭以外の販路開拓も進め、現在は、早くもお節商材の営業を掛ける。海外旅行がしにくい分、お節商材の需要があるとみる。
コロナ禍を契機にJAや同社は農家と、売り先開拓や注文状況、出荷上限数などの情報共有も強化、産地一体で打開を目指す。横石社長は「新しい生活様式に合わせた需要を開拓し追い風を作る。10月には前年と同じ水準まで取り戻す」と見据える。
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2020年08月01日
#農家の皆さんありがとう 全農×卓球・石川選手 発信呼び掛け
JA全農と卓球日本代表の石川佳純選手は31日、新型コロナウイルス禍でも農畜産物の供給を続ける農家に感謝し、応援する機運を盛り上げるプロジェクトを始めた。石川選手の農家への感謝のメッセージをインターネットで公開。ツイッターで「#農家の皆さんありがとう」というハッシュタグを広める。農家の頑張りを多くの人に気付いてもらう。
同日公開した動画では、石川選手がコロナ禍で練習できない中、農家の生産した米や野菜、肉、牛乳などの食事で「温かい気持ちになれた」と感謝のメッセージを発信。「この機会に農家の方々に感謝の気持ちを伝えましょう」と呼び掛ける。
8月中旬にはメイン動画を公開し、石川選手が吹奏楽部の高校生らと、感謝の気持ちを込めた全農のCMソング「大地のエール」を演奏する。
全農は、ツイッターの「全農広報部スポーツ応援」アカウントでプロジェクトをPR。ハッシュタグを使う人を増やしていく考えだ。
全農の担当者は「石川選手の思いと共に、農家への感謝と応援の気持ちを全国に広げていきたい」(広報SR課)と話している。
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2020年08月01日
2020年上半期貿易統計 食肉輸入が過去最多 コロナ禍で家庭需要増
2020年1~6月期の食肉輸入量が104万トンとなり、統計がある1988年以降で最多となったことが、30日公表の貿易統計で分かった。日本と大型貿易協定を締結した国からの増加が目立つ。新型コロナウイルス禍で、家庭での需要が高まり、調理加工品や冷凍食品の原料向けなどで、低価格を売りにした輸入品が攻勢を強めている。
牛、豚、鶏(調製品を除く)を合わせた食肉輸入量は、104万591トンとなり、過去最多だった前年同期を2%上回った。2014年以降、7年連続で増加しており、過去10年で2割増えている。
今期、特に増加が目立ったのは牛肉冷凍品で、前年同期比7%増の17万2693トンとなった。大手食肉メーカーは「内食需要が高まり、冷凍食品向けの加工原料や、ミールキットなど向けの引き合いが強まった」と指摘する。
国別では、牛、豚ともに、1月に日米貿易協定が発効した米国産の増加が目立った。大手輸入業者は「関税が下がった影響が大きい。低価格志向の強まりもあり、スーパー向けの牛バラ肉などで安価な米国産の注文が増えた」と話す。
豚肉では、メキシコ産が前年同期比14%増の5万4615トンとなり、カット品に強みを持つ同国産が、弁当や中食向けに販売を伸ばしている。
食品スーパー3団体が公表するスーパーマーケット販売統計調査によると、1~6月期の畜産部門の売り上げは、前年を1割上回っている。大手輸入業者は「8月以降もスーパーで輸入豚肉の特売を仕込む動きが出ている」と話す。
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2020年07月31日
疫病退散!桃に願掛け 特許技術で皮にイラスト JAフルーツ山梨
山梨県のJAフルーツ山梨は、新型コロナウイルス感染症の終息の願いを込めて、疫病退散のご利益があるとされる“ヨゲンノトリ”をモチーフにしたイラスト入りの桃「ヨゲンノモモ」の限定販売を始めた。コロナ禍の中でも、夏を代表する特産品の消費と、全国で苦しんでいる人に元気を届けようと企画した。
JAは県内企業では初となる、果実に図柄を入れる県の特許技術を用いて、出荷最盛期を迎えた桃「なつっこ」にイラストを入れた。収穫の2週間ほど前に、光を遮るシールを貼ったストッキングをかぶせることで、赤く色付いた桃の表面にヨゲンノトリを浮かび上がらせた。
ヨゲンノトリは、江戸時代後期にJA管内の市川村(現山梨市)の名主・喜左衛門が記した県立博物館所蔵の「暴瀉病(ぼうしゃびょう)流行日記」に登場する。加賀国(石川県)に現れた白と黒の頭が二つある不思議な鳥が、翌年に流行するコレラを予言し「私の姿を朝夕に拝めば、その難を逃れることができるであろう」と書かれている。
JA営農指導部の職員、青木麻里子さんは「コロナの拡大で、気持ちが落ち込んでいる人もいる。ヨゲンノモモで少しでも元気になってほしい」と期待する。
「ヨゲンノモモ」は、JAのフルーツ直売所八幡店(山梨市)と勝沼店(甲州市)で8月上旬まで限定販売する予定。価格は1個1000円から。
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2020年07月31日
全農 コロナで新方針 物流、ネット販売を強化
JA全農は29日、新型コロナウイルスの影響を踏まえた今後の事業方針を明らかにした。需要の変化に応じ、中長期的に①物流機能拡充②ネット販売強化──を進める。保存の利く商品や宅配向けを増やすため、個包装や冷凍冷蔵保管ができる物流施設を整備する。通販サイト「JAタウン」で全国のJA直売所の出店を広げていく。
会員JAなどから新型コロナ対応についての意見が多く寄せられ、全農として現時点での見解と対応策として整理。同日の通常総代会で示した。
外出を控える動きが広がり、宅配の利用が増え、冷凍食品やパックご飯など保存性、簡便性の高い商品の需要も増えている。仕分けや包装、共同配送の機能がある物流施設を設置していく。生協や他企業との協業も視野に入れる。産地での広域集出荷施設の整備や、消費地近くに商品を保管しておく広域ストックポイントなども併せて整備を進め、高効率な物流体制を築くとした。
ネット販売の拡大では、JAタウン上で全国のファーマーズマーケット(JA直売所)を集めた「専門店街」の設置を構想。産地の販路を増やす。普段使い商品、高級なプレミアム商品、冷凍・加工商品といった商品の幅も広げる。
全農の山崎周二理事長は「コロナの影響は社会構造の変化を先取りした。健康食品や保存の利く食品、宅配やeコマースの増加など、食の現場の変化に対応することが必要」と強調。既存事業も強化する。健康志向や手軽さのニーズに対応した加工品などを企業と連携して開発。労働力支援では、現在進める農作業受委託の広域展開に加え、他産業からの受け入れなども検討。スマート農業の研究・普及を掲げる。
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2020年07月30日
[新型コロナ] 緊急宣言下「バタ-不足」 消費者の疑問相次ぐ 酪農理解へSNSさらに発信
コロナ禍での外出自粛で家庭での菓子やパン作りが増えて家庭用バターが一時的に品薄となったことを背景に、酪農・乳業の理解に向け、生産者や自治体などがインターネット交流サイト(SNS)などでの情報発信の重要性を再認識している。「牛乳の需要は減ったのに家庭用バターがなぜ足りないのか」という消費者の疑問や批判の声が相次いだからだ。今、品薄感は解消しつつあるが、コロナ禍で今後の情勢が不透明な中、専門家は、分かりやすい情報発信の必要性を指摘する。(望月悠希)
生産者 ネット上の誤解理解求めて投稿
春先から、コロナ禍で家庭用バター需要が急増し、首都圏や関西圏などでは、店頭で入手しにくい状況になり、消費者からは疑問の声が相次いだ。
東京都在住の会社員の30代女性は「新型コロナ禍で牛乳が余っているという話は聞くので、バターにしてくれたらいいのにと思う。供給を工夫できないのか」、別の30代女性も「牛乳は不足しないのに、バターが不足するのが不思議」と話す。
SNSでは「バター不足は人為的に作り出しているのではないか」「なぜ増産しないのか」など批判の声も。「バター不足いつ解消されるのよ?」と、牛乳需要分をバターに仕向けることを促す投稿に900件以上のリツイート(再投稿)と3000件以上の「いいね」が付いた。
「悲しいし残念だ」──。北海道稚内市で乳牛約150頭(搾乳牛80頭)を育てる石垣一郎さん(39)は、SNSでの批判が明らかに誤解であればコメントを書き込む。今回も、指定事業者などを批判する投稿も目にし、「生乳は生産調整が難しいことや流通・加工の仕組みなどをもっと知ってもらう必要がある」と強調する。
石垣さんは家庭用バター不足が指定団体制度への批判に転じ、畜産経営安定法改正に結び付いた事態を思い出す。数年前、バター不足が指定団体制度のせいだとするテレビ番組が放映された時、SNSに「バター不足に闇はない。ホクレンや農協が出し惜しみしてバター不足している訳ではない」(原文通り)と投稿。4400リツイートの反響が広がり、酪農家らも応援が寄せられた。
鹿追町で乳牛250頭(搾乳牛120頭)を飼育する高田泰輔さん(36)は、牛乳・乳製品の生産や流通の仕組みは多くの人に知られていないことから「消費者が、バター不足などの背景が分からないのは仕方がない。分かりやすく伝えていくしかない」と話す。自身は顔の見える生産を目指しており、インターネットなどを通じ、自分の生乳を使った商品の情報発信に力を入れている。関係団体などによるテレビ広告などでの発信の必要性を訴える。
行政 「なぜ」への説明「分かりやすく」
今回バター不足でスーパーには、輸入の海外産バターが置かれた。今後こうした国産不足が続けば、輸入バター増加につながる懸念もある。
新型コロナ禍で今後の生乳需給の見通しは不透明だが、北海道は「消費者の力は欠かせない」(畜産振興課)と強調する。SNS上では、批判も集まった一方で、学校給食が止まり苦しむ酪農家に対しての、応援メッセージも寄せられた。道やホクレンは消費者が牛乳などを飲む様子をSNSに投稿する企画を実施、消費者からも投稿が相次いだ。道は「牛乳の需要が落ち込む中、生乳生産のピークを乗り越えたのは消費者の協力のおかげでもある」(同)とする。
道畜産振興課は家庭用バター不足についてもツイッターで「バター不足のなぜ」と題して投稿するなど発信を強化。乳業メーカーが生乳をバターや脱脂粉乳の製造に振り分けたこと、家庭用と業務用バターの違いなどを分かりやすく説明する試みに乗り出した。牛乳消費拡大運動をする前提として、バター不足に対する誤解を少しでも解こうという狙いだ。
北海道大学の清水池義治講師は「需給が目まぐるしく変わる中で、消費者の意識が追い付いていない現状がある。新型コロナの状況次第で同様の事態が起こる懸念もあり、消費者に起きていることを分かりやすく伝える努力が必要」とする。
家庭用欠品「ほぼ解消」
緊急事態宣言期間、飲食店の営業自粛や学校給食の停止などで飲用向け生乳の需要が大幅に減少。ホクレンや乳業メーカーは、バターや脱脂粉乳などの乳製品向けの加工を強化した。ただ、バターは国内消費量の大半は業務用で、家庭用は約2割。家庭用と業務用とは工場の製造ラインや流通形態が別で、大きさや包装も異なり、家庭用需要の急激な伸びに追い付かなかった。業務用を家庭用として販売する動きもあった他、よつ葉乳業も、一時は家庭用バター製造を前年比170~200%に増やすなど、メーカーが生産を急いだ。
農畜産業振興機構(ALIC)によると家庭用の欠品は徐々に改善、6月末時点では「ほぼ解消された」とする。
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2020年07月28日