隔離病室といっても、ICUではなく、伝染病隔離専用の減圧室。空気は外部から流入するが、室内の空気は外に流れ出ない仕組みの部屋だ。通常の個室と同様、テレビとシングルベッドがあり、洗面、トイレが備わったものだった。

「医師たちは毎日部屋に来ました。防護服、マスク、フェイスガード、防護メガネ、手袋を身に着けていましたが、武漢の医師のような全面封鎖式の防護服ではなく、部分的には皮膚が露出し、服の厚さもとても薄く、比較的簡単なもののようでした」と李さんは語る。

 夫妻は日本語が出来なかったが、入院中の病院との意思の疎通はスマホの翻訳アプリを使えば可能だった。また、保健所から電話が来た時には有人通訳サービスを使ったので会話の問題も生じなかった。

 董さんは1月30日に入院し、2月11日の退院まで、合計11日間の入院だった。李さんの方は2月4日に入院し、25日の退院まで、入院は21日間にわたった。

 異国での入院にもかかわらず、2人はかえって安心感があったという。李さんは「医師が毎日何度も来て、血中酸素濃度や体温や血圧を測るので、自身の体の状態は医師によってしっかり管理されていると感じました」と話す。

入院中に感激した
病院対応の数々

 唯一慣れなかったのは食事だった。日本の料理は味が淡泊で、夫妻の口に合わなかった。

 無理を承知で病院に希望を伝えたところ、病院は夫妻のために、中国人の食習慣に特に気を配り、青椒肉絲(ピーマンと豚肉の千切り炒め)やマーボー豆腐のような比較的口に合いそうなおかずを用意してくれたのだった。

 さらに入院中の李夫妻を最も感動させたのは、2人に対する病院のあらゆる面でのケアだった。中には医療の範疇(はんちゅう)を超えることもあった。