※中華系の投資家たちをターゲットにする地元の不動産業者は、日本の危機も他人事、「 “北海道の売国奴”とSNSや電話で罵倒されて」も笑いが止まらないようです。小さな田舎町が中国人によって人口バランスが崩れ、治安が悪化して生態系が破壊された場合、豊かな自然が売りの北海道がどうなるかなど考えもしないのでしょう。 *
◇地元民の不安と批判を横目に商機を逃すまいと奔走する業者
新たな投資先を探るため集まった全日本華僑華人連合会の幹部ら(北海道小樽市、7月)
巨額の中華マネーが北海道に投資され、土地が買い漁られている
◇高級コンドミニアムが完成した富良野市北の峰地区
インバウンドや海外資本の不動産買収に嫌悪感を示す人がいる。その矛先は石井さんら、誘致している側にも向けられる。インターネットの匿名掲示板やSNSには中傷が数え切れないほど書き込まれている。「北海道の売国奴」と電話で罵倒されたこともあるという。
中国では日本の代表的な観光地として知られる「ファーム富田」(北海道中富良野町、7月)
◇地元民の不安と批判を横目に商機を逃すまいと奔走する業者
コロナ不況により、3700億円の損失が出ると試算される北海道の観光業。好調だった訪日外国人(インバウンド)はゼロとなり、各地に影を落としている。一方で、ポスト・コロナを見据えた動きも。4回にわたり観光に携わる北海道の人々の「今」を伝える。
最終回は新たなリゾート地への投資を求める中華系資本と、商機と捉え奔走する人々を追う。
準備が水の泡…中国人向け不動産ツアー中止 別荘も売れず「何十億円の損失」
テレビ電話で中国人と商談する不動産会社社長の石井秀幸さん(北海道小樽市)
7月4日、運河で知られる観光の街、北海道小樽市。不動産会社や商社を営む石井秀幸さんは、中国人の投資家とテレビ電話で今後の対応を協議していた。
「コロナですることないから、牧場で牛や豚と遊びながら暮らしている」(中国人投資家)
「別荘を誰かに貸す? 売る?」(石井さん)
「売れるなら売る…」(中国人投資家)
石井さんは全道各地で約100軒の物件を扱っている。その多くが中国を中心とした富裕層向けだ。
高台にあり海を望める一戸建ては中国・上海のデベロッパーに7000万円で売る仮契約が交わされていたが、新型コロナで来日できないためキャンセルとなった。
2月の春節(中華圏の旧正月)に合わせ企画していた中華圏の富裕層対象の不動産紹介ツアーも中止。「和室が欲しい」など様々な要望に添った物件20軒、総額100億円分を用意し、1年以上かけて準備してきたが、コロナの影響で水の泡となった。
小樽市では6月、日中に飲食店でカラオケを楽しむ「昼カラ」で、クラスター(集団感染)が発生し、40人が感染。全国的にも注目を集めた。石井さんのもとに取引先から心配の声が寄せられ、投資の動きも鈍っているという。
「コロナショックの損失は何十億円。用意した物件は、売れなくなるとただの不良在庫。だからといって地元で買う人はほとんどいない」
◇華僑華人連合会…”ポスト・コロナ”見据え会合 狙う投資先は「第2のニセコ」
新たな投資先を探るため集まった全日本華僑華人連合会の幹部ら(北海道小樽市、7月)
7月17日、小樽市内の飲食店に中華系の経営者の集まり、全日本華僑華人連合会の幹部らが顔を揃えた。IT会社やコンサルティング会社の社長、投資家、女優…。さまざまな職業の人々が一堂に会したのは、道内の投資先を探るためだ。
会合で話題に上がったのは、「北海道のへそ」と言われる富良野地区だった。
「中国ではラベンダーの富良野が一番有名ですからね。コロナが終わったら富良野に」(何徳倫副会長)
「富良野はいい投資先。これから価格が上がる」(会員の江川悦弘さん)
夏は広大なラベンダー畑、冬はウインタースポーツ。富良野は1年を通し観光資源がある。北海道第2の都市、旭川の空港から車で約45分と好立地。パウダースノーが売りのスキー場もあり、世界的リゾートに変貌をとげたニセコをほうふつとさせ、「第2のニセコ」とまで言われ始めている。
「もはやニセコは大手デベロッパーでないと参入が難しい。加えて相次ぐ開発と新幹線のトンネル工事で水が枯渇してきている。その分、富良野は土地が安く資源も豊かでねらい目」(石井さん)
最高値2億3000万円…高級コンドミニアムが完売 「買いたい」高級別荘地の整備計画も
富良野市に完成した高級コンドミニアムのペントハウス(7月)
香港資本の不動産開発会社が6月、高級コンドミニアムを富良野市に完成した。スキー場に隣接し、市街地もベランダから一望できる物件で、1戸あたり約3000万円から2億3000万円。全33戸が完売した。購入したのは、主に中華圏の富裕層だ。
当初は7月の開業予定だったが、新型コロナにより12月に延期された。宿泊費は最上階7階のペントハウスで1泊23万9000円。12月から3月まで入っている予約は22件で、ほとんどが外国人オーナーによるものだが、来日できる見通しは立っていない。それでも運営会社「ニセコアルパインデベロップメンツ」の橋詰泰治さんは手応えを強調する。
「コロナがいつ収束するか見えないので、海外だけではなく、国内の観光客に向けてもアピールしていかねばならないが、ニセコに投資している方は富良野にも目を向けている。手応えは感じている」
◇コロナ禍でも続く”ニセコ・バブル”… 富良野は「同じ環境で割安」
コロナ禍でも投資熱が冷めないニセコ地区(北海道倶知安町)
巨額の中華マネーが北海道に投資され、土地が買い漁られている
世界的なリゾート地として人気となったニセコは、コロナ禍でも投資熱が冷めない。高級コンドミニアムが集まる倶知安町は3月公表された地価公示で商業地、住宅地ともに上昇率は3年連続の全国トップだ。
3月の観光客の入り込み数は前年同月比75%減と激減しているが、富裕層向けリゾートの新設は堅調で、今年1~5月の建築確認申請は87件と前年同期比70%増となった。地価の算定に携わった北海道不動産鑑定士協会はさらに過熱するとみている。
「入国制限が解除されたあとの観光バブルを期待し、今のうちに買っておこうと考える投資家も多く、さらに地価は上昇する可能性がある」
◇高級コンドミニアムが完成した富良野市北の峰地区
コロナ禍前、富良野市もインバウンドは確実に伸びていた。外国人延べ宿泊客数は2019年度で約15万4000人と、この10年で4.2倍に急増した。
土地価格が高いスキー場周辺の「北の峰地区」の基準地価は、ニセコの3分の1。富良野市の不動産会社オールアバウトフラノの池野正樹代表によると北の峰地区の土地価格相場は3年で4倍ほど上昇した。投資の影響だとみている。
「同じような環境のニセコと比べて割安。夏のリゾート地としてもリターンが見込まれ、投資家たちが富良野のよさに気づきはじめた」
“海外富裕層向け”の別荘地計画…テレビ電話使い現場で中国人客へセールス
造成している海外富裕層向けの別荘地(北海道中富良野町、6月)
6月24日、石井さんは中富良野町役場を訪れ、小松田清町長と会談した。
「富良野エリアの価値は日本一だと思っている。さらに発展させるため、別荘の水道整備を助成していただけないか」
石井さんは海外富裕層向けの別荘地を町内に造成する計画で、道路や水道などインフラ整備費用の助成を求めた。
小松田町長は「中富良野町は観光のマチ。いっしょにマチづくりをしていきたい」と応え、具体的な協力方法を模索する姿勢を示した。
テレビ電話を使って上海の顧客に別荘地を売り込む石井さん(7月)
石井さんが計画している別荘地は雄大な大雪山連峰のパノラマが広がる更地で、広さは5000平方メートル。ラベンダー畑で有名なファーム富田から約3キロの土地を13区画に分け、2階建てのアパート2棟や一戸建ての別荘数棟を建てる計画だ。
7月15日、造成予定地に立ち寄った石井さんはスマートフォンを手にし、テレビ電話で上海の貿易会社の女性経営者にセールスをかけた。女性は水や食品の輸出入を手がけ、上海でスーパーマーケット3店営んでいる。石井さんの得意先で、小樽市で一戸建ての別荘を購入したこともある。
「結構広い。きれい、上海より空が青い」(上海の貿易会社社長)
「1区画100坪、ここに別荘を建てる。どう?」(石井さん)
「買いたいね、行きたい富良野」(同社長)
即契約とはいかなかったが、好反応に石井さんの笑みは止まらない。
◇“海外資本”へ嫌悪感示す人… 「北海道売国奴」SNSや電話で罵倒
インバウンドや海外資本の不動産買収に嫌悪感を示す人がいる。その矛先は石井さんら、誘致している側にも向けられる。インターネットの匿名掲示板やSNSには中傷が数え切れないほど書き込まれている。「北海道の売国奴」と電話で罵倒されたこともあるという。
「インターネットの書き込みはほとんど見ない。一つ一つ見ると心が折れてしまう。書き込んでいる人たちは中国人が来なくなった観光地の惨状を想像していないと思う」
石井さんとともに別荘地の計画を進める地元の建設会社社長、桑原守孝さんも同調する。
「働く場所もない、人口も減ってしまう。日本人が動かなかったら外国人を呼ばないとどうにもならない。食っていけない」(富良野市の建設会社社長)
◇ラベンダー畑は満開…”売り上げは2割”「海外観光客に戻ってもらいたい」
中国では日本の代表的な観光地として知られる「ファーム富田」(北海道中富良野町、7月)
中富良野町は人口約5000人の農業を中心とした小さなマチ。農家の高齢化や担い手不足が進む中で、町は観光に力を注いできた。その中核をになってきたのが、観光農園の「ファーム富田」だ。
21ヘクタールの園内で「紫のじゅうたん」のように咲き誇るラベンダーは約17万株。今の1%にも満たない面積で1958年に始まった。
1982年にはテレビドラマ「北の国から」のロケ地となり、全国から観光客が押し寄せた。去年の観光客は112万人。”SNS映え”を求め訪れるインバウンドも多く、中国では日本を代表する観光地になっているという。
1982年にはテレビドラマ「北の国から」のロケ地となり、全国から観光客が押し寄せた。去年の観光客は112万人。”SNS映え”を求め訪れるインバウンドも多く、中国では日本を代表する観光地になっているという。
しかし、コロナの影響で、ラベンダーが満開になったにもかかわらず観光客は激減。7月の来園者はインバウンドがほぼゼロだった影響で、例年の半分以下。収入源となっている土産や飲食店の売り上げも例年の2割程度にまで落ち込んだ。
「庭園にびっしりお客様が歩いている状態だったので、見渡しても人がいないというのは初めて。海外観光客は大きな数だったので戻ってきてもらいたい」(ファーム富田・辻暁課長)
インバウンドがゼロとなり、牽引役を失った北海道の観光。北海道ではインバウンドの回復や更なる投資を熱望する人は少なくない。石井さんもそのひとりで、富良野の別荘地計画を進めている。
「中国人が爆発した時の反動はすごいですよ。どこでお金を使わせるか? 首都・東京ではなく北海道。そのどこかと考えると富良野。勝ちに行きます」
コロナ禍を抜けた先の光景に思いをはせる。
この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースの連携企画です。北海道観光の現状とともに、ポスト・コロナを見据えた動きを追いました。
UHB/Yahoo!News 2020年8月6日
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