モザンビーク 日本のODA事業中止を地元民歓迎
日本政府がアフリカのモザンビークで進めていたODA=政府開発援助による大規模農業開発プロジェクト=プロサバンナ事業が中止となりました。現地の農民からは、中止を歓迎する声があがっています。なぜなのでしょうか。
今週、プロサバンナ事業の問題点を指摘してきた市民団体の会見に、1人の農民が参加しました。
「私たち小規模農家の意見を聞いてくださり、ありがとうございます」
アフリカから電話で感謝の気持ちを伝えたのは、プロサバンナ事業に反対し続けていたモザンビーク最大の農民組織のリーダー、コスタ・エステバンさん(53)です。
プロサバンナ事業とは、モザンビークで日本政府が2009年から進めていた大規模農業開発プロジェクトです。日本の耕地面積の3倍にも及ぶ地域一帯を大豆やゴマなどを生産する一大穀倉地帯に変えようというもので、およそ35億円が投入されました。しかし、現地では「土地が奪われる」、「農民に十分な説明がされていない」などの理由から反対運動が起きていました。
エステバンさんは、4回にわたり来日。事業主体であるJICA=国際協力機構に中止を訴えてきました。
「8年間の闘いは大きな挑戦でした。でも私たちが闘わなければ土地は失われ、 それは土地とともに暮らす私たち農民にとって、死を意味したでしょう」(コスタ・エステバンさん)
一方、日本政府は・・・
「小農の生産性向上、これを目指した農業開発事業でありまして、事業の方は大きく進展したと思っております。中止ではありません。完了です」(茂木敏充 外相)
茂木外務大臣は、目的を果たしたから事業を完了したと説明しましたが、ODAが計画の途中で終わるのは異例のことです。中止の理由についてJICAは、「モザンビーク政府から、終了の申し出があったため」としていますが、その詳細はまだ明らかにされていません。
およそ10年にわたり、日本のODAと向き合ってきたエステバンさん。日本政府に言いたいことは、と尋ねてみると・・・
「日本政府は最初に私たちの声を聞くべきでした。農民の声を聞かずにプロジェクトを進めたことが間違いだったのです」(コスタ・エステバンさん)
プロサバンナ事業の中止は、現地の声を聞く大切さ、そして、誰のための援助なのかということを私たちに問いかけています。(08日15:19)